日本語版 v1.3.3 · ex-doc

#江戸妖魔

目次

Canon. 江戸時代キャンペーンで必要な新規妖魔と既存妖魔の変形を収録する。


#香 — 都市が育てた妖魔

江戸の妖魔は戦場の屍山よりも人々の口から育つ。怪談が繰り返され、絵が売られ、劇場の幕が上がるとき、妖魔は自らの姿を得る。百物会はその姿を集め、都市の夜に秩序を立てる。

#法 — 妖魔データの使用

  • 以下の数値はco-08-02形式に従う。既存妖魔を置き換えず、江戸型事件に必要な変形のみを提供する。
  • 都市妖魔は戦闘力だけでなく、目撃談、場所、名前、噂とともに配置する。
  • ぬらりひょんは妖魔勢力の首領だが、毎回の事件の最終敵手としてのみ使わない。取引と仲裁の場面も開いておく。

#場面解説 — 妖魔の居場所をまず定めよ

江戸妖魔は居場所と名を合わせて持つ。ぬらりひょんは人の家の上座に座り、お菊型怨霊は井戸と皿に縛られ、目目連は家そのものを体とする。データを取り出す前に、その妖魔がどこで記憶されているかを定めると場面が深まる。

Mokumokuren: a torn shoji and wood-grain wall, dozens of small eyes opening in the tears and knots; no creature body

都市妖魔はすべて殺して消すべき対象とは限らない。危険でも都市の夜の規則を維持する妖魔もいれば、恨みを解いてやらなければ消えない怨霊もいる。百物会が介入した妖魔であれば、戦闘が終わった後にも名と噂の処理が残る。

妖魔配置の問い:

  • この妖魔はどんな場所で最も強くなるか。
  • この妖魔の名を誰が広めているか。
  • 退治ではなく解消で終わらせる方法はあるか。

#セッション適用 — 名と場所を合わせて与える

  • 最初の場面:妖魔は必ず特定の場所の噂として最初に登場する。
  • 捻れ:その妖魔を消すと、都市の夜の規則が一つ一緒に消える。
  • 最後の問い:PCは妖魔の名を消すか、危険を承知で別の場所へ移すか。

#スタットブロック形式

名前 (漢字) — 等級
戦力 X, 防備 Y, 活力 Z
勇+a, 技+b, 体+c
技法: [技法名](활력, 효과) / [技法名](활력, 효과) / [防御技法](예약/즉흥)
特殊: [名前] — [効果]
制圧力 +N

#収録一覧

名前等級役割
ぬらりひょん都市妖魔の首領、主人面、恐怖収集
於岩型怨霊毒殺・縁談・劇場怪談
お菊型皿怨霊繰り返しカウントと呪い物品
野箆坊自我崩壊と目撃者の混乱
目目連廃屋監視と隠蔽事件
絡新婦遊廓・橋・滝の捕食者
見越入道夜道・街道の圧迫

Mikoshi-nyudo: a tiny traveler at the base looking up, the monk's form telescoping off the top of the frame, only the hem and long neck


#ぬらりひょん — 主

よその家の上座に座る老人型妖魔、盃と空の屏風。

#

いつ入ってきたのか誰も知らない。戸を叩いたことも、人の気配を立てたこともないのに、いつのまにか上座に老人が一人座って茶を注いでいる。頭は後ろへ長く伸びた瓢箪の形をしており、絹の着物はこの家の当主のものより一段上等だ。彼を見た者は皆、同じ錯覚に陥る——あの御方こそ元々この席の主であって、自分は客だったのではないか、と。

声は低く、ゆったりとしている。怒ることなく、命じることもない。ただ当然のように最も良い座布団と最も温かい酒を受け取って飲み、家の者たちはそれを止めるどころか、もっと良いものを出せぬかと気を揉む。去った席には酒瓶だけが空になって残り、彼が何を言ったかは誰も覚えていない。ただその夜の恐れの一片が消えているだけだ——誰かが代わりに呑み込んでくれたかのように。

屋敷、湯屋、遊廓、劇場、長屋。人が集まって語り合う場所であれば、どこにでも彼の上座がある。彼を斬ろうとする者はまず自分がなぜ刀を抜いたのかを忘れ、いつのまにか彼に茶を一杯勧めている自分に気づく。都市の夜を治めるその仕方こそが、彼の武器なのだ。

ぬらりひょん — 主
戦力 6, 防備 15, 活力 13
勇+0, 技+2, 体+1, 智+3, 美+4, 運+2
制圧力 +5
技法種別活力判定効果限度
主人面[型]32d10+美 vs 対象 2d10+智失敗した対象は1呼吸の間、ぬらりひょんを現場の主人または上位者と錯覚する間合1回
路地の主[構え]2維持中、同一区域の敵の離脱コスト +1活力構え維持
恐怖の刈り取り[整備]0小康段階に現場の目撃談を一つ指定。次の間合の最初の判定 +1小康1回
顔なし[技法]予約2/即興32d10+技 >= 敵の攻撃被撃無効。成功時、隣接区域へ移動

