日本語版 v1.3.3

#雨と月の里 (雨月の里)

目次

心理ホラーシナリオ。2~3セッション分量。戦闘最小・調査・雰囲気中心。妖魔が作った幻影の村へ入ったパーティが、真実を悟るまでの遅い侵食。

  • 推奨構成: PC 3~5人(4~7段)。感知・呪術・退魔の入門(1点)+ 所持者1人以上を推奨
  • 難易度: 中(戦闘難易度は低い。脅威は認識・精神・時間)。
  • 扱う規則: スローバーンホラーのペーシング / 忘却感染の蓄積 / 手がかり収集 / 退魔・結界 / 三道六心の重い分岐 / 非戦闘中心 / 真実公開タイミング / 溝口・小林オマージュ

影角の幻村


#モチーフ

このシナリオは三本の日本古典ホラーのDNAを混ぜて作る:

  • 溝口健二『雨月物語』(1953) — 戦時中、金を追って村を離れた陶工が戻ると、妻はとうに死んでおり、彼が過ごした数日は幻影だった。「愛していると信じたものが死者の記憶だった」という存在論的恐怖。
  • 小林正樹『怪談』(1964) — 四つの古典怪談アンソロジー。特に「雪女」と「耳なし芳一」エピソードの沈黙・空気・祭儀的恐怖
  • 『鬼婆』(1964) — 戦乱に追われ、盗みで暮らす二人の女。手に入れた鬼面が外れず、面が顔になる。「被害者が加害者になる瞬間」

共通テーマ: 平和が真実より甘い時。パーティの道徳的選択が、存在・死・記憶の重みへ実際に触れるよう設計する。


#背景

#世界観文脈

筑紫北部の深い山里。戦争地図から消された名、カゲツノ里(影月の里)。近くの領地が5年前の戦乱で焼失し、行政上はすでに存在しない村。しかし山道を歩いていくと、霧の谷底深くに――今も灯がともる村がある。

#真実(GM情報、PC未公開)

5年前の冬、この村で大虐殺があった。理由は単純だ――周辺大名間の戦争の補給路として使われ、ある夜、小規模な兵力が証人を残さないため住民120人を皆殺しにした。死体は土に埋められることもなく、雪に埋もれた。春が来ると死体が現れ、野獣と烏が残りを片付けた。

ところが魂は去れなかった。死があまりに突然だったため、誰も「死んだこと」を受け入れられなかった。5年が流れる間、魂たちは山里の気と混ざり合い――集団忘却の結界を自然発生させた。魂たちは自分が生きていると信じながら毎日の村暮らしを繰り返す。畑を耕し、飯を炊き、子を抱いて寝かしつける。時間が止まったのではなく、時間が5年前のある春の日を果てしなく再生している。

この結界の中心には一体の妖魔がいる。しかしその妖魔でさえ、意図的な悪意で作ったものではない。魂たちの集団忘却があまりに強く、周辺の妖気(妖氣)を引き寄せ、ある瞬間それ自体が一つの意志を持ったもの。名は「夢の産婆」――餓者髑髏系の大型妖魔に分類されるが、行動様式は普通の村の老婆

#現在状況

一人の通りすがりの旅人(実は魂ではない生きた人間)が二日前、村に到着して一晩泊まった。旅人は翌朝山を下り、精神が完全に崩壊した状態でカグラ藩の関門に到着。「私が愛した人たちはみな幽霊でした。けれど、その幽霊たちと過ごした一夜は――私の一生で最も幸せでした。」そしてその場で自決。

この報を受けたカグラ藩陰陽寮がパーティを派遣。依頼: 「カゲツノ里を調査し、結界を解除せよ。ただし、住民たち(魂)を害する資源は最小化せよ――彼らも犠牲者だ。」

#依頼の重み

このシナリオは「妖魔退治」ではない。結界を解除すれば、魂たちは真実(自分が死んでいる事実)を悟る。その瞬間、一部は成仏(解脱)するが、一部は怒りの怨霊へ変わるかもしれない。結界を残せば、魂たちは甘い夢の中で――新たな被害者(旅人)を作りながら生き続ける。

どちらが慈悲なのか。


#

#初場面の感覚

山道は普通だ。しかし谷の入口に差しかかった瞬間――空気の密度が変わる。霧の中に甘い味噌汁の匂い炊きたての飯の匂いが乗ってくる。早すぎる夕食の匂いだ。日がまだ空の中ほどにあるのに。

村へ入った瞬間、胸の奥が緩む。旅の疲れ・緊張・寒さが一呼吸で溶けていく。疑うにはあまりに穏やかで、安堵するには早すぎる。

足裏で感じる村道の土は、踏んでいる間音を飲み込む。犬は吠えない。鶏は鳴かない。鳥の声が遠い木霊のように流れてくるが、鳥の姿はどこにもない。

夜になると灯が明るすぎる。芯が燃え尽きる前に、また別の芯が燃え上がる。油は減らない。

#主要NPCの声

慈悲深い老婆の上半身、その背後に幻影の里の黒い蝋燭の煙。

村長タケシチ(幻影――温かい老人の低い声、果てしなく親切):

