日本語版 v1.3.3

#設計ノート — なぜこのように設計したのか

目次

GM専用の深掘り。 この文書は補充の設計意図と境界線を整理する。プレイヤーが読むと驚きが薄れる。しかしGMがこれを読まなければ、キャンペーンは見当違いの方向へ流れる。

本編参照

- 必須: 基礎前提9大原則 · 10段威名


#設計哲学

#1. 香と法の二重構造を補充でも維持

本編の9大前提のうち、香/法の二重構造はこの補充でも変わらず維持される。すべての新規規則(結界HP・核経済・士気・霊界露出度)は、数値と物語の両方に反映されなければならない。

  • 結界HP 75 → 数値だけでなく「結界が崩れそうに揺れ、陰陽師の背が少し曲がる」として
  • 核5個 → 「倉庫に、黒みがかった赤い珠が真鍮の壺の中で低く震えている」
  • 住民士気3 → 「子どもたちは遊ばない。鐘が鳴っても人が出てこない。」

数値は道具、物語は目的。

#2. Adventure Pathスタイル — 各章の独立性

PaizoのAdventure Pathから得た教訓: 一つの章を落としても次の章をプレイ可能でなければならない。線形の因果は物語を作るが、離脱可能性が自由を作る。

  • 各章の手がかり・報酬は次章に「有利に働く」だけで、必須前提ではない
  • 第3章で得る封印記録を逃しても、第5章で別経路から再発見可能
  • 4章をスキップすれば5章の難度が+1等級だけ上がる。失敗強制ではない

#3. 1段開始 — 成長の重さを丸ごと感じさせる

高段PCで始めれば「英雄の任務」になる。1段で始めてこそ、「生き残った者の奇跡」になる。1段PCが9段の達人へ成長する間、領地住民・家臣・領主もともに成長し、消耗し、死を経験する。

これは本編入門の反復ではない。 入門が「このルールの使い方を学ぶ」ことなら、この補充の1段は「この世界で生き残る方法を学ぶ」ことだ。

#4. 小さな領地 — 意味の密度

大きな藩であれば、失った住民一人は統計。小さな領地では、一人の名前、一人の家族、一つの空席。800人は意図された数字である。PCがセッション中に出会うすべての住民が名前を持ちうる規模

#5. 仏教地獄のモチーフ — 悪ではなく業

この補充の霊界は善悪二元論ではない。地獄は罰ではなく鏡である。妖魔は敵だが、かつて人であったもの、特定の執着の凝結体、消えた者たちの残り香でもある。

プレイヤーが安易に「地獄 = 悪」と読まないようにする装置:

  • 交渉可能な妖魔が各章に必ず存在
  • 地獄流派5種の「善い使い方」を明示
  • ロマンス可能な妖魔パートナー4人
  • 第4章の以前の漂流者たち — 彼らもかつて君たちだった

#6. 勝利の定義を再設定

本編では「世界を救う」が可能なスケールである。この補充で「領地を救う」とは、800人中600人だけ生き残っても勝利になりうる。全滅ではなく選択が物語のクライマックスである。


#設計決定の根拠

#D1. PC 1段開始の妥当性

「小さな田舎領地が霊界に落ちたのに、10段達人が5人もいるはずがない。」 — 単純な蓋然性。

高段陰陽師1人だけが例外的に高段であり、彼が隠居中だったからこの領地にいた、という背景まで整合する。他のすべてのPCは1~3段の地域武士・住民・漂流者。

副作用: 1段成長ペースの管理が必要。章ごとに2段上昇 = 20セッションで1→9段。本編ペースに合致。

#D2. 国人領主の選択

  • 旗本: 「本家との断絶」テーマはよいが、本家の存在自体が「救援軍への期待」を呼び、緊張を弱める
  • 外様大名: 身分資格試験はよいが、「小さな田舎」トーンとずれる
  • 国人: 土着豪族。本家なし。住民と代々つながる。救援軍不可。緊張最大化。

#D3. 二つの軸同時の陰陽師負担

  • 核経済だけ: 資源管理ゲーム。ドラマが弱い。
  • 命の消耗だけ: ドラマは強いが資源管理が欠ける。
  • 二つの軸同時: 基本ループは核経済、極限で命の消耗。資源 + ドラマ。

#D4. 仏教地獄モチーフの真正性

地獄を「ダンジョン背景」としてだけ使わないために:

  • 各地獄の教理的本質をGMガイドに含める (03-06)
  • 地獄の苦しみが「業の反映」であるという設定を守る
  • 無間地獄を最終章に — 終わりなき苦痛こそが選択の瞬間

