#怨霊・死霊・呪い系統
目次
死んだ者がすべて妖魔になるわけではない。しかし名もなく死んだ者、誤って呼ばれた者、記憶されなかった者は門の前に長く立つ。
#導入断片 — 名もなき墓
村の裏手には墓が一つあった。墓石には何の文字もなかった。
子供たちはその墓を避けて通った。大人たちはそこに誰が埋められているかを語らなかった。毎年梅雨が来ると墓の土が少しずつ流れ落ち、そのたびに村人のうち一人が自分の名を取り違えた。
ある年、放浪の僧が墓石に「名を待つ者」と書いた。
その夜、村人たちは皆同じ夢を見た。甲冑を着た男が膝をついていた。彼は礼を言わなかった。ただこう言った。
「まだ私の名ではない。」
翌日、墓石の文字は消え、その下に小さな文字が一つ浮かび上がった。
違う。
#香 — 怨霊は復讐より正確さを求める
怨霊は単に怒った幽霊ではない。誰に殺されたか、何を奪われたか、どの名で呼ばれるべきか、どの儀式が欠けたかが重要である。怨霊事件を良い物語にするには「殺せば終わり」より「何を正すべきか」を定める。
#法 — 怨念の精度
| 精度 | 説明 | 解消 |
|---|---|---|
| 低 | 死の恐怖だけが残った。 | 退魔、葬礼、場所の浄化 |
| 中 | 加害者や品物を覚えている。 | 真実の公開、遺品の回収 |
| 高 | 名、紋章、時間、一言に縛られた。 | 正確な名と謝罪、封印条件 |
| 歪曲 | 怨念が別の対象に移り付いた。 | 誤った噂を正さねばならない |
#変形データ — 名ある怨霊
[名ある怨霊]
条件: 怨霊・怨霊 (オンリョウ)・甲冑怨霊。
効果: 自分の名が現場で呼ばれるとき、次の `[霊体]` 攻撃 +1。
代価: 正確な生前の名と死の経緯が明らかになれば、防備 -1、制圧力 -1。
解消: 名、死、未解決の義務の三つのうち二つを正せば、戦闘なしで退くことができる。
#代表ステータス: 無碑将
#香
戦場で死んだ武将の姿だが、どこか空虚だ。甲冑はかつて格を備えた者のものだが、家紋があるべき位置は擦り切れて消え、兜の内の顔は文字の抜け落ちた墓石のように虚ろに空いている。手にした槍は柄のみで、刃は霧に沈んで輪郭だけが朧げだ。近くに立つと、彼が誰であるかを思い出そうと努めても、名がひとつ最後まで口に引っかかって出てこない。
声は低く乾き、同じ問いを繰り返す——我を何と呼ぶか。誤って答えれば、その瞬間に味方の名すら舌から滑り落ちる。匂いは雨に濡れた鉄と掘り返した土。墓辺の冷たく湿った空気が彼を取り巻き、斬っても霧へ散り、一歩横で再び結ぶ。怒りより先に来るのは憐れみだ。この存在は復讐に来たのではなく、自らの墓石に刻まれる正確な一行をまだ受け取れず、立ち去れずにいる。
無碑将 (無碑將) — 将
戦力4, 防備15, 活力9
勇+2, 技+1, 智+2, 美+2
制圧力 +4
| 技法 | 類型 | 活力 | 判定 | 効果 | 限界 |
|---|---|---|---|---|---|
| 名なき槍 | [攻撃] | 2 | 2d10+勇 >= 防備 | [霊体]。1戦力。対象の次の交渉判定 -1 | - |
| 誤った碑文 | [型] | 3 | 2d10+美 vs 対象 2d10+智 | 失敗した対象は1呼吸のあいだ味方の名を呼べない。分隊命令不可 | 間合1回 |
| 甲冑の霧 | [技法] | 予約2/即興3 | 2d10+技 >= 敵攻撃 | 被撃無効。成功時、隣接区域へ移動 | - |
