#鬼・天狗・妖狐系統
目次
鬼は暴力、天狗は境界、妖狐は名の裏の顔である。三つを理解すれば戦国妖魔の大きな軸が立つ。
#導入断片 — 山の下の杯
山の下の酒場には三人の客が座っていた。
一人目は酒甕を持って飲んだ。彼は杯を使わなかった。二人目は酒を口につけず香だけを嗅いだ。三人目は杯に映った自分の顔を別人の顔に変えながら笑った。
主人が問うた。
「どの山からお越しですか。」
一人目が言った。「城が焼けた場所。」
二人目が言った。「人が越えてはならぬと言われた場所。」
三人目が言った。「お前が今日聞いた噂が指した場所。」
主人は酒代を受け取らなかった。代わりに三杯をさらに置いた。翌日、酒場には客がおらず、空の杯三つだけが山の方を向いて置かれていた。
#香 — 三つの恐れ
鬼は人間の暴力が体を得たように見える。天狗は人間が入ってはならない境界を知らせる。妖狐は人間が信じた顔がいかに容易く変わるかを見せる。
三系統は co の数ある妖魔のなかでも、大悪党、組織、仲間、PC変換のすべてに使いやすい。だからこそ強く扱うほど欲望と禁忌を明確にしなければならない。
#法 — 系統別変形
| 系統 | 基本欲望 | 門 | 派閥接点 |
|---|---|---|---|
| 鬼 | 食う、支配する、戦いを継続する | 戦場・鬼門・城門 | カグラ藩討伐、酒天山同盟・敵対 |
| 天狗 | 守る、試す、罰する | 山門・峠・風の道 | 修験者協定、比叡連葛藤 |
| 妖狐 | 欺く、名を得る、人間を真似る | 仮面・市場・宮廷・遊郭 | 尾羽山、堺座、エンリョ館 |
#運用 — 三つを共に使う法
三系統を一つの事件にすべて入れるときは役割を分ける。鬼が力、天狗が境界、妖狐が情報になれば互いに重ならない。
| 役割 | 推奨 |
|---|---|
| 鬼 | 戦闘クライマックス、城門、山寨、戦場。 |
| 天狗 | 道筋、試練、警告、迂回路。 |
| 妖狐 | 依頼人、情報屋、裏切り者、偽りの目撃者。 |
三つすべてを敵に置くと事件が散漫になる。一つは敵、一つは中立、一つは取引相手に置けば百鬼の政治が生きる。
#変形データ — 鬼将軍
co の鬼または大鬼に付ける強化背景である。
[鬼将軍]
条件: 廃城、戦場、山寨、鬼部隊がいる場面。
効果: 同じ区域または隣接区域の鬼・小鬼の卒/練分隊の結束力 +1。
代価: 小康段階ごとに人間の死体や酒の供物がなければ鬼将軍の次の判定 -1。
解消: 最後に従う軍令を明らかにして破れば、この効果を失う。
#代表ステータス: 赤い城門の鬼
#香
まず目に入るのは鬼ではなく門だ。砕けた城門の片扉が内側へ傾いたまま閉じきれず、その門枠には手のひらの跡のような黒赤い染みが乾いて残っている。鬼はその門の陰からゆっくりと立ち上がる。人の背丈の倍はある体に、皮は鞣した革のように厚く荒く、片手には金色の棘を打った棍棒を重さもなく提げている。初めて相対した者は、彼が道を塞いだのか、道そのものになったのか、しばし戸惑う。
音が先に来る。棍棒の先が石畳を擦る鈍い摩擦音、そして胸の深みから煮えたぎる咆哮——それは威嚇というより陥落の合図に近い。咆哮が狭路に跳ね返って戻ると、傍らの小鬼たちは肩を張り、隊列を立て直す。匂いは乾いた血と酒、そして長く閉ざされていた城内の黴のようなもの。斬り伏せても、彼が立つ敷居が無事であるかぎり、彼はもう一度立ち上がるという印象を与える。この存在を終わらせるには、刀より先にその門を閉じねばならない。
赤い城門の鬼 (赤門鬼) — 将
戦力5, 防備15, 活力10
勇+3, 技+0, 體+3, 美+1
制圧力 +4
| 技法 | 類型 | 活力 | 判定 | 効果 | 限界 |
|---|---|---|---|---|---|
| 城門禁封 | [攻撃] | 3 | 2d10+勇 >= 防備 | 1戦力。城門・狭路なら対象の制圧力 -1 | - |
| 血塗れの咆哮 | [型] | 3 | 2d10+美 vs 対象 2d10+勇 | 失敗した敵分隊の結束力 -2 | 間合1回 |