#D5. 独立バージョン管理

本編Canonの安定性を守る。この補充の実験的規則が本編へ流出しないようにする。

wiki/ex1/VERSION を別に置く。本編インデックスからはリンクしない。


#プレイ負担の境界線

#推奨最大負担

この補充は、極端へ走ればGM・プレイヤー双方を消耗させうる。次の境界線を推奨する。

負担軸推奨最大値
1セッションあたりのプレイ時間4時間
週セッション頻度1回
長期キャンペーン期間8か月以下
同時に動かすNPC数セッションあたり5人以内
同時追跡状態数結界HP + 核在庫 + 陰陽師 + 士気 = 4個以下
セッションあたりPC死亡0~1人 (連続死亡は避ける)

#注意が必要な場面

次の場面には事前の卓合意が必要:

  • 住民の子どもの死亡 (オープンワールド・サイドシナリオに存在)
  • ロマンスNPCとの死別・別離 (エンディング中の悲劇分岐)
  • 陰陽師ゲンショウの死 (極限エンディングで可能)
  • 領主アキヒサの心の変質 (最悪エンディングで可能)
  • 住民大量死亡 (結界崩壊エンディング)

セッション0で「Xカード」などのセーフティツール導入を推奨。

#避けるべきこと

  • 「英雄の勝利」トーン: この補充はそういう話ではない。
  • 無条件ハッピーエンド: 3分岐のどのエンディングも完全なハッピーエンドではない。
  • PCの高段自慢: 1段から始めたPCたちが9段へ至ったときの達成感こそが補充の核心報酬。
  • 陰陽師を「無限支援NPC」として使うこと: 彼は時限爆弾だ。プレイヤーが彼を消耗させる資源として見始めたら成功。

#エンディング設計原則

#3分岐の均衡

エンディング達成感喪失主流の心
帰還本編世界への復帰霊界での経験・関係の一部喪失眞・忠
定住新しい土地の固有性本編世界・家族・元の名前慈・無心
変容伝説的存在人間性魔・虛

三つのエンディングはすべて、何かを得て何かを失う構造。完全な勝利はない。

#10段威名との衝突

本編威名はキャンペーン終結装置である。威名獲得時、制圧力・突破・心府・活力経済が無効化される。この補充の第5章エンディングメカニズム(結界・核・陰陽師)は、威名の前で無用のものになりうる。

設計境界線:

  • 10段威名到達は第5章4幕(クライマックス)直前にのみ許可
  • 威名獲得後1~2セッション以内にエンディング到達
  • パーティ内10段2人以上: GMはエンディングを加速 (威名の手応え低下を防ぐ)
  • 「変容」エンディングは10段威名未獲得者にのみ開かれる道 — 威名獲得者は帰還または定住のみ

#各分岐の必須要件

帰還エンディング:

  • 封印記録(第3章手がかり)または代替手がかり3個以上
  • 陰陽師生存または後継者指定
  • 第5章4幕クライマックスで封印石と対面

定住エンディング:

  • 霊界内での領地自立基盤確保 (核経済自動化 or 地獄流派伝授)
  • 住民士気5以上
  • アキヒサの国人アイデンティティ変換受容 (「霊界の領主」への再命名)

変容エンディング:

  • PCのうち最低1人の自発的変容意思
  • 霊界知性体との契約関係構築 (第2章・4章で可能)
  • 変容対象PCが10段に到達

#本編との互換境界

#本編に貢献しうるもの

この補充の成果物のうち、本編へ逆流可能な候補:

  • ロマンスシステム → 本編拡張オプションへ移動可能
  • 領地管理の詳細化 → 本編領地経営 拡張
  • 地獄流派のうち興味深いもの → 本編流派への昇格検討

ただし、この補充の開発期間中は本編修正禁止。 安定化後、別途提案手続き。

#本編に影響してはならないもの

  • 結界HP / 核経済: この補充固有
  • 閻魔童子の封印の詳細因果: 本編ではヒントだけに留める
  • 無間道(10段流派): 本編威名体系との衝突リスク

#GM運用時に確認すること

  • 香と法がともに生きているか
  • 新規規則は該当本文文書からすぐ探せるか
  • 表・リンク・用語が本編Canonと衝突していないか
  • 10段威名は第5章クライマックス直前の終結装置としてのみ使われているか
  • 同じファイル内と隣接ファイル間に、すぐ見える矛盾がないか

「設計は壁ではなく骨格である。肉はプレイが付ける。」