#第3章 2幕 — 煮える湖の航海
目次
風が熱い。水が赤い。航路の右手から、帆を下ろした別の船が近づいてくる。その船の名に覚えがある。
本編参照
- 参考: 幽霊 / 怨魂
補遺内
- 戦場: 12-06 妖魔図鑑
- NPC: 12-05 幽霊船船長カサクラ
#幕メタカード
| 項目 | 値 |
|---|---|
| セッション | 10セッション目 |
| 推定時間 | 3~4時間 |
| 主な舞台 | 煮え湾 — 海面上 |
| 戦闘可能性 | 中程度 (2~3件) |
| 主要遭遇 | 幽霊船カサクラ、叫喚水面爆発、蒸気幽霊群 |
| ボス | なし (交渉中心遭遇1件) |
| 核獲得可能 | 2~3個 (中級) |
#2幕の目標
煮える湖を渡り、ミズウラ廃墟上空まで到達する。途中で遭遇する二つの幽霊船と水面爆発を経由する。
- 航路決定 (安全・直航・交渉)
- 幽霊船カサクラとの遭遇 (交渉中心)
- 叫喚水面爆発対応
- 廃墟上空到着、3幕水中進入準備
#2幕航路の構造
[出航地点: 領地北端水門]
│
航路選択
┌────┼────┐
[A航路] [B航路] [C航路]
安全長距離 直航短距離 暗礁迂回 (中級核散乱)
3遭遇 2遭遇 4遭遇
│
[中間イベント]
- 幽霊船カサクラ遭遇 (必須)
- 叫喚水面爆発 (ランダム0~2回)
- 蒸気幽霊群 (可能性)
│
[目的地: ミズウラ廃墟水上]
#判定: 航路選択 (2d10+智+航海)
- 目標値 9 (海図と星の組み合わせ)
- 成功時: 望む航路を選択 + 遭遇回数 -1 (海上運)
- 失敗時: 遭遇回数 +1
航路別特徴:
| 航路 | 遭遇数 | 核散乱 | 備考 |
|---|---|---|---|
| A (安全長距離) | 3 | 中 | 時間遅延 (-1日追加滞在) |
| B (直航短距離) | 2 | 低 | 危険回避可能性 |
| C (暗礁迂回) | 4 | 高 | 核豊富、船体戦力損傷可能 |
#2幕場面順
#場面 1 — 最初の時間 (15~20分)
状況:
出航後半日。領地は視界から消えた。四方に赤い海。水面から水蒸気の柱が立ち、大気は汗を乾かさない。
船内の雰囲気を描写。PC間の会話を促す。蒸気幕着用義務を公表 (未着用時は蒸気昏迷判定)。
#環境判定: 蒸気適応 (集団)
- 2d10+體+強健, 目標値 9
- 全員成功: 全員適応。以後判定補正なし。
- 1~2人失敗: 該当PCに「蒸気昏迷」状態 (3間合)
- 全員失敗: 船内雰囲気悪化。船員NPC(ガクテンまたはハツベ)が1回補助判定を求められる。
#場面 2 — 最初の遭遇: 蒸気幽霊群 (30~40分)
状況:
水面上3mの高さの蒸気の中から、顔のない形体がいくつも浮かび上がる。彼らは叫喚地獄の煮える水に長く沈んだ魂の上層凝結体。知性はないが、船を自分たちの仲間と誤認してまとわりつく。
戦闘遭遇 — 詳細: 12-06 煮える海水霊
#遭遇条件
| 航路 | 遭遇確率 |
|---|---|
| A | 75% |
| B | 50% |
| C | 90% |
#戦闘核心
- 蒸気幽霊は物理半減、退魔・浄化に弱い
- 船上戦闘 = 水面落下危険。落下時1戦力火傷
- 3間合生存時、蒸気が太陽光に押され自然解消 (選択肢)
- 交戦3間合終了時、核1~2個獲得 (中級)
#判定: 浄化儀式 (ガクテンなど僧侶NPC支援時)
- 2d10 + 智 + 退魔または呪術のうち高い熟練度 >= 11
- 成功: 戦闘回避。蒸気幽霊が悲鳴を上げて解体。核1個獲得。PC全員、心の揺らぎ +1 (悲鳴感染の代替)。
