#日本の中神 — 神性3
目次
Canon — 中神の数値。 地方規模の自然・豊穣・戦争・治癒などを担う神々。複数の村が共に祀る有名な神社の主神。
#香 — 地方の顔
一つの地方が彼の名を知る。本社の屋根がその地方の風景の一つである。人々は病を得れば駆けつけ、商いを始めれば金を投げ、子が生まれれば名を授かりに行く。これらが中神である。
大神が国の名であれば、中神は地方の顔である。両者の境界は流動的である——人気が上がれば大神になることもあり、奉献が絶えれば小神に下がる。だから中神の神社は最も熱心に祭祀を捧げる。自らの座を守るために。
「中神は地方の心臓である。地方が揺れれば彼の名も揺れる。」
#法 — 中神共通規則
- ベース職業の主経路: 現人神・天人3〜6段 / 僧侶5〜7段。
- 日次恩恵: ドメインごとに2回。
- 中権能: 週1回。
- 再臨: 神社の月祭。大きな権能は四半期の大祭。
#七福神 — 混合神格群
#香
七つの福の神々のグループ。 インド ・ 中国 ・ 日本の神々が混ざって成立した神仏習合の代表事例。それぞれが別々に祀られることもあり、七柱が一つの船(タカラブネ・宝船)に乗った絵で共に祀られることもある。
本補足は主要4柱(ベンザイテン・エビス・ダイコク・ビシャモン)のみを扱う。残りの3柱(フクロクジュ・ジュロウジン・ホテイ)は中神2〜3級としてGM裁量で生成可能。
「七柱が一つの船に乗って来る。その船を迎える者には一年中福がある。」——七福神伝承
習合用語の案内: 「習合」とは二つの宗教の神が同じ神として混ざって扱われる現象。日本は神道と仏教が千年以上共存し、本来別々の神が民間信仰で一つに統合された場合が多い。七福神が代表的。
#法 — 七福神の個別データ
#ベンザイテン(弁才天)
香: インドのサラスヴァティー女神が仏教伝来で日本化。音楽・芸能・学問・水の女神。琵琶を抱える姿。使者は白蛇(白い蛇)。水辺の神社に主に祀られる。
法:
- 神性: 3 / ドメイン: 芸術・学問 ・ 水 ・ 弁舌(弁説)
- 権能:
- 芸術・学問 → 一人のPCの芸能または智基盤の知識判定を自動会心。
- 水 → 水域区域1個に有利な操作。
- 弁舌 → 交渉判定に片目固定10。
- ベース: 巫女7〜9段 + 神性3。
#エビス(恵比寿)
香: イザナギ・イザナミの子ヒルコ(蛭子)——骨がなく生まれて海に流された——が成長して神格化された存在。日本固有の七福神。漁師の神、商業の神。笑顔で鯛を抱え釣竿を持つ姿。
「彼は一度捨てられたゆえに、捨てられた者たちを慈しむ。」——エビス伝承
法:
- 神性: 3 / ドメイン: 漁業 ・ 商業 ・ 無害な福
- 権能:
- 漁業 → 漁獲量を自動成功。
- 商業 → 取引判定を有利に調整。
- 福 → 誰にも害にならない小さな幸運を解き放つ。
- ベース: 民衆(漁師)5〜7段 + 神性3。
- 祟り転換の危険はほぼない — 最も温和な中神。
#ダイコクテン(大黒天)
香: インドのマハーカーラ(Mahākāla)——シヴァの憤怒相——が日本に伝来し、オオクニヌシと習合した。福・農耕・台所・財物の神。黒い頭巾をかぶり大きな袋を背負い、小さな槌を持つ姿。この槌がオオクニヌシの槌と混同される起源でもある。
法:
- 神性: 3 / ドメイン: 農耕 ・ 財物 ・ 台所の繁栄
- 権能:
- 農耕 → 村の収穫を自動成功。
- 財物 → 金銭流通の判定を有利に。
- 台所 → 食物・食糧関連のすべての判定にボーナス。
- ベース: 僧侶6〜8段 + 神性3。
- オオクニヌシとの関係: 民間信仰でほぼ同じ神として扱われる(ドメインの重なりのため混同が始まる)。ゲーム的には別個の神性として処理するが、一つの場面で同時に活性化しない。
#ビシャモンテン(毘沙門天)
表記: この節では七福神として日本信仰の中に風土化した呼称に従い、ビシャモンテンと表記する。仏教天部・四天王の文脈では、同じ尊格を毘沙門天/多聞天と呼ぶことができる。
香: インドのヴァイシュラヴァナ(Vaiśravaṇa)——四天王のうち北方天。仏教伝来で戦争神化。甲冑をまとい槍を持つ武装の姿。仏教の法の守護者。
「ビシャモンが守るのは一人の武者の命ではない。仏法そのものである。」——ビシャモン伝承
法:
- 神性: 3 / ドメイン: 戦争(仏教式) ・ 北方守護 ・ 悪排斥
- 権能:
- 戦争 → 攻撃判定の会心範囲 +1。
- 北方守護 → 北から来る脅威に対する探知・防御を自動。
- 悪排斥 → 祟り・妖魔1体を区域の外へ追い出す。
- ベース: 侍僧侶7〜9段 + 神性3。
