#龍宮の沈黙
目次
海戦シナリオ(2~3セッション)。2~4段PC。水上/水中区域規則を学習。3種類の結末ルート(討伐/交渉/密取引暴露)。
- 推奨構成:PC 3~5人(2~4段)
- 難易度:普通
- 扱う規則:水上戦闘/水中区域/海上妖魔/交渉可能な妖魔/密取引システム
#背景
堺港の南方海上。最近、商船の失踪が相次いでいる。堺座の金右衛門が依頼。原因調査および解決。
真の原因(GM用):
- 龍宮(海底神殿)の封印が弱まっている。龍宮使者側の「警告」としての襲撃。
- 堺座の一部商人が密取引(妖魔素材の密輸)で龍宮の怒りを招いた。
- 河童が仲介役を試みている。
#香
#最初の場面の感覚
港の夜明けは魚の生臭さで始まる。まだ昇らない太陽が、帆柱の先だけに赤くかかっている。
足場を踏むたび、古い板が息をする。掌は塩水に浸ってざらついている。縄の撚りは南蛮のやり方で組まれている――堺港の匂い。
海のほうから来る風は冷たい。耳の後ろに触れる冷気。遠くから――鐘の音ではなく、鐘の音のようなもの。誰かが船底を叩く音。
人々は口をつぐんでいる。港の商人たちは目を合わせない。不吉は言葉にならない。言葉になれば証拠になるからだ。
#主要NPCの声
金右衛門(依頼人、堺座4段商人):
「はあ……商船がまた戻りませぬ。もう六隻目です。海が船を呑むのは珍しくありませんが――今回は少し違いますな。」
「金五十両。前金二十両。戻れなければ……まあ、それも海の意志ということでしょう。」
河童カワジロウ(練、交渉可能妖魔):
「クク……人間がこの暗礁に胡瓜を持って来たなら、本気があるということだ。食う前に一度だけ聞くことにした。」
「龍宮は静かだ。静かなものは――最も危険だ。お前たちの商人が何を盗んだのか、お前たちはまだ知らない。」
龍宮使者(将、3幕ルートB):
「陸の者よ。波の法を知るか。――波は戻る。お前たちが海に投げたものを、海はお前たちに返すだろう。」
「証拠を示せ。舌の誓いは塩水に溶ける。」
#雰囲気の転換点
幕1の霧場面:船が霧の中へ入る時、GMは照明を落とすか音楽を止め、10秒の沈黙を置く。「……お前たちは今、前が見えない。」船幽霊の幻聴は、この沈黙の後に弾ける。
幕1 → 幕2の転換:船幽霊の首から龍宮印の糸(絲)が出てきた時、GMはその糸の感触を「指が切れそうなほど細い絹」と描写する。依頼の層が変わる瞬間。
幕2の暗礁場面:河童との初遭遇は、船の上ではなく「上から見下ろす」構図。PCが顔を上げると、そこにいる。交渉判定の前に、胡瓜を渡すプレイヤーがいれば、GMは河童の目つきが一拍変わる様子をRPで見せること。
幕3のルート別転換:
- ルートA進入――波が砕ける音が突然大きくなる。戦闘の前音。
- ルートB進入――波が止む。嘘のように海が鏡になる。龍宮使者の登場合図。
- ルートC進入――船の向きが港へ戻された時、風が後ろから吹く。「お前たちは帰る」の物理的感覚。
#背景音楽・色調
主調色:濃い青緑、銀色の鱗、墨色の霧。ルートBでだけ金がにじむ――龍宮の光。
照明トーン:幕1は曇った灰色、幕2は夕方の紫と柿色、幕3はルートに応じて赤(A)・白金(B)・夕焼け(C)。
BGMイメージ:波の低音が基本。船幽霊区間では、弦を裏返して弾くような細い高音。龍宮使者登場時は、ただ一つの鉦の音。
#NPC
金右衛門(堺座4段商人)――依頼人。表は商人、中身は慎重。密取引情報を保持(隠している)。
河童カワジロウ(練、交渉可能妖魔)
戦力 3、防備 13、活力 9
