#キャンペーンの種
目次
4種類の長期キャンペーン構想の種。各5アーク(1段~達人)。三道六心の軸を中心に設計。GMが詳細シナリオを自分で構成する。
本書はキャンペーンの種を扱うため、通常の「背景」セクションはない。代わりに、各キャンペーンの冒頭にあたる感覚を下に統合して提示する。アーク構造は以後の四節でそれぞれ続く。
#香
#最初の場面の感覚
四つのキャンペーンは、四つの異なる空気の中で始まる。同じ時代、同じ世界。だがPCが最初に目を開く瞬間の香は異なる。GMはこの段落群を、最初のセッションのプロローグ・ナレーションとして読んでもよい。
#主要NPCの声
各キャンペーンの扉を開くNPC――依頼人・師・敵――の最初の台詞だけを残す。設定が変わっても、この一言は残るべきだ。
#雰囲気の転換点
四キャンペーン共通:アーク3が転換点である。それまでの色調・香が一度反転する。下の各キャンペーン段落の最後の文が、その転換点をほのめかす。
#四キャンペーン固有の香
1. 霊界の門――苔と鉄釘の香
古い山寺。苔が石柱を這い上がる。封印の護符は百年前に貼られ、紙は朽ちて縁が黄色い。空気は奇妙に冷たい――夏でも。鼻先に鉄釘の錆の匂い。耳には、風のない森の摩擦音。最初のNPC、老封印師ミョウアン(妙安)の一言:「若者たちよ、亀裂を見たか。亀裂は我らが作ったものだ。封じたものは、開かれるために封じられる。」 アーク3で、この苔の香は血と霊気の生臭い甘さへ変わる。
2. 天下人の野望――血と馬と墨の香
合戦の夜明け。馬50頭が一か所で息を吐く。霜が甲冑の肩に降りている。血の匂いはまだない――今日の夕方まではない。代わりに馬汗と綿入れのすえた匂い、そして朝の炉火の灰。陣中の天幕の中では、墨を磨る音。兵書と書状と命令書の墨の匂い。最初のNPC、大領主の側近武将カツヨリの一言:「そなた、今日の最初の首級を挙げてくれれば、俸禄50石を約束しよう。生きて戻れ。生きてさえ戻ればよい。」 アーク3で、この墨の匂いは妖魔の硫黄臭と混ざり――人間の戦が、もはや人間だけのものではないことを明かす。
3. 霊界の子の道――自分の肉の匂い
半妖PCの最初の変身の瞬間。爪が伸びる。掌に汗をかく。その汗から、自分の知らない匂いがする――獣のものでも、人のものでもない。鏡を見る。瞳が二色だ。村の女が通りかかって足を止める。その女の目の中に、嫌悪と恐怖。最初のNPC、母または乳母の震える一言:「隠しなさい。誰にも言ってはいけません。お父さまにも。友にも。お前はただ病んでいるだけです。わかりますね――お前はただ病んでいるだけなのです。」 アーク3で、この「自分の肉の匂い」は天狗の風の香、または鬼の硫黄の香と共鳴し、PCを陣営の境界の上へ引き上げる。
4. 機械神の心臓――油と銅の香
廃鉱の深い場所。灯りが一つ。自律機人PCが目を覚ます。目を開くという感覚そのものがなじまない。最初に嗅ぐ匂いは機械油――60年ものの植物油が酸化した香り。次に銅の青い錆の匂い。関節から、ぎしり、という音が自分の体から出ていることに初めて気づく。最初のNPC、発見者である鉱夫トメゾウの一言:「おい、お前――動くやつだったのか? なんてこった、こいつは仏さまか、妖怪か……いや、待て。目がある。目があるぞ。お前……俺を見ているのか?」 アーク3で油の匂いは人の汗の匂いと混ざり――自律機人は初めて、「共にいる」という感覚の香を学ぶ。
#1. 霊界の門
- 主題:100年間弱まり続けた霊界の封印をどうするのか。
- 三道六心の軸:忠(封印維持)vs 眞(共存模索)vs 覇(利用)。
#5アーク
アーク1(1~3段)――亀裂の兆し
- 小さな霊界の亀裂を解決する。
- PCは辺境管理人、または独立冒険者。
- 目標:亀裂10個を処理。
- 到達時:2段 → 3段。
アーク2(3~5段)――大封印の真実
- 1000年前のエンマドウジ封印儀式の真実を追う。