「おお、旅のお方ですな。よくいらっしゃいました。山道は大変だったでしょう。ちょうど春が来て、桜が咲いております。今夜はぜひ、我が家で泊まってお休みなさい。」

お柚(腹を撫でながら――快活だが遠い目):

「子どもがもうすぐ生まれます。夫が帰る前に。あの人は陶工だから手が荒くて――初孫を抱く日をどれほど心待ちにしていることでしょう。」

子ども喜四郎(日陰で――明るいが少し焦点が合わない):

「おじさん! 僕、今朝も母さんに早く寝なさいって叱られたんだ。大きくなったら父さんみたいに――あれ、父さんってどこにいるんだっけ? 母さんに聞いたのに、忘れちゃった。」

半次郎(酒席、目が自分の腹へ落ちる):

「……この土地は平和です。だから私のような浪人が守っていても許される土地なのでしょう。私は――この土地を守るために来た。いつからのことか……もう記憶が霞んでいます。」

夢の産婆オバア(小屋で――遅く、かすれた、重みある声):

「……よう来なさった。ええ、来ると思っておりました。私が彼らを閉じ込めたのではありません。彼らが私を呼んだのです。どちらが慈悲か――それはあなた方が決めなさい。私は従いましょう。」

#雰囲気の転換点

  • 1日目到着: 穏やかさの罠。警戒心が解ける速さが脅威の指標。あまりに楽になるなら、すでに感染中。
  • 1日目夜: 眠る直前、木霊しない子どもたちの笑い声。「なぜ犬がいない?」という違和感。
  • 2日目朝: 村長の同じ台詞。初めて聞くように再び歓待。時間の亀裂の初感覚
  • 手がかり蓄積: 桜が腐らない → 暦が5年前 → 喜四郎に影がない。違和感が証拠になる瞬間。
  • オバアとの会話: 恐怖が倫理へ変わる。もはや「妖魔退治」ではない。
  • 結末選択直前: 村広場の月光。儀式を始めるのか、静かに去るのか、取引するのか。

#色調・感覚の歪み

  • 時間: 初日は黄昏色の橙。2日目は霧の灰青色。3日目は月光の銀白色。色が彩度を失っていく。
  • : 初日は住民たちの台所・子どもの笑い。2日目から木霊が消える。3日目にはPCの足音だけが響く。
  • 時間感覚の歪み: 「その会話が終わった時、日はほとんど沈んでいた。」 「気がつくと3時間が過ぎていた。」 GMはこの文を意識的に反復する。
  • 匂い: 村全体に古い香煙が敷かれている。最初は認識しないが、2日目からPCの服に染み込む。村を離れた後も一日は残る。
  • 触感: 住民と手が触れた時――体温が一拍遅れる。すぐには感じられず、触れてから1秒後に温かくなる。感知判定でのみ捕捉可能。

#溝口オマージュ

白黒映画の文法をGMが意識的に使う。「色が抜けている」という感覚がホラーの背骨である。強い色はただ:

  • お柚の薄桃色の着物(死んだ時に着ていた服そのまま)。
  • 子ども喜四郎の赤い紐(母が最後に結んでくれた髪紐)。
  • オバア小屋の黒い蝋煙

それ以外のすべては色褪せている


#NPC

#協力者

陰陽寮士官アオイ(陰陽寮 葵、雑、戦力 1)

  • 30代。依頼伝達。旅人の遺書の写しを渡す。
  • 同行しない。村外の関門で待機。
  • 追加情報要求可能: 2d10+美+交渉 ≥ 13成功時、村の過去の戦争記録(5年前の虐殺)に言及。ただし「信じがたい噂」と線を引く。

#村の魂たち(住民NPC、全員戦力 1魂体

村には約30人が「生きて動いている」。全員魂であり、自分を魂だと知らない。攻撃すれば容易に消えるが(戦力 1)、倒した魂は結界に呪いを残し、忘却感染度 +2

村長タケシチ(武七)

  • 60代。村民全員のリーダー。パーティを歓待。
  • 性格: 親切で平穏。地域伝承に詳しい。
  • 真実: 5年前の最初の犠牲者。虐殺当日、最初に斬られて倒れた。自分はその夜以後を覚えていない――時間が止まった地点。
  • 特異点: PCが「今日は何日ですか?」と聞くと、正確に5年前のその日の日付を答える。
  • 結界解除時の反応: 衝撃を受けるが理性を維持。「……ああ、そうですか。私たちが――そうでしたか。」 成仏確率高。

若妻お柚

  • 20代。村で最も美しい者。夫(戦に出た陶工)を待つ。
  • 性格: 快活、好奇心、少し孤独。
  • 真実: 夫は実際には戦で3年前に殺害。彼女本人は5年前の虐殺中、妊娠した状態で死亡。彼女の腹の子も魂になれず消失。
  • 特異点: 腹をよく撫でる。「子どもがもうすぐ生まれます。」――彼女の腹は平ら
  • 結界解除時の反応: 怨霊化危険が最も高い。腹の子への執着が強い。

