日本語版 v1.3.3

#詳細経済 (詳細經濟, Detailed Economy) — オプションルール

目次

Scene Tool — 選択経済規則。 本文書は、標準の金貨単一単位体系(co-08-05-balance.md §6)の上に載せるオプション拡張ルールである。歴史的な貨幣の空気を重視したい、または日常取引の描写を細やかに扱いたい卓が採用できる。採用しない卓は既存の金貨単一単位をそのまま維持し、本規則は一切影響しない。

関連項目: 08-05 §6 経済バランス · 03-11 交易規則 · 03-09 非戦闘 · 04-10 商人 · 核心解釈原則


#香 — 三種類の金

#時代の事情

戦国時代の日本の市場には、三種類の金が同時に流れている。

第一は金貨。一枚が米一石の値であり、成人男性一人が一年食べて暮らせる量である。これほどの価値を持つ物が手から手へ渡ることは多くない。大名が家臣へ禄(祿)を与えるとき、商人が船団一つを整えるとき、あるいは刀工の名作一振りの代価を払うとき — そのとき金貨が動く。大半の民は一生のうちに金貨一枚を手に取ることもない。

第二は銀貨。石見・佐渡の銀山からあふれ出た銀を、藩主が鋳造したものである。一枚が米一斗の値であり、一か月分の食糧である。村の大きな取引、旅籠の宿泊費、小規模傭兵の日当、城から受け取る月給 — こうした場で銀貨が動く。武士階級以上の日常通貨であり、商人の帳簿に最も多く記録される単位である。

第三は銅貨。明から大量に入った永楽銭(永樂錢)、宋銭(宋錢)、そして国内鋳造の私鋳銭(私鑄錢)が混ざって流通する。一枚が米一升の値であり、一食分。茶屋の一杯、蝋燭一本、市場商人に渡す小銭 — 農民・行商・流れ者の武士が一生触る金は、おおむね銅貨である。一連(百文)を紐でまとめ、腰に下げる。

#貨幣信頼度

藩ごとに政策は異なる。カグラ藩は恵比寿屋商会の信用状を公式に認める。比叡練は「穢れた金(穢錢)」として明銭を拒む原則を持つが、現実には受け取らざるをえない。堺はすべての貨幣を受け取るが、為替を毎日更新する。南蛮船が停泊した港では一部の欧州銀貨(レアル)も通用するが、内陸では溶かして鋳直さなければならない。

商人の役割: 商人クラスは為替をリアルタイムで見抜いている。そのため同じ取引でも商人がいれば有利に進む。商人のいないパーティは、市場や両替商に手数料を取られる。

#なぜこのルールが必要か

標準の金貨単一単位でも、混世霊妖譚は十分に回る。しかし「黄金万能(1金貨)」が本当に「米1年分を差し出す賄賂」という重さなのか、あるいは単なる「ひとつかみの金」という抽象なのかが曖昧になる。詳細モードはこの抽象を具体的な数値へ解きほぐす:

  • 茶屋での小さな買収 → 銅貨数枚。
  • 旅籠・寝床・情報購入 → 銀貨数枚。
  • 名品購入・大名への賄賂・船団取引 → 金貨。

三単位があると、「裕福な商人PC」「無一文の浪人」の財政状態が数字として別々に見える。金貨15を財布に入れたPCと銅貨1500を財布に下げたPCは算術的には同じでも、感じはまったく違う。その差を活かしたい卓のためのルールである。


#法 — 規則

#1. 三単位と換算

単位漢字換算米基準価値日常意味
金貨金貨1米1石 (約180 kg)成人1年分食糧。大名・商人・名品・神機取引。
銀貨銀貨1金貨 = 10銀貨米1斗 (約18 kg)成人1か月分食糧。武器・鎧・旅籠・月給。
銅貨銅貨1銀貨 = 10銅貨米1升 (約1.8 kg)成人の一日の食事。茶代・蝋燭・買い物籠。

要約換算: 金貨1 = 銀貨10 = 銅貨100。

設計注意: 歴史上の実際の為替は、時期・藩・季節によって変動した(明銭1000文 ≈ 1貫 ≈ 銀50~60匁 ≈ 金1/4~1両など複雑)。本ルールはゲーム性のため10進法単純化を選ぶ。物語上「為替が揺れて損をした」といった演出が必要なら、GM裁量で±10~30%調整可能。

