#第12章 ソロアドベンチャー「最初の剣」
君はたった今、キャラクターを一人作った。さあ、そのキャラクターで一夜を歩いてみよ。
この章はGMなしに一人で読みながら進める番号文段ゲームブックだ。順に読む本ではない — 指示があるたびにその番号(¶)を探して跳ぶ。規則は一度に一つずつ開かれる。最初は賽二つとこの本と、たった今作ったシート一枚あれば足りる。
#始める前に
用意するものは10面体二つ、君が作った1段キャラクターシート、そしてこの本だ。ウェブビルダーで作ろうと、ウォークスルー3人(侍・陰陽師・芸人)のどれかをそのまま使おうと構わない。どんな職業でもこの夜を最後まで歩ける。
このゲームブックは判定を柔軟に指定する。「感知で振れ」ではなく「君の能力値のうち最も高いもので振れ」と書かれた箇所が多い。君のキャラクターが何であろうと、自分の強みでこの夜を切り抜けよ、という意味だ。規則用語が初めて出たらその場で短く説明し、もっと知りたければ戦闘規則の章(→ 第3章)を指し示す。
死なない。 この夜に君が倒れても物語は終わらない — 敗北した文段は別の分岐へ続くだけだ。気楽に振れ。ここで学んだ失敗が、本物の卓で君を生かす。
始めるには¶1へ行け。
#¶1
晩夏の日が山の稜線の向こうへ沈んでからしばらく経つ。君は国境の村烏澤(からすざわ)の入口に立っている。半日を歩いてきた脚が重い。村は奇妙なほど静かだ — 夕餉を炊く煙は昇るのに、犬の吠え声も子の泣き声もない。
懐には折り畳んだ紙一枚。隣郷の役所が貼った榜文だ。この半月のうちに烏澤で五人が消えた。夜に出て帰らなかった。仔細を明かす者に礼をする。 礼が目当てで来たのであれ、通りすがりであれ、いま君がここに立っていることだけは確かだ。
村の入口の井戸端で、一人の老婆が釣瓶を垂らしたまま君を見る。怯えた目だが、見知らぬ剣客を追い払いはしない。
- 老婆に消えた者たちのことを問うなら → ¶2
- 返事もせず村の奥へ真っ直ぐ入るなら → ¶3
#¶2
「消えた人たちの話なら—」老婆の声が掠れる。「あの裏山の竹藪だよ。みんなあっちへ行った。木を伐りに、茸を採りに。そして帰ってこない。昨日は孫六んとこの末の子が……。」言葉を継げない。
ここでこのゲームの最初の規則を開く — 判定だ。
規則解禁① 初の判定。 何かを試みて、成功が確実でも失敗が確実でもないとき、賽を振る。10面体二つを同時に振って合算する(2~20、平均11)。これに関連する能力値修正値(-3~+3)を加え、役立つ技能があればその熟練ボーナスも加える。その合が目標値以上なら成功だ。
2d10 + 能力値 + (技能) >= 目標値目標値はたいてい奇数だ。易しい7、普通9、標準11、難しい13。このゲームブックは目標値をその都度教える。
老婆の言が真か、怯えのあまり膨らませたものかを見極めてみよ。君の能力値のうち最も高いもので振る(人を読む事ゆえ美か智が似合うが、何でもよい)。目標値9(普通)。
- 合が9以上なら → ¶4
- 合が9未満なら → ¶5
#¶3
君は老婆を通り過ぎ、村の奥の道へ入る。幾軒か過ぎても戸は閉ざされ、蔀の隙間から視線だけが追ってくる。道の果てで一人の男が鋤を握って立ち塞がる。村の自警の頭、惣八(そうはち)だ。肩幅が広く目つきは険しいが、その険しさの下に疲れた恐れが透ける。
「剣客だな。役所から寄越されたか。」彼が鋤を下ろす。「止めはせん。だが心得ておけ — あの裏山の竹藪に何かがいる。人の形をしているから、なお性質が悪い。」彼は竹藪の方を顎で指す。「うちの若い者を四人、槍を持たせて守らせているが、あれらを相手取れるとは思えん。」
君は惣八から自警団の存在を知った。この夜が深まれば、その四人が役に立つだろう。
竹藪へ行くなら → ¶4
#¶4
君は村の裏手、黒く生い茂った竹藪の入口に立つ。竹が風もないのにさわさわと鳴る。地には足跡が乱れている — 村の方へ入った跡は幾つもあるのに、出た跡がない。老婆の言は真だった。
森へ十歩ほど入ると、足下で何かがちらつく。膝の高さの、朧で軽い形体ども。細い口笛のような音を漏らし、群れをなして君の周りを埋める。
