#用語・度量衡辞典
目次
本辞典は本巻の傍らに置く小さな参考書。精密な換算ではなく、おおよその感覚を伝えることを目的とする。ゲームルールの数値は
coを参照のこと。
#香 — 古の時代の言葉たち
ひとつの時代を理解するには、その時代の言葉を理解しなければならない。
侍が「一刻後にお目にかかります」と言うとき、現代の私たちはどれほど後のことかわからない。商人が「米を一石差し上げましょう」と言うとき、その一石がどれほどの量かぴんとこない。
この節は、そんな感覚のずれを埋める小さな橋である。覚える必要はない。読む際に傍らに置いておき、必要な箇所でひと通り目を通せばよい。
#時間
日本の戦国時代は不定時法(ふていじほう)を用いていた — 昼と夜の時間の長さを季節に合わせて異なる尺度で測った。夏の昼が長ければ昼の「刻」も長い。冬の夜が長ければ夜の「刻」も長い。現代の均一な時計とは異なる感覚。
| 単位 | 漢字 | おおよその長さ | 説明 |
|---|---|---|---|
| 刻・とき | 刻·時 | 約2時間 | 一日を12刻に分ける。12支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)で名付ける。子の刻は真夜中。 |
| 半刻(はんとき) | 半刻 | 約1時間 | 刻の半分。実際の会話でよく使われる。 |
| 一刻半(いっこくはん) | 一刻半 | 約3時間 | 「次の約束は一刻半後に」のような言い回し。 |
| 旬時(じゅんとき) | 旬時 | 約4時間 | 二刻。あまり使われない。 |
| 一日(いちにち) | 一日·日 | 24時間 | 12刻。 |
| 一夜(ひとよ) | 一夜 | 夜全体 | 日没後から夜明けまで。 |
本書の慣用表記:「夜明け一刻前」=明け方4〜5時頃(季節により変動)。
ゲーム内の時間用語(本編 co 継承):
- 間合(まあい) — 戦闘の一ラウンド(round)の概念。本来の日本語「間合」は相手との距離感。
- 呼吸(こきゅう) — 間合の中の短い瞬間。
- 小康(しょうこう) — 戦闘と戦闘の間のわずかな休息。
#距離・長さ(長さ・距離)
| 単位 | 漢字 | おおよそ | 説明 |
|---|---|---|---|
| 寸(すん) | 寸 | 約3cm | 指一節ほど。刃の長さの基準にも使われる。 |
| 尺(しゃく) | 尺 | 約30cm | 10寸。 |
| 間(けん) | 間 | 約1.8m | 6尺。建物・部屋の大きさの基準。 |
| 段(たん) | 段 | 約11m | 6間。 |
| 町(ちょう) | 町 | 約109m | 60間。市場・村の区画。 |
| 里(り) | 里 | 約4km | 36町。「二里は二時間の距離」のような言い回し(歩く速度基準)。 |
長さの感覚:
- 刀の刃の長さ:おおむね2〜2.5尺(60〜75cm)。
- 長柄槍(ながえやり・長柄槍)の長さ:3〜5間(5〜9m)。信長の部隊はとりわけ長かった。
- 京都の通り一ブロック:約1町(109m)。
#重さ・容積(重さ・量)
#重さ
| 単位 | 漢字 | おおよそ | 説明 |
|---|---|---|---|
| 匁(もんめ) | 匁 | 約3.75g | 最も基本的な単位。銀(ぎん)の取引で重要。 |
| 斤(きん) | 斤 | 約600g | 160匁。肉・茶の単位。 |
| 貫(かん) | 貫 | 約3.75kg | 1000匁。貨幣の貫と混同しないよう注意。 |
#容積(米基準)
| 単位 | 漢字 | おおよそ | 説明 |
|---|---|---|---|
| 合(ごう) | 合 | 約180ml | 米一膳分。 |
| 升(しょう) | 升 | 約1.8L | 10合。小さな酒樽。 |
| 斗(と) | 斗 | 約18L | 10升。 |
| 石(こく) | 石 | 約180L / 150kg | 10斗。成人一人の一年分の米消費量。 |
「石高(こくだか)」とは:領地の規模を、その領地が一年間に産出する米の量に換算した数値。「十万石の大名」=その領地から10万人の成人が一年間食べられる米が産出されるという意味。
- 侍の家の最低禄高:50〜100石(下級)
- 大名家の規模:数千石〜数百万石