- 失敗: 通常戦闘進行。
#場面 3 — 叫喚水面爆発 (20~30分)
状況:
水面下から圧力が満ちる音。熟練船員(ハツベ)なら即座に見抜く — 「蒸気爆発だ、右舷へ!」
#判定: 航海回避 (2d10+智+航海)
- 目標値 11 (B航路は目標値 9、C航路は目標値 13)
- 成功: 爆発回避。船体戦力そのまま。
- 部分成功: 爆発にかすめる。船体戦力 -1。
- 失敗: 直撃。船体戦力 -3。甲板PC 1人を選び、2戦力火傷 + 水面落下判定(2d10+技+歩法, 目標値 9)。
#水面落下時
- 煮える水の最初の間合: 2戦力火傷 (防熱軽甲着用時1戦力)
- 二つ目の間合以後: 2戦力/間合
- 救助判定: 船上PCが次のうち有利な判定を行う。
2d10 + 智 + 航海 >= 9/2d10 + 體 + 強健 >= 9(ロープ投げ) - 3間合内に救助失敗時: 該当PCは活力0到達危険 — 「沈黙符」消費で1間合遅延可能
#爆発後副産物
爆発地点に叫喚水核 1~2個が浮かび上がる。中級核。回収判定 目標値 9。
#場面 4 — 幽霊船カサクラ遭遇 (45~60分) ★ 中心
状況:
航海中、水蒸気の壁から別の船が滑るように現れる。帆はぼろ布のように垂れ、三角旗にカミジョウ家の宗門がかすかに刻まれている。船上には網をかぶった船員たち六人。彼らに顔はない。ただ一人、背が高く肩幅の広い船長が船首に立っている。
彼が手を上げる。
「久しぶりだな。領地の旗を。100年ぶりか。」
幽霊船船長カサクラ(笠倉) — 詳細: 12-05 カサクラ
#遭遇構造
この遭遇には戦闘可能 / 交渉可能 / 回避可能の三経路がある。
#(1) 回避試行
- 判定:
2d10 + 智 + 航海または感知のうち高い熟練度 >= 13 - 成功: 幽霊船が消える。核収穫機会なし。ただし3幕水中探索で不利補正(-1)。
- 失敗: 回避不可。幽霊船が接舷。
#(2) 交渉経路
カサクラは100年前のミズウラ漁村の船長だった。漁村が「領地によって封印された日」、彼は海上におり、帰れなかった。彼は真実をすでに知っているが、それを直接は言わない。PCが正しい質問をしなければならない。
交渉トピック (PC質問):
| 質問 | 反応 | 得る情報 |
|---|---|---|
| 「あなたは誰か?」 | 「ミズウラの最後の船の船長。」 | 漁村名 · 100年前の事実 |
| 「この水はいつから煮えている?」 | 「あの夜からだ。それ以前は青い海だった。」 | 過去の漁村が実在 |
| 「領地はあなたに何をした?」 | 沈黙。3秒。「……君が知るべきことは、水の下にある。」 | 封印暗示 |
| 「私たちに望むことがあるか?」 | 「私の船員たちを解放してくれ。それだけだ。」 | 交渉合意条件 |
| 「なぜ君たちは戻れなかった?」 | 「帰る家が水の下へ沈んだからだ。」 | 感情的接続 |
#判定: 交渉核心 (2d10+美+交渉)
- 目標値 11
- 領地の旗所持時 +1 (旧主の子孫として認識)
- 成功: 「案内契約」締結 — カサクラがミズウラ廃墟まで同行。3幕水中進入時、道案内提供 (判定 +2)。
- 部分成功: 通行許可のみ。同行なし。
- 失敗: 関係硬化。3幕で再遭遇時、敵対可能性。
#交渉合意条件 (カサクラの要求)
- 漁村廃墟で彼の船員6人の遺骨を回収せよ
- 遺骨を領地へ返送し、正式な葬儀を行え
- カサクラ本人はこの湖に残る
PCがこの条件を受諾すると、彼は自分の航海日誌一枚を破って渡す — [ハンドアウト #3] 前兆。
