#安倍晴明
目次
Fiction-Only + Canon (fc04 内部限定). 本文書の主級シートは fc04 内部限定 Canon —
co-04-07-04-onmyoji.md陰陽師職業本体と衝突時、本編優先。
#導入断片 — 見えない客
道長の寝所に入った晴明は、まず挨拶をした。部屋の中には主人のほかに誰もいなかった。従者はその姿を見て背中が冷えた。
「誰に挨拶されるのですか。」従者が問うた。
晴明は符を畳みながら答えた。「出て行ってくれと頼む客にだ。」
道長は咳を呑み込んだ。「追い出せるか。」
「追い出すのは容易です。問題は誰が招き入れたかです。」晴明は寝所の隅の香炉を見た。「香が甘すぎます。甘いものは人だけを呼ぶのではありません。」
従者が顔を強張らせた。「では犯人がいるのですか。」
晴明は首を振った。「犯人という言葉は人間に便利です。今夜はまず闇の通路を閉じます。人の罪はその後に問うても遅くはありません。」
彼が符を貼ると、部屋の中の空気が少し軽くなった。誰も見なかった客が礼を尽くして退いたようだった。
#香 — 寝所の闇を浄化する者
長保4年のとある春の夜。藤原道長の寝所。上等な茶の香が冷めていく時刻、道長が眠りにつけない。天井のどこかから黒い流れが降りてくる。形がない。しかし見ずにはいられない。
道長が人を呼ぶ。人は一人だけだ。
晴明が入ってくる。背は低く背中がやや曲がり、目だけが深く生きている。彼が寝所の真ん中に座る。符も刀も持たない。一言の真言だけを唱える。聞こえるのか聞こえないのか分からない短い音。
黒い流れが止まる。一呼吸、二呼吸。それがゆっくりと抜けていく。入ってきた場所へ戻る。
道長が眠る。晴明が席から立ち上がる。寝所を出る前に彼が一度天井を見る。そこに — 式神一体が吊り下がっている。晴明のものだ。
「ご苦労」 と彼が言う。「明日の夜も」。
#核心データ
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名前 | 安倍晴明 |
| 生没 | 921~1005 (84歳) |
| 時代 | 平安中期頂点期 |
| 活動 | 村上・冷泉・円融・花山・一条天皇5代奉仕 |
| 所属 | 陰陽寮 → 藤原道長側近 |
| 流派 | 晴明派陰陽道 (正統) |
| 死後 | 土御門家門へ継承 |
#生涯
#出生伝説
晴明の母は人間ではなく 白狐 であったという伝説がある。河内(あるいは摂津)のとある神社に宿った狐が人間の姿で一人の陰陽師と縁を結び、その間に生まれたのが晴明だというもの — 後世の潤色だが、晴明の非凡さを説明する最も有名な話だ。
本巻はこの伝説を 否定も肯定もしない。 晴明の母が誰であったかは、彼の神秘さの一部として残しておく。
#陰陽師入門
本格的な入門は 賀茂忠行 の弟子となったことに始まる。賀茂は当代陰陽師の巨匠。幼い晴明が行列に付いていき百鬼夜行に気づいて賀茂に知らせた逸話がある — 「見る目を持つ者」 の最初の印であった。
#5代天皇奉仕
晴明は村上・冷泉・円融・花山・一条天皇の五代にわたって奉仕した。九十近く生きたからこそ可能であったことだ。最後に奉仕した天皇一条の時代(986~1011)に藤原道長の頂点期が重なり、晴明は彼の最も近い霊的顧問となった。
#道長との生涯の協力
道長の寝所に宿った闇を晴明がしばしば浄化したという逸話がいくつも残っている。道長の日記『御堂関白記』 にも晴明の名が繰り返し登場する。権力の頂点にいた者の傍らに陰陽師がいたということ — 平安頂点期の風景だ。
#逸話
#式神12体
晴明が操るという 式神十二体の伝説は最も有名な描写だ。日常で一体二体の式神を傍らに置いて歩き、必要なときに十二体すべてを呼ぶ。橋の下に式神を置いたという「一条戻り橋」逸話もここから出る。
#式神を恐れた妻
晴明の妻は式神を恐れて自分の居所には入れさせなかったという逸話。晴明が外出するときだけ式神を呼び、家に帰ると橋の下に置いて入ってきた — 偉大な陰陽師の家庭事の一片。
#「今日誰が死ぬか」
晴明を試しに来た者が「今日誰が死ぬか」と問うと、晴明が一人の名を答える。その人がその日本当に死ぬ — 占卜の正確さを強調する逸話。ただし後世には「晴明がその人を直接殺した」という黒色変形も登場する。
#道満との関係
晴明のライバルは 蘆屋道満 だ。道満は道満派異端陰陽道の代表 — 詳しくは fc04-02-03-onmyodo.md 参照。
伝説上、晴明と道満の間には次の二つの逸話が両方ある — どちらが本物なのかは明らかでない。
- 晴明が道満を殺害した 逸話 — 道満が術法で晴明を試して敗れ殺害される。
- 道満が晴明を殺害した 逸話 — 晴明が道満の術法にかかって死んだが、別の陰陽師が彼を蘇らせる。
本巻の処理: 二派の代表的人物として両方とも実在として扱う。直接衝突逸話は夜話形式で — どちらが正解だと定めず、キャンペーンの GM が採用できる二つの変形として置く。
#死亡と後世
晴明は1005年に84歳で死亡した。その後、陰陽道の本家は 土御門家門 へと続いた — 晴明の子孫だ。土御門家門は平安後期・鎌倉・戦国・江戸時代にわたって日本陰陽道の正統を自任した。