(これが初の敵だ。恐ろしげに見えるが — じきに分かるように — 斬るまでもないものたちだ。)
続いてこのゲームの二つ目の規則、戦闘を開く。 → ¶6
#¶5
老婆の言は取り留めがなく、君は怯えた老人の誇張と真実を選り分けられない。「帰っておいで、帰っておくれ……」老婆が呟きながら釣瓶を取り落とす。井戸の底から、ドン、という音が昇ってくる。
失敗しても物語は進む — ただし備えなく。君は消えた者たちがどこへ行ったのか正確には知らぬまま、村の裏手の黒い竹藪だけを目で追う。そこへ行くしかない。
失敗も場面を作る。 このゲームは低い目が出て失敗した瞬間が次の場面を開くゲームだ。失敗を罰と思うな。備えの足りぬまま扉を開けるだけのことだ。
竹藪へ向かうなら → ¶4
#¶6
規則解禁② 初の戦闘 — 活力と呼吸。 戦闘には秒読み(カウント)がある。すべてのユニットは活力を持ち、活力が高いほど先に動く。君のキャラクターの活力最大値 = 10 + 技(技)だ。技+1なら活力11、技+0なら10。
君の番(カウント)が来たら一呼吸の間に行動する。一呼吸に使える活力は基本5までだ。その範囲で複数の動作(マヌーバ)を選んで組み合わせる — たとえば打刀の横斬り(2活力) + 横斬り(2活力) + 受け流し予約(1活力) = 5活力。
活力を使い切れば次のユニットへ移り、全員が活力を使い切ると小康段階が来た後、活力が最大値へ戻る。
いま目の前のもの — 雑鬼(ざっき)だ。スタットブロックを見よ。
雑鬼 (雜鬼) — 雑級
戦力 0、制圧力 +0.5
技法: なし。存在そのものが制圧力に寄与。
出典: co-08-02 §雑鬼 (雑)
戦力が0であることが要だ。
規則: 戦力と攻撃。 ユニットがどれほど多くの致命傷に耐えるかを戦力で数える。君の攻撃が相手の防備以上で命中すれば1戦力を削る。戦力が0になればそのユニットは倒れる。
2d10 + 勇(勇) + (武器技能) >= 対象の防備→ 成功 = 1戦力。ところが雑級は戦力が0ゆえ、攻撃を宣言するだけで即死する。振る必要すらない。
出典: co-03-05 §戦力 · §戦闘不能
雑鬼の群れに刀を振るうことを宣言せよ。判定はない。君の刀が一度掠めるたびに雑鬼が一つ霧のように散る。怯えるまでもないウォーミングアップだ — ただしここで呼吸を使う感覚を身につけておこう。
- 群れを急がず一呼吸ずつ着実に散らす(活力を惜しみながら) → ¶7
- 一気に畳みかけて群れを一度に払う(活力を注ぎ込む) → ¶8
#¶7
君は一呼吸に二度の斬り(各2活力)なら雑鬼二つ、三度なら三つ — こうして活力の届く分だけ斬る。一呼吸の基本限界は5活力ゆえ、2活力の斬りは一呼吸に二つが余裕で、三つ目は活力を超える。活力が尽きればその呼吸は終わりで、次のカウントを待つ。
なぜ一呼吸を超えてはいけないのか。 一呼吸限界(基本5)を超えて活力を使えば過負荷判定がかかる。雑鬼相手にそうする理由はないが、強い敵の前ではこの限界が生死を分ける。いまは「一呼吸にどこまで使えるか」だけを体に馴染ませておけ。
出典: co-03-04 §過負荷
二三度の呼吸を繰り返すと群れが払われる。落ち着いて、無駄なく。さらに深く入るなら → ¶9
#¶8
君は一呼吸に斬れるだけ畳みかける — 2活力の斬り二つで4活力、雑鬼二つが散る。残る1活力では三つ目を斬れない(すべてのマヌーバは最低1活力だが斬りは2活力だ)ので、その呼吸はそこで終わる。
活力はすなわち時間だ。 一呼吸に使える活力は定まっており(基本5)、使い切れば次のカウントを待たねばならない。畳みかければ早く片付くが、急な瞬間に残しておいた活力がなければ敵の一撃に応じられない。いまは代償がないが — じきにこの均衡が重要になる。
出典: co-03-04 §一呼吸 · §活力費用の処理
数呼吸で群れが払われる。派手だったが、活力を惜しむ術もじきに学ぶことになる。さらに深く入るなら → ¶9
#¶9