#(3) 戦闘経路
カサクラと船員6人との海上戦闘。推奨しない — この遭遇の報酬の大半は交渉・憐憫経路から出る。
戦闘ステータス要約 (詳細 12-06):
- カサクラ: 将級幽霊船船長。推奨戦力 4、防備 15、活力 12。特殊: 「悲鳴の鞭」 (3区域攻撃)
- 船員6: 卒級分隊1個(戦力 1、結束力 3)。煮える網攻撃。
勝利報酬: 上級核1個。ただし3幕水中探索時、カサクラの呪いにより判定 -2補正。
#ハンドアウト #3 前兆 (カサクラの日誌断片)
「慶長7年(1602)、夏の終わり。漁村は三日間静かだった。私が戻った時には、すでに浜辺は覆われていた。領地の旗が砂の上に立っていて、その下に — 多くのものが埋まっていた。私は名を呼びながら振り返り、波が私を呑んだ。その夜から海が煮え始めた。」
この断片は封印の存在を暗示するが確定しない。 プレイヤーに「何が覆われたのか」と質問させる伏線。
#場面 5 — 暗礁と核収穫 (C航路限定) (20分)
C航路選択時のみ発生。
状況:
水面上に黒い岩群が突き出ている。岩の隙間で中級核がいくつも光っている。
#判定: 暗礁通過 (2d10+智+航海, 集団)
- 目標値 13
- 成功: 核3~5個収穫。船体戦力そのまま。
- 部分成功: 核1~2個。船体戦力 -1。
- 失敗: 核なし。船体戦力 -2。船の操舵手(ハツベまたはPC)が1戦力ダメージ。
追加イベント: 暗礁の間から小さな沈んだ魂1~2体が浮かび上がる — 単純戦闘または無視。
#場面 6 — 廃墟上空到着 (15~20分)
状況:
午後後半。水面上に半ば水の外へ浮いた柱群が見える。崩れた鳥居の上部、屋根瓦の端。それがミズウラ(水浦)廃墟の水上部だ。
船を停泊できる場所 — 崩れた神殿柱にロープを結ぶ。
#判定: 停泊 (2d10+智+航海)
- 目標値 9
- 成功: 安定停泊。3幕開始時、船損失の懸念なし。
- 失敗: 停泊不安定。3幕中、風変化時に「船移動」事件1回発生可能。
#セッション終了直前描写
「帆を畳む。日が傾く。蒸気が赤い光を反射する。水面の下に、君たちは古い神社の鐘塔が水中にぼんやり見えるのを見る。100年間鳴ったことのない鐘が、揺れている。風もなく。」
#2幕終了条件
- ミズウラ廃墟上空で停泊完了
- カサクラ遭遇終了 (交渉・戦闘・回避)
- PC全員生存 (または死亡1人以内)
- 水門・呼吸符残量3枚以上
達成時、3幕 水中残骸探索へ進入。
#2幕失敗分岐
| 失敗項目 | 対処 |
|---|---|
| 船体戦力1以下 | 3幕進入前に修理場面追加 (2d10+技+解除, 目標値 11) |
| カサクラ敵対化 | 3幕水中探索判定全般 -1補正 |
| 蒸気幽霊戦闘失敗 | PC 1人が「悲鳴感染」状態で3幕開始 |
| 符残量不足 | 3幕滞在時間短縮 (1時間未満) |
#2幕主要判定要約
| 場面 | 判定 | 難易度 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 航路選択 | 2d10+智+航海 | 9 | 遭遇数に影響 |
| 蒸気適応 | 2d10+體+強健 | 9 | 蒸気昏迷抵抗 |
| 浄化儀式 (代案) | 2d10+智+退魔/呪術 | 11 | 戦闘回避 |
| 蒸気爆発回避 | 2d10+智+航海 | 9~13 | 航路別差異 |
| 交渉 (カサクラ) | 2d10+美+交渉 | 11 | 中心揺らぎ確認 |
| 回避 (カサクラ) | 2d10+智+航海/感知 | 13 | 交渉不可時 |