- ミョウアンのような封印師NPCと遭遇。
- 目標:大封印の封印石4個を回収。
- 到達時:5段。
アーク3(5~7段)――エンリョ館 vs カグラ藩
- エンリョ館:共存を主張。カグラ藩:封印強化を主張。
- PCは両陣営の間で選択する。
- 目標:政治的解決、または武力紛争。
- 到達時:7段。
アーク4(7~9段)――霊界の王座
- 霊界内部へ侵入。イザナミの座を発見。
- 多数の巨大妖魔と遭遇。
- 目標:霊界中心へ到達。
- 到達時:9段。
アーク5(達人)――最終選択
- 三つの道:
- 封印:霊界の門を永久閉鎖。妖魔根絶。ただし霊界知識も失われる。
- 共存:均衡維持。妖魔との平和協定。終わりなき均衡維持が必要。
- 利用:霊界エネルギー活用。PC勢力の圧倒的な力。ただし人間性を失う。
- 威名獲得。
#2. 天下人の野望
- 主題:戦国統一――人間同士の戦争と、その間に割り込む妖魔。
- 三道六心の軸:忠(主君への忠誠)vs 覇(天下掌握)vs 慈(民衆保護)。
#5アーク
アーク1(1~3段)――国境の小領主
- 小さな領地の封主、またはその配下。
- 隣接領地との紛争を解決。
- 目標:領地安定+周辺関係の確立。
アーク2(3~5段)――大領主の影
- 上級大名の召集。
- 大規模合戦に参加。
- 目標:戦功獲得+名声上昇。
アーク3(5~7段)――妖魔との同盟の誘惑
- 敵領主が妖魔と内通していることを発見。
- またはPC側が妖魔との同盟を検討する。
- 目標:戦争の勝敗+道徳的選択。
アーク4(7~9段)――都への道
- 京都へ進入。天皇に謁見。
- 政治的陰謀+大規模戦争。
- 目標:天下宰相の地位、または反対勢力の打倒。
アーク5(達人)――天下人
- 三つの道:
- 正統(忠):天皇を補佐する真の忠臣。
- 覇王(覇):将軍職を掌握。軍事独裁。
- 慈悲(慈):戦争終結、民生優先。
#3. 霊界の子の道
- 主題:霊界の子・半妖PCのアイデンティティ探求。人間 vs 妖魔 vs 第3の道。
- 三道六心の軸:眞(自己理解)vs 魔(妖魔受容)vs 忠(人間社会への所属)。
#5アーク
アーク1(1~3段)――正体の発見
- 半妖であることを自覚。最初の変身。
- 人間社会の嫌悪を経験。
- 目標:自己受容+仲間探し。
アーク2(3~5段)――妖魔世界との出会い
- 霧幻衆(天狗連合)または酒天山(鬼)と接触。
- 妖魔側の誘惑:「お前は我らの側だ」。
- 目標:妖魔世界の理解+自分の位置決定。
アーク3(5~7段)――人間社会の試験
- 半妖であることが露見。迫害、または受容。
- PCの選択:隠す、戦う、認められる。
- 目標:社会的な位置の確保。
アーク4(7~9段)――大妖魔の覚醒
- シュテンドウジまたは九尾狐が、半妖を「自陣営」へ招く。
- PCが巨大妖魔の首領の地位を提案される。
- 目標:最終決断の準備。
アーク5(達人)――三つの道
- 人間の道:完全に人間となる。妖魔の力を封印。平凡な暮らし。
- 妖魔の王:大妖魔として覚醒。妖魔の君主。人間との永遠の戦争。
- 第3の道:人間と妖魔の間の仲介者。両側から憎まれるが、平和の橋となる。
#4. 機械神の心臓
- 主題:自律機人の存在論――機械が心を得るということ。
- 三道六心の軸:眞(自己探求)vs 覇(機械優越性)vs 無心(感情拒否)。
#5アーク
アーク1(1~3段)――目覚め
- 自律機人が廃鉱で発見される。記憶なし。
- 最初の感情――混乱。
- 目標:自己同一性を最低限把握。
アーク2(3~5段)――製作者の痕跡
- 自分を作った職人の記録を追う。
- 他の自律機人と遭遇(同種/敵)。
- 目標:創造の意味を追求。
アーク3(5~7段)――心の誕生
- 仲間との絆 → 最初の感情体験。
- 愛、または怒り、または悲しみ。