竹藪が深まるほど空気が重い。足下の土に黒い染みが増える — 乾いた血の跡だ。前方の空き地で灰色の形体が一つ、背を見せて蹲り、何かを啄んでいる。腹だけが太鼓のように膨れ、手足は枯れ枝のようだ。乾いた皮の擦れる音と、唾を飲む音が先に聞こえる。
餓鬼(がき)だ。雑鬼と違い、これは一撃では散らない。
餓鬼 (餓鬼) — 卒級
戦力 1、防備 10、制圧力 +2 (分隊5体)
技法:
- 爪裂き — 2d10 + 勇(+0) >= 防備 | 1戦力。彼我無関の攻撃。
- 狂乱噛み — 2d10 + 體(+0) >= 防備 | 被害なし。対象の次の攻撃 -1 (恐怖)。
出典: co-08-02 §餓鬼 (卒)
この餓鬼は群れから離れて独りで徘徊していた奴だ。指揮官なしに単独で徘徊する卒級の妖魔は活力10として扱うので、自らカウントに参加して君へ向かって駆けてくる。
出典: co-08-02 §放浪妖魔 (指揮官なしの卒/練)
餓鬼が人の気配を感じてはっと振り向く。飢えで爛々と光る目が君を向く。いまや君と餓鬼の活力秒読みだ。
- 君の活力が餓鬼より高いなら(技+1以上なら活力11以上 → 君が先) → ¶10
- 君の活力が餓鬼と同じか低いなら(技+0以下) → ¶11
#¶10
いまや君の呼吸だ — 活力が高くて君が先に動いたのであれ、奴の初撃の爪を躱して番を得たのであれ。餓鬼が再び構えを取る前に刀を入れられる。
攻撃を振れ。武器を持った手そのままで — 2d10 + 勇 + (剣術やその武器の技能があればそのボーナス)。餓鬼の防備は10だ。槍を持つキャラクターなら槍の突き(勇)、短刀なら突き(勇)で振ればよい。素手なら体術の打撃(勇)だ。
- 合が10以上なら → ¶13
- 合が10未満なら → ¶14
#¶11
餓鬼が君より速い。カウントは高い活力からゆえ、餓鬼が先に駆け込む。奴が爪を立てて跳びかかる — 爪裂き、2d10 + 勇(+0)で振る。君の防備以上なら君は1戦力を失う(PCの基本防備は鎧なしで10、軽甲を着ていれば12だ)。
餓鬼の代わりに君がこの判定を振って結果を確かめよ(ソロでは敵の振りも君が代わりに振る)。振った合に勇修正値は0を加える。
- 餓鬼の合が君の防備未満なら(外れ) → ¶10
- 餓鬼の合が君の防備以上なら(被弾、1戦力損失) → ¶12
#¶12
餓鬼の爪が君の肩を掠める。戦力1を失った。シートに記せ。痛むがまだ立てる。
今度は奴が身を晒した。反撃の呼吸が来たので、いよいよ予約防御という三つ目の規則を学ぶときだ。 → ¶15
#¶13
君の切っ先が餓鬼の枯れた胴を貫く。戦力1の卒級ゆえ、一度の命中で倒れる。餓鬼が枯葉のように崩れ、黒く消え失せる。
息を整える間もなく、竹藪の奥からまた別の気配が起こる。低い野犬のような姿勢で草叢を滑る影。今度のものは先ほどと違う — これを相手取るには防ぐ術を知らねばならない。
防御を学ぶなら → ¶15
#¶14
君の刀が虚空を切った。餓鬼が横へ身を捻って躱した。飢えた獣の反射は速い。次の瞬間、奴が爪を立てて食い込んでくる。
ここで学ぶことは防ぐ術だ — 闇雲にまた斬る代わりに、相手の一撃を受け流す技。 → ¶15
#¶15
規則解禁③ 予約防御。 武器には攻撃技法だけでなく防御技法も付いている。刀の「受け流し」、槍の「牽制」、盾の「盾防御」のようなものだ。防御技法は二通りの仕方で使う。
- 予約: 自分の呼吸の内であらかじめ活力を支払って防御の構えを取っておく。こうして予約しておけば、敵の攻撃が飛んできたとき0活力で発動する(すでに払ったのだから)。
- 即興反応: 予約していないのに急いで防ごうとすれば、基本費用の1.5倍(四捨五入)をその場で払わねばならない。
刀の受け流しは予約1活力 / 即興2活力だ。予約された防御は一度発動すれば消耗する。
君に防御技法のある武器(刀・槍・短刀・盾など)があれば、次の呼吸をどう使うか選べ。武器がないか素手なら体術の「押し出し」を使う。
- 防御をあらかじめ予約しておく(活力を先に払う) → ¶16
- 予約せず、敵が撃てばそのとき即興で防ぐ → ¶17
#¶16
