日本語版 v1.3.3 · fc-doc

#霊界の門 — 平安モデル

目次

Campaign Module (fc04 内部限定). 本文書は fc02-01-03-realm-split.md の戦国霊界モデルを上書きしない。平安時代用の代替背景であり、co の世界観 Canon より低い権威。時代ごとに異なるモデルを置くことが本文書の目的。

霞む門と百鬼夜行の道筋


#導入断片 — 薄い天井

貴族の屋敷の天井には古い染みがあった。雨漏りでもなく、煙が上ったわけでもなかった。ところが夜ごとにその染みは少しずつ動いた。

侍女が梯子を持ってこようとすると陰陽師が止めた。「触れてはなりません。あれは上にあるものではありません。」

「天井の染みが上にあるのでなければ、どこにあるのですか?」

陰陽師は長いあいだ答えなかった。やがて低く言った。「重なっています。この部屋の天井と、別の夜の床が。」

その瞬間、染みから水滴が一つ落ちた。畳に触れた水滴は濡らさずに黒く滲んだ。部屋の中の皆が息を止めた。

平安の霊界は遠い場所に開いた門ではない。宮廷の天井、屏風の裏、寝所の闇のように、すでに生活空間と重なっている。手を伸ばせば届くほど近いから、なお恐ろしい。

#香 — 天井の影

延久のある秋の夜。とある藤原分家の住まい。一人の貴族が自分の寝所で眠っている。一時間ほど経った真夜中 — 彼が目覚める。目覚めて、天井を見る。

天井に — 影がある。

影は人の形でも獣の形でもない。ただの黒い跡であり、跡が天井に貼り付いているのではなく天井の内側から彼を見ている。貴族が手を合わせて真言を唱える。彼が身につけたただ一つの真言 — 母から受け取ったもの。彼がそれを唱えるあいだ影は彼を見るだけだ。真言が終わると影が — 消える。

翌日、彼が陰陽師を呼ぶ。陰陽師が寝所を調べる。「結界が弱いです。天井に符を貼りましょう。」陰陽師が符を貼って去る。その後、影は二度と来ない。

貴族はその事を自分の日記に記さない。平安では — そういう事がよくある。日記に記すほどの事ではない。


#本文書の位置

戦国時代 (fc02-01-03-realm-split.md) = 「霊界の門が大きく開いた」 — すべての妖魔が同じ世界にいる。

平安時代 = 別のモデルが必要だ。本文書は平安の霊界の「開き方」を定義する。

「至るところに霞んだ門」 — 霊界は閉じてはいないが大きく開いてもいない。


#平安の霊界の三つの特徴

#1. 霊界と現世の境界が薄い — しかし閉じてはいない

平安は境界が霞んだ時代だ。閉じた門がないのではなく — 門が至るところにある

至るところ:

  • 山中 (山岳の修行地)
  • 川辺 (橋の付近)
  • 峠道 (大江山のような山裾)
  • 橋 (四条橋・羅生門)
  • 宮城の外郭 (清涼殿すら — 道真の落雷)
  • 寺院 (天台宗・真言宗の寺院の儀礼の場)

「宮城の清涼殿すら霊界の門」 — 道真の落雷 (930年) がそれを証明する。都の中の最も護られた場所でも霊界が開く。

#2. 百鬼夜行 = 霊界が一時的に現世へ入り込む

fc04-02-01-hyakkiyako.md の百鬼夜行が本モデルの最も鮮明な事例だ。

  • 定まった時間 (夜の子の刻あたり)
  • 定まった道 (四条橋・大江山の分かれ道など)
  • 人間が道を譲れば — 共存可能
  • 人間が符・構えをよく知れば — 安全

霊界が「開く」のではなく — 霊界が「一時的に現世へ入り込んで戻る」。人間はその時間にその道を譲れば生き延びる。

#3. 霊的な権力者 (天皇・貴族) は霊界と直結

天皇 = 神の後裔 (fc01-02-01-koshin.md 皇神)。 貴族 = 神性に近い者。

この神性との距離が公家 PC が霊的事件によく出会う理由だ。上の「香」の藤原分家の貴族が天井の影を見たこと — 偶然ではない。彼が神性に近い者だから霊界が彼を見た。


#戦国 vs 平安 — 比較表

戦国 (fc02)平安 (fc04)
霊界の門大きく開く至るところに霞んだ門
妖魔の活動都市・戦場に直接山・外郭・夜に
人間の対応剣・銃・戦争陰陽道・結界・呪術
様相広域・集団個別・優雅
核心職業侍・忍び (戦闘)陰陽師・学者・風水師 (霊的)
シナリオ軍事・戦場宮中・山岳・橋

