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#第4章 区域戦術

目次

戦場は格子ではない。君が立つ場所は座標ではなく区域であり、どの区域に立つかが君の刀に何ができるかを定める。同じ打刀でも、前列で振るうときと心府で突くときとでは感覚が違う。この章は、五つの区域が君に何を許し何を阻むのか、そして敵が掌握した地にどう足を踏み入れるのかを扱う。

戦闘を回す前に、これだけ憶えておけ。どこに立っているかが、何ができるかを決める。


#1. 五つの区域

戦場は八つの区域に分かれるが、君が実際に往き来する軸は五筋だ。以下は味方陣営を基準とした配置である。敵陣営は左右対称に向かい合う。

8区域位相図

番号区域
1味方後列
2味方前列
3味方外郭
4敵前列
5敵後列
6敵外郭
7心府
8外部 (破線枠 — 戦場全体を囲み、特定の技法だけで出入り)
区域性格何が強くなるか
前列 (前列)主力がぶつかる交戦線。味方前列と敵前列は直接隣接する — 前列に立てば向かいの前列の敵をそのまま撃てる。槍のすべての技法 +1(槍壁構え時、制圧力追加 +1)、騎馬突撃技法は前列でのみ使用可能。ただし、短刀攻撃技法は -1(距離が開いている)。
後列 (後列)弓兵・鉄砲隊・指揮所がある比較的安全な後方。突破の終着点であり補給線。鉄砲/弓術技法 +1(安定した射撃姿勢)。実行者ごとに各間合で最初に使用する有料後列作業1回の活力 -1(最小1)。対象は鉄砲再装填・明示された装備損傷の修復・他の対象に使う医術技能/技法による戦力回復に限り、無費用の [整備] には適用しない。ただし敵が進入しない限り近接技法は使用不可。
外郭 (外郭)側面迂回路。隠密移動と奇襲の舞台。潜入関連技法 +2。外郭から隣接区域へ移動+攻撃すると基本奇襲(最初の攻撃判定 +2)。代わりに分隊命令技法は活力 +1(分散配置)。
心府 (心府)両軍が一つに絡み合う極限乱戦。規則が崩れる高リスク特殊区域。詳細な規則は§4。短刀・体術が王となり、長い武器は荷となる。
外部 (外部)戦場の外 — 霊界・地下・森の中。忍びと妖魔だけの領域。外部からどこへでも移動+攻撃すると強化奇襲(最初の攻撃判定 +2、対象は反応技法不可)。ただし特定の技法・特技だけで進入できる。

この五つのほかに、GMは地形に応じて高い所(遠距離 +2、近接 -1)・水中(体術 +2、火器不可、移動 +1活力)といった特殊区域を開くことができる。規則は同じ軸に従う。

出典: co-05-01 §基本区域構造、co-03-08 §1


#2. 移動 — どこへ行けるか

移動可否は隣接関係で判断する。隣接しない区域へは直接行けない。

現在位置行ける隣接区域
味方後列味方前列、味方外郭
味方前列味方後列、敵前列、味方外郭、心府
敵前列味方前列、敵後列、敵外郭、心府
敵後列敵前列、敵外郭
味方外郭味方後列、味方前列、心府
心府味方前列、敵前列、味方外郭、敵外郭
外部忍び・妖魔のみ進入。すべての区域と繋がるが自由移動は不可。

移動の活力費用(歩行・疾走・隠密移動・跳躍など)は第3章「活力と呼吸」に従う。区域ごとにどの移動が意味を持つかだけを要約すると、次のとおりである。

  • 隣接再配置: 歩行・疾走。前列・後列・外郭を往き来する基本軸。
  • 高い所への出入り: 跳躍。着地攻撃や射撃優位を作る。
  • 外郭潜入維持: 隠密移動。移動と潜入維持を併せて処理する。
  • 心府進入: 心府自由進入または心府強行突破。職業と技能によって費用とリスクが分かれる(§4)。
  • 外部運用: 外部進入。忍び・潜入名人を中心とした特殊軸。

