#自分の英雄を作る
ハナは刃を持つ武士を夢見て、メイは妖魔を制する術師を夢見る。
#香 — 名をつける
また土曜日。雨は上がっていた。窓の外では濡れた道路が光っている。
クロが印刷した紙を二枚、テーブルの上に置いた。空欄の多い紙。名前、職業、能力、特技 — キャラクターシート。
「今日は君たちのキャラクターを作る」
ハナがシートを手に取った。目が名前欄に固定された。
「名前から?」
「名前は後だ。まず職業」
「職業は全部で三十三もある」クロが一覧を取り出した。「でも最初からそれを全部見る必要はない。基本六つだけ見ろ。侍、浪人、忍び、陰陽師、密教僧、浄土僧。この六つが戦場で必要な役割を全部分け合っているからな — 前で止め、素早く斬り、後ろを狙い、呪術をかけ、ど真ん中で戦い、味方を救う」
「役割で先に選ぶんですか?」メイが訊いた。
「そうだ。『武士になりたい』じゃなく『何がしたいか』で選べ。前で止めたいなら侍、後ろで術法を使いたいなら陰陽師。残り二十七職業はこの六つの変形か、GMが許可して開く特殊職業だ。慣れてからでいい」
ハナの視線が一番上で止まった。侍。その横には「前列・防御」と書かれていた。
「これ」ハナがきっぱり言った。「侍で」
クロが笑った。「予想してた」
メイは一覧をゆっくり見ていった。陰陽師、密教僧、浄土僧 — 霊的職業たち。彼女の指が四つ目で止まった。
「陰陽師」メイが言った。「式神を使うんですよね? 紙人形に呪術をかけて?」
「そう。妖魔を扱う術師だ。式神を召喚して戦場に配置し、君の活……行動資源で操る」
メイがうなずいた。「召喚士 + 操縦者コンセプトですね。いいです」
クロがダイスの横に鉛筆二本を置いた。「次は能力値。六つある」
ハナがシートをのぞいた。六つの空欄。
「勇は勇気と近接戦闘。技は敏捷さと瞬発力。體は体力と耐久。智は知識と指揮。美は魅力と存在感。運は幸運」
「数字はどう決めるんですか?」
クロがカード六枚を置いた。+2, +1, +1, 0, 0, -1。
「この六つの数字を六つの能力に自由に配分する。強いところに高いものを入れ、弱いところに低いものを入れればいい」
ハナは考えた。侍。刃をよく使い、前に立って敵を止める役割。刃さばきには勇が必要で、前で耐えるには體が必要だ。
鉛筆を取った。勇に+2。體に+1。技に+1。残りに0, 0, -1。
「-1はどこに入れればいいですか?」
「弱いところだ。侍は何が苦手?」
ハナは少し考えた。「……運?」
クロがうなずいた。「運の悪い侍。でも刃さばきと意志で運命に立ち向かう武士。いいキャラクターだ」
メイの番。
「陰陽師は智が核心だと言いましたよね?」
「そう。呪術と式神操作に智を使う」
メイが書いた。智に+2。美に+1。運に+1。勇に0。技に0。體に-1。
「體が-1だと、当たったら危なくないですか?」
「危ない。陰陽師は後ろで式神を操る職業だ。前に出てはいけない。侍が前を止め、陰陽師は後ろで呪術をかける」
メイがうなずいた。「CoCの学者みたいな位置ですね。戦ったら死ぬ人」
「背景」クロが言った。「君たちのキャラクターが戦場に立つ前、どこから来たのか。背景は全部で13種類あるが、最初は代表6つだけ先に見せる」
ハナが一覧を見た。没落貴族、農夫、商人の子、寺院出身、放浪者、霊界の子。
「没落貴族」ハナが言った。「かつて城を持っていたけど、家が滅びた侍。だから刃一本を持って戦場に出てきたんです」
「いい。没落貴族なら交渉と風格にボーナスが来る。古い家の名が残っているから」
メイが選んだのは寺院出身。「陰陽師が寺院で育ちました。経典と呪術書を読みながら育ったんです」
技能。特技。装備。ハナとメイは空欄を埋めていった。
ハナの武器は打刀 — 平凡な刃。「父から受け継いだ刀です。鞘は擦り減っているけど、刃は生きています」
メイの武器は — なかった。「陰陽師は式神が戦うんじゃないんですか?」
「そう。代わりに符を持っている。そして式神一体」
最後。名前。
ハナが鉛筆を取った。一字、一字、丁寧に。
「藤原刹那 (藤原刹那)。」
クロが読んだ。「藤原……歴史ある家だね」
「いい家でした。今は違いますけど」ハナが言った。声に熱があった。すでに刹那になりつつあった。
メイが書いた。整った字。
「ミナ (ミナ)。」
「姓は?」
メイは首を振った。「寺院で育った子には姓がありません。名前だけです」
クロがシート二枚を並べた。藤原刹那、侍。ミナ、陰陽師。二人の英雄が紙の上に生まれた。