勇+1、技+2、體+1
制圧力 +3
- 技法:水鞭(攻撃A、2活力、射程隣接区域)、水中隠れ(構え、2活力維持)。
- 特殊:胡瓜を捧げると交渉目標値 -3。基本目標値15。
- 動機:龍宮と人間の平和維持。密取引中止の説得を望む。
プレジェネNPC――タカマル(外人2段、船長)
勇+2、技+2、體+1、智+1
活力 12、戦力 4、防備 11(南蛮防弾)
- 船の操縦。鉄砲+航海名人予定。
- 依頼進行中、PCの移動手段。
#敵構成
#船幽霊 (舟幽靈、卒、非実体)
戦力 1、防備 11(非実体50%)
活力なし(指揮時)――放浪時は活力 10
- 攻撃:「船が沈む」幻聴(精神耐性、勇>=11失敗時は無防備)。
- 特殊:非実体――退魔入門(1点)未所持者の攻撃は50%無効。[霊体]攻撃(2d10+0、§退魔免除表適用――退魔免許(3点)+は通常防備、入門は-2部分保護)。
#海坊主 (将)
戦力 4、防備 14、活力 10
勇+2、體+3
制圧力 +4
- 技法:
- 大波(攻撃A、3活力、2d10 + 體(3) vs 防備):2戦力+強制移動(船外)。
- つかみ取り(攻撃B、3活力):捕縛+水中へ引き込み。
- 水中防御(予約2/即興3):被撃 -2戦力(最低1)。
#龍宮使者 (将、交渉可能)
戦力 3、防備 15、活力 11
勇+1、技+2、美+3、智+2
制圧力 +5
- 技法:
- 龍印(攻撃A、2活力):1戦力+水柱(防御 -2、1呼吸)。
- 波の結界(防御、予約1/即興2):自動、防備 +2。
- 特殊:交渉目標値17。「密取引の証拠提示」時は-5(= 12)。従えば襲撃中止。
#幕1――出航と最初の遭遇(セッション1)
場所:堺港 → 南方海上。
イベント:
- 金右衛門が依頼を説明。金貨50+商船護衛を依頼。
- タカマルの船(マメイ号)に乗船。一日航海。
- 中間――船幽霊5体襲撃。霧の中で幻聴攻撃。
船幽霊戦闘:
- 船上=後列扱い。水中接近時は前列。
- 退魔入門(1点)未所持PCは攻撃50%無効 → 退魔入門者(密教僧/浄土僧/陰陽師は自動、他クラスも1点投資時)が主力。[霊体]攻撃を受ける時は免許(3点)+ビルドが最も安全。
- 迂回:霧脱出(2d10+技+航海 >= 13)。
情報獲得:船幽霊の首周辺から奇妙な糸(龍宮印)を発見。手掛かり。
#幕2――河童交渉+密取引調査(セッション2)
場所:海上の暗礁島。河童が上に座って待っている。
イベント:
- 河童カワジロウと接触。第一印象:敵対的に見えるが、実際は交渉を望んでいる。
- 交渉判定:2d10+美+交渉 >= 15(胡瓜を捧げれば12、遠慮観 +3)。
- 成功時――堺座の密取引情報を獲得。
河童の証言:
- 堺座の一部商人が龍宮神宝(神寶)の欠片を盗んで密輸。
- 龍宮の怒り → 使者側の警告襲撃。
- 密輸者の正体は――金右衛門の仲間の一人(具体名を提供)。
分岐選択(PC判断):
ルートA――討伐:
- 龍宮襲撃隊を撃退。海坊主+船幽霊分隊。
- 短期解決だが、龍宮との敵対関係が確定。
ルートB――交渉:
- 龍宮使者と直接会う(河童の案内)。
- 目標値17。密取引の証拠提示時は-5。
- 成功時、襲撃中止+密輸者処罰の約束。
ルートC――密取引暴露:
- 堺港へ戻り、密輸者を告発。
- 金右衛門内部の葛藤を誘発(金右衛門自身は無罪、仲間が罪人)。
- 堺座内部クーデター → カグラ藩介入可能。
#幕3――結末(セッション3)
各ルート別クライマックス。