晴明は自分の時代に生きていた他の誰よりも 後世に生き残った。 鎌倉以降の伝承、江戸の浮世絵、現代の J ホラー・漫画・小説(夢枕獏『陰陽師』 など) まで — 日本陰陽師の代名詞として果てしなく再登場する。
本巻 fc04 が扱うのはその後世変形ではなく 平安時代を生きた本人の姿だ。後世の幻想はしばし傍らに置き、921~1005 の84年を直接見る。
#人物シート (Canon — fc04 内部限定)
Canon (fc04 内部限定). 本シートは本巻のキャンペーン用。
co陰陽師職業本体と衝突時、本編優先。
安倍晴明 — 本職 陰陽師10段 (または9段 + 学者特技借用)
戦力: 5 (3 + 体1 + 強靭1)
防備: 13 (官服・結界補正)
活力: 13 (10 + 技3)
能力値: 勇+0, 技+3, 体+1, 智+3, 美+3, 運+2
流派: 晴明派陰陽道 (正統、免許 + 秘技)
制圧力寄与: +5
#主要特技
- 式神使役 (陰陽師1段自動) — 式神1体常時同伴
- 結界の達人 (自体免許) — 結界詠唱、活力 -1 割引
- 占卜 (陰陽師5段選択) — シナリオ1回、GM 情報1段階
- 不動の陣 (陰陽師7段選択) — 自分・味方の強制移動無効
- 強靭 (体補正) — 戦力算定 +1
#シグニチャ — 12式神陳列
固有技法. 晴明だけの秘技。本巻以外の他の陰陽師 PC は使用不可。
| 技法 | 類型 | 活力 | 限界 | 効果 |
|---|---|---|---|---|
| 12式神陳列 | 整備 | 活力 6 | 戦闘1回 | 式神12体同時召喚。12体が一分隊のように行動 (頼光4天王級分隊効果1戦闘)。終了時すべて消滅。 |
| 真言一撃 | 形 (智) | 活力 3 | — | 2d10+智+陰陽 ≥ 防備。命中時 2戦力。妖魔限定追加 N戦力 (N = 詠唱者の陰陽熟練)。霊的本質直接打撃。 |
| 式神の視野 | 素養 | 活力 1 | — | 同伴式神1体を通して遠距離視野。移動距離無関係。1 呼吸の間維持。 |
#シナリオ活用 — 「晴明と戦うには / 仕えるには」
晴明は 剣豪ではない (陰陽師だ). しかし fc03 剣豪列伝の「戦うには / 仕えるには」形式をそのまま適用する。
#晴明と戦うには
本巻の NPC で最も強力な対象の一つ。正面対決はほぼ不可能。次の三経路のうち一つが必要:
- 式神分散 — 12体が同時に集まらないように。一人の位置を囮に式神を分散させ、本体晴明の活力を消尽。
- 結界破り — 晴明の居所には自分の結界がある。結界内では詠唱活力が -1 割引される (目標値 13、難しい)。彼を結界の外へ引き出さねばならない。
- 道満派の逆呪術 — 最も正攻法。道満派陰陽師を同盟または敵に置き、彼の逆呪術で晴明の結界を破る。
PC 単独では難しい。分隊作戦 + 道満派同盟 + 一時間以上の決闘シナリオが必要だ。
#晴明を師として仕えるには
PC が陰陽師志望生のとき。
- 陰陽師職業 + 正統道徳 — 本職陰陽師 PC。黒心・魔心 PC は拒絶。
- 藤原側人脈 — 道長家門またはその側近の推薦が必要。
- 占卜試験 — 晴明が PC に占いを立て「この者が陰陽道に適するか」を見る (目標値 17、極難、2d10+智+美)。失敗してももう一度機会。
成功時: PC は晴明の正式な弟子となる。晴明派追加呪術の一部秘技を伝授されうる — 詳しくは fc04-05-03-onmyodo-seimei.md の「流派特典」。
#魔人転生整合
co-09-adventures/co-09-10-mahoujin-reincarnation.md の5英霊はすべて剣豪であり、晴明は未登場だ。
ただしそのシナリオの呪術師 油塚源蔵が「本職7段 (複合経歴) — 陰陽師・醜女の使い・妖理人特技借用」 の道満派変形の模範だ。本巻 fc04-05-04 道満派 NPC デザインの戦国時代変形として互換される。
#一言で
「彼が呼ぶ式神は見えないが、彼が浄化した闇は見えなく消える。」
#参照
#co — 職業・シナリオ
co-04-character/co-04-07-classes/co-04-07-04-onmyoji.md— 陰陽師職業本体co-09-adventures/co-09-10-mahoujin-reincarnation.md— 魔人転生 (5英霊は剣豪。晴明未登場。呪術師「油塚源蔵」 = 本職7段複合経歴 — 道満派変形の模範)
#ex2 — 陰陽スペル
ex2-35-spell-system/ex2-35-03~ex2-35-08— 陰陽1段~達人ex2-35-spell-system/ex2-35-15-barrier-spells.md— 結界ex2-35-spell-system/ex2-35-16-prophecy-spells.md— 占卜・予言
#fc 先行巻
fc01-04-00-divine-regalia-and-rites.md— 神器・呪術 (神依託など)
#fc04 内
fc04-02-03-onmyodo.md— 陰陽道概観fc04-05-03-onmyodo-seimei.md— 晴明派追加呪術fc04-04-03-tamamonomae.md— 玉藻前 (正体暴露者の泰親は晴明5世代子孫)
晴明が遺したものは符ではなく、闇を読む法であった。