「よし」クロが言った。「次の週、この二人が初めて出会う」
空欄が埋まった。数字と名前の間に、まだ生きたことのない人生が待っている。
#法 — セッション実録
クロ: 「キャラクター作成7段階を踏んでみよう」
#1段階 — 職業選択
クロ: 「ハナは侍。核心能力値は勇/體。前列で守る役割。メイは陰陽師。核心は智。式神を召喚して後列で操る」
#2段階 — 能力値配分
クロ: 「配分法は+2, +1, +1, 0, 0, -1。合計+3だ」
ハナ:
| 勇 | 技 | 體 | 智 | 美 | 運 |
|---|---|---|---|---|---|
| +2 | +1 | +1 | 0 | 0 | -1 |
メイ:
| 勇 | 技 | 體 | 智 | 美 | 運 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0 | 0 | -1 | +2 | +1 | +1 |
クロ: 「派生値。活力 = 10 + 技。戦力 = 3 + 體」
| 派生 | 刹那 | ミナ |
|---|---|---|
| 活力 | 11 (10+技1) | 10 (10+技0) |
| 戦力 | 4 (3+體1) | 2 (3+體-1) |
| 防備 | 14 (重甲) | 10 (無甲) |
メイ: 「戦力2……二度致命傷を受けたら倒れるんですね」
クロ: 「そう。陰陽師は前に出てはいけない。刹那が止めなければならない」
#3段階 — 背景
クロ: 「ハナ = 没落貴族。技能特典3つ中2つ選択: 軍学、交渉、風格」
ハナ: 「軍学と風格で。指揮官だから」
クロ: 「メイ = 寺院出身。技能特典: 退魔、医術、闘志」
メイ: 「退魔と医術で」
#4段階 — 技能配分
クロ: 「クラス自動5点(入門3個 = 3点、習得1個 = 2点) + 背景特典2点 + 自由2点 = 9点」
刹那技能: 剣術●●(習得), 闘志●(入門), 軍学●(入門), 威圧●(入門) + 交渉●(背景), 風格●(背景) + 馬術●(自由), 生存●(自由)
ミナ技能: 呪術●●(習得), 退魔●(入門), 結界●(入門), 予言●(入門) + 退魔●→●●(背景、重複時は習得へ), 医術●(背景) + 交渉●(自由), 感知●(自由)
#5段階 — 特技
クロ: 「1段特技3つ。クラス自動1 + 背景自動1 + 一般選択1」
刹那:
- 不動の陣 [構え] (侍自動) — 宣言時、制圧力 +4(前列)、敵突破 +2、移動不可。
- 家名 [素養] (没落貴族自動) — 交渉/威圧 +2、分隊初期結束 +1。
- 強靭 [素養] (一般選択) — 戦力 +1。→ 戦力 4→5。
ミナ:
- 式神使役 [型] (陰陽師自動) — 式神1体召喚。戦力1、防備12。制圧力 +1。
- 経典の力 [素養] (寺院出身自動) — 妖魔対象攻撃判定 +1(常時)。恐怖抵抗判定 +2(常時)。
- 妖魔知識 [素養] (一般選択) — 妖魔攻撃 +1、弱点自動公開。
#6段階 — 装備
刹那: 打刀(刀類標準), 重甲(防備14、活力 -1 → 體+1で相殺)。 ミナ: 符(消耗品、呪い解除用1回), 式神人形1体。
#7段階 — 三道六心
クロ: 「心の方向。三つの道の中から一つ、その中で明るい心と暗い心」
ハナ: 「刹那は……礼道(禮)。忠で。家を再興するという忠誠」
メイ: 「ミナは玄道(玄)。真(眞)。真実を探求する陰陽師」
クロ: 「いい。刹那 — 礼道 忠。ミナ — 玄道 眞。キャラクター完成」
クロ: 「整理。作成7段階:
- 職業 — 役割で先に選ぶ。新規は基本6職から1つ選択 (全33職 = 基本6 + 拡張12 + アウトサイダー3 + 魔人12)
- 能力値 — +2/+1/+1/0/0/-1を配分
- 背景 — 全13種中1つ選択 (入門は代表6種から開始可能)
- 技能 — クラス5 + 背景2 + 自由2 = 9点
- 特技 — クラス1 + 背景1 + 一般1 = 3つ
- 装備 — 武器 + 甲冑
- 三道六心 — 道 + 心を選択
これでキャラクターは完成する。10分で終わる」
ハナ: 「10分? 本当ですか?」
クロ: 「D&Dより速い。ダイスを振らないから」
二枚のシート。藤原刹那、侍、礼道 忠。ミナ、陰陽師、玄道 眞。まだ互いを知らない二人。次の週 — 戦場で出会う。