#大悪鬼の墓 (大惡鬼の墓)
目次
3階層の線形ダンジョン+最深部(2~4セッション)。「トゥーム・オブ・ホラー」×混世霊妖譚。3~5段PC。死亡前提の極限ダンジョン。
- 推奨構成:PC 4~6人(3~5段)。予備キャラクターの準備を推奨。
- 難易度:極難
- 扱う規則:ダンジョン探索/罠/幻影/呪い蓄積/封印 vs 解除の選択/小康の自動回復が遮断される区域

#警告
このシナリオは意図的な殺人ダンジョンである。
- 小康の自動回復が遮断される。休息しても戦力は戻らず、芸人・浄土僧・儀式・特殊報酬のように能動的に発生する回復だけが有効である。
- 帰還不可(入口封印――出口は最深部の解決、または迂回脱出)。
- 呪い蓄積が9に達すると、PCはNPC(閻魔童子の下僕)に転換する。
- 判断 > 戦闘。正面対決はほぼ常に敗北する。
プレイヤーの同意は必須。事前ブリーフィングで「これは他のシナリオとは違う」と告げること。
#背景
1000年前、閻魔童子の封印儀式が行われた場所。4人の僧侶が四徳(四德)の戒律によって封印した。現在、その封印が解けつつあり――呪いの気配が森の外へ流れ出している。
PCはカグラ藩の依頼で原因調査に派遣される。到着した時点で――入口が封印され、背後で閉ざされる。
#香
#最初の場面の感覚
山は老いている。木の葉ひとつ落ちても音のしない森。
足元には千年の埃。歩くたび、灰色が舞い上がる。その粉は息に乗り、舌先に古い香の味を残す。
入口の石門には、四つの小さな祠。仏の目は擦り減って消えている。その上を黒霧(黑霧)が糸のように漏れ、空気に重さが宿る。
耳に触れるのは――何もないものの音。鳥はおらず、虫もおらず、風さえこの地を避けて通る。
#主要NPCの声
死にかけている子供の幻影(仁の祭壇):
「おじさん……寒いよ。お母さんが来ないの。少しだけ……少しだけそばにいてください。」
「……どうしてそんな目で見るの? 僕は本物じゃないの?」
石像の老人(礼の祭壇):
「我らに参拝せよ。千年座っていたのだ、ひとときの礼は重くあるまい。」
「忙しき者よ――忙しさとは慈悲の反対である。お前たちの世代は、急いで滅びる。」
封印守護霊(幕3、かすかな僧侶の残像):
「……帰れ。ここに来た者で、帰った者はいない。」
「もしお前の内に忠があるなら、お前の手でこの柱を守れ。もし覇があるなら――お前の欲がこの闇を目覚めさせるだろう。」
#雰囲気の転換点
幕1 → 幕2:四徳の試練を通過した直後、祭壇の蝋燭が同時に消える。闇。手にした灯籠だけが光る。GMはここで一拍置き、「ここから先、お前たちの灯はお前たちの命だ」と告げる。
幕2中盤――宴の部屋:香り。初めて、腐敗ではない良い匂い。酒、焼いた肉、百合。プレイヤーに「ようやく」と言わせること――その緩みこそ罠である。
幕3――封印の回廊への進入:埃が止む。空気が冷える。壁には四徳の僧侶四人の肖像画。彼らはPCを見つめる。封印強化を選ぶたび、肖像は少しずつかすかに笑う。
幕4――閻魔童子登場:音はない。ただ部屋の温度が一瞬で上がる。汗。舌に鉄の味。PCの武器が手の中で重くなる。閻魔童子は語らない――裁きだけを下す。
#背景音楽・色調
主調色:灰色と黒。灯籠の橙だけが唯一の暖色。閻魔童子の区域では赤い光がにじむ。
照明トーン:段階的な減光。幕が進むほど、使える光の範囲が狭くなる。
BGMイメージ:低い打楽器の単打、間隔は広い。幕4でだけ弦が入る――それも一音だけ、長く。
#構造
[入口――四徳の試練(幕1)]
↓
[1階――欲望の迷宮(幕2)]
↓
[2階――封印の回廊(幕3)]
↓
[3階――最深部閻魔童子(幕4)]
#幕1――四徳の試練(入口)
構造:4つの小さな祭壇。各祭壇は四徳(四德)のひとつを試す。
#仁――慈悲の祭壇
- 祭壇の前に、死にかけている子供(幻影)。「助けて。」
- 選択:助ける(治癒資源を消費)/無視する(効率)
