日本語版 v1.3.3 · fc-guide

#本当に限りない悪役を追求したいなら?

目次

「何でもできる」という言葉はキャンペーンの終わりではなく、キャンペーンを掴むより大きな目的が必要だという合図である。


#導入断片 — 空の地図

魔人たちは城を奪った。領主は死に、守備隊は逃げ、村は焼かれなかった。焼く必要がなかったからである。すでに皆が頭を下げた。

修羅道が言った。「次の城はどこだ。」

雑貨商が帳簿をめくった。「どこでも。道は開け、金も十分だ。」

毒虫師が壺を撫でた。「抵抗がなければ、試みも面白くないですね。」

怪仏は語らなかった。しかしその沈黙すら命令のように感じられた。

GMは地図を広げた。その地図にはまだ塗られていない領地が多かった。ところが卓上には、しばし何の言葉もなかった。あまりに容易にすべてができるようになると、何をすべきかが消えたのである。

そのとき、イタコが死んだ領主の声で言った。「お前たちが望んだものは城ではなかったはずだが。」

その言葉に、魔人たちが初めて互いを見た。空の地図は敵ではなく問いだった。

#まず区別すること

「安全装置を外す」という言葉は二つに分かれる。

区分意味
叙事的な制動の解除キャラクターが善良さ、悔い改めの機会、英雄的な制約、道徳的なためらいなしに行動する。
卓の合意の解除プレイヤーが嫌う素材、中断の合図、実際の尊重までを無視する。

本文書が扱うのは一つ目である。

二つ目はキャンペーンの形式ではなく卓の崩壊である。限りない悪役プレイであるほど、むしろプレイヤー間の合意は鮮明でなければならない。キャラクターは制御されなくとも、セッションは制御されねばならない。


#なぜ制御なき悪行は退屈になるのか

魔人PCが本当に何でもでき、誰も止められず、いかなる結果も重要でないなら、はじめは強烈である。しかし長くは続かない。

消えるものなぜ退屈になるか
抵抗誰も止められなければ、選択ではなく処理の順番になる。
希少性すべてを持てるなら、何を望むかがぼやける。
正体どんな悪行でもするなら、その魔人だけの顔が消える。
緊張失敗、裏切り、代価、時間制限がなければ、場面が平らになる。
目的悪行そのものが目的なら、次の場面の理由が弱い。

悪役プレイヤーが望むものは、たいてい「制約なし」それ自体ではなく、自分の悪役性が世界を変える感覚である。GMはその欲望を止めるよりも、より大きな構造で受けるべきである。


#悪行を支援するGMの態度

限りない悪役プレイにおいて、GMは「だめだ」を既定値にしない。代わりにこう問う。

  • それで何を得ようとするのか。
  • その行動がどんな勢力、資源、儀式、怨み、噂へ繋がるのか。
  • 誰がその結果を利用しようとするのか。
  • 同じ集団の別の魔人は、なぜそれを助けるか妨げるのか。
  • これが大きな目的にどんな段階を開くのか。

悪行を取り消さない。悪行をフックに変える


#悪行をフックに変える六つの環

問い例示
対象なぜよりによってその対象か。その城には霊界の亀裂を開く古い結界がある。
資源何を得るか。名、血、金貨、文書、身体、領地、信者。
証人誰が見たか。生き残った子、敵対する英雄、裏切った信者、死者の霊。
債務誰が借りを負ったか。邪教が保護を受け、次の儀式を要求する。
汚染世界がどう変わるか。道が閉ざされ、神社が沈黙し、市場の価格が変わる。
招待誰が近づくか。より大きな魔人勢力、競合する邪教、英雄連合、妖魔の君主。

GMはプレイヤーが望む悪行を、この六つの環のうち二つ以上に繋ぐ。そうすれば「やった」で終わらず、次の場面を生む。


#大きな目的を立てる法

限りない悪役集団には「悪いことをする」より大きな一文が必要である。大きな目的は、互いに異なる魔人を一つの場に結ぶ接着剤である。

大きな目的似合う問い
新しい秩序の樹立誰がこの世界を治める資格があるか。
霊界の開放人間と妖魔の境界をなぜ壊すべきか。
神殺し、あるいは神格の簒奪神が沈黙したなら、誰が神の座を占めるか。
不死の完成死が世界の誤りなら、何を犠牲にできるか。
復讐の戦国化個人の怨みがどうして時代の怨みになるか。
完全な市場すべてに値が付く世界はどんな姿か。
戦争の永続化平和が偽りなら、戦争を隠さない世界のほうがよくないか。
救いの強制人々が自らを救えないなら、強制的に救ってよいか。