出典: co-05-01 §隣接関係・§移動、co-03-08 §4


#3. 制圧力と突破

#3-1. 制圧力が君にすること

区域の主は刀ではなく数字で決まる。各区域は味方制圧力と敵制圧力を別々に計算し、ユニットの頭数と質、そしていくつかのボーナスの合計である。君が知るべきはその合計ではなく、合計が食い違ったときに君に何が起こるかだ。

味方制圧力 vs 敵制圧力状態君に及ぼす効果
味方 > 敵味方掌握敵がこの区域に入るには突破判定をしなければならない。君は自由進入。
味方 = 敵膠着両側自由進入。
味方 < 敵敵掌握君がこの区域に入るには突破判定をしなければならない。
差 5以上完全掌握突破目標値 +2。

掌握には利点独占が伴う。味方が前列を掌握すれば味方の槍は前列ボーナス(+1)を受けるが、敵の槍はそのボーナスを受けられない(ペナルティだけ適用)。前列を奪われれば逆になる。だから区域は単に「突破判定を強要する線」ではなく、先に立つ側がその地の利点を独占する場である。

制圧力は実時間で変わる。ユニットが進入・離脱したり、味方の卒が倒れたり、広域攻撃で多数が死傷すれば即座に再計算される。君のキャラクターの存在そのものも制圧力の一部なので、君がどの区域に立つかがその区域の主を変える。

出典: co-05-02 §制圧力の効果・§制圧力変動

#3-2. 突破 — 敵が掌握した地に足を踏み入れる

敵制圧力が味方より高い区域へ移動すると突破判定が自動的に発動する。

  • 費用: 基本移動 2活力 + 追加 1活力 = 合計 3活力
  • 判定: 2d10 + 勇(勇) >= 目標値
状況目標値
敵がやや優勢 (差 1~4) — 標準突破11
敵が完全掌握 (差 5以上)、または不動の陣など制圧力強化特技がかかった区域13
狭路が封鎖された区域 — 封鎖突破(下記)15

突破目標値は 11 / 13 / 15 の三段階に固定である。制圧力の圧迫は目標値を細かく刻むことではなく、失敗したときの代価として表れる。

判定類型成功失敗
一般突破 (11/13)正常に進入。3活力消費。活力だけ消費。移動不可無防備付与。
封鎖突破 (15)正常に進入。3活力消費。活力だけ消費。移動不可無防備付与。次の自分のカウントまでその区域へ進入不可(弾き返される)。

突破フローチャート

番号意味
1移動前に制圧力を比較
2敵優勢でなければ自由進入
3敵優勢なら突破判定 — 目標値は 11/13/15、3活力
4成功: 通常進入
5失敗: 活力消費、移動不可、無防備
6封鎖(15)失敗のみ追加: 次の自分のカウントまで進入不可

15が出る場合 — 狭路封鎖。 橋・山道・城門通路のような狭路は制圧力上限(通常 3~5)がかかっており、一陣営がその上限に達するとその区域を封鎖する。封鎖された区域には反対陣営がいかなる一般移動でも入れない。唯一の強行手段が 2d10 + 勇 >= 15 の封鎖突破だ。弁慶が独り橋を塞ぎ、後に続く数十を止める場面が、この一つの規則で表現される。封鎖を破る定石は強行よりも、封鎖側を遠距離で削って制圧力を上限の下へ落とし、封鎖を解くほうだ。

突破なしで自由進入する場合: 敵制圧力が味方以下の区域(膠着または味方掌握)なら判定なしで入る。浪人特技「風の刃」は交戦区域進入時に移動活力を1割引し、分隊の盾壁突進(分隊命令 3活力 + 結束力 -1)は突破判定を自動成功させる。