- 戦国最大の大名(豊臣家):200万石以上
#貨幣
戦国時代の貨幣は金・銀・銅の三軸が混用。地域・時期により換算率が異なる。
| 単位 | 漢字 | 種類 | おおよそ |
|---|---|---|---|
| 両(りょう) | 両 | 金貨 | 1両 ≈ 米1石(戦国時代基準;時期により変動大) |
| 分(ぶ) | 分 | 金 | 1/4両 |
| 朱(しゅ) | 朱 | 金 | 1/4分(=1/16両) |
| 匁(もんめ) | 匁 | 銀 | 銀の重量単位=貨幣単位 |
| 貫(かん) | 貫 | 銀 | 1000匁。銀3.75kgの塊。 |
| 文(もん) | 文 | 銅銭 | 最も小さい貨幣。穴の空いた銅銭。 |
| 貫文(かんもん) | 貫文 | 銅銭の連 | 1000文を紐に通したもの。実用単位。 |
感覚のための参考(戦国時代平均):
- 米一升(約1.4kg):30〜50文
- 一食の汁飯:10〜20文
- 下級侍の月俸(米を除く小遣い):数貫文(数千文)
- 銭袋(ぜにぶくろ)一つ:一〜二貫文(約千〜二千文)
- 名品の刀一振り:数百両(数億文)
#身分・職位
#公的地位
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 天皇(てんのう) | 天皇 | 天皇。この時代は実権はほぼなく権威のみ残る。 |
| 将軍(しょうぐん) | 将軍 | 幕府の長。室町幕府は実権喪失。 |
| 関白(かんぱく) | 関白 | 摂政。秀吉が自らこの地位に就いた。 |
| 大名(だいみょう) | 大名 | 地方の領主。自らの領土・軍隊を持つ。 |
| 守護(しゅご) | 守護 | 旧来の地方官。戦国時代に大名へと変身。 |
| 守護代(しゅごだい) | 守護代 | 守護の代理人。下剋上で自らが守護の座を奪うこともあった。 |
#武士階級
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 武士(ぶし) | 武士 | 武士一般。 |
| 侍(さむらい) | 侍 | 主君に仕える武士。「侍る(はべる)」に由来。 |
| 旗本(はたもと) | 旗本 | 将軍・大名直属の侍(自らの旗の下で戦う)。 |
| 御家人(ごけにん) | 御家人 | 家臣。旗本より格が低い。 |
| 浪人(ろうにん) | 浪人 | 主君を失った侍。「波のように漂う人」。 |
| 足軽(あしがる) | 足軽 | 軽歩兵。ほとんどが農民出身。 |
| 野武士(のぶし) | 野武士 | 野の武士。盗賊との境界にある流れ者の武士。 |
#民間の身分
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 百姓(ひゃくしょう) | 百姓 | 農民。直訳「百の姓」。 |
| 職人(しょくにん) | 職人 | 職人・匠。 |
| 商人(しょうにん) | 商人 | 商人。 |
| 豪商(ごうしょう) | 豪商 | 大商人。堺・博多・京都が中心。 |
| 非人(ひにん) | 非人 | 「人にあらざる者」。差別される流れ者・賤民。(公式化は江戸時代) |
| 穢多(えた) | 穢多 | 「穢れ多き者」。遺体・皮革関連の職業。(公式な階級化は江戸時代) |
#宗教・聖職
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 僧(そう) | 僧 | 僧侶。 |
| 比丘(びく) | 比丘 | 正式な僧侶(男性)。 |
| 比丘尼(びくに) | 比丘尼 | 正式な僧侶(女性)。 |
| 神主(かんぬし) | 神主 | 神社の神官。 |
| 巫女(みこ) | 巫女 | 巫女。 |
| 陰陽師(おんみょうじ) | 陰陽師 | 陰陽師。 |
| 山伏(やまぶし) | 山伏 | 山岳修行者。修験道(しゅげんどう)の行者。 |
| 修験者(しゅげんじゃ) | 修験者 | 山伏と同じ意味。 |
#日用品
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 畳(たたみ) | 畳 | 藁の敷物。部屋の大きさの単位にも使う(一枚 ≈ 0.9 × 1.8m)。 |