- 試練:慈悲を選べば通過。効率を選べば呪い+1、子供は消え、黒い笑いが残る。
#義――義しさの祭壇
- 鍵のかかった箱+鍵。横に「貧しき者の遺言状」:「これは寺の財産。盗むな。」
- 選択:正直(鍵を返す)/貪欲(箱を開け、金貨30を得る)
- 試練:正直なら通過。貪欲を選べば呪い+2、金貨は本物(誘惑)。
#礼(禮)――礼節の祭壇
- 座っている石像の老人。口が動く:「我らに参拝せよ。」
- 選択:礼を尽くす(時間を消費)/無視する(即時通過を試みる)
- 試練:礼なら通過。無視すれば呪い+1、幻影の怒り。
#智――知恵の祭壇
- 三つの扉。それぞれの上に謎かけ。
- 選択:知恵で正しい扉を選ぶ(2d10+智+策謀 >= 15)。
- 失敗時は呪い+2、罠のある扉を通過する。
通過条件:4試練中、最低3つ通過+呪い3以下。
- すべて通過:1階入口が開く+ボーナス(呪い解除 -1)。
- 3つ通過:入口が開く(ボーナスなし)。
- 2つ以下通過:入口は開くが、呪い+2を追加。
#幕2――欲望の迷宮(1階)
構造:迷路型。10区域。罠と幻影。
#主要な罠(例)
分身の部屋:鏡がPCの分身を作り、攻撃させる。分身はPCと同じステータス。分身を撃破すると、PCは戦力 -1(反映)。罠解除:鏡の破壊(體判定 +3)。
宴の部屋:豪華な食卓と幻影の美女たち。「休んでいってください。」食物を口にすると呪い+3、能力値 -1(1セッション)。感知 >= 15で幻影を看破。
契約の部屋:黒い誓約書。「署名すれば願いをひとつ叶える――代わりに魂の一部を約束する。」署名すると即時ボーナス(能力値 +2、1セッション)but 呪い+5。拒否すれば通過。
罠連鎖:圧力板 → 棘の穴 → 毒ガス。解除/感知判定の連続。失敗が累積すると戦力を失う。
#幻影妖魔
- 幻影武士(将幻影、戦力 3、防備 13)――攻撃成功時に消える。代わりに、PCは自分が振るった分だけ力を失ったように感じる。
- 幻影妖狐(卒幻影)――会話で誘惑 → 呪い+1ずつ。
- 幻影エンク(PCの仲間を模倣)――核心の罠。「助けて」と呼ぶ。攻撃すると本物の仲間の幻影が消える → 罪悪感。
#資源管理
- 安息所1:1階中央。結界の残滓で守られている。小康は可能(戦力回復は不可。活力だけリセット)。
- 呪い蓄積:各罠/幻影との接触ごとに+1~+3。9に達するとPCは下僕化する。
#幕3――封印の回廊(2階)
構造:長い廊下型。4つの封印柱。
#4封印柱
各柱は四徳のひとつに対応する。柱が健在なほど、閻魔童子は弱くなる。
選択分岐:
- 封印強化ルート:各柱にエネルギーを供給する(呪術/退魔判定 >= 15)。成功すると柱が復旧する。4柱を復旧すると、閻魔童子の戦力は最小値に固定される。
- 封印解除ルート:柱を破壊する。各柱ごとに即時報酬(金貨/情報)。ただし閻魔童子は強化される。
GM助言:プレイヤーの三道六心の傾向に応じて誘導する。覇は解除への誘惑、忠は強化への誘導。
#中間戦闘
封印守護霊(将、戦力 4、防備 14、非実体 50%)
- 柱を強化するとき、幻影攻撃を行う。
- 試練:PCが本当に封印を守ろうとしているか。
#安息所2
- 2階の終端。僧侶の遺骸が安置された場所。祈りで呪い -1(1回/セッション)。
#幕4――最深部閻魔童子
#閻魔童子のステータス(不完全覚醒、封印1段階解除状態)
閻魔童子――最終主級敵(不完全覚醒)
戦力 12、防備 19、活力 16
勇+5、體+4、智+3、美+3(恐怖の美)、運+3
不完全覚醒状態(封印1段階解除)。完全覚醒(戦力 18)はキャンペーン最終主級として適用する。
技法:
| 技法 | 種別 | 活力 | 判定 | 効果 | 制限 |
|---|---|---|---|---|---|
| 審判の手 | 攻撃A(美) | 3 | 美対抗(2d10 + 美(3) vs 敵 2d10+勇) | 2戦力+三道六心の強制判定(失敗時、心は暗い側へ) | — |