後列まで一気に食い込む強行突撃、複数区域を繋ぐ連鎖突破は指揮官級の博打の手だ。存在だけ知っておけ — 詳細規則は基本ルールブックにある。

出典: co-05-03 §突破・§突破免除、co-05-05 §狭路、co-03-08 §2


#4. 心府 — 飛び込むか

#4-1. 心府が違う理由

前列が崩れて両軍が一つに絡み合った修羅場、巨大妖魔の心臓部、必ず奪取せねばならぬ車の上 — こうした場が心府だ。血の匂いと悲鳴の中で、誰が味方かすら見分けがつかない。ここでは正規の陣形が意味を失い、長く重い武器は荷となり、短く致命的な短刀が王となる。

心府に踏み入れば、次の修正子が一度に適用される。進入するたびに確認せよ。

  1. 制圧力: すべてのボーナスが無効になり、味方制圧力と敵制圧力が互いを相殺する(Zero-Sum)。引いた値が負なら 0 として処理する。心府の制圧力は常に「不安定」だ。
  2. 姿勢: 前列基盤の姿勢の制圧力ボーナスが無効(不動の陣 +4 なども心府では役に立たない)。
  3. 武器活力: 短兵器(短刀・小太刀・忍者刀など)は活力 -1(最小 1)。標準武器(刀・金剛杵など)は ±0。長兵器(槍・野太刀・六尺棒・鉄棒)は活力 +1(狭くて振り回しにくい)。
  4. 遠距離射撃は心府の外からのみ。心府の外から心府の中の敵を撃って外れると誤射チェックをする — d10 を振り、1~3なら心府の中の味方ランダム1体に命中(1戦力)。
  5. 密教僧「修羅の印」: 心府内の近接攻撃活力の追加 -1(最小 1は維持されるので 0活力攻撃は不可)。

このため短刀・体術ビルドは心府で最強となり、槍・野太刀ビルドは心府の外の前列に残るほうがよい。どの区域で最強かがそのまま君のビルドの正体だ。

出典: co-05-04 §戦闘修正子・§心府修正子統合クイック参照、co-03-08 §1

#4-2. 心府に入る法

心府進入は制圧力と無関係だ。代わりに職業によって費用とリスクが分かれる。

君の状態進入方式活力判定
心府自由進入職業 (下記一覧)自由進入2なし
それ以外 (主/将級個人)強行突破32d10 + 勇(勇) >= 13 (固定目標値)。失敗時、移動不可 + 無防備。
卒/練分隊分隊命令専用指揮活力 + 1自動進入。結束力 -1(落伍)。

心府強行突破の目標値は一般突破の 11/13/15 体系を使わず固定 13である。心府は制圧力が相殺されるため、差に基づく目標値が意味を失うからだ。

心府自由進入職業(6種): 浪人、忍び、密教僧、修験者、野人、半妖。(傀儡師は本人が強行突破を必要とし、人形だけが自由進入する。)

離脱は進入より難しい。 背を見せて逃げれば刀が背に刺さる。

君の状態離脱方式活力判定
浪人 / 忍び自由離脱2なし
それ以外判定離脱22d10 + 技か体のうち高い能力値 >= 11。失敗時、移動不可 + 無防備。
それ以外強制離脱4判定なしで確定離脱。

出典: co-05-04 §進入条件・§離脱の沼、co-05-03 §突破(心府別規則)

#4-3. 心府を掌握すれば

心府で最後まで生き残り、優勢な制圧力を維持すれば報酬が来る。

  • 1間合掌握(圧迫): 維持する間、味方前列制圧力 +1、その小康に味方分隊全員の結束力回復 +1。敵が優勢を取り戻せば即座に消える。
  • 3間合連続掌握(心府消滅): 心府が消える — その場は味方陣営に編入され相殺規則が解ける。1回限りで敵全体結束力 -3、味方全体結束力 +2、次の間合すべての味方の最初の攻撃が自動会心拡張、敵後列分隊1個が自動瓦解が伴う。

「心府占領」シナリオの標準勝利条件がこの3間合連続掌握だ。敵を全滅させる必要なく、制圧力さえ維持すればよい。

出典: co-05-04 §心府掌握の報酬


#5. 挟攻 — 前後から同時に討つ

同じ区域の敵を両側の隣接区域から同時に圧迫すれば、敵はどこへ刀を向けるべきかわからない。一人へ刀を向けた瞬間、背中が空き、背中を守った瞬間、正面が空く。挟攻は三つの条件をすべて満たして発動する。