君はこの呼吸に防御技法を予約する。刀なら受け流し予約に1活力、槍なら牽制予約に2活力。刀を斜めに立てて相手の軌道を待つ構えだ。
草叢を滑っていた影が跳び上がる — 野狐の姿、妖狐(ようこ)の仔だ。爪を立てて君へ駆け込む。予約しておいたおかげで君は0活力で受け流しを発動する。2d10 + 技(技)が奴の攻撃判定以上なら完全に無効だ。
振れ。妖狐の仔の攻撃判定はすでに振ったものとして、目標値11とする。
- 合が11以上なら(受け流し成功) → ¶19
- 合が11未満なら(防げず) → ¶18
#¶17
君は防御を予約せず、攻撃の構えのまま相手を待つ。草叢を滑っていた影が跳び上がる — 妖狐(ようこ)の仔だ。爪が閃く。
急いで防ぐには今すぐ活力を払わねばならない。即興反応ゆえ基本費用の1.5倍 — 刀の受け流しなら2活力だ。予約しておけばただだったものを、急いで反応するせいで余計にかかる。これが予約と即興の違いだ。
即興で受け流しを振る。2d10 + 技、目標値11。
- 合が11以上なら(防いだ、代わりに活力を余計に使った) → ¶19
- 合が11未満なら(防げず) → ¶18
#¶18
防御が遅れた。妖狐の仔の爪が君の前腕を掠る。1戦力を失う(シートに記せ)。しかし奴も深く食い込みすぎたせいで身を晒した。次は君の番だ。
いよいよ反撃だ — そして反撃の瞬間、このゲームで最も劇的な規則に出会う。 → ¶20
#¶19
刀と爪がぶつかり合う。君は相手の軌道を正確に読んで流す。妖狐の仔が弾かれて着地し、牙を剥く。被害はない。予約しておいたのであれ急いで防いだのであれ、防いだものは防いだのだ。
いまや奴が隙を見せた。反撃の呼吸 — ここでこのゲームで最も劇的な規則に出会う。 → ¶20
#¶20
規則解禁④ 会心と失着。 2d10を振ったとき二つの賽が同じ目なら(例: 6と6)ゾロ目だ。ゾロ目は10回に一度の割合で出て、判定の成功/失敗と組み合わさって劇的な結果を作る。
- ゾロ目 + 成功 = 会心(会心)。 攻撃なら戦力を2削る(通常の二倍)。
- ゾロ目 + 失敗 = 失着(失着)。 構えが崩れて無防備状態になる(防備 -4、次の自分の番まで)。
そして運(運)能力値があれば運命介入が使える。振った直後、賽一つの目を±1調整する。たとえば5と4が出たなら4を5へ押し上げて5-5ゾロ目を作り、会心を狙える。介入回数は運修正値の分だけ、運が低くても戦闘ごとに最低1回は保証される。
妖狐の仔に反撃せよ。2d10 + 勇 + (武器技能)、妖狐の防備は11だ。振った二つの目をよく見よ。
- 二つの目が同じで(ゾロ目)命中成功なら → ¶21
- 二つの目が同じで(ゾロ目)命中失敗なら → ¶22
- ゾロ目でなく命中成功なら → ¶23
- ゾロ目でなく命中失敗なら → ¶22
運を使いたいなら: 二つの目が一つ違い(例: 5-6)で出て命中にも成功したなら、運命介入で5を6へ押し上げてゾロ目を作り、¶21へ行ける。運のあるキャラクターなら、この一手が会心を招く。
#¶21
会心だ。 二つの賽が同じ目を指し、切っ先が完璧に吸い込まれる。相手の隙、君の呼吸、刀の軌跡が一点に収束する刹那。妖狐の仔は戦力1のものだったが、会心の2戦力はそれを一息に凌ぐ。奴が真っ二つになって黒い霧へと散る。
その場に束の間の静寂。君はいまこのゲームの心臓を見た — 一度の振りが盤面を覆す瞬間を。
森の奥から人の声が聞こえる。若い男たちの切迫した叫び。 → ¶24
#¶22
失着だ — あるいはただ外れただけだ。二つの目が同じだったなら(失着)君の構えが崩れて無防備になった。防備が -4へ落ち、新たな構えも防御予約もできない。次の君の番が来れば自動で解ける。ただ外れただけなら無防備はないが、妖狐の仔はまだ生きている。
奴が機を逃さず再び食い込んでくる。爪が掠める — 1戦力を失う(無防備だったなら躱すのは難しかっただろう。シートに記せ)。
それでも妖狐の仔は疲れた獣にすぎない。次の呼吸に再び刀を入れれば — 今度は振るまでもなく — 奴はすでに傷だらけで倒れる。黒い霧が散る。
