日本語版 v1.3.3 · ex-doc

#ぬらりひょんと百物会

目次

Nurarihyon and the Hyakumonokai as a partial presence, an old refined face in profile, sake cup, and several blank ghostly masks in the background, no full crowd.

Canon. 江戸時代妖魔勢力の中心を定義する。


#香 — 他人の家の主

ぬらりひょんは扉を壊さない。いつの間にか部屋の中に座って茶を飲み、誰もが彼を主と錯覚する。江戸の妖魔は山を占領する代わり、家と路地と怪談の中に自分の居場所を作る。

#法 — 百物会の運用

  • 百物会は幕府の敵だが、すべての事件で討伐対象ではない。取引相手・傍観者・不便な保護者として使える。
  • ぬらりひょんの目標は霊界門の大開放ではなく、都市妖魔の生存権確保だ。
  • 百物会が介入したら、恐怖・噂・名・目撃談を場面の資源として扱う。

#場面解説 — 討伐対象でない敵

ぬらりひょんと百物会を毎回倒すべき最終敵として使うとすぐに単調になる。彼らは都市妖魔の生存権を作る勢力だ。危険ではあるが、人間暗躍勢力が妖魔を実験材料と商品にするときはむしろ均衡を守る側に立てる。

百物会の場面は奇妙な礼儀から始めると良い。使者がまず挨拶し、妖魔が取引条件を提示し、ぬらりひょんは他人の家の奥座に主のように座っている。PCが彼らを信用できないのは明確だが、彼らが全員消えれば都市の怪談生態がどう崩れるかも一緒に見せる。

百物会を立体的に使う方法:

  • 危険な妖魔を隠すが、より危険な人間も阻む。
  • 恐怖を食うが、恐怖が完全に商品化されることは嫌う。
  • PCに情報を渡す代わりに名を一つ守ってくれと頼む。

#セッション適用 — 交渉可能な妖魔を作る

  • 最初の場面:百物会の使者はPCを攻撃せず、すでに知っていたかのように名を呼ぶ。
  • 捻り:彼らが保護する妖魔は危険だが、人間暗躍勢力に捕まえられればより大きな災いになる。
  • 最後の問い:PCは妖魔の生存権という言葉をどこまで認められるか。

#導入短篇 — 百番目の話

油の灯が九十九番目の話で消えた。怪談集会に集まった人々は皆息を呑んだ。本来ならば最後の灯を消すと妖魔が現れると言われていた。ところが部屋の中央にはすでに見知らぬ老人が座っていた。

「百番目の話はしない方が良かろう」老人が言った。

出版商は震える手で原稿を隠した。「お方は何者でございますか」

「この家の主だよ」

「この家は私の家でございます」

「そうか。ではお前はなぜ今夜自分の家で許しも得ずに死んだ子の名を売っているのか」

PCが部屋に入ったとき、出版商の後ろの屏風には顔のない子供が映っていた。子供は泣かなかった。代わりに自分の名が書かれた原稿を見つめていた。黒札組の男が二人戸の外で待ち、幕府の検閲担当者はまだ到着していなかった。

ぬらりひょんはPCに茶碗を押した。

「お前たちがあの原稿を焼けば子供は忘れられる。書き手が売れば子供は商品になり、わしが持って行けば怪談になる」彼は笑った。「三つのうちどれが最も悪いか」

そのとき灯が一つまた点いた。九十九番目ではなく、名の書かれなかった百番目の灯だった。


#組織カード

項目内容
表面都市怪談と妖魔の噂を仲介する裏世界の会合
裏面消えていく妖魔の名と居場所を保存する生存権組織
首脳ぬらりひょん、怪談編纂者、湯屋・遊廓・芝居小屋仲介者
現場のっぺらぼうの使者、付喪神の使い走り、目撃談収集者
強点噂、隠れ家、名の保存、人間裏世界との接触
弱点恐怖への依存、危険な妖魔まで抱え込む傾向、幕府の検閲

百物会は妖魔の王国ではない。江戸という都市で消えないために妖魔が作った相互扶助と脅迫、仲裁と報復の緩やかな会合だ。だから百物会の場面は戦闘より先に礼儀・茶・名・条件から始まる。


