日本語版 v1.3.3 · fc-doc

#公家と武家

目次

Fiction-Only + RP Guide. 本文書は公家/武家の区分を散文で提示し、PCビルドの進入点を提示する。詳細ルールは第5章メカニックに委ねる。


#導入断片 — 筆と弓

公家は筆を取り、武家は弓を取った。同じ事件を前に、一方は称号を直し、もう一方は鞍を直した。

「妖魔が東の邸宅に入りました。」使者が報告した。

公家の官吏はまず紙を探した。「その邸宅の所有権は誰にある? 朝廷に先に知らせる事か、藤原家に先に知らせる事か?」

武者はもどかしげに弓弦を確かめた。「人が死んでいます。先に参ります。」

官吏が顔を上げた。「行ってもよい。だが誰の命で行ったかが整わなければ、戻った後にお前の功が罪となることもある。」

武者はしばし止まった。筆と弓は互いを嘲ったが、平安の夜には双方が必要であった。文書を待てば人が死に、文書を無視すれば秩序が死ぬ。その間で公家と武家の緊張が始まる。

#香 — 二つの軸の社会

平安は二つの軸で転がった。一つの軸は 公家 — 朝廷の貴族。もう一つの軸は 武家 — 武者の家。四百年の間、二つの軸の重さは絶えず移動した。初めは公家が頂点に、武家が辺境にあった。終わりには武家が都に入城し、公家はその後ろへ退いた。

本巻の人物五人は二つの軸に散らばっている。道真・式部・晴明は公家に近く、頼光と清盛は武家に属する。その五人の位置を見れば平安社会の形が見える。


#公家 — 筆と笏の人々

朝廷の貴族。天皇家・藤原家・その他の名門。公家の職務は 朝廷儀式・文書行政・外交・宮廷儀礼である。武器の代わりに 筆・笏・官服 を取る。

#公家の日常

  • 和歌 — 31音の定型詩。社交の核心。和歌一首が一人の評判を定める。
  • 管弦 — 宮廷音楽。琵琶・横笛・笙。
  • 物語の聴取 — 侍女が読み、貴族が聴く。
  • 香分別 — 複数の香を嗅いで名を当てる。
  • 占卜 — 陰陽師に任せるが、結果を聴くのは公家の権限。

#五つの名門(本巻の括り)

本巻は平安公家の代表的な家門五つを次のように括る — ただしこれは本巻の説明のための括りであって固定のCanon分類ではない。

家門漢字本巻登場
藤原藤原道長・道真の政敵時平・清盛の敵対者
頼光・頼朝・義経(武家分岐)
清盛・重盛(武家分岐)
大江大江学者家門。道真とは別。
清原清原学者家門。式部の同時代人。

源と平は本来、皇族(天皇の後裔)が臣籍へ降下した家門である — すなわち出発は公家であったが次第に武家へと変わった。「公家から武家への分岐」が平安後期を理解する核心である。


#武家 — 弓と刀の人々

武者の家。弓と刀を取る。しかし平安を通じて彼らの身分は公家より低かった。

#武家の位置

  • 公家の護衛階級 — 「侍」=「侍る者」。本来は公家邸宅の護衛武者を指す言葉。
  • 領地経営者 — 都の外の辺境で私的武力により土地を守った。
  • 公家に依存 — 領地名義・昇進・官位すべて公家の手にあった。

#源と平

二つの武家の代表。どちらも 公家から武家へ分岐した皇族後裔である。

  • 源(源氏) — 清和天皇系が嫡流。東国武者。頼信→頼義→義家を経て頼朝へ連なる河内源氏の系譜。
  • 平(平氏) — 桓武天皇系が伊勢平氏へ。西国武者。将門→清盛→重盛。

11~12世紀の武家は政治の中心へと浮上した。保元の乱(1156) で武家が天皇家・藤原の紛争を決し、平治の乱(1159) で源が平に敗れ、平治の乱以後 清盛が武家として初めて太政大臣に昇った — 公家の座に武家が直接昇った事件である。

#侍という言葉

「侍」の漢字表記「侍(さむらい)」の字は「傍らに仕える」という意味である。平安の侍は本来 公家の傍らを護衛する者であった。武士道という倫理はまだなかった。流鏑馬と一騎打ちの美学がその座を埋めた — 詳しいルールは fc04-05-01-samurai.md


#二つの関係 — 権威と武力の非対称

公家武家
権威(低い)
武力(低い)
資源領地名義・官位私的武力
都居住標準護衛に限定
活動儀式・外交・文学土地経営・戦闘

この非対称は平安を通じて維持され、清盛が破った。武家が公家の座(太政大臣)に直接昇ったその瞬間が均衡の終わりであり、その終わりから平安の終わりまでは一世代余りであった。


#扱う逸話

#藤原道長(966~1027)

権力の頂点。「この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」 — 彼が詠んだ和歌が平安頂点期の自己認識である。同時に彼の寝所にはしばしば闇が宿り、晴明がそれを浄化しに入った。

#源義家(1039~1106)

「八幡太郎」 の別号で呼ばれた武家の英雄。前9年・後3年の役で東北を平定した。しかし公家の待遇は微々たるもので、彼の受けた官位は彼の軍功に比べてつまらぬものであった。武家の怒りが積もり始めた時点である。

#平将門(?~940)

10世紀中葉、東国で「新皇」 を自称し朝廷に反旗を翻した。一年も経たず鎮圧されたが、武家が朝廷に反抗しうるという可能性 を初めて示した者であった。死後、彼の首が京都で斬られて晒され、その首が東国へ飛んでいったという伝説が生まれた — これは平安怨霊文化の一つの原型である。


#ゲーム適用 — PCビルドの進入点

本巻の平安キャンペーンのPCは二つの軸のいずれにも属しうる。

#公家PC

既存職業の変形として実装する。新規職業ではないco の学者・陰陽師・風水師・芸人・現人神を平安宮廷に合わせて運用する。詳しいガイドは fc04-05-02-kuge-class.md

#武家PC

co の侍職業を平安変形で運用する。剣術ではなく流鏑馬(弓馬) が本業である。詳しいルールは fc04-05-01-samurai.md

#分隊構成

平安キャンペーンの妙味は二つの軸の協業である。公家PCは情報・人脈・交渉を、武家PCは戦闘・護衛・執行を担う。公家PC 1~2 + 武家PC 1~2 + 陰陽師PC 1 の構成が理想的である — 酒吞童子討伐団(頼光 + 4天王)が概ねこの形であった。


#参照

#co — 職業

#fc04 内



筆は刀より弱かったが、刀が誰に向かうかは筆が定めた。