| 地獄の火炎 | 攻撃B(智) | 4 | —(自動) | 同じ区域の全員に3戦力。結界内は免除。 | 戦闘1回 |
| 鉄壁 | 防御 | 自動 | — | 防備 19(退魔命中時、-1永続縮小) | — |
| [免許] 輪廻 | 型 | 6 | 2d10 + 美(3)+3 >= 防備 | 対象は即死(戦力無関係)。體 >= 18でなければ防御不可。主級は免除。 | 戦闘1回 |
特殊:
- 絶望の権能:区域内のPCは毎間合、呪い+1。
- 封印された者:退魔技法が命中すると、防備は永続的に-1。退魔を重ねる戦闘が有効戦術となる。
- 撃破 vs 封印復元:戦力0にすることは事実上不可能(主級設計)。実際の勝利条件は封印復元である。
#勝利条件
封印強化ルート(推奨):
- 幕3で4柱すべてを復旧した状態。
- 最深部で追加儀式(3間合のあいだ結界を維持)。
- 成功すると閻魔童子を再封印 → PCは脱出可能。
封印解除ルート(破滅):
- 幕3で柱を破壊した。
- 閻魔童子は完全覚醒寸前――PCの唯一の選択肢は脱出。
- この場合、閻魔童子の完全覚醒(戦力 18)がキャンペーン次段階で再登場する。
戦闘継続不可:
- 閻魔童子の活力16、戦力12。PCパーティの平均DPTが約3~5戦力/間合である場合、撃破には2~4間合が必要。
- しかし地獄の火炎(区域3戦力)と輪廻(即死)により、毎間合PC全滅の危険がある。
- 時間はPCの味方ではない。
#段階別進行ガイド
#幕1進行ガイド――四徳の試練
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| 入口封鎖宣言 | セッション開始5分以内 | 背後の扉が閉じる音、戻れないことを告知 | 仲間の確認、初期作戦の合意 | 四つの祭壇の灯がともる |
| 仁の試練 | 最初の祭壇 | 死にかけた子供の幻影を描写し、治癒資源の費用を提示 | 助ける/無視する選択を宣言 | 子供が消える(慈悲)または黒い笑い(効率) |
| 義・礼・智の連続 | 幕中盤 | 各祭壇の誘惑を明確に――金貨は本物のように演出 | 判定+RP宣言、呪い記録 | すべての祭壇を解決 |
| 通過判定集計 | 幕終了 | 通過数/呪い累積の計算を公開 | 資源状況を共有 | 1階の扉が鳴る |
- 成功分岐:4試練すべて通過。1階入口開放+呪い -1ボーナス。プレイヤーの自信――GMはこれを次の幕の罠に使う。
- 失敗分岐:2つ以下通過。入口は開くが呪い+2、開始時点から資源不足。GMは脱出通路の存在を少しだけ示唆してよい。
- GMコントロール:試練は戦闘ではない。判定失敗時は「もう一度やる?」ではなく、「お前の選択は記録された」で切る。時間圧ではなく重みの圧力。
#幕2進行ガイド――欲望の迷宮
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| 迷宮進入 | 1階開始 | 地図がないことを告知し、方向感覚の乱れを演出 | 探索順の合意、会心資源の確認 | 最初の罠/幻影と遭遇 |
| 幻影エンク遭遇 | 迷宮中盤 | 仲間の声で呼びかけ、攻撃へのためらいを誘う | 攻撃/会話/回避を宣言 | 核心の罪悪感場面が発生 |
| 安息所1到達 | 2/3地点 | 結界の残滓を描写し、自動回復不可を再確認 | 活力リセット、今後の進路会議 | 安息所通過後、心府に進入 |
| 迷宮脱出 | 幕終了 | 呪い累積値を個別確認 | 呪い9目前の者の危険を共有 | 2階回廊への階段を発見 |
- 成功分岐:呪い累積平均4以下+全員生存。迷宮は「耐えられるもの」として残る。次の幕で選択の余裕。
- 失敗分岐:あるPCが呪い8に到達。NPC転換が目前であることをプレイヤーに告知――予備キャラクター準備タイム。または仲間が犠牲儀式で呪い -2を可能にする(心変動を伴う)。