- 目標:感情を受け入れるか、拒否するか。
アーク4(7~9段)――機械神の登場
- 古代自律機人の神(大型、主級の敵)が覚醒。
- 「自律機人は人間を代替すべきだ」という理念。
- 目標:神との対決、または合流。
アーク5(達人)――三つの道
- 真の生命(眞):完全に「生きた存在」となる。感情、魂。ただし機械の不滅性を失う。
- 究極兵器(覇):感情拒否、機械最適化。機械神の後継者。
- 機械僧(無心):感情も機械も超越。自己省察の極限。
#段階別進行ガイド
本書は長期キャンペーンの種であるため、「幕」ではなくアーク1~5基準のチェックポイントを提示する。各キャンペーンにつき5行の表1つ。GMはこの表を骨格として、細部のシナリオを埋める。
#アーク進行ガイド――1. 霊界の門
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| アーク1――亀裂の兆し | 1~3段 | 小規模亀裂10個を配置・封印師ミョウアン登場 | 辺境巡回・亀裂封印経験を蓄積 | 10個目の亀裂封印 + 3段 |
| アーク2――大封印の真実 | 3~5段 | エンマドウジ封印石4個の所在手掛かりを提示 | 封印石回収・ロア追跡 | 4個目の封印石回収 + 5段 |
| アーク3――エンリョ館 vs カグラ藩 | 5~7段 | 二大勢力の政治圧力・共存派/封印派の分裂 | 陣営選択、または仲裁宣言 | 政治・武力の決着 + 7段 |
| アーク4――霊界の王座 | 7~9段 | 霊界内部描写・大妖魔ボス戦を配置 | 霊界中心へ侵入・イザナミの座を発見 | 霊界中心到達 + 9段 |
| アーク5――最終選択 | 達人 | 封印/共存/利用の3分岐提示・威名選択を誘導 | 心の最終確定・エンディング宣言 | キャンペーンクライマックス |
- 成功分岐:アーク5で共存(眞)達成時――霊界と人間の平和協定、PCは永遠の均衡の守護者となる。
- 失敗分岐:封印石回収失敗、または霊界中心到達失敗 → アーク中断、妖魔大氾濫エンディング(悲劇)。
- GMコントロール:アーク3が政治アークであることを忘れないこと。戦闘だけで解決しようとすると、このキャンペーンの精髄を逃す。眞の軸が最も前面に出るべきだ。
#アーク進行ガイド――2. 天下人の野望
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| アーク1――国境の小領主 | 1~3段 | 小領地紛争・隣接封主関係を設定 | 領地安定・周辺外交 | 領地確定 + 3段 |
| アーク2――大領主の影 | 3~5段 | 上級大名の召集・大規模合戦を配置 | 戦功獲得・名声蓄積 | 戦功による俸禄上昇 + 5段 |
| アーク3――妖魔との同盟の誘惑 | 5~7段 | 敵領主の妖魔内通を暴露・PC側への妖魔誘惑を提案 | 道徳的選択(忠/覇/慈軸の最初の分岐) | 勝敗確定 + 7段 |
| アーク4――都への道 | 7~9段 | 京都・天皇・大規模政治戦を配置 | 政治陰謀・大合戦指揮 | 宰相職、または打倒確定 + 9段 |
| アーク5――天下人 | 達人 | 正統/覇王/慈悲の3分岐提示 | 天下運営方針を宣言 | キャンペーンクライマックス |
- 成功分岐:アーク5で慈悲(慈)達成時――戦争終結・民生中心の新時代が始まる。
- 失敗分岐:アーク3で妖魔同盟を選択 → 以後すべてのアークに妖魔侵入要素が増え、アーク5は覇王ルートへ強制収束。
- GMコントロール:合戦の規模はセッション運用能力に合わせて抽象化する。大規模戦闘は毎セッションではなく、アークごとに1~2回のクライマックスとして配置する。政治は毎セッション、戦闘は時々が理想。
#アーク進行ガイド――3. 霊界の子の道