特殊:

  • 百物会の首領:同一戦場の都市妖魔の卒・練分隊は指揮官がいなくても無指揮状態にならない。
  • よその家の敷居:屋敷、湯屋、遊廓、劇場、長屋での初登場時、先攻補正 +2。
  • 陣営基盤:ぬらりひょんは[素養] 怪談の道を一般特技1スロットとして保有する。

#於岩型怨霊 (於岩怨霊) — 将

劇場の幕の裏の片目と流れる髪、体は余白へと消える。

#

まず髪が見える。黒く長い髪が天井から、灯籠の陰から、劇場の幕の隙間から流れ落ちる。次に顔が来る——片方は美しく、片方は毒に爛れて目が腫れ上がり閉じない。生前彼女を裏切った者が塗ってやった白粉と毒が同じ手から出たという事実を、その顔が言葉なく証言する。腰から下は闇に溶けて形がない。

恨みの対象でない者には悲しい女に見え、その対象には天井いっぱいの顔に見える。鏡、灯籠、舞台の幕のように、何かが映る場所で最も強くなる。彼女が現れた跡には生臭い薬の匂いが残り、彼女を見た者の口から口へと話が広まるほど、彼女はくっきりと際立っていく。斬って消したところで終わりはしない——恨みが解けるか、彼女を覚えている口がすべて閉じなければ消えない。

於岩型怨霊 (於岩怨霊) — 将
戦力 4, 防備 14, 活力 10
勇+1, 技+1, 智+2, 美+3
制圧力 +4
技法種別活力判定効果限度
毒の怨み[攻撃]22d10+智 >= 防備[霊体]。1戦力。対象の次の判定 -1
ねじれた顔[型]32d10+美 vs 対象 2d10+勇失敗した対象は無防備間合1回
幕裏の影[技法]予約2/即興32d10+技 >= 敵の攻撃被撃無効。劇場・屋敷なら成功時に潜入状態

特殊:

  • 怪談の配役:劇場、遊廓、屋敷に登場すると、小康段階ごとに目撃者の噂が増える。GMは次の場面に百物会または幕府検閲を介入させることができる。

#お菊型皿怨霊 (お菊怨霊) — 将

Okiku plate-spirit: long wet hair over a well rim into white, a pale hand counting porcelain plates, the tenth place an empty void; no gore

#

夜が更けると井戸の底から皿を数える声が昇ってくる。一つ、二つ、三つ……九つまで数え終えると一拍止まり、足りない最後の一枚を見つけられなかった女の泣き声で途切れる。濡れた髪を垂らしたまま井戸の縁に手をかけてゆっくりと湧き上がる彼女の指先からは、水が止まることなく滴る。割れた皿を片手に握っているが、その手が触れた者の持ち物は滑り落ちるように落ちて割れる。

彼女は自らを死へ追いやった濡れ衣——消えた皿一枚——に縛られている。その一枚が元の場所へ戻る前は、幾度斬っても次の夜には再び井戸の上へ浮かび上がる。井戸、水路、水の溜まった屋敷の庭が彼女の領域だ。第一印象は恐怖よりも痛ましさに近いが、数えが九つで止まるあの沈黙の一拍が、聞く者の背を冷たくする。

お菊型皿怨霊 (お菊怨霊) — 将
戦力 3, 防備 15, 活力 9
勇+0, 技+2, 智+3, 美+2
制圧力 +3
技法種別活力判定効果限度
皿数え[型]2同一区域の敵1体を指定。その対象の次の行動コスト +1活力呼吸1回
割れた皿[攻撃]32d10+智 >= 防備[霊体]。1戦力。命中時、対象の装備を一つ落とさせる
井戸の底へ[技法]予約1/即興22d10+技 >= 敵の攻撃被撃無効。井戸・水路・屋敷なら外郭へ移動

特殊:

  • 一枚足りない:事件の品物が一つ元の場所に戻るまで、戦闘不能後も次の小康段階に戦力1で再登場する。退魔または怨念解消で終了。

#野箆坊 — 練

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背を向けて立つ旅人に道を尋ねると、振り返ったその顔に目も鼻も口もない。つるりと空になった肌が灯籠の光を丸く照り返すだけだ。驚いて逃げて出会った次の者も、またその次の者も、同じ顔でゆっくりと振り返る。群れをなして潜入するときには、目撃者でさえ彼らが何人だったのかを終ぞ思い出せない。彼らの武器は爪ではなく、人が人を見分けるというその信頼を崩すことにある。

戦力 2, 防備 12。制圧力 +3 (分隊3体)。

技法:

  • 顔なし [型] — 指揮時。2d10+美 vs 対象 2d10+勇。失敗した対象は1呼吸の間、攻撃対象の指定 -1。
  • 目撃者のすり替え [構え] — 維持。分隊が潜入中であれば、一般の目撃者は野箆坊の数を正確に覚えられない。