#ルートA結末――対決
- 海坊主+船幽霊8体最終戦闘。
- 水中区域を含む(体術 +2、火器不可、移動 +1)。
- 勝利時、海上安全回復 but 龍宮永久敵対。
#ルートB結末――龍宮の使者
- 龍宮使者と対面。
- 交渉判定17目標。大成功時は平和協定。
- 密輸欠片を返せば自動成功。
#ルートC結末――堺の嵐
- 堺座内の密輸者を処断。政治ドラマ。
- 海坊主の一部は出没継続(根本解決ではない)。
- 名声 カグラ藩 +3、堺座 -2。
#段階別進行ガイド
#幕1進行ガイド――出航と最初の遭遇
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| 金右衛門の依頼 | セッション開始 | 商船失踪数・前金を提示し、疑いの余地を残す | 質問・感知(2d10+智+感知)、条件交渉 | 依頼受諾、マメイ号乗船 |
| 出航と航海 | 1幕中盤 | タカマル紹介、船上=後列規則を告知 | 船上ポジション、退魔資源確認 | 海上霧へ進入 |
| 船幽霊5体 | 戦闘 | 幻聴攻撃・非実体50%無効を実演 | 退魔入門者を主力に、霧脱出判定(2d10+技+航海 >=13) | 船幽霊撃退 |
| 糸(絲)の手掛かり発見 | 幕終了 | 龍宮印を描写、依頼の層転換を予告 | 手掛かり解釈、今後の方針会議 | 河童暗礁への航路設定 |
- 成功分岐:退魔主力で安定撃退+手掛かり確保。幕2の交渉に余裕資源。
- 失敗分岐:船幽霊によりタカマル船長負傷、船速 -1。河童遭遇が遅れ、幕2の判定に+1ペナルティ。
- GMコントロール:退魔入門(1点)未所持PCのもどかしさを必ず1回体感させる――攻撃50%無効をダイスで確認。これがこのシナリオの資源構図。ただし入門1点だけ投資しても非実体免除+[霊体]攻撃 -2部分保護――「退魔入門を持ってこないと霊的な敵にはほとんど戦えない」というビルド誘因をPCに見せるシナリオとして活用。
#幕2進行ガイド――河童交渉と密取引調査
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| 暗礁接近 | セッション開始 | 上から見下ろす河童登場 | 接近態度を決定、胡瓜所持の有無を公開 | 河童の第一声 |
| 交渉判定 | 中盤 | 目標値15(胡瓜 -3、遠慮観 +3)公開 | 2d10+美+交渉を宣言、会心使用判断 | 交渉成功/失敗確定 |
| 証言収集 | 成功時 | 密輸者名・神宝欠片情報を提供 | 情報整理、ルートA/B/Cを討議 | 分岐ルート選択 |
| ルート分岐 | 幕終了 | 3ルートの予想結果を要約 | PC合意、次幕準備 | ルート確定 |
- 成功分岐:交渉成功。龍宮使者への通路が開き、密輸者の実名を確保。プレイヤー主導権確立。
- 失敗分岐:交渉失敗。河童敵対化または中立化。ルートB封鎖、AまたはCに縮小。
- GMコントロール:ルート選択はプレイヤーのものだが、各ルートの「失うもの」を事前に明示。討伐=龍宮敵対、交渉=密輸者の強硬処罰、暴露=堺座の信頼喪失。すべての選択は代価を払う。
#幕3進行ガイド――結末
ルートA――討伐
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| 襲撃隊遭遇 | 開始 | 海坊主+船幽霊8体配置、水中区域を告知 | 船上/水中の役割分担 | 交戦開始 |