| 襖(ふすま) | 襖 | 木枠に紙を張った引き戸。部屋と部屋の間。 |
| 障子(しょうじ) | 障子 | 薄い紙を張った窓・引き戸。光を通す。 |
| 囲炉裏(いろり) | 囲炉裏 | 床の真ん中に掘った炉。冬の中心。 |
| 神棚(かみだな) | 神棚 | 家の中の神壇。高い棚。 |
| 仏壇(ぶつだん) | 仏壇 | 家の中の仏壇。先祖の位牌。 |
| 鳥居(とりい) | 鳥居 | 神社入口の門。赤色が多い。 |
| 注連縄(しめなわ) | 注連縄 | 神聖な区域を示す縄。 |
| お札(おふだ) | お札 | 護符・お守り。紙に呪文・神の名。 |
#武具
#刀
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 刀(かたな) | 刀 | 長い刀一般。 |
| 太刀(たち) | 太刀 | 腰に刃を下にして帯びる長い刀。騎馬武者用。 |
| 打刀(うちがたな) | 打刀 | 腰に刃を上にして帯びる刀。歩兵・陸上戦闘用。 |
| 脇差(わきざし) | 脇差 | 補助の短刀。大小といって刀と一対。 |
| 短刀(たんとう) | 短刀 | 短刀。 |
#長物
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 槍(やり) | 槍 | 槍一般。 |
| 長柄槍(ながえやり) | 長柄槍 | 長い槍(3〜6m)。足軽の主力。 |
| 薙刀(なぎなた) | 薙刀 | 長い柄の先に湾曲した刀。女性武者・僧兵に愛用。 |
| 弓(ゆみ) | 弓 | 弓。長いものは大弓(だいきゅう)、騎馬用は半弓(はんきゅう)。 |
#火器
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 鉄砲(てっぽう) | 鉄砲 | 火縄銃。1543年に種子島へ伝来。 |
| 駕籠筒(かごつつ) | 駕籠筒 | 大砲一般。まだ少数。 |
#甲冑
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 鎧(よろい) | 鎧 | 甲冑一般。 |
| 大鎧(おおよろい) | 大鎧 | 大型甲冑。上級侍・騎馬武者用。 |
| 胴丸(どうまる) | 胴丸 | 胴体だけを包む軽い甲冑。歩兵用。 |
| 当世具足(とうせいぐそく) | 当世具足 | 戦国時代の実戦型甲冑。胴丸を継承・強化した形。 |
| 兜(かぶと) | 兜 | 兜。 |
| 陣笠(じんがさ) | 陣笠 | 鉄の笠。足軽用。兜より安価。 |
| 母衣(ほろ) | 母衣 | 騎馬武者の背後の外套。矢除け・標識。 |
#領地・政治
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 国(くに) | 国 | 領地の単位。全国に約60国。「武蔵国」のような表記。 |
| 国司(こくし) | 国司 | 昔の朝廷が派遣した地方官。この時代は形式的。 |
| 郡(ぐん) | 郡 | 国の下の行政単位。 |
| 庄(しょう) | 庄 | 荘園。一部の貴族・寺社の所有地。 |
| 城(しろ) | 城 | 城。 |
| 館(やかた) | 館 | 侍の屋敷。 |
| 城下町(じょうかまち) | 城下町 | 城下に発達した都市。武士・商人が居住。 |
| 石高(こくだか) | 石高 | 領地の規模を米に換算した数値(上記の容積参照)。 |
| 家老(かろう) | 家老 | 大名家の筆頭家臣。 |
| 奉行(ぶぎょう) | 奉行 | 特定の職務担当官(司法・財政・築城など)。 |
#社会・制度
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 下剋上(げこくじょう) | 下剋上 | 下が上を打ち破ること。戦国時代の核心的な風潮。 |
| 戦(いくさ) | 戦 | 戦争。 |
| 合戦(かっせん) | 合戦 | 大きな戦闘。 |
| 攻め(せめ) | 攻め | 攻城・攻撃。 |
| 篭城(ろうじょう) | 篭城 | 籠城。城に立てこもって防衛。 |
| 切腹(せっぷく) | 切腹 | 割腹。腹を切る自決。名誉ある死。 |
| 殉死(じゅんし) | 殉死 | 主君に殉じて死ぬこと。江戸時代に制度化。戦国時代には稀。 |