大きな目的は悪役を正当化しない。代わりにキャンペーンを動かす。


#互いに異なる魔人を一つの集団に結ぶ手段

魔人は互いにうまく噛み合わない。だから集団を作るには、友情だけでは足りない。

接着剤作動の仕方
共同の儀式各魔人が異なる材料や役割を担ってこそ完成する。
分割された鍵目的の達成に必要な文書、身体、名、結界の権限が分かれている。
相互の弱点互いの秘密や欠落を知っており、裏切りがそのまま損失になる。
外部の包囲英雄連合、比叡連、カグラ藩、競合する魔人勢力が皆を敵と見る。
教理の空欄各魔人が同じ教理を自分の仕方で解釈できる。
帳簿と配当雑貨商式の契約、戦利品の分配、領地の持分で臨時の秩序を作る。
王座の猶予最終目的までは誰が首座かを決めないことにする。

良い悪役集団は、仲が良いから維持されるのではない。まだ割れれば損のほうが大きいから維持される。


#魔人別の集団への寄与

魔人の類型集団に与えるもの
戦争型の魔人武力、恐怖、占領、突破。
呪い型の魔人浸透、病、怨み、見えない圧迫。
信仰型の魔人教理、信者、祭壇、正当化。
知識型の魔人実験、解釈、禁忌の技術、弱点の分析。
取引型の魔人資金、物資、情報、裏切りの値札。

各魔人に自分の悪行を思う存分させつつ、その結果が集団の大きな目的に何を加えるかを問う。加えるものがなければ、場面は強烈でもキャンペーンは緩む。


#無制限の悪行キャンペーンのセッション構造

#1幕: 欲望の宣言

各魔人プレイヤーが、この回でやりたい悪役的な行動を一つずつ言う。GMはそれを止めず、大きな目的のどの段階と繋ぐかを定める。

#2幕: 実行

PCが望む仕方で動く。この幕では悪役の能動性を強く保証する。場面の面白さは「できるか」よりも「どんな仕方でするか」にある。

#3幕: 連結

実行の結果が、資源、証人、汚染、招待のうち一つへ繋がる。ここで次のシナリオフックが生まれる。

#4幕: 集団会議

互いに異なる魔人たちが、結果をどう分けるかを定める。この場面がなければ、悪行は個人の断片へ散る。

#5幕: より大きな門

大きな目的に一歩近づいたことを見せる。新しい結界が開く。英雄連合が結成される。死者が名を口にする。市場が覆る。


#退屈を防ぐ四つの圧力

圧力機能
時間儀式、追跡、季節、霊界の亀裂が待ってくれない。
競争別の悪役も同じ資源を望む。
内部の亀裂同じ目的を別の仕方で解釈する。
世界の反作用英雄、神社、怨霊、民衆、市場、霊脈が反応する。

この圧力は悪役を止めるための壁ではない。悪役をより大きく行動させる風である。


#プレイヤーに与える助言

限りない悪役をやりたいなら、「何でもやる」より強い一文を持ってこい。

  • 私は何を作るために壊すのか。
  • 私の魔人はどんな悪行を特に好むのか。
  • その悪行はどんな大きな目的に寄与するのか。
  • 同じ集団の別の魔人は、なぜ私を必要とするのか。
  • 私が最後まで容認できない裏切りは何か。

無制限の悪役にも好みと目的は必要である。好みがなければ何でもする人物になり、目的がなければどこへでも行くキャンペーンになる。


#GMに与える助言

プレイヤーが望む悪行を積極的に受ける。ただし毎回、次のうち一つで返す。

  • より大きな目的の段階。
  • 新しい敵、あるいは新しい同盟。
  • 集団内部の配分の問題。
  • 世界に残った痕跡。
  • 次のセッションの選択肢。

悪役プレイヤーへの最良の支援は制動ではなく構造化である。彼が望む悪役性を、キャンペーンのエンジンとして入れよ。


限りない悪役は、限りない自由ではなく、果てしなく大きくなる目的を必要とする。