#本当に限りない悪役を追求したいなら?
目次
「何でもできる」という言葉はキャンペーンの終わりではなく、キャンペーンを掴むより大きな目的が必要だという合図である。
#導入断片 — 空の地図
魔人たちは城を奪った。領主は死に、守備隊は逃げ、村は焼かれなかった。焼く必要がなかったからである。すでに皆が頭を下げた。
修羅道が言った。「次の城はどこだ。」
雑貨商が帳簿をめくった。「どこでも。道は開け、金も十分だ。」
毒虫師が壺を撫でた。「抵抗がなければ、試みも面白くないですね。」
怪仏は語らなかった。しかしその沈黙すら命令のように感じられた。
GMは地図を広げた。その地図にはまだ塗られていない領地が多かった。ところが卓上には、しばし何の言葉もなかった。あまりに容易にすべてができるようになると、何をすべきかが消えたのである。
そのとき、イタコが死んだ領主の声で言った。「お前たちが望んだものは城ではなかったはずだが。」
その言葉に、魔人たちが初めて互いを見た。空の地図は敵ではなく問いだった。
#まず区別すること
「安全装置を外す」という言葉は二つに分かれる。
| 区分 | 意味 |
|---|---|
| 叙事的な制動の解除 | キャラクターが善良さ、悔い改めの機会、英雄的な制約、道徳的なためらいなしに行動する。 |
| 卓の合意の解除 | プレイヤーが嫌う素材、中断の合図、実際の尊重までを無視する。 |
本文書が扱うのは一つ目である。
二つ目はキャンペーンの形式ではなく卓の崩壊である。限りない悪役プレイであるほど、むしろプレイヤー間の合意は鮮明でなければならない。キャラクターは制御されなくとも、セッションは制御されねばならない。
#なぜ制御なき悪行は退屈になるのか
魔人PCが本当に何でもでき、誰も止められず、いかなる結果も重要でないなら、はじめは強烈である。しかし長くは続かない。
| 消えるもの | なぜ退屈になるか |
|---|---|
| 抵抗 | 誰も止められなければ、選択ではなく処理の順番になる。 |
| 希少性 | すべてを持てるなら、何を望むかがぼやける。 |
| 正体 | どんな悪行でもするなら、その魔人だけの顔が消える。 |
| 緊張 | 失敗、裏切り、代価、時間制限がなければ、場面が平らになる。 |
| 目的 | 悪行そのものが目的なら、次の場面の理由が弱い。 |
悪役プレイヤーが望むものは、たいてい「制約なし」それ自体ではなく、自分の悪役性が世界を変える感覚である。GMはその欲望を止めるよりも、より大きな構造で受けるべきである。
#悪行を支援するGMの態度
限りない悪役プレイにおいて、GMは「だめだ」を既定値にしない。代わりにこう問う。
- それで何を得ようとするのか。
- その行動がどんな勢力、資源、儀式、怨み、噂へ繋がるのか。
- 誰がその結果を利用しようとするのか。
- 同じ集団の別の魔人は、なぜそれを助けるか妨げるのか。
- これが大きな目的にどんな段階を開くのか。
悪行を取り消さない。悪行をフックに変える。
#悪行をフックに変える六つの環
| 環 | 問い | 例示 |
|---|---|---|
| 対象 | なぜよりによってその対象か。 | その城には霊界の亀裂を開く古い結界がある。 |
| 資源 | 何を得るか。 | 名、血、金貨、文書、身体、領地、信者。 |
| 証人 | 誰が見たか。 | 生き残った子、敵対する英雄、裏切った信者、死者の霊。 |
| 債務 | 誰が借りを負ったか。 | 邪教が保護を受け、次の儀式を要求する。 |
| 汚染 | 世界がどう変わるか。 | 道が閉ざされ、神社が沈黙し、市場の価格が変わる。 |
| 招待 | 誰が近づくか。 | より大きな魔人勢力、競合する邪教、英雄連合、妖魔の君主。 |
GMはプレイヤーが望む悪行を、この六つの環のうち二つ以上に繋ぐ。そうすれば「やった」で終わらず、次の場面を生む。
#大きな目的を立てる法
限りない悪役集団には「悪いことをする」より大きな一文が必要である。大きな目的は、互いに異なる魔人を一つの場に結ぶ接着剤である。
| 大きな目的 | 似合う問い |
|---|---|
| 新しい秩序の樹立 | 誰がこの世界を治める資格があるか。 |
| 霊界の開放 | 人間と妖魔の境界をなぜ壊すべきか。 |
| 神殺し、あるいは神格の簒奪 | 神が沈黙したなら、誰が神の座を占めるか。 |