| 海坊主集中 | 中盤 | 大波(船外強制移動)を適時使用 | 火器を非水中で活用、体術者が水中進入 | 海坊主戦力半分 |
| 最終決着 | クライマックス | 退却誘惑・執着試験 | 会心を使い切り、決定打 | 海坊主撃破 |
- 成功分岐:海上安全回復、海坊主素材獲得。龍宮永久敵対は後続キャンペーンの種。
- 失敗分岐:船沈没、PCは水中漂流。タカマルが救助――負債関係を設定。
- GMコントロール:水中区域の火器不可規則を必ず1回刻み込む。鉄砲依存PCの戦術転換を誘導。
ルートB――交渉
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| 龍宮使者対面 | 開始 | 波が止む演出、目標値17を告知 | 密輸証拠提示(あれば -5) | 交渉開始 |
| 交渉判定 | 中盤 | 使者の試験質問(真意確認) | 2d10+美+交渉、結束資源投入 | 交渉結果確定 |
| 平和協定 | クライマックス | 欠片返還条件を提示 | 返還/拒否を決断 | 決着宣言 |
- 成功分岐:平和協定+龍宮祝福。海上旅行名声 +3永続。堺座密輸者の処罰は龍宮が担当。
- 失敗分岐:交渉失敗時、即席戦闘――ルートAへ転換されるが、使者が追加。難易度上昇。
- GMコントロール:密輸証拠を提示しなければ事実上不可能な判定であることを暗示。幕2の河童証言がここで値を払うよう設計。
ルートC――密取引暴露
| チェックポイント | タイミング | GMがすること | プレイヤーがすること | 合図(次段階へ) |
|---|---|---|---|---|
| 堺帰還 | 開始 | 港の不安を演出、金右衛門の反応を描写 | 告発方式を決定(公開/密告/カグラ藩) | 告発ルート決定 |
| 内部クーデター | 中盤 | 堺座分裂、密輸者逃走の試み | 追跡・逮捕判定、決定的証拠提示 | 密輸者処断または逮捕 |
| 政治決着 | クライマックス | カグラ藩介入決定、海上残存襲撃を告知 | 立場整理、報告 | 決着宣言 |
- 成功分岐:堺座再編、カグラ藩影響力増大。名声 カグラ藩 +3、堺座 -2。
- 失敗分岐:告発不発――金右衛門まで疑われ、PC信用が低下。海坊主襲撃は続き、再挑戦シナリオ。
- GMコントロール:このルートは戦闘ではなく会話・判定・RPが中心。政治ドラマの密度を保ちつつ、海上残存脅威の演出を背景に残し、根本解決ではないことを刻む。
#報酬
経済ティアラベル:下記の金貨数値はシナリオティア(co-08-05 §6.2)の高難易度報酬である。戦闘携帯上限(20金)を超え得るが、これはシナリオ終了後にPC財布へ累積される報酬である。次の戦闘には、財布残高のうち携帯上限ぶんだけ持ち込める。
- ルートA:金貨80+海坊主素材(名品制作可能)。
- ルートB:金貨50+龍宮祝福(海上旅行名声 +3永続)。
- ルートC:金貨30+堺座政治影響力。
#GM助言
- 水中区域の体感:体術 +2ボーナス、火器不可を必ず体感させる。鉄砲依存PCは困る。
- 非実体の船幽霊:退魔入門(1点)1点の重要性を示す例。パーティに一人も入門者がいなければ、50%無効+[霊体]攻撃が自動命中級に苦しい。入門者が一人いるだけでも、パーティ全体がその者を中心に運用可能。
- 交渉可能妖魔:河童と龍宮使者はいずれも交渉可能。「すべての妖魔は敵」という前提を崩すエピソード。
- 密輸フラグ:金右衛門を疑わしい依頼人として設定。プレイヤーが「何かおかしい」を感知できるように。