| 暗礁通過 (C航路) | 2d10+智+航海 (集団) | 13 | 核収穫可能 |
| 停泊 | 2d10+智+航海 | 9 | 廃墟到着 |
#2幕獲得可能アイテム
| アイテム | 獲得方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 中級核 2~5個 | 戦闘・暗礁・爆発 | 結界戦力 +1/個 |
| 上級核 1個 | カサクラ戦闘勝利時 | 結界戦力 +2/個 |
| カサクラの日誌断片 | 交渉成功 | ハンドアウト #3 (封印暗示) |
| 悲鳴の鞭 (武器) | カサクラ戦闘勝利時 | 2戦力、「悲鳴感染」付与可能 |
| 叫喚水核 | 爆発後収穫 | 水中呼吸符制作材料 (2個につき1枚) |
#幽霊船カサクラ — 遭遇トーンガイド
#外見
- 身長5尺8寸 (約175cm) — 当時基準では長身
- 肩幅が広く、腕が長い
- 髭が水晶のように固まっている (水に100年いたため)
- 瞳はまだ温かい — 船員たちとは違い
- 着ているものは古い日本式漁夫服。塩が白く覆っている
#口調
- 遅い。一言を言って2~3秒休む。
- 過去形を多く使う。「あった」「生きていた」
- 感情が乗ると声が細くなる
- 「ミズウラ」、「帰れなかった」の二語に特に弱い
#プレイヤーが見逃しやすい手がかり
- 彼の宗門はカミジョウ家の支派である。つまり領地の過去の家臣だった。
- 彼が戻った時、「砂の上の旗」があった — 領地軍の痕跡
- 100年前、この湖は青い海だった
#GMコツ
- カサクラへ「かわいそうさ」を過度にまとわせないこと。彼は尊厳を保つ。
- 交渉時、絶対に先に封印石へ言及させない — プレイヤーが発見すべき道。
- 彼の最大秘密: 「私もまた領地の血を分けた者である」。5章エンディングで明かされる。
#2幕のトーンと雰囲気
#キーワード
- 不快な暑さ — 領地の涼しい春から突然この場の蒸す熱気へ。体感差を強調。
- 静寂と悲鳴の対比 — 水面は静かだが、耳を澄ますと遠くから悲鳴が反響して聞こえる。
- 時間の歪み — カサクラとの会話中、プレイヤーは「これは現在の出来事なのか」が曖昧になる感覚。
#雰囲気作りのコツ
- 水蒸気の臭い描写 — 鉄・血・塩・腐った海藻
- 船の軋みを継続的に音響として言及
- 船員NPCの沈黙で緊張を強調 — ハツベが普段と違い口数を減らす
#避けるべきこと
- アクション過多 — この幕はカサクラ交渉が中心。戦闘は3件以内。
- 真実の性急な開放 — 封印・100年前・領地の罪などは3幕で発見されるべき。2幕は伏線だけ。
#2幕エンディング朗読文 (GM用)
「闇が降りる。水面の上には柱のような蒸気がまだ浮かんでいる。船は廃墟の骨組みに結ばれて揺れる。水の下、鳥居の上部がかすかに見える。鐘が一度、二度、風もなく鳴る。明日の朝、君たちはその下へ降りる。カサクラの言葉が耳に残る。— 君が知るべきことは、水の下にある。」
#GMチェックリスト — 2幕完了条件
- [ ] カサクラの宗門がカミジョウ家と接続する暗示が最低1回
- [ ] 水面下の漁村存在がプレイヤーへ視覚的に伝わった
- [ ] 蒸気環境の物理がPCに体感された (状態効果1回以上)
- [ ] 核2個以上獲得 (3幕滞在費用充当)
- [ ] 次セッション3幕開放のための呼吸符残量3枚以上確保
「帰れなかった船長は、海の北の果てで100年の間、同じ問いを呟いていた。」 — カサクラの船員の囁き、船が通り過ぎた後に聞こえる