  1. 同じ敵区域に対して両側の隣接区域で味方が占拠中であること。
  2. 両側とも同じ間合内に攻撃行動を行うこと(位置だけ占拠してじっとしていれば発動しない)。
  3. 両側とも[形]または[技法]を1回以上発動すること(分隊一斉射撃を含む)。

発動すれば挟攻対象区域の敵は防備 -2(両側警戒分散)、敵分隊結束力判定 -1ペナルティ、挟攻区域内の敵の突破判定 +2(脱出困難)を受ける。片方の隣接区域の味方がすべて後退・除去されると挟攻は即時解除され、効果は間合単位で更新されるので、次の間合にも両側が攻撃しなければ維持されない。

忍びが外郭へ迂回しただけでは挟攻が成立しない。迂回した場から攻撃までしてこそ挟攻がかかる。

出典: co-03-08 §5


#6. 三つの定石

この章の規則が実際の卓でどう絡み合うか、よく使われる三手を示す。すべて上の規則の組み合わせにすぎず、新しい規則はない。

定石1 — 槍壁と射撃線。 槍を持つ前衛が味方前列に立ち、槍壁構えで制圧力を積み、後列の鉄砲・弓兵が射撃ボーナス(+1)を受けて敵前列を削る。敵が前列へ押し込むには突破(11または13)を振らねばならず、失敗すれば無防備になって次の射撃の餌食となる。要点は前列の制圧力を維持している間、後列が安全だということ — 前衛が崩れれば射撃線も崩れる。

定石2 — 外郭迂回挟攻。 本隊が味方前列で敵前列を正面から押さえる間、忍びが外郭を伝って敵前列の反対側の隣接区域(心府または敵外郭)に位置取る。同じ間合に両方とも攻撃を入れれば挟攻が成立する — 対象防備 -2、結束力判定 -1。忍びのその手が外郭から隣接区域へ食い込む移動+攻撃だったなら、基本奇襲(+2)もその最初の攻撃に乗る。迂回だけして刀を当てなければ何も起こらないことを憶えておけ。

定石3 — 心府消滅作戦。 短兵器組(浪人・忍び・密教僧など自由進入職業)が心府に飛び込み、優勢な制圧力を掴んで耐える。1間合耐えれば味方前列制圧力 +1と結束力回復が流れ始め、3間合連続なら心府自体が消滅して卓がひっくり返る。長兵器組は追って入らず、心府の外の前列で制圧力を支えよ — 心府の中で槍は活力 +1の荷だ。


#要約

  • 五つの区域: 前列(槍・騎馬・近接線)、後列(射撃・整備・補給)、外郭(潜入・奇襲)、心府(短刀が王の乱戦)、外部(忍び・妖魔専用)。各区域がどの技法を強化・弱化するかがそのまま位置の価値だ。
  • 移動: 隣接関係でのみ移動する。味方前列と敵前列は直接隣接する。
  • 制圧力: 敵が掌握した区域(敵 > 味方)に入るには突破。差 5以上なら完全掌握(目標値 +2)。掌握した側がその区域の利点を独占する。
  • 突破: 費用 3活力(基本 2 + 追加 1)、2d10 + 勇 >= 11/13/15。失敗時、移動不可 + 無防備。15は狭路封鎖突破(失敗時、弾き返される追加)。
  • 心府: 制圧力相殺・姿勢無効・短兵器 -1(最小 1)/長兵器 +1・誤射(d10 1~3)。自由進入 6職業(浪人・忍び・密教僧・修験者・野人・半妖)、それ以外は強行突破固定 13。3間合連続掌握 = 心府消滅。
  • 挟攻: 両側の隣接区域から同時に攻撃すれば対象防備 -2、結束力判定 -1、突破判定 +2。