特殊: 正確な名 — 生前の名を正確に呼び、死の経緯を公開すれば、この戦闘のあいだ 誤った碑文 を使用できない。
#黄泉心府変形
怨霊が個人の死だとすれば、黄泉心府系統は死の行政である。閻魔童子、醜女、イザナミの種子、混流の破片、夢喰い は怨念を解いてやるだけでは終わらない。これらは門の向こうの法、追跡、夢、破片を携えて来る。
#閻魔童子の判決文
[閻魔童子の判決文]
条件: 閻魔童子、または黄泉の裁判を代理する将級怨霊。
効果: 戦闘開始時に罪状を一つ宣言する。その罪状に当たる行動をした対象は最初の防御判定 -1。
代価: 判決文が偽りであるか、欠落した証拠が現れれば、閻魔童子系統の次の判定 -2。
解消: 罪状、証拠、執行者を分けて反論すれば封印儀式の目標値 -2。
閻魔童子は倒す敵というより、再び閉ざすべき門に近い。戦闘に勝利した後でも判決文を焼けなければ、同じ罪状が別の村で繰り返される。
#黄泉追跡隊
醜女 と イザナミの種子 を共に使うときの追跡変形である。
[黄泉追跡隊]
条件: 霊界接面、心府、葬礼失敗地域。
効果: 逃走場面で追跡判定 +1。対象が戦力回復を使った場面の後には、次の登場時に制圧力 +1。
代価: 生者の名を三つ以上誤って呼べば、追跡隊は1場面のあいだ方向を見失う。
解消: 追跡対象が生者か死者かを公的に証明すれば追跡が断たれる。
イザナミの種子は死を好んで来るのではない。「すでに死んでいるべき者」という行政の誤りを整理しに来る。だから説得の焦点は善悪ではなく、生死判定の根拠となる。
#夢喰う破片
夢喰い と 混流の破片 を結合した心象型変形である。
[夢喰う破片]
条件: 宿営地、病床、悪夢、閉じていない小さな門。
効果: 小康段階に登場すると、回復を受けた対象1体と美で対立。失敗した対象は次の場面の最初の判定 -1。
代価: 夢の原本の品物を見つければ、この変形は直接攻撃ができない。
解消: 同じ夢を三人が互いに異なって記録すれば、破片の名が分裂して制圧力 -1。
夢喰いは戦闘より休息を侵食するときに恐ろしい。回復そのものを禁じず、「休んだのに何を失ったか」を残す。
#霊界の門
怨霊と死霊にとって門は 流れ去るべきものが塞がれた場所 である。葬礼が断たれた墓、名が消された墓石、偽りの記録、戻れなかった遺体が門を逆流させる。
門を閉ざす方法はたいてい撃破ではなく整理である。
- 遺体の収拾。
- 名の記録。
- 誤った罪名の削除。
- 加害者の承認。
- 断たれた祭礼の回復。
#派閥対応
| 勢力 | 対応 |
|---|---|
| カグラ藩 | 危険地域を封鎖し軍事的に制圧する。怨念解消は遅れることがある。 |
| 比叡連 | 最も定石的な解決者。葬礼、読経、解脱、封印を担う。 |
| エンリョ館 | 怨霊の言葉を聞いて記録を照合する。真実を明かすことに強い。 |
| 尾羽山 | 怨霊を道具として使うことを厭わないが、名ある怨霊は予測しがたい。 |
| 堺座 | 遺品取引で事件を悪化させることがある。時には遺品回収の鍵となる。 |
#運用 — 怨霊を強くする法
怨霊を強くするときは被害量より 解決難度 を高める。
| 強化 | 効果 |
|---|---|
| 名の分裂 | 複数の名で呼ばれ、弱点を見つけにくい。 |
| 偽りの加害者 | 本当の加害者が隠されていて退魔が失敗する。 |
| 遺品の流通 | 遺品が複数の地域に売られて怨念が分散する。 |
| 劇場化 | 怪談と公演で怨霊の名が広まる。 |
#締めの言葉
怨霊は死んだ者ではない。まだ正しく呼ばれていない名である。


