日本語版 v1.3.3 · fc-guide
#堕落、停止、帰還
目次
堕落はGMが貼るレッテルではない。プレイヤーと場面が共に積み上げた方向だ。
#導入断片 — 渡らなかった橋
村へ戻る橋はまだ残っていた。炎は届いておらず、川も浅かった。
「今渡れば、終わらせられます」と英雄NPCが言った。「武器を置き、名前を返してください」
魔人PCは橋の向こうを見た。そこには昔の仲間と、かつて守ると誓った神社があった。橋のこちら側には、従者たちと、彼が新たに得た名前があった。
プレイヤーは長いあいだ口を開かなかった。
GMは判定を求めなかった。「渡れます。ただし渡れば、こちらで得たものの一部は失います」
プレイヤーは首を振った。「渡りません」
橋は燃えなかった。崩れもしなかった。ただ、彼が二度と振り返らなかっただけだ。
#堕落を扱う三つの原則
| 原則 | 運用 |
|---|---|
| 宣告しない | 「お前は堕落した」より「この選択はどの方向に見えるか」を問う。 |
| 証拠を積む | 繰り返された言葉、捨てた名前、恐れる仲間、変わった小道具を残す。 |
| 止まれるようにする | 戻れないほどに追い込む前に、停止の場面を与える。 |
堕落はプレイヤーのキャラクター権限を奪う道具ではない。キャラクターがどこまで行けるかを見る仕掛けだ。
#堕落の経路の作り方
魔人PCや主要な魔人NPCを作るとき、次の四行で十分だ。
傷: 何を失ったか。
言い訳: 最初の禁忌をどんな言葉で越えたか。
反復: その選択がどう容易になったか。
名前: いま彼は自分を何と呼ぶか。
例:
傷: 戦争で守った村が、翌月、別の領主に虐殺された。
言い訳: 「早く終わらせるには、より大きな恐怖が要る」
反復: 降伏した敵も見せしめに処刑し始めた。
名前: 修羅道の将、戦争を終わらせる戦争。
#停止の場面の構造
停止の場面は説教ではなく選択肢だ。
よい停止の場面は三つの要素を持つ。
| 要素 | 例 |
|---|---|
| 古い名前 | 家族、師、主君、仲間、神社、最初の武器。 |
| 現在の利益 | 力、従者、勝利、復讐、金貨、知識。 |
| 失うもの | 戻る場所、信じてくれる人、自分の言葉の意味。 |
停止の場面は必ずしも救済につながらなくてよい。拒まれれば、その拒絶が次の段階の証拠になる。
#帰還の五つの形
| 形 | 説明 |
|---|---|
| 悔悛 | 自分の選択を認め、被害者と世界の前に残る。 |
| 贖罪任務 | 完全な赦しはないが、最後に正すべきことを引き受ける。 |
| 封印 | 力を保てば危険なので、自ら縛られるか監視される。 |
| 追放 | 生き延びるが、共同体の中へは戻れない。 |
| 死 | 死が逃避ではなく最後の責任になるときだけ用いる。 |
帰還は報酬の場面ではない。帰還した人物も痕跡を抱えて生きねばならない。
#没落の五つの形
| 形 | 説明 |
|---|---|
| 王座 | 悪役が勝って勢力を立てるが、その王座が牢獄になる。 |
| 怪物化 | 人間の名前を失い、NPC脅威へと移る。 |
| 孤立 | 皆が去り、力だけが残る。 |
| 反復 | 勝ったつもりが、同じ暴力が次の世代に繰り返される。 |
| 鏡の敗北 | 英雄が悪役のやり方を使わずに勝つ。 |
没落は必ずしも処罰である必要はない。ときに最も強い没落は、望むものを得た後にも何も満たされない場面だ。
#プレイヤーに問う質問
セッション中、またはセッション後に短く問う。
- 今日、君のキャラクターは何を説明しなくなったか。
- 誰が君のキャラクターをより恐れるようになったか。
- 君のキャラクターがまだ捨てていない名前は何か。
- 次に同じ選択肢が来たら、より容易になるか。
- 止まれるとしたら、何を失わねばならないか。
質問は判定ではない。次の場面を作る材料だ。
#GM原則
帰還を容易にしすぎない。しかし、初めから不可能にもしない。
悪役プレイで重要なのは裁きではなく方向だ。下りているなら、どの段なのかを見せ、引き返すなら、何を置いて引き返すのかを見せる。
戻る道は消えない — ただ、持って行けない名前たちが道の途中に積もっていくだけだ。