#目目連 — 練

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捨てられた家の古い障子が暗くてそう見えるのかと思いきや、一桝一桝に小さな目が生えていると気づいた瞬間、背筋が逆立つ。破れた紙の穴ごと、節ごと、壁の隙間ごとに瞳が詰まり、一斉に入ってきた者を追う。瞬きしないその数百の視線の下では、どんな足音も、どんな息の殺し方も隠せない。目目連には別に体がない——家こそが体だ。だから壁が崩れ柱が燃え上がれば、その目たちも一緒に消える。

戦力 2, 防備 13。制圧力 +3 (廃屋または屋敷1棟)。

技法:

  • 壁の目 [構え] — 維持。同一建物内の敵の潜入判定 -2。
  • 視線の圧迫 [型] — 指揮時。対象区域の全員が勇判定。失敗した対象は次の移動コスト +1活力。

特殊:

  • 家と一体:建物が燃えるか主要な壁が崩れると、即座に戦闘不能。

#絡新婦 — 将

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橋の欄干のそばや、滝の飛沫が軒を濡らす場所、人がふと脇見をする辻に、彼女はいつも先に来ている。絹のように艶めく裾の下に脚がもう一対あるのを見た者は、生きてその言葉を伝えられない。声は低く温かく、聞く者が心の閂を解くだけ優しい。初めて出会った者は危険ではなく、まず惹かれを覚える。

蜘蛛の糸は見えない。ただ彼女と言葉を交わしてから足が少しずつ重くなり、帰り道の方向がしきりに分からなくなりはじめる。遊廓と橋と水辺——人が魅惑と死を近くに置く場所が彼女の狩場だ。彼女が微笑んでいる間、相手は他所へ目を移すことを知らず、その隙に見えない糸はすでに足首を一巻きしている。

絡新婦 — 将
戦力 4, 防備 14, 活力 11
勇+1, 技+3, 体+1, 美+3
制圧力 +4
技法種別活力判定効果限度
絹糸縛り[型]32d10+技 vs 対象 2d10+体失敗した対象は1呼吸の間、移動不可呼吸1回
毒針[攻撃]22d10+技 >= 防備1戦力。命中時、対象の次の防御判定 -1
誘惑の微笑み[型]22d10+美 vs 対象 2d10+勇失敗した対象は絡新婦を優先攻撃対象に指定できない間合1回
糸断ち[技法]予約2/即興32d10+技 >= 敵の攻撃被撃無効。成功時、対象の移動コスト +1活力

特殊:

  • 橋と遊廓の捕食者:橋、滝、遊廓、旅籠に登場すると、最初の間合の間、制圧力 +1。

#見越入道 — 将

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峠道や街道の闇の中で、初めは小さな坊主が一人、道を塞いで立っているように見える。ところが見上げるほどにそれが大きくなる。視線を上へ追って上げるほど首が伸び肩が膨らみ、ついには空を覆う黒い影が頭上から見下ろすようになる。見上げた者の首が後ろへ折れるとき、その影がゆっくりと上から圧し迫ってくる。

夜道と峠、関所のように人が立ち止まって上を見上げねばならない場所が彼の舞台だ。秘訣は昔から伝わっている——大きくなるからといって追って見上げず、先に「見越した」と叫んで上から下へ見下ろせば、彼が縮むというものだ。その秘訣を知らぬ者にとって見越入道は、果てしなく大きくなる夜そのものだ。

見越入道 — 将
戦力 4, 防備 15, 活力 10
勇+3, 技+1, 体+3, 智+1, 美+2
制圧力 +4
技法種別活力判定効果限度
仰ぎ見させ[型]32d10+美 vs 対象 2d10+勇失敗した対象は見越入道を見上げ続け、次の移動コスト +1活力間合1回
大影の圧し[攻撃]32d10+勇 >= 防備1戦力。橋・街道・関所なら命中時、対象は無防備呼吸1回
峠越え[型]2隣接区域へ移動。移動した区域の人間の卒・練分隊は結束力 -1間合1回
背が伸びる夜[技法]予約2/即興32d10+体 >= 敵の攻撃被撃無効。成功時、次の大影の圧し判定 +1

特殊:

  • 見上げれば負ける:PCが見越入道の正体を知り「先に見下ろすか名を呼ぶ」場面を作れば、最初の間合の間、見越入道の判定 -2。

#垢嘗め変形

: 人が寝静まった夜、湯屋や台所の隅にうずくまり、長い舌で溜まった垢や黴を舐める小さな妖魔。汚れの積もった場所にのみ宿り、その場所が清められると静かに消える。

垢嘗めは本書では別途スタットブロックを設けない。湯屋・台所・下水溝の垢や放置された汚れが事件の原因であるときはcoの下級付喪神または下級妖魔データを使用し、以下の変形のみ付ける。

  • 垢舐め:小康段階に汚れた場所のギミックを一つ除去する。除去されたギミックが怨念や毒なら、垢嘗めは次の判定 +1。
  • 汚れた滑り:湯屋、下水溝、台所での最初の移動妨害判定 +1。

"江戸の妖魔は血より先に名を喰らい、刃より長く噂の中に残る。"