#設計ノート
目次
Canon — fc01設計原則。 規則解釈の際、本文書の原則を最優先の判断根拠とする。個別規則が沈黙したグレーゾーンは、ここの原則で埋める。
#原則1 — 職業 × 神性の直交(Orthogonality)
神性は職業と段の構造の上に乗せられる別個の軸である。 互いを代替しない。
- 職業・段 = 「その人物が何をできるか」(人格・能力・社会的役割)。
- 神性 = 「その人物が神としてどの領域を握るか」(権限・ドメイン・祭儀的地位)。
したがって:
- 1段の民衆にも神性1(微神)の付与が可能。
- 10段の現人神に神性5(皇神)の付与が可能。
- 神性等級が職業の段を上限として押さえつけない — 逆も同様。
#なぜこう設計したのか
神は「強い人間の延長」ではない。台所神は戦いができなくても台所神であり、アマテラスは剣術を学べなくても太陽である。能力値と神格を同じ軸で混ぜると「神性が高ければ戦闘も強い」といった誤った直感が生じる。だから二つの軸を分離する。
#原則2 — 別個の必要性(Separation of Need)
ゲームで神が活躍する主たる窓口は co の現人神・祟り神の職業である。 神性はその窓口が過剰または不足するときのみ使用する。
| 状況 | 表現 |
|---|---|
| PCが神を演じる | 現人神・祟り神(職業) |
| メインNPCの神が動く主体 | 現人神・祟り神 +(必要なら)神性 |
| 脇役・象徴的な神 | 任意の職業 + 神性 |
| 民衆の老婆が実は氏神 | 民衆 + 微・小神 |
| 侍に宿った神の欠片 | 侍 + 中神(ドメイン制限) |
| 地形・風景として機能する神 | 職業省略 + 神性のみ記録 |
#なぜこう設計したのか
この補足を作った理由は「本編でカバーされない片隅」を埋めるためである。本編がよく扱う領域(主役の神の演技・PCの神格上昇)を作り直さない。同じ事柄に二つの体系があれば、必ずどこかで衝突する。
#原則3 — 全能禁止(No Omnipotence)
神性が高くなっても神は全能にならない。 ただドメインの中でより確実になるだけである。
- 神性1(微神): ドメイン0〜1個。極めて狭い権限。
- 神性5(皇神): ドメイン4〜5個。それでも5個まで。
- ドメインの外では平凡なキャラクターシートそのまま。神性ボーナスなし。
#なぜこう設計したのか
日本神話の神は「得意なこと」と「不得意なこと」が明確である。イザナギは妻を黄泉から連れ戻そうとして失敗する。スサノオは乱暴さで高天原から追放される。オオクニヌシは数多の兄弟に幾度も殺される。彼らの物語は限界ゆえに感動的である。全能の神は叙事を生まない。
D&Dのディヴァインランクやパスファインダーのミシックランクは、数値が高くなるほど「次第に何でも可能になる」方向へと流れる。本規則はその道を意図的に避ける。高い神性が与えるのは「できることの完全な成功」であって、「できることの拡張」ではない。
#参考レファレンスとの距離
| レファレンス | 参考にした点 | 離れた点 |
|---|---|---|
| D&Dディヴァインランク | 神格の等級化・ドメイン概念 | 21段階の複雑化・戦闘力スケールの大幅増加 — 採用せず |
| パスファインダーミシックランク | 短い段数(10)構成 | ミシックパス・代替判定システム — 採用せず |
| 神道・記紀神話 | ドメインの明確化・限界の叙事 | 文学的演出のみ — メカニクスは独自設計 |
#原則4 — ドメインは「名詞句一つ」(Domain as Phrase)
各ドメインは具体的な名詞句一つで記す。
- 良い: 「太陽」「嵐」「穀物」「海洋」「戦争・弓術」
- 悪い: 「自然」「生」「善」「勝つ力」
#なぜこう設計したのか
抽象的なドメイン(「愛」)は、どんな判定にも差し込みやすい。具体的なドメイン(「恋人の書簡の伝達」)は使える場面が明確になり、それゆえGMもプレイヤーもいつ乗せるかを即座に判断できる。狭いほど強く、狭いほど公正である。
#原則5 — 神社と祭礼が再臨の軸(Shrine as Reset)
神性の権能は消耗すると神社での祭礼で回復する。 戦闘の真っ只中で無限に発動する権限ではない。
- 微・小神: 日単位の回復(毎日の小さな奉納)。
- 中神: 週・月単位。
- 大神: 季節単位の大祭。
- 皇神: 年単位の本祭。
#なぜこう設計したのか
神道の神は祀られている間だけ力を発揮する。神社が崩れ人々が忘れれば神性は下がる。逆に祭礼が盛大なら同じ神も瞬間的により強くなる。このリズムをゲーム時間に合わせて単純化したものが消耗・再臨のメカニクスである。
またこのリズムがキャンペーンフックとなる。敵対勢力が神社を破壊すれば神は弱まる。廃墟と化した神社を復元すれば忘れられた神が戻る。神社 = 政治が自然に敷かれる。
#原則6 — データとシナリオの分離
単一のスタットブロックで回せない存在はこの補足に入れない。 この原則の結果:
- 日本神話の主要な神々 — 入れる。一つのデータカードに要約される。
- 外部の神(ゼウス・オーディン・クトゥルフ等) — 入れる。ただし、狭いエントリで。
- 神話級の妖魔(ヨルムンガンド・ヤマタノオロチ等) — 入れない。これらは「スタットブロック + シナリオ設計 + 環境規則」が一塊でなければ扱えない存在である。将来、別個の
fcNNシナリオフォーカスで扱う。
#この補足が作動する領域の外
- メカニクスで本編を直す必要があるとき →
coの修正提案として上げる。 - 大規模なキャンペーンアークを組むとき → 新たな
exNを開く。 - 代替職業・代替流派が必要なとき →
ex2に乗せる。 - 神話級の妖魔のレイドセッションを組むとき → 別個の
fcNNシナリオパック企画。
#ひと文の整理
「神は自らの領域の中でのみ神である」 — この原則一つが本補足のすべての規則を圧縮する。