- ハチマンとの関係: 双方とも戦争神だが担当が異なる——ハチマンは日本の武者(侍)個人と家門の守護神、ビシャモンテンは仏教の法の守護神。ハチマンは「この家の武者たちを守れ」という形で、ビシャモンテンは「仏法が迫害される側を守れ」という形で作動する。始祖も異なる(ハチマン: 天皇出身、ビシャモンテン: インドの四天王)。
#天神 — スガワラノミチザネ
#香
9世紀の学者・政治家スガワラノミチザネ(菅原道真, 845-903)。 平安朝廷の優れた文官だったが、政争に巻き込まれて九州に流された。流刑地で無念を抱いて死んだ彼は怨霊となって京都に戻った——宮廷に雷が落ち、彼の政敵たちが次々と病死した。
朝廷は恐れた。彼をなだめるために神格に昇格させた——これが祭神化。学者が怨霊を経て学問の神となったのである。本社は太宰府天満宮——現在の福岡地域、彼が流されて死んだ地。
「恨みが最も大きく響く者を、最も大きく祀らねばならない。」——御霊信仰の原理
天神は祟りと神の境界に立っている。 丁重に祀れば学問の神だが、恨みを刺激すれば今も落雷を呼ぶ。英霊 → 中神の祭神化の典型。
#法
- 神性: 3 中神 / ドメイン: 3
- ドメインと権能:
- 学問 → 智基盤の知識判定を自動成功。
- 正義・濡れ衣晴らし → 濡れ衣・讒言の判定に決定的証言。
- 雷(雷、残余) → 一つの対象に雷1回(祟りの残影——制御失敗の危険)。
- ベース:
- 主: 現人神5〜7段 + 中神。
- 断片: 学者・陰陽師4〜7段 + 神性2。
#GMノート
天神は祟りと神の境界に立つ神。正義をもって祀れば学問の神だが、恨みを刺激すれば依然として落雷を呼ぶ。シナリオフック: 濡れ衣を着せられた者が天満宮で祈るとき、PCたちが助けるべきか否か。
#熊野三山 — 熊野三山
#香
紀伊半島(紀伊半島 — 現在の和歌山・三重県の突出半島)の三大社:
- 熊野本宮大社 — 主神ケツミコノオオカミ(本来は仏教の阿弥陀仏が神道に習合)。
- 熊野速玉大社 — 主神クマノハヤタマノオオカミ(イザナギの別名という説)。
- 熊野那智大社 — 主神クマノフスミノオオカミ(イザナミ系)。
この三大社を順に歩く古代の巡礼路熊野古道が「聖なる道」である。平安時代から貴族・武者・僧侶・庶民の誰もがこの道を歩いた——穢れを清めるため、病を治すため、死ぬ前に一度の浄化を得るため。
「熊野に至れば、死者と生者の境界が最も薄くなる。」——熊野伝承
山の中を分け入る修行者(ヤマブシ・山伏)の拠点でもある。
#法
- 神性: 3 中神(三神の合算) / ドメイン: 3(三神が共有)
- ドメインと権能:
- 山岳修行 → 山岳地形の判定を自動成功。
- 浄化・再生 → 穢れ・呪い1件を除去(イザナギの禊の弱版)。
- 山と海の境界 → 熊野参詣路を時空間的に短縮。
#GMノート
熊野は「聖なる道」そのものがキャラクター。シナリオ中にPCが熊野参詣に上れば、複数の神が共に動く形で演出。参詣中に穢れを清める儀式を一度受ければ以後の判定にバフ。
#山王大神 — 山王
#香
比叡山の主神。 この山は日本仏教の中心であり神道の聖地——延暦寺の寺院と日吉大社の神社が同じ山に共存する。神仏習合の生きた証拠。
山王の使者は猿。日本民俗の「三猿」(見ざる・言わざる・聞かざる — 見ず、言わず、聞かず)のイメージのルーツの一つ。
「比叡山は二つの宗教の屋根の下で一つの山である。山王はその屋根を支える。」——比叡伝承
日本全域の「山王神社」の総本山。
#法
- 神性: 3 中神 / ドメイン: 3
- ドメインと権能:
- 山 → 一つの山地域内の判定に片目固定10。
- 仏教守護 → 寺院・僧侶関連の判定を自動成功。
- 猿の使者 → 情報収集・探知を自動成功(猿が代わりに見る)。
#GMノート
山王大神は「僧侶が介入する神」。純粋な神道的キャラクターよりも寺院との外交が似合う。延暦寺の僧兵が山王の名で動く場合もある。
#法 — 中神要約表
| 神 | ドメイン数 | 主領域 | 所属 |
|---|---|---|---|
| ベンザイテン | 3 | 芸術・学問・水 | 七福神(インド系) |
| エビス | 3 | 漁業・商業・福 | 七福神(日本固有) |
| ダイコクテン | 3 | 農耕・財物・台所 | 七福神(インド系・オオクニヌシ習合) |
| ビシャモンテン | 3 | 戦争・北方・悪排斥 | 七福神(インド系・四天王) |
| 天神 | 3 | 学問・正義・雷(残余) | 祭神化した英霊 |
| 熊野三山 | 3 | 山岳修行・浄化・境界 | 熊野山岳 |
| 山王大神 | 3 | 山・仏教守護・猿 | 比叡山 |
#香 — ひと言
「中神は地方の心臓である — 地方が脈打つかぎり、彼の名も脈打つ。」