#妖魔とは何か
目次
妖魔は戦闘表の一行である前に、世界が説明できなかったものを人々が呼んだ名である。
#序文 - 水辺の名
川辺の村では、毎年同じ日に子が一人ずつ消えた。
初めは水流のせいだと言った。二年目には酒に酔った旅人が連れて行ったと言った。三年目には子どもらが互いを怖がらせるために作った話だと言った。
四年目、消えた子の母が川辺に立って一晩中名を呼んだ。夜明けになると水の上に小さな手形が浮かんだ。手形は一列に連なって川の真ん中へ向かい、そこで途切れた。
母は水流を責めなかった。旅人を探しもしなかった。彼女は村の人々に言った。
「あの川には子の名を食らうものがいる。」
その日から村の人々は毎年川辺に名札を流した。そしてもう子は消えなくなった。代わりに名札が一つずつ濡れて沈んでいった。
誰かがそれを妖魔と呼んだ。
#香 - 妖魔は世界の隙間から来る
妖魔は一つの種族ではない。鬼と怨霊、天狗と付喪神、妖狐と現代妖魔を同じ生物分類の中に入れれば、たちまち崩れる。これらは生まれた仕方も、望むものも、消える条件も異なる。
しかし共通点はある。妖魔は 境界が揺らぐとき に現れる。
- 山と村の境界。
- 生者と死者の境界。
- 物と生命の境界。
- 噂と事実の境界。
- 人間界と霊界の境界。
- 恐れと名の境界。
妖魔を扱うとき重要な問いは、「この怪物はどの種類か」よりも「どの境界が揺らいだのか」である。
#法 - 妖魔の六つの起源
| 起源 | 説明 | 代表例 |
|---|---|---|
| 霊界 | 霊界の門、心府、亀裂から押し出された存在 | 混流の破片、醜女 (しこめ)、黄泉系列 |
| 怨恨 | 死・裏切り・侮辱・未解決の名が形を得る | 怨霊、御霊、甲冑怨霊 |
| 自然 | 山・川・海・風の力が人間の言語で凝固する | 天狗、木霊、海坊主 |
| 物 | 長く使われた道具、捨てられた家、記憶を食った物 | 付喪神、目目連 |
| 変身 | 人間社会を真似たり欺いたりする妖魔性 | 妖狐、狸、化け猫 |
| 噂 | 繰り返された怪談、目撃談、媒体が体を与える | 江戸怪談型、現代妖魔 |
起源は一つだけ選ばなくてもよい。お岩型の怨霊は怨恨と噂が重なり、現代の駅の怪談型妖魔は場所と噂が重なる。二つの起源が重なれば、妖魔はより長く残る。
#運用 - 妖魔を説明する五つの問い
| 問い | 用途 |
|---|---|
| どこで最も強いか | 戦場の区域、場所ギミック、封印条件を定める。 |
| 何を食うか | 被害の様相と後続の場面を定める。 |
| どの名で呼ばれるか | 情報収集、弱点、怪談の拡散を定める。 |
| 誰と取引できるか | 交渉の可能性、仲間化の可能性を定める。 |
| 何を解消すれば消えるか | 単なる撃破ではない結末を作る。 |
妖魔が弱いときは数値だけで十分だ。妖魔が物語の中心になるときは、上の問いのうち三つ以上に答えねばならない。
#霊界の門
妖魔にとって霊界の門は、誕生地でも、帰郷地でも、兵站路でも、牢獄でもありうる。門が開いた世界では、妖魔は「侵入者」だけではない。ある妖魔は元々霊界に属し、ある妖魔は人間の怨恨が門を通じてより深い形を得、ある妖魔は門が閉じないことを望む。
したがって妖魔を配置するときは、門との関係を一つ選ぶ。
| 関係 | 説明 |
|---|---|
| 流入 | 門が開いて人間界へ越えてきた。 |
| 逆流 | 人間界の怨恨が門を通じて怪異となって戻ってきた。 |
| 定着 | 門の周辺で領域を作った。 |
| 封印 | 門が閉じれば弱まるか閉じ込められる。 |
| 迂回 | 水路、噂、夢、道具を通じて門なしに広がる。 |
#派閥対応
| 勢力 | 基本対応 |
|---|---|
| カグラ藩 | 妖魔を軍事作戦の対象と見る。討伐、封鎖、戦場統制に強い。 |
| 比叡連・寺院勢力 | 怨恨の解消、封印、退魔を重視する。妖魔と共存するというより業を断とうとする。 |
| エンリョ館 | 妖魔を理解と交渉の対象と見る。危険を低く見るのが弱点だ。 |
| 尾羽山 | 妖魔を同族、道具、取引の対象としてすべて見る。欺瞞と隠匿に長ける。 |
| 堺座・商人網 | 妖魔素材、怪談、物品を流通させる。意図せず噂を育てる。 |
| 国友座 | 霊核と妖魔性物質を技術へ変えようとする。失敗すれば新しい妖魔を作る。 |
#結びの句
妖魔は世界の外にいるのではない。世界が自らの隙間を隠せなかったとき、その隙間に名がついたのである。