| 赤い皮 | [技法] | 予約2/即興3 | 2d10+體 >= 敵攻撃 | 被撃無効。成功時、次の城門禁封 +1 | - |
特殊: 閉じない門 — 城門区域で戦力0になると戦闘1回かぎり戦力1で再起する。城門に残った軍令を解消すれば発動しない。
#変形データ — 山門天狗
[山門天狗]
条件: 山道、神社裏の山、修行場、峠。
効果: 最初の間合のあいだ飛行移動コスト -1活力。同じ区域の敵の遠距離攻撃 -1。
禁忌: 許しなく山門の内側の名を呼べば天狗の次の判定 +1。
解消: 山の禁忌を認めて祭礼を回復すれば、戦闘なしで通過可能。
#変形データ — 尾羽山妖狐
[尾羽山妖狐]
条件: 妖狐・妖狐密偵・九尾狐系統。
効果: 初登場前に偽装の正体を一つ持つ。感知の目標値13に失敗すれば発覚しない。
代価: 自分の本当の名を知る対象には、すべての欺き判定 -2。
解消: 名、尾、影のうち二つを同時に現せば偽装が破れる。
#上位原型と下位部隊
鬼・天狗・妖狐系統は下位分隊と主級の名を共に使ってこそ力が出る。主級は直接毎回登場させず、下位部隊の規則と噂で先に見せる。
#酒天山軍令
酒呑童子、大鬼、小鬼戦士 系統に付ける組織型変形である。
[酒天山軍令]
条件: 鬼系統2体以上、または鬼系統分隊が同じ戦場にいるとき。
効果: 戦闘開始時に鬼系統一体を指揮者と定める。指揮者が戦闘不能になるまで、小鬼戦士と鬼分隊の最初の攻撃判定 +1。
代価: 指揮者が酒、戦利品、捕虜のいずれかを約束しなければ、次の小康段階に味方の結束力 -1。
解消: 軍令の原文を奪うか酒甕を割れば、この変形を失う。
酒呑童子はこの軍令の体である。直接戦う前から、鬼たちが同じ酒甕を分かち、同じ歌を歌い、同じ禁忌を破らないという形で現す。
#堕ちた山門
天狗使い、小天狗斥候、山門天狗系統に付ける堕落・偵察変形である。
[堕ちた山門]
条件: 天狗系統が人間の軍勢や妖魔組織に編入されたとき。
効果: 最初の間合のあいだ、高所、屋根、崖、木の上から始めた天狗系統の感知と回避判定 +1。
代価: 山の禁忌を問う交渉に失敗すれば1呼吸のあいだ飛行移動不可。
解消: 本来の山門の名を見つけて返せば、天狗使いは戦闘を中断して退くことができる。
小天狗斥候はこの変形を最も軽く使う。直接被害を大きくするより、烽火、足跡、風の音で敵を先に発見させる。
#玉藻の影
九尾狐、玉藻前、妖狐密偵 系統に付ける政治型変形である。
[玉藻の影]
条件: 妖狐系統が権力者、使節、芸人、商人に偽装したとき。
効果: 場面開始時に偽りの身分を一つ宣言する。その身分を信じるNPCに最初の交渉または欺き判定 +2。
代価: 鏡、香、尾、本当の名のいずれかが現れるたびに制圧力 -1。
解消: 偽りの身分で得た命令書や誓約文を公開すれば偽装効果が終わる。
玉藻前は一つの戦闘の強敵というより、一つの勢力の判断を誤らせる名である。主級として扱うときは被害量より「誰がすでに彼女を信じているか」を先に定める。
#霊界の門
- 鬼にとって門は宴と兵站路だ。門が開けば食う物と戦う物が来る。
- 天狗にとって門は境界線だ。門が霞めば人間が越え、山が怒る。
- 妖狐にとって門は舞台だ。門を通って入るより、門が開いた世界の混乱を仮面とする。
#派閥対応
| 勢力 | 鬼 | 天狗 | 妖狐 |
|---|---|---|---|
| カグラ藩 | 討伐対象。鬼将軍は戦略目標だ。 | 山道統制のために衝突する。 | 諜報・偽装の脅威と見る。 |
| 比叡連 | 悪鬼として封印する。 | 山岳修行の競争者と見る。 | 邪教と魅惑として警戒する。 |
| エンリョ館 | 鬼社会も記録しようとする。 | 山の規則を聞く。 | 交渉の可能性が高いと見る。 |
| 尾羽山 | 危険な酒の友、または道具。 | 境界協定が可能。 | 核心の同族ネットワーク。 |
| 堺座 | 鬼の素材を欲しがる。 | 山の産物の流通で衝突。 | 取引相手であり危険な顧客。 |
#締めの言葉
鬼は門を壊し、天狗は門を守り、妖狐は門があったという事実を隠す。