| 辞世(じせい) | 辞世 | 死を前にして遺す詩。「辞世の句(じせいのく)」。 |
| 戦神(いくさがみ) | 戦神 | 戦いの神。八幡(はちまん)が代表。 |
| 一揆(いっき) | 一揆 | 決起・蜂起。「一向一揆」=一向宗の蜂起、「国一揆」=国単位の蜂起。 |
| 人取り(ひとどり) | 人取り | 戦時における民間人の拉致・人身売買。戦国時代の略奪の一部。 |
| 神隠し(かみかくし) | 神隠し | 人が突然消える現象。神・妖魔に連れ去られたと考えられた。 |
#妖魔・霊的(妖魔・靈的)
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 妖魔(ようま) | 妖魔 | 怪異な存在一般。本書の中心語。 |
| 妖怪(ようかい) | 妖怪 | 妖魔の日常的な日本語表現。 |
| 鬼(おに) | 鬼 | 大柄な妖魔。角・牙。 |
| 天狗(てんぐ) | 天狗 | 山の妖魔。人間+鳥。 |
| 河童(かっぱ) | 河童 | 川の妖魔。頭の皿。 |
| 幽霊(ゆうれい) | 幽霊 | 幽霊一般。 |
| 怨霊(おんりょう) | 怨霊 | 怨霊。恨みを抱いて死んだ者の霊。 |
| 生霊(いきりょう) | 生霊 | 生霊。生きている者の執着が形を成したもの。 |
| 餓鬼(がき) | 餓鬼 | 餓鬼。餓死した者の霊。 |
| 祟り神(たたりがみ) | 祟り神 | 正しく祀られず、恨みを抱く存在へと変わった神。 |
| 付喪神(つくもがみ) | 付喪神 | 100年経った道具に霊が宿ったもの。 |
| 式神(しきがみ) | 式神 | 陰陽師が札で使役する小さな霊。 |
| 妖(あやかし) | 妖 | 妖魔の詩的表現。「あやかし」。 |
| 百鬼夜行(ひゃっきやこう) | 百鬼夜行 | 百の妖魔の夜の行列。妖魔が群れをなして通りを過ぎる現象。 |
| 神隠し(かみかくし) | 神隠し | (上記の社会の項を参照) |
#宗派・寺院
| 用語 | 漢字 | 説明 |
|---|---|---|
| 神道(しんとう) | 神道 | 日本固有の信仰。 |
| 仏教(ぶっきょう) | 仏教 | 仏教。 |
| 陰陽道(おんみょうどう) | 陰陽道 | 道教・陰陽五行が混合した日本独自の体系。 |
| 修験道(しゅげんどう) | 修験道 | 山岳修行の宗教。山伏の道。 |
| 浄土宗(じょうどしゅう) | 浄土宗 | 浄土宗。阿弥陀仏の念仏。 |
| 浄土真宗(じょうどしんしゅう) | 浄土真宗 | 浄土真宗。一向一揆の基盤。 |
| 禅宗(ぜんしゅう) | 禅宗 | 禅宗。臨済宗・曹洞宗。武士階級が好んだ。 |
| 真言宗(しんごんしゅう) | 真言宗 | 真言宗。密教。高野山。 |
| 天台宗(てんだいしゅう) | 天台宗 | 天台宗。密教。比叡山。 |
| 神社(じんじゃ) | 神社 | 神社。 |
| 大社(たいしゃ) | 大社 | 大社(例:出雲大社)。 |
| 神宮(じんぐう) | 神宮 | 最高格の神社(例:伊勢神宮)。 |
| 寺(てら) | 寺 | 寺院。 |
| 寺(じ) | 寺 | 「てら」の漢字音。「延暦寺(えんりゃくじ)」のように接尾語として。 |
#地域・地名の感覚(地域)
| 用語 | 漢字 | おおよその現在地域 |
|---|---|---|
| 京都(きょうと) | 京都 | 京都。旧都。 |
| 堺(さかい) | 堺 | 大阪湾の自治商業都市。 |
| 博多(はかた) | 博多 | 福岡。九州最大の貿易港。 |
| 江戸(えど) | 江戸 | 後の東京。この時代は小さな漁村。 |
| 安土(あづち) | 安土 | 信長が築いた居城。 |
| 伊勢(いせ) | 伊勢 | 天照大神の神宮がある地。 |
| 出雲(いずも) | 出雲 | 大国主の本社がある地。島根県。 |
| 比叡山(ひえいざん) | 比叡山 | 京都東部の霊山。延暦寺の本山。 |
| 高野山(こうやさん) | 高野山 | 紀伊半島の霊山。真言宗の本山。 |
| 熊野(くまの) | 熊野 | 紀伊半島南部。修行の聖地。 |
| 畿内(きない) | 畿内 | 京都周辺5国。日本の中心。 |
#香 — ひと言
言葉は時代の衣である。衣を知ってこそ、人も見える。