#幹部と下部構造

層位代表人物役割扱い方
首領ぬらりひょん会合の上座と最終仲裁早まって敵にしないで、常に条件を提示させる
怪談編纂者お花噂と出版物の調整人間でありながら百物会を理解する窓口として使う
路地の使者顔なき五兵衛PC接触・警告・取引攻撃より先に名を呼ばせる
隠れ家管理者湯屋の主・遊廓の遊女・芝居小屋の雑用妖魔の避難先提供普通の生活の中に妖魔が混じる感覚を与える
危険な居候絡新婦・怨霊・都市鬼保護されているが制御困難な妖魔百物会の名分を揺るがす事件の原因として使う

お花は百物会の人間の顔だ。彼女は妖魔を愛していないかもしれない。ただ幕府が名を消し黒札組が値をつけるより、怪談として残す方が残酷さが少ないと信じている。PCが百物会と話すとき、お花は「妖魔の味方」ではなく「忘れられた名の味方」として語る。


#陣営基盤

[素養] 怪談の道

百物会所属は公式の道より噂・目撃談・他人の家の裏口で動く。名が知られた場所ほど彼らはより簡単に消えて現れる。

効果: 湯屋・遊廓・芝居小屋・長屋・廃屋・倉庫のように怪談や目撃談のついた都市の場所で、潜入・交渉・逃走判定に+1。当該場所の噂を百物会が事前に掌握していれば+2に増加する。

PC習得時: セッション1回、都市噂・目撃談の調査または百物会との交渉判定に+3。使用後、幕府の公式記録やカグラ藩の報告では疑いを受ける。

適用: 百物会所属の卒〜将ユニットと随伴分隊は固有特性として内蔵する。ぬらりひょんのような主級妖魔は一般特技1スロットに配置する。


#随伴分隊

以下の分隊はすべて陣営基盤[素養] 怪談の道を適用する。

#顔なき使者団 — 卒

: 目鼻のない滑らかな顔で路地の角に立ち、刀を抜く前にまず人の名を呼ぶのっぺらぼうたち。戦いに来たのではなく口上を伝えに来た者なので、斬られるより散る。

戦力 1、防備 12。制圧力 +2 (分隊4体)。

技法:

  • 名を呼ぶ [型] — 指揮時。2d10+美(+1) vs 対象2d10+智。失敗した対象は1呼吸の間、使者団を先に攻撃できない。
  • 路地散開 [技法] — 予約1/即興2。被撃時、分隊の結束力を1失って隣接区画へ移動する。

#怪談収集者 — 練

: 湯屋と遊廓と廃屋を巡り、人々が恐れる話を耳で拾い集める者たち。目撃談を集めては曖昧にするのが仕事なので、事件の終わった跡には必ず彼らが手を入れた別の噂が一つ残る。

戦力 2、防備 13。制圧力 +3 (分隊3体)。

技法:

  • 噂を織る [構え] — 持続。同戦場の百物会ユニットの交渉・威圧判定+1。
  • 目撃談差し替え [型] — 指揮時。戦闘後、目撃者の証言を一つ怪談形式で曖昧にする。

#幹部NPC: お花、百物会編纂者 — 将

Ohana arranging tale-cards into a fan-spread, half her form solid and half dissolving into ghostly blank masks behind; no text on cards

: 出版物と噂の間に座り、忘れられた名が怪談として残るよう手を入れる人間の編纂者。妖魔の味方でも幕府の味方でもないと言いながら、扇を畳む手振り一つで使者と収集者を操る。

お花 — 将
戦力 3、防備 13、活力 11
勇+0、技+2、体+1、智+3、美+4、運+2
制圧力 +4
技法種別活力判定効果制限
怪談に転じる[型]32d10+美 vs 対象2d10+智失敗した人間対象は事件を事実より噂として語る。次の調査判定-1セッション1回
扇の合図[整備]0小康段階に百物会の卒・練分隊1つの結束力+1小康1回
隠し簪[攻撃]22d10+技≧防備1戦力。攻撃より逃げ道確保に使うことが多い
舞台裏へ[技法]予約2/即興32d10+運≧敵攻撃被撃無効。芝居小屋・遊廓・湯屋なら成功時に潜伏状態

特殊:

  • 人間仲介者: お花は退魔対象ではない。彼女が倒れると百物会はPCとの対話を中断し、危険な妖魔が直接動き出す。
  • 陣営基盤: お花は[素養]怪談の道を固有特性として保有する。

ぬらりひょんの主級データはex3-06-01-edo-yoma.mdに置く。組織文書でぬらりひょんは戦闘数値より「常に他人の家の上座に座って条件を提示する存在」として先に扱う。