| 不死の完成 | 死が世界の誤りなら、何を犠牲にできるか。 |
| 復讐の戦国化 | 個人の怨みがどうして時代の怨みになるか。 |
| 完全な市場 | すべてに値が付く世界はどんな姿か。 |
| 戦争の永続化 | 平和が偽りなら、戦争を隠さない世界のほうがよくないか。 |
| 救いの強制 | 人々が自らを救えないなら、強制的に救ってよいか。 |
大きな目的は悪役を正当化しない。代わりにキャンペーンを動かす。
#互いに異なる魔人を一つの集団に結ぶ手段
魔人は互いにうまく噛み合わない。だから集団を作るには、友情だけでは足りない。
| 接着剤 | 作動の仕方 |
|---|---|
| 共同の儀式 | 各魔人が異なる材料や役割を担ってこそ完成する。 |
| 分割された鍵 | 目的の達成に必要な文書、身体、名、結界の権限が分かれている。 |
| 相互の弱点 | 互いの秘密や欠落を知っており、裏切りがそのまま損失になる。 |
| 外部の包囲 | 英雄連合、比叡連、カグラ藩、競合する魔人勢力が皆を敵と見る。 |
| 教理の空欄 | 各魔人が同じ教理を自分の仕方で解釈できる。 |
| 帳簿と配当 | 雑貨商式の契約、戦利品の分配、領地の持分で臨時の秩序を作る。 |
| 王座の猶予 | 最終目的までは誰が首座かを決めないことにする。 |
良い悪役集団は、仲が良いから維持されるのではない。まだ割れれば損のほうが大きいから維持される。
#魔人別の集団への寄与
| 魔人の類型 | 集団に与えるもの |
|---|---|
| 戦争型の魔人 | 武力、恐怖、占領、突破。 |
| 呪い型の魔人 | 浸透、病、怨み、見えない圧迫。 |
| 信仰型の魔人 | 教理、信者、祭壇、正当化。 |
| 知識型の魔人 | 実験、解釈、禁忌の技術、弱点の分析。 |
| 取引型の魔人 | 資金、物資、情報、裏切りの値札。 |
各魔人に自分の悪行を思う存分させつつ、その結果が集団の大きな目的に何を加えるかを問う。加えるものがなければ、場面は強烈でもキャンペーンは緩む。
#無制限の悪行キャンペーンのセッション構造
#1幕: 欲望の宣言
各魔人プレイヤーが、この回でやりたい悪役的な行動を一つずつ言う。GMはそれを止めず、大きな目的のどの段階と繋ぐかを定める。
#2幕: 実行
PCが望む仕方で動く。この幕では悪役の能動性を強く保証する。場面の面白さは「できるか」よりも「どんな仕方でするか」にある。
#3幕: 連結
実行の結果が、資源、証人、汚染、招待のうち一つへ繋がる。ここで次のシナリオフックが生まれる。
#4幕: 集団会議
互いに異なる魔人たちが、結果をどう分けるかを定める。この場面がなければ、悪行は個人の断片へ散る。
#5幕: より大きな門
大きな目的に一歩近づいたことを見せる。新しい結界が開く。英雄連合が結成される。死者が名を口にする。市場が覆る。
#退屈を防ぐ四つの圧力
| 圧力 | 機能 |
|---|---|
| 時間 | 儀式、追跡、季節、霊界の亀裂が待ってくれない。 |
| 競争 | 別の悪役も同じ資源を望む。 |
| 内部の亀裂 | 同じ目的を別の仕方で解釈する。 |
| 世界の反作用 | 英雄、神社、怨霊、民衆、市場、霊脈が反応する。 |
この圧力は悪役を止めるための壁ではない。悪役をより大きく行動させる風である。
#プレイヤーに与える助言
限りない悪役をやりたいなら、「何でもやる」より強い一文を持ってこい。
- 私は何を作るために壊すのか。
- 私の魔人はどんな悪行を特に好むのか。
- その悪行はどんな大きな目的に寄与するのか。
- 同じ集団の別の魔人は、なぜ私を必要とするのか。
- 私が最後まで容認できない裏切りは何か。
無制限の悪役にも好みと目的は必要である。好みがなければ何でもする人物になり、目的がなければどこへでも行くキャンペーンになる。
#GMに与える助言
プレイヤーが望む悪行を積極的に受ける。ただし毎回、次のうち一つで返す。
- より大きな目的の段階。
- 新しい敵、あるいは新しい同盟。
- 集団内部の配分の問題。
- 世界に残った痕跡。
- 次のセッションの選択肢。
悪役プレイヤーへの最良の支援は制動ではなく構造化である。彼が望む悪役性を、キャンペーンのエンジンとして入れよ。
限りない悪役は、限りない自由ではなく、果てしなく大きくなる目的を必要とする。