倒れても死なない。 たとえこの夜じゅう打たれ続けて戦力が0に至ったとしても、このゲームブックで君は死なない。しばし膝を突くだけで、物語は次の文段へ続く。気楽に進め。
森の奥から人の声が聞こえる。若い男たちの切迫した叫び。 → ¶24
#¶23
君の刀が妖狐の仔の胴を正面から斬った。会心ではなかったが、戦力1のものには一度の命中で十分だ。奴がキャン、という声とともに黒い霧へ散る。
小気味よい一手だった。会心の華やかさはなかったが、必要なことを正確にやり遂げた。
森の奥から人の声が聞こえる。若い男たちの切迫した叫び。 → ¶24
#¶24
竹藪をかき分けて進むと小さな空き地が現れる。槍を持った若い男が四人、背を合わせて蹲っている。惣八の言っていた村の自警団 — いや、ここまで追って入ってきたようだ。彼らの目は恐怖で揺れる。槍先が四方を狙うが、何を狙えばよいのか分からない。
「剣客の旦那!」一人が叫ぶ。「あれらが — あれらが顔をしてるんです。消えた人たちの顔を! どれが本物なのか—」
君はここで分隊を得る。この四人をどう操るかが次の戦いを分ける。 → ¶25
#¶25
規則解禁⑤ 分隊の味見。 分隊は自ら動かない — 指揮官(君)が自分の呼吸に分隊命令を下さねば動かない。命令の費用は2活力で、智(智)が +2以上なら1活力へ減る。
分隊は数字一つで管理する — 結束力(士気)だ。この自警団の結束力は低い(怯えた村人ゆえ2)。結束力が0になれば分隊は崩壊して散る。指揮官である君が倒れるか、分隊の半数が死ぬか、恐怖を被るたびに -1ずつ削られる。
初の夜には命令一つだけ知ればよい — 一斉攻撃: 分隊が指定した一つの標的に槍を集めて突く。判定
2d10 >= 対象の防備で振り、命中すれば卒級一つを除去する。
烏澤自警団 — 卒級5名 (民兵変形)
戦力 1、防備 10、結束力 2、制圧力 +2
- 一斉槍撃 [戦術:型] — 分隊命令 → 2d10 >= 対象の防備、卒級1除去
- 盾壁 — 分隊命令 → その区域の制圧力 x1.5、その間合移動不可
スタットは co-06-06 卒級民兵分隊の規格に従う。出典: co-06-06 §卒級分隊 · co-08-01 §難易度基準
君がこの四人の指揮を執ると告げると、震えていた槍先が少し引き締まる。そのとき空き地の向こう側から — 消えた村人たちの顔をしたものが一つ二つと歩み出てくる。
空き地の向こう側のものと対峙するなら → ¶26
#¶26
空き地の向こう側から五つの形体が歩み出てくる。消えた村人たちの顔だ — 木を伐りに行ったという若者、茸を採りに行ったという女房、孫六んとこの末の子。しかし足取りがどこか噛み合っておらず、足下に影が差さない。妖狐の群れの偽装だ。
君の自警団に一斉槍撃を命じよ。妖狐は鎧がなく防備が低い — 指定した一匹に対して 2d10 >= 11(妖狐の防備)で振る。結束力2を使うのではなく、命令活力(2、智+2なら1)を君が払う。命中すれば偽装した妖狐が一つ正体を現して散る。
一度の一斉槍撃で妖狐の群れの数が減る。しかし偽装の剥がれた妖狐が一つ、村人の顔を歪めて自警団へ牙を剥く — 己の隣人の顔が獣に変わるのを見た若者たちの槍先が再び震える。
ここで結束力が試される。 → ¶27
#¶27
妖狐の威嚇に自警団が揺らぐ。妖魔の恐怖に晒された分隊は結束力が削られうる — 小康時の精神耐性に失敗すれば -1だ。結束力2から始めたこの怯えた四人には、一度の -1も骨身に応える(0になれば崩壊して散る)。
指揮官である君がこの瞬間をどう扱うかで分かれる。
- 先頭に立って妖狐を迎え斬る — 指揮官が先に危険を引き受ければ分隊は勇気を得る。自警団の結束力は2で維持される。 → ¶28
- 自警団を後ろへ退かせ、君が独りで防ぐ — 四人は安全だが、隣人の顔をしたものを背に退いた恐怖が残る。自警団の結束力を1へ下げて記せ。 → ¶28
#¶28
君の選択どおり自警団が構えを立て直す。どちらであれこの四人はまだ散っていない — 結束力が1でも残っている限り、最後の戦いで一斉槍撃を命じられ、この者たちが君の命を救う余地がある。