#光と影

消えていく妖魔と怨霊の名を保存する危険な存在も匿って民間被害を拡大させうる
人間暗躍勢力の商品化を防ぐ恐怖を生存資源として噂を育てる
PCに幕府外の情報網を与える幕府とカグラ藩の信頼を失わせる
討伐でなく解消の道を開く解消より保存を選ぶことがある

#主人公の所属として使うとき

百物会所属または協力キャンペーンは「怪談を消さずに危険だけ減らす物語」として置く。PCは妖魔を守りながらも、人を害する妖魔をそのままにはできない。百物会が与える情報と隠れ家は強力だが、その代価は常に名と恐怖と沈黙だ。


#主要な敵対勢力として使うとき

百物会が敵対勢力のときは生存権の名分が民間人を覆う瞬間を見せる。ぬらりひょんは都市妖魔全体を守るために被害者を黙らせたり、危険な妖魔を別の区画へ移したりする。PCの目標は百物会を「全滅」させることではなく、彼らが守ろうとする秩序が誰を犠牲にしているかを明らかにすることだ。


#百物会

項目内容
首領ぬらりひょん
本質都市妖怪の裏世界連合
基盤長屋・湯屋・遊廓・芝居小屋・廃屋・倉庫・怪談集会
資源恐怖・噂・名・目撃談・出版物
目標妖魔が消えていく時代に都市怪談という生存権を作る

#エンリョ館の残資料と江戸の基盤

百物会が江戸に根を張れた理由はぬらりひょんの狡猾さだけではない。エンリョ館が瓦解した際に消えた研究資料の一部が百物会へ流れ込んだ。その資料には妖魔を退治する呪文よりも貴重なものが記されていた。忘れられた名・古い居場所・人間と対話した前例・封印の代わりに約束で終わった事件・どの妖魔がどんな恐怖で生き延びているかの記録だ。

ぬらりひょんはこの資料を学問として保存しなかった。彼はそれを都市の噂網に変えた。書庫にあった名は湯屋の怪談になり、交渉記録は遊廓の暗号になり、山中の妖魔の古い居場所は江戸の空き家と倉庫と芝居小屋の裏手へと移される。

この設定は百物会をより強い古代帝国にするための仕掛けではない。むしろ逆だ。百物会は霊界門が幕府管理に入った後消えるしかなかった妖魔たちを都市の小さな話に砕いて生かす。だから百物会が持つエンリョ館の資料は力の源泉であると同時に弱点だ。幕府がその出所を追跡すれば百物会の隠れ家が露わになり、裏般若が同じ資料を得れば妖魔の名は保護ではなく実験標本になる。


#ぬらりひょん

ぬらりひょんは山の王ではない。他人の家に入って主のように座り、誰も彼がいつ入ってきたか覚えられない存在だ。江戸異聞録でぬらりひょんはこの性質を都市政治に拡張した妖魔だ。

彼は霊界の門を再び戦争のように開こうとしない。そんな時代は終わり、そうすれば幕府とカグラ藩の総攻撃を招く。代わりにぬらりひょんは妖魔が人間の日常の中で生き残る方法を作る。名・噂・怪談・絵・舞台・目撃談がその方法だ。


#百物会の秩序

百物会は軍隊ではない。会合・仲裁・情報交換・報復・避難先提供が入り混じった都市妖怪の裏世界だ。

機能説明
名の保存忘れられた妖魔の名を怪談として蘇らせる
恐怖収集噂を集めて弱い妖魔を維持する
紛争仲裁都市妖魔同士の餌と居場所を調整する
人間交渉芸人・商人・やくざ・退魔師と取引する
報復妖魔を商品化したり狩ったりした人間に罰を与える

#百物会とPC

百物会は無条件の討伐対象ではない。百物会が匿った妖魔が人を殺したこともあれば、逆に黒札組に捕まって売られそうな妖魔を守っていることもある。

PCは百物会と三つの形で出会う。

  • 敵として出会う。百物会が恐怖を育てるために事件を操作した。
  • 取引相手として出会う。ぬらりひょんの使者は人間暗躍勢力の情報を持っている。
  • 不便な保護者として出会う。百物会は危険な妖魔も抱えるが、その妖魔を狩る人間はより危険だ。

#ぬらりひょんの勝利条件

ぬらりひょんは幕府を倒そうとしない。彼は江戸の中に妖魔が住む場所を作ろうとしている。怪談が消えず、都市の人々が夜道の規則を覚えており、人間が妖魔を全部商品にできないなら、ぬらりひょんは勝ち続けている。


「ぬらりひょんは王座に座らない。他人の家の上座に座って、皆が頭を下げるようにするだけだ。」