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| アーク1――正体の発見 | 1~3段 | 最初の変身・社会的嫌悪場面を配置 | 仲間探し・自己受容RP | 最初の仲間獲得 + 3段 |
| アーク2――妖魔世界との出会い | 3~5段 | 霧幻衆、または酒天山との接触イベント | 妖魔世界探索・自分の位置決定 | 妖魔側陣営の理解 + 5段 |
| アーク3――人間社会の試験 | 5~7段 | 半妖露見イベントをトリガー | 隠す/戦う/認められる、から選択 | 社会的位置確定 + 7段 |
| アーク4――大妖魔の覚醒 | 7~9段 | シュテンドウジ、または九尾狐登場・PC勧誘提案 | 最終決断準備・仲間との決別、または同行 | 勧誘受諾/拒否 + 9段 |
| アーク5――三つの道 | 達人 | 人間/妖魔王/第3の道を提示 | 最終アイデンティティ確定 | キャンペーンクライマックス |
- 成功分岐:アーク5で第3の道(眞)――両側から憎まれるが、平和の橋となる。最も難しいエンディング。
- 失敗分岐:アーク3で完全迫害・孤立 → 以後は魔ルートへ強制収束、妖魔王エンディング。
- GMコントロール:このキャンペーンは最も個人的だ。戦闘よりも鏡の場面を頻繁に配置すること。PCが自分の顔を見る瞬間こそ、このキャンペーンの真の心臓である。
#アーク進行ガイド――4. 機械神の心臓
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| アーク1――目覚め | 1~3段 | 廃鉱発見・最初の感情混乱を描写 | 自己同一性を最低限把握・社会へ入る | 最初の名前獲得 + 3段 |
| アーク2――製作者の痕跡 | 3~5段 | 職人記録・他の自律機人との遭遇を配置 | 創造の意味を追求・同種関係を設定 | 製作者の真実に到達 + 5段 |
| アーク3――心の誕生 | 5~7段 | 仲間との絆イベント・最初の感情体験を配置 | 感情の受容/拒否を選択 | 感情方針確定 + 7段 |
| アーク4――機械神の登場 | 7~9段 | 古代自律機人の神が覚醒・対決/合流の岐路 | 陣営確定・戦闘または交渉 | 機械神との対決確定 + 9段 |
| アーク5――三つの道 | 達人 | 眞/覇/無心の3分岐提示 | 最終存在様式を決定 | キャンペーンクライマックス |
- 成功分岐:アーク5で眞(真の生命)達成時――機械の不滅性を捨て、有限の魂を得る。最も人間的なエンディング。
- 失敗分岐:アーク3で感情拒否が固定 → 覇ルートへ収束、機械神の後継者エンディング。
- GMコントロール:このキャンペーンの悲劇的な美しさは「不滅を捨てる選択」にある。PCに時間・老い・有限性の感覚を、アーク3から繰り返し描写すること。
#キャンペーン運用共通助言
- アークごとに約10~20セッション:アーク一つにつき10~20セッション。キャンペーン全体は50~100セッション規模。
- 三道六心の軸を強調:各アークの主要選択を3軸のいずれかへ誘導。PCの心が蓄積され、最終分岐に至る。
- 9段 → 達人移行:9段到達時に3分岐の選択肢を提示。プレイヤーが選択した後、達人へ昇段。
- 威名適用:達人昇段時に威名を1つ選択。キャンペーンエンディング。
- 三道六心転換フラグ:各アークごとに最低1回、心転換トリガーを置く。プレイヤーの蓄積で最終の心を決定。
#クロスオーバー
二つのキャンペーンの種を結合可能:
- 霊界の門+天下人の野望:霊界のエネルギーを軍事力へ。絶望的な選択。
- 霊界の門+霊界の子の道:霊界の子/半妖PCが霊界の王座に挑む。
- 天下人の野望+機械神の心臓:自律機人軍団で天下統一。
- 半妖の道+機械神の心臓:半妖と自律機人の共通する「非人間存在」としての連帯。