#2. 既存の「金貨N」数値の再解釈

標準規則のすべての「金貨N」表記は、そのまま金貨単位で読むのが基本である。ただし詳細モードを採用した卓は、文脈に合わせて下の対応表で再解釈できる。

標準表記文脈詳細モード再解釈(等価額)体感の重さ
金貨1(黄金万能、買収)小規模賄賂・分隊士気高揚銀貨101年分食糧の賄賂。足軽分隊一か月維持費水準。
金貨2(傭兵雇用)一時的な卒分隊雇用銀貨202年分食糧 = 分隊短期契約金。真剣な資金投入。
金貨3(霊薬)高級治癒薬品金貨3維持3年分食糧。奇跡の薬という重さ。
金貨5(カタナ普及品)標準武器購入金貨5(または銀貨505年分食糧。刀一振りに入る「工賃+鉄+魂」の総量。
金貨30(シナリオ報酬)藩主依頼完遂金貨30一括、または金貨10 + 銀貨200(合計 = 金貨30)30年分食糧。藩主の吝嗇ではない報酬。
金貨80(高難易度海戦)船主・藩主合同金貨80、または金貨50 + 銀貨300(合計 = 金貨80)80年分食糧。大名級取引単位。

換算整合チェック: 金貨1 = 銀貨10 = 銅貨100。下表の「銀貨N」はすべて金貨等価基準。例: 金貨10 + 銀貨200 = 10 + 20 = 金貨30。表の再解釈はすべて、同じ値をどう分解して受け取るかの叙述オプションである。

原則: 詳細モードは再解釈オプションである。GMが場面ごとに選ぶ。一貫した変換公式を強制しない — これは歴史的な為替変動の現場感の再現でもある。ただし換算そのものは10:1:0.1で固定し、表の「等価額」は常に総額が一致しなければならない。

#3. 価格例(詳細モード基準)

#生活

項目価格
茶屋の茶1杯銅貨3~5
麺(うどん・そば)1杯銅貨5~10
酒(清酒)1升銅貨20(銀貨2)
旅籠1泊 + 朝食銀貨1~2
旅籠1泊 + 2食 + 馬の世話銀貨3~5
平服1着銀貨2
良質な反物1反銀貨5~10

#情報・サービス

項目価格
街の噂集め銅貨5~10
地域区画図銀貨1~3
藩主動向情報(商人ルート)銀貨10(=金貨1)
シノビ暗殺依頼(将級対象)金貨30~50
両替手数料(商人なし)5~10%
両替(商人同行)2~3%

#兵隊・傭兵

項目価格
堺傭兵 卒1名 1日銀貨2
卒分隊(5名)1日雇用銀貨10(=金貨1)
卒分隊1か月維持金貨3
練級傭兵1名 1日銀貨5
練分隊1か月金貨8~10
将級武士貸与(短期依頼)金貨5~10(+成果給)
結束力 +1補強(下賜金)銀貨5~10(分隊あたり)

#武器・装備

項目価格
竹槍銅貨5
足軽槍銀貨3
普及カタナ金貨5(米5年分)
名品カタナ金貨50~200
神機金貨500+、または購入不可(シナリオ報酬専用)
軽甲金貨3
重甲金貨15~25
大鎧金貨50+
鉄砲1挺金貨10~30(希少)
弾薬3発銀貨10(=金貨1)

#霊的・宗教

項目価格
村社への奉納銅貨10~50
比叡練供養(公式退魔依頼)金貨5 + 成果給
符(一般)銀貨1
符(高級退魔用)銀貨5~10
霊薬金貨3(米3年分 — 理由あり)
葬礼・供養銀貨10~50

#4. PC所持金の体感

標準モードの開始5金貨は詳細モードでも金貨5のまま維持する。ただしプレイヤーは、これを次のように分解して財布に入れられる:

  • 金貨2 + 銀貨20 + 銅貨100(=金貨5)
  • または金貨5の塊(両替手数料が発生しうる)

推奨開始構成(1段一般PC):

  • 金貨1(元手・非常金、腰の奥)
  • 銀貨20(旅費・一、二か月分の食糧)
  • 銅貨200(日常消費用)

合計金貨5相当。叙事的には「武士は金貨一枚を非常金として腰に差し、銀貨の連と銅貨の連を別に持ち歩く」という雰囲気。

#5. 戦闘中の単位使用

標準規則維持: 戦闘中の技法の金貨コストは、表記どおり金貨単位だけで処理する。黄金万能(1金貨)、傭兵雇用(2金貨)、買収工作(3金貨)など、すべての戦闘技法は金貨単位で会計する。