残る妖狐たちが後ろへ退き、その後ろから最後の一つがゆっくりと歩み出る。他のものより大きく、九つとはいかずとも三筋の尾がちらつく。この群れの母だ。
それが口を開く — 消えた村長の声で。「刀を収めよ、旅人。私はただ腹が空いていただけだ。」
ここでこのゲームの最後の規則 — そしてこのゲームの心 — に出会う。 → ¶29
#¶29
規則解禁⑥ 三道六心。 この世界には善悪の整列表がない。代わりに、人が何のために刀を取るのかを三つの道(三道)と六つの心(六心)で示す。いま君の前の妖狐の母は一つの局面だが、君がどの心で立っているかによって三筋の反応が開かれる。
- 眞(眞) — 玄道の心。 妖魔も自然の一部だ。共存と対話を試みる。
- 覇(覇) — 礼道の暗い心。 秩序のために脅威を除く。村を守るにはこれを斬らねばならない。
- 慈(慈) — 空道の心。 妖魔さえ苦しむ存在だ。斬ろうとも憎まない。
どの心が正しいかは定まっていない。君のシートに記した心があればそれに従ってもよいし、いまこの場で新たに選んでもよい。三つとも物語を前へ押し進める。
出典: co-02-02 §三道六心体系 · §眞 · §覇 · §慈 · §キャラクター作成時の心選択
妖狐の母が村長の顔で君を見る。五人を喰らったのがこれだ。しかしその目には獣の飢えとともに、何か疲れた気配もある。
- 眞(眞) — 「なぜここへ下りてきたのか申せ」と、斬る前に問うなら → ¶30
- 覇(覇) — 言葉は要らぬ。村を守るには今斬る → ¶31
- 慈(慈) — 斬るものの、憎んでではない。奴に最期を告げて討つ → ¶32
#¶30
眞の道だ。 君は刀を下ろさぬが、狙いもつけぬ。「なぜ山から下りてきた。竹藪に狩るものがなかったか。」
妖狐の母が束の間たじろぐ。その顔の偽装が揺らぐ。「……山が枯れた。霊脈が涸れ、我らの喰らうものが残らなかった。それゆえ人の顔を借りた。」それの声に、村長のものではない、古い獣の響きが混じる。
君が対話の扉を開いたおかげで、この戦いは別の結末を持ちうるようになった。しかし妖狐の母は飢えており、飢えた獣は退く前に試す。それが爪を立てる — 殺そうというのではなく、君が真に立ち向かう者かを見極めようとする一撃だ。
一度の小戦闘が残った。妖狐の母との最後の競り合いへ → ¶33
#¶31
覇の道だ。 対話は罠だ。これは五人を喰らい、放てば六人目を喰らうだろう。村の秩序を守ることが君の刀の理由だ。君は答える代わりに距離を詰める。
「刀を収めよと言った。」妖狐の母の声が低まる。偽装が剥がれて牙が現れる。「ならば — お前も良い餌だ。」それが三筋の尾を立てて飛びかかる。
躊躇がない分、初手は君のものだ。妖狐の母との最後の競り合いへ → ¶33
#¶32
慈の道だ。 君は刀を握り直しつつ、その顔を正面から見る。「お前が飢えているのは分かる。この顔の主たちも飢えてここへ来たのだろう。ゆえに憎みはしない。ただ — これ以上見過ごすことはできぬ。」
妖狐の母が訝しげに君を見る。憎しみも恐れもない刀を初めて見るように。「……奇妙な人間だな。」それがゆっくりと姿勢を低める。「ならば、お前の慈悲が私の爪より強いか見よう。」
憎しみなき競り合いが始まる。妖狐の母との最後の競り合いへ → ¶33
#¶33
妖狐の母 — 最後の小戦闘だ。 これは群れを率いていた強化された卒級だ。指揮官なしに徘徊する卒級の放浪活力規則に従って自らの活力を持ち、群れの母であるだけに通常の卒級より粘り強い。
妖狐母 (妖狐母) — 卒級 (強化・放浪)
戦力 2、防備 11、活力 10
勇+1、技+1
技法:
- 爪 (爪) — 2d10 + 技(+1) >= 防備 | 1戦力。
- 幻術回避 (幻術回避) — 防御、予約 1/即興 2 | 幻影で代替。成功時、被撃無効。
特殊:
- 変装 (變裝) [構え] — 消えた者に偽装。すでに看破済み(この戦闘では無効)。
妖狐(妖狐)卒級テンプレート(戦力 1、防備 11、技+1)を強化した放浪個体だ。戦力を群れの母の格に合わせて1→2へ上げ(練級の下限未満・卒級強化の範囲内)、放浪活力10を適用した。技法は元テンプレートの爪・幻術回避をそのまま移した。出典: co-08-02 §妖狐 (卒) · §放浪妖魔 · §等級別戦力(卒 1、練 2~3)