- GMコントロール:迷宮区域の順序はプレイヤーの選択に任せるが、核心罠3つ(分身/宴/契約)は必ず通るよう配置する。回避の試みは認めるが、代価(時間+少量の呪い)を課す。
#幕3進行ガイド――封印の回廊
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| 柱1接触 | 回廊入口 | 僧侶の肖像画の視線を描写し、強化/解除分岐を提示 | 三道六心の傾向を確認、初期決断 | 最初の柱の処理完了 |
| 封印守護霊遭遇 | 柱2~3の間 | 守護霊の試練台詞、封印への真意を確認 | 戦闘/対話/後退を宣言 | 守護霊を処理 |
| 柱4処理 | 幕後半 | 最後の柱の選択の重さを強調し、全柱の結果を要約 | 最終分岐を確定 | 4柱すべて処理完了 |
| 安息所2通過 | 幕終了 | 僧侶の遺骸の前で祈りを許可(呪い -1) | 活力/戦力を精算、最終戦略 | 最深部の扉が開く |
- 成功分岐:4柱すべて復旧。閻魔童子の戦力は最小値に固定され、幕4の勝利可能性が現実的になる。守護霊が合流して補助結界を提供してもよい。
- 失敗分岐:柱を2つ以上破壊。閻魔童子は強化状態――幕4は事実上、脱出戦。このルートはキャンペーンの長期ビルドアップになることをプレイヤーに刻み込む。
- GMコントロール:覇傾向PCへの誘惑と、忠傾向PCの負担を均等に配る。一方が一方的に決められないよう、別の軸を刺激する。守護霊の口調は命令ではなく請願とする。
#幕4進行ガイド――最深部閻魔童子
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| 最深部進入 | 幕開始 | 部屋の温度上昇を演出し、閻魔童子を沈黙のまま登場させる | フォーメーション確定、役割分担 | 先制間合を決定 |
| 最初の間合を生存 | 1~2間合 | 審判の手・地獄の火炎のうち1回を公開 | 絶望の権能による呪い+1を処理、会心消費を判断 | 最初のPC重傷または回避 |
| 儀式開始 | 中盤 | 封印復元儀式の手順(3間合維持)を告知 | 儀式担当・防御担当を分ける | 儀式1間合目成功 |
| 儀式完遂または脱出 | クライマックス | 輪廻の使用は儀式失敗の危機に配置 | 最後の会心・活力を消費 | 封印再起動または非常脱出路開放 |
- 成功分岐:3間合の儀式を完遂。閻魔童子再封印、四徳法具獲得、昇段可能。脱出場面は勝者の歩み――急がせないこと。
- 失敗分岐:儀式失敗、またはPC死亡累積。安息所の隠し脱出路が開く。名声+2、閻魔童子の完全覚醒が次キャンペーンの主軸として予告される。
- GMコントロール:輪廻はドラマの頂点でだけ1回。無作為な乱用は禁止。全滅宣言の直前、GMは必ず「脱出路がある」という選択肢を提示する――プレイヤーの撤退は敗北ではなく、物語上の決断である。
#報酬
生存+封印復元:
- 四徳法具(セッション終了時に獲得):仁の数珠、義の指輪、礼の絶学、智の経典。各[名品]級装備。
- 名声+10(大封印完遂)。
- 呪い解除(妙安の儀式)。
- 昇段は即時可能。
脱出のみ成功:
- 安息所で緊急脱出通路を発見(隠されたルート)。
- 金貨少量、名声+2。
- 閻魔童子完全覚醒 → 次シナリオの主敵。
全滅:
- PC死亡。予備キャラクターで再登場(このシナリオの仲間救出が新シナリオ)。
#GM助言
- 判断ダンジョン:戦闘より選択。各部屋で「戦うか、迂回するか、対話するか」。
- 呪い追跡:各PCごとの呪い値を明確に記録。9到達を警告。
- 四徳試練の重み:入口での選択が最深部の成功率を左右する。試練通過率が3以上なら封印復元が可能。
- PC死亡許容:このシナリオは殺人ダンジョン。予備キャラクターを3~4体準備。死亡時はドラマへ転換する。
- 脱出オプションを明確に:PCが「もうやめたい」と言ったとき、安息所の通路を垣間見せ、自発的な脱出を可能にする。