詳細モードの銅貨・銀貨は、非戦闘取引でのみ使用する。理由:

  1. 戦闘会計の複雑度低減 — カウント・活力・制圧力・結束力がすでに多く、3単位分解まで重なると現場が混乱する。
  2. 等価交換の無意味さ — 銀貨10支払いと金貨1支払いは同価値なので、技法効果に差をつける理由がない。効果を変えるなら費用そのものを増減すべきであり、それは技法再設計であって単位交換ではない。
  3. PC財布管理の単純化 — 戦闘中は「金貨N所持」だけ確認すれば十分。非戦闘に戻った時点で銅貨・銀貨へ分解/両替する。

拠点両替: 戦闘終了後、PCは拠点(旅籠・藩城・堺市場)で金貨 ↔ 銀貨 ↔ 銅貨を自由両替できる(商人同行時は手数料なし、商人なしなら5~10%手数料)。

#6. 名品・神機価格の上限と「購入不可」

金貨基準で表現しても、名品・神機はほとんど購入不可である。理由は経済ではなく叙事的なものである:

  • 名品武器: 名人が作ったもの。金貨50~500。市場には出ない — 相続・伝承・略奪・シナリオ報酬のみ。
  • 神機: 値段がない。金貨1000を出しても神社は売らない。シナリオを通じてのみ獲得
  • 異国神物: 南蛮船・明商人がまれに持ち込むが、価格は金貨単位でつけられても[理解]条件なしでは意味がない。価格があっても買うだけ無駄。

詳細モード追加規定: プレイヤーが「金で問題を解決」しようとする場合、GMは最低金貨3桁(金貨100~1000)を要求しながらも、「それでも駄目です。これは伝承を通してのみ……」という叙事的拒否を選べる。

#7. 領地経営との連携

領地経営ティアは石高単位で運用する。詳細モードでの石高↔金貨換算:

  • 1石高 = 1金貨(年貢収入基準)。
  • 領地100石高 = 年100金貨の税収(実際は内政・兵隊維持・人件費で大半が消える)。
  • 領地支出も石高単位維持を推奨。金貨・銀貨・銅貨分解は個人財布でのみ

#使用指針

#いつこのルールを使うか

  • 歴史劇の雰囲気を重視する卓。実際の戦国時代の貨幣感を再現したいとき。
  • 商人PCが主役のキャンペーン。商人の帳簿・両替ドラマを活かしたいとき。
  • 民間人NPCとの細やかな取引が重要なシナリオ。茶屋・旅籠・市場の価格を数字で見せたいとき。
  • 貧富差の演出。銅貨数枚をかすめ取る浪人と金貨50枚を持つ大名の対比。

#いつこのルールを避けるか

  • 戦闘中心キャンペーン。経済は単純なほどよい。
  • 入門卓。追加単位は学習負担になる。
  • 超高段キャンペーン(9段+)。すべての数値が大きくなり、細分化の意味が薄い。

#導入方法

  1. セッション前告知: 「今回のキャンペーンは詳細経済モードを採用します。」
  2. PC開始金の分解: 5金貨開始はそのままにし、各自が「どう分けて持っているか」を選ぶ。金貨5の塊 / 金貨1 + 銀貨20 + 銅貨200など。
  3. 価格参照表配布: §3の表一枚要約をPCにハンドアウト。
  4. 最初の取引で単位を強調: 「旅籠1泊、銀貨1両をお願いします。」→ プレイヤーが単位感をつかむ。
  5. 戦闘中は金貨単位だけ: 詳細モードでも戦闘会計は単純化。

#混合運用

一つのキャンペーン内でモードを混ぜることも可能:

  • 非戦闘: 詳細モード(銅貨・銀貨・金貨)。
  • 戦闘: 標準モード(金貨のみ)。
  • 領地経営: 石高単位(08-05 §6.2 ティア4)。

この場合、換算は戦闘終了時に一括処理する。「戦闘で財布の金貨5を支出 → 実質銀貨50を使った」など、叙述的に整理する。


#関連項目


金貨一枚が米一石であると知れば、世界が違って見える。黄金万能は「ひとつかみの賄賂」ではなく、「一家が一年食べる食糧をまるごと差し出す手つき」という重さになる。その重さを扱える卓にだけ勧める。