(推奨規則の再確認。) 君が学んだことをここで全て使う。
- 活力・呼吸: 活力最大値 10+技、一呼吸5まで。活力の高い方が先。
- 攻撃:
2d10 + 勇 + 武器技能 >= 11(妖狐母の防備)。命中 = 1戦力、会心(ゾロ目+成功) = 2戦力。- 予約防御: あらかじめ予約すれば0活力、急いで防げば1.5倍。
- 幻術回避に注意: 妖狐母も防御を予約する。君の攻撃が命中しても、奴が幻術回避(予約)を成功させれば無効になる — 二度、三度斬らねばならない理由だ。
- 分隊: 自警団の一斉槍撃(
2d10 >= 11)で母の戦力を代わりに削れる。ただし母の爪が自警団へ向けば結束力が危うい。- 運命介入: 運があれば決定的な瞬間に目を ±1調整して会心を狙え。
妖狐母の戦力2を0にすれば勝利だ。まず初撃を入れてみよ — 2d10 + 勇 + 武器技能 >= 11。
- 初撃が命中したなら(会心であれ通常命中であれ) → ¶34
- 初撃が外れたか、命中したが母が幻術回避を成功させたなら(ソロでは母の防御判定
2d10 + 技(+1) >= 君の攻撃の合も君が代わりに振る) → ¶35
#¶34
刀が妖狐母の体に触れる。会心(ゾロ目+成功)だったなら2戦力が一息に削られ、母はその場で崩れる — すぐに¶37へ行け。通常命中だったなら1戦力を削り、母は戦力1だけ残して牙を剥く。
戦力1が残った母が反撃する。爪、2d10 + 技(+1) >= 君の防備(鎧なしなら10、軽甲12)。この判定を振って確かめよ。
- 母の爪が君の防備未満なら(外れ) → 君は次の呼吸に止めの一撃を入れる。¶37
- 母の爪が君の防備以上なら(被弾、1戦力損失) → ¶35
#¶35
母が幻影に身を変えて君の刀を流すか、爪で撃ち返す。妖狐の幻術回避はこれだから厄介だ — 命中しても無効になるので、一度では終わらない。
ここで決着をつける方法は二つだ。
- 自警団の力を借りる — 自警団がまだ崩壊していないなら(結束力1以上)、一斉槍撃を命じる。
2d10 >= 11(母の防備)。命中すれば母の戦力を代わりに1削る。君の刀が流されても、四人の槍を幻術で全ては防げない。 → ¶36 - 運を賭して会心を狙う — 運のあるキャラクターなら、次の攻撃で一つ違いに逸れたゾロ目(例: 6-7)が出たとき運命介入で6を7に上げてゾロ目を作り、会心(2戦力)で一気に終わらせる。 → ¶36
#¶36
もう一度競り合う。自警団の槍が母の幻影の間を貫くのであれ、君の会心の一撃が三筋の尾を裂くのであれ — 母の戦力がついに0に至る。
もしその間に君の戦力が0に至っていたなら → ¶38へ行け(この夜に君は死なない)。そうでなければ → ¶37へ行け。
#¶37
妖狐母が最後の爪を空振りして崩れる。三筋の尾が黒い霧へと解け、借りていた村長の顔が剥がれる。その下に束の間 — 本当に束の間 — 老いて痩せた野狐一匹の真の姿が現れ、風に散る。
空き地に静寂が降りる。偽装していた妖狐たちは母を失うと指揮を失い、散って山へ逃げる。自警団の四人が槍を下ろして互いを見つめる。誰も死ななかった。
君が慈(慈)か眞(眞)の道を選んだなら、母が散る前に最後に呟くのを聞く。「……山が、枯れた……」その一言が次の物語の種になる。覇(覇)の道を選んだなら、君はその言葉を聞かぬまま、ただ村を救った。
エピローグへ → ¶39
#¶38
三呼吸が過ぎるまで妖狐母は幻術で君の刀を幾度も躱し、その間に奴の爪が君を崩した。君の戦力が0に至る — しかしこの夜に君は死なない。
膝が折れる瞬間、自警団の四人が — 怯えていたあの村人たちが — どこからそんな勇気が湧いたのか一斉に槍を突き出す。「旦那を守れ!」結束力の最後の一滴を燃やした一斉槍撃が妖狐母の脇腹を貫く。母が悲鳴を上げて黒い霧へ散る。
君が倒したのではない。しかし君がこの四人をここまで導いたからこそ、この四人が君を救った。敗北した文段が勝利へ続くこと — これがこのゲームの約束だ。