霊界が「大きく開く」戦国時代と「至るところに霞んだ門」の平安時代 — 二つのモデルは同じ世界の異なる時間だ。


#ゲーム適用

#シナリオ導入

「霊界の門が開いた」ではなく 「霊界が常に傍にあり、時おり触れる」

PC が平安の都を歩く真夜中、山中の寺院を過ぎる正午、後宮の寝所を護衛する明け方 — 霊界は常に傍にある。PC の日課の中で「時おり」それが触れる。

#妖魔遭遇

無作為・集団よりも — 儀礼的・個別的。一度に一つの妖魔。行列は百鬼夜行のような定まった行事。山中の討伐は酒吞童子・茨木のような明確な敵。

#陰陽師職業が核心

fc04-02-03-onmyodo.md の陰陽道が平安の霊界の核心の道具だ。結界で霊界の門を閉じ、浄化で霊界の侵入を洗い、占卜で霊界の手がかりを読む。

戦国時代に侍がいるなら、平安時代には陰陽師がいる。


#シナリオガイド

#霊界事件の手がかり

  • 占卜 — 陰陽師 PC の定期占卜での黒色の星座
  • — PC の夢に繰り返される一つの影
  • 幻影 — PC が起きているあいだに短く見たもの
  • 予感 — 武士 PC が一つの方向から「何かがいる」と感じるもの

この四つのうち一つが陰陽師 PC (または別の霊的 PC) に触れる — それがシナリオの始まり。

#結界儀礼 — シナリオのクライマックス

霊界があまりに近く触れた場所で陰陽師 PC が結界儀礼を施す。活力・戦力の両方の費用が可能:

項目処理
結界の施術施術者 活力 N (施術費用。通常 活力 4~10、結界の段階に応じて)
施術時間時間単位の休息 (即時ではなく 1 呼吸~1 シナリオ)
失敗時施術者 戦力 -N (反作用ペナルティ)
結界効果 (成功時)霊界進入を遮断 — 妖魔進入時にその妖魔の活力 -N (活力効果。詳しくは fc04-05-03 の結界スペル)
  • 結界施術費用 = 活力 N (行動力)
  • 結界失敗の反作用 = 戦力 -N
  • 結界効果 (妖魔進入の遮断) = 活力効果 (妖魔の行動力)

#霊界の向こうの存在が PC に直接影響

= 戦力被害 (精神被害を含む)。活力には影響しない。


#フィクション導入 (シナリオ開始の描写)

#後宮の影

真夜中。藤原道長の屋敷。一人の侍女が自分の住まいで眠れずにいる。住まいの片隅に — 影がある。一週間ずっと毎晩同じ刻に同じ場所にそれがある。侍女が陰陽師を呼ぼうとするが、自分が狂っているのだと疑われるのを恐れる。彼女はそれを自分だけが見ている — 他の侍女たちには見えない。

#山村の手がかり

とある山村。農民が一人、都に来て陰陽師に占いを問う。「我が村の裏山の古い祠が — 毎晩光ります。光が外に出てくるのではなく、内側で誰かが灯を点しているのです。祠には誰もいません。」陰陽師が占卜で見る — 祠の中に霊界の門が一つ開いている。


#一言で

「我々は常にそれらと同じ道を歩いている。ただ見ないだけだ。」


#トーン — 優雅な時代の暗い裏面

優雅な時代の暗い裏面。霊界は常に傍にある。

「見えないものを扱う者だけが本当の権力者。」

これは平安の陰陽師が権力の核心にいた理由を説明する。藤原道長が政治をしていた同じ刻に — 晴明が彼の寝所の闇を浄化していた。二人は同じ権力の二つの側面だ。


#後続巻との連動

  • fc05 (江戸)「霊界の門が閉じてゆく時代」。徳川の平和の時代の霊界変形モデル。室町・戦国・江戸へ進むにつれ霊界が次第に閉じてゆくという仮説。
  • fc09 (世紀末) + fc10 (都市)「霊界の門が再び開く時代」 (先祖回帰)。現代に平安の霊界が再び開くというモチーフ。

本巻はその後続モデルの平安式の原型を提示する。


#参照

#fc 先行巻

#fc04 内



平安の霊界は門ではなく薄い天井だ — 手を伸ばせば指先が濡れる。