気がつく頃には、偽装していた妖狐たちはすでに山へ逃げた後だ。エピローグへ → ¶39
#¶39
エピローグ。
夜が明ける。君は自警団の四人とともに竹藪を歩き出る。井戸端の老婆が、鋤を握った惣八が、蔀の陰に隠れていた顔々が一つ二つと出てきて君を迎える。消えた五人は帰らなかったが — 彼らの顔を借りていたものは、もう夜に来ない。
君はいまこのゲームの骨格を全て体験した。判定(2d10 + 能力値 + 技能)、活力と呼吸(10+技、一呼吸5)、戦力(命中 = 1戦力、会心 = 2戦力)、予約防御(予約0活力 / 即興1.5倍)、会心と失着(ゾロ目)、運命介入(目 ±1)、分隊(命令・結束力)、そして三道六心(眞・覇・慈の岐路)。ここまで来たなら、君はもう卓に着く備えができた。
次の段階。
- 共にする者がいるなら — 戦闘規則の章(→ 第3章)へ戻って規則を正式に習得し、初のキャンペーンを準備せよ。たった今体験したものが、その章では完全な形で展開される。
- まだ一人なら — この本のソロモード神託規則へ行け。GMの座を代わる質問表と場面作りの手順があり、この夜のような冒険を自ら継いでいける。
- もっと強くなりたいなら — 成長の章へ行き、このキャラクターを2段へ上げてみよ。「山が枯れた」という妖狐母の最後の言葉が、次の冒険の糸口だ。
烏澤の夜は終わった。君の最初の剣はすでに抜かれた。
[終]
#段落マップ (GM・検証用)
以下は分岐無矛盾確認用の参照表だ。プレイ中は見る必要がない。
| マーカー | 開く規則 |
|---|---|
| 1 | 初の判定 — ¶2 |
| 2 | 初の戦闘 — ¶6 |
| 3 | 予約防御 — ¶15 |
| 4 | 会心/失着 — ¶20 |
| 5 | 分隊の味見 — ¶25 |
| 6 | 三道六心3分岐 — ¶29 |
| ¶ | 規則解禁 | 出る分岐 |
|---|---|---|
| 1 | 開始 | 2, 3 |
| 2 | ① 初の判定 | 4, 5 |
| 3 | (分隊予告) | 4 |
| 4 | (戦闘進入) | 6 |
| 5 | (失敗分岐) | 4 |
| 6 | ② 初の戦闘(活力・呼吸・戦力) | 7, 8 |
| 7 | (呼吸節約・過負荷予告) | 9 |
| 8 | (呼吸畳みかけ) | 9 |
| 9 | (卒級遭遇) | 10, 11 |
| 10 | (活力優先) | 13, 14 |
| 11 | (活力劣勢・被弾) | 10, 12 |
| 12 | — | 15 |
| 13 | — | 15 |
| 14 | — | 15 |
| 15 | ③ 予約防御 | 16, 17 |
| 16 | (予約) | 19, 18 |
| 17 | (即興) | 19, 18 |
| 18 | — | 20 |
| 19 | — | 20 |
| 20 | ④ 会心/失着/運命介入 | 21, 22, 23 |
| 21 | (会心) | 24 |
| 22 | (失着/空振り) | 24 |
| 23 | (平命中) | 24 |
| 24 | (分隊獲得) | 25 |
| 25 | ⑤ 分隊の味見 | 26 |
| 26 | (妖狐の群れ・一斉槍撃) | 27 |
| 27 | (結束力・恐怖の試練 — 選択が結束力 2/1を分ける) | 28 |
| 28 | (自警団再編) | 29 |
| 29 | ⑥ 三道六心3分岐 | 30, 31, 32 |
| 30 | 眞 | 33 |
| 31 | 覇 | 33 |
| 32 | 慈 | 33 |
| 33 | ボス小戦闘(初撃) | 34, 35 |
| 34 | (命中・反撃交換) | 37, 35 |
| 35 | (幻術回避・分隊/運決着) | 36 |
| 36 | (止め) | 38, 37 |
| 37 | (勝利) | 39 |
| 38 | (敗北=分隊救援) | 39 |
| 39 | エピローグ | [終] |