子ども喜四郎

  • 8歳(5年目の8歳)。村の子どもたちの中で最も活発。
  • 性格: 純粋、言葉遊びが多い。
  • 真実: 虐殺当日、母とともに最初に倒れた。母の魂は早く成仏し、喜四郎は一人残って村の魂集団に編入。
  • 特異点: 絶対に日(太陽)の下に立たない。影がない。
  • 結界解除時の反応: 泣きながら成仏。「母さんのところへ行きたかった。」

武道人 半次郎

  • 40代浪人、剣術名人の地位。村人たちに警護・訓練を提供。
  • 性格: 無口、真面目。
  • 真実: 虐殺を起こした兵力の一員だった。虐殺直後、罪悪感で自決。魂となって結界に染み込む中、自分が村を守っていた浪人だと記憶を再編。
  • 特異点: 誰も見ていない時、自分の腹をよく押さえる(自決傷の位置)。刀を抜けない――抜こうとすると手が震える。
  • 結界解除時の反応: 怒りの怨霊化。「私は――許されない。」 パーティを攻撃。

夢の産婆オバア(産婆 お婆、中立/主敵)

  • 100歳(?)を超えた老婆に見える。村外れの粗末な小屋に一人。
  • 性格: 遅く曖昧な話し方。すべてを知っているように振る舞う。
  • 真実: この村の結界中心であり結果物。魂たちの集団忘却が結晶化した妖魔。自分の意志で村を作ったのではない――魂たちが望む夢を反映して形成された。ただし自分が消えれば村も消えることは本能的に知っている
  • 戦闘回避――攻撃されると消える。結界の奥深くへ隠れる。

#核心メカニズム

#1. 忘却感染度

パーティ全体の共有数値。0から開始、最大10。毎日(カゲツノ里で夜を過ごすたび)+1自動増加。特定行動でも増加。

感染度効果
0~2なし。異常を認識する。
3~4認知歪曲1段階: PCのうち1人が「村が思ったより長く存在していたらしい」という違和感を失う。感知判定 -1。
5~6認知歪曲2段階: 村の時間の流れに同化し始める。呪術・退魔判定 -2。一日が普段より短く感じられる。
7~8存在編入危機: PCのうち1人を選択(プレイヤー合意)。「ここに留まりたい」という衝動に苦しむ。該当間合、三道六心 魔/無心 判定で抵抗(2d10+知 ≥ 14失敗時、行動1回NPC統制)。
9最後の警告: 次の日に到達するとPC 1人が永久喪失。
10陥落: PC 1人が村の魂になる。脱出不可(高位退魔儀式で復旧は可能だがシナリオ外)。該当PCは、他PCが結界を解除して初めて解放される。

感染度増加原因:

  • 村で一晩宿泊: +1(累積)
  • 住民と食事を共有: +1(セッション1回)
  • 住民魂を攻撃・撃破: +2(撃破したPCのみ)
  • オバア小屋内部進入(許可なし): +2
  • 結界付近で眠る: +1

感染度減少原因:

  • 退魔儀式(退魔名人 + 30分RP): -1(戦闘1回限定)
  • 真実の手がかり収集(下のシステム)で「認知抵抗」判定成功: -1
  • 外部関門(アオイ士官)へ帰還後、1日休息: -1
  • 結界外郭へ脱出: 感染度凍結(増加停止、減少もなし)

#2. 真実手がかりシステム(Three Clue Rule準拠)

パーティは3カテゴリ各3手がかり = 9手がかりを収集して、完全な結界解除条件を達成する。手がかり不足時は結末分岐が制限される。

#カテゴリA — 時間の亀裂(村が5年前の時間に固定された証拠)

  1. 村長の年齢矛盾: 村長が「今年五十になる」と言うが、村の系譜では55歳。(会話中に自動露出、感知 ≥ 11で確認)
  2. 暦の物理確認: 村の寺に掛かった5年前の暦がそのまま残る。埃もない。(探索 ≥ 13)
  3. 桜の異常: 村の桜が季節を過ぎても散らない。落ちた花びらも腐らない。(2d10+知+薬草 ≥ 11)

#カテゴリB — 住民の非存在証拠(住民が魂である証拠)

  1. 喜四郎の影: 子ども喜四郎は日の下に立たない。感知判定 ≥ 13で影がないことを確認。
  2. お柚の妊娠: お柚は腹を撫でて「子どもがもうすぐ生まれる」と言うが、腹は平ら。医術判定 ≥ 14で非妊娠を確認。
  3. 半次郎の自決傷: 浪人半次郎が時折腹を押さえる。感知 ≥ 15、または酔った彼との会話で自決傷の存在が露出。

#カテゴリC — 虐殺の歴史(5年前の事件証拠)

  1. 村外れの骨片: 村外の森に、100体が粗末に埋められた痕跡。大きな塚ではなく浅い穴の群れ。(探索 ≥ 13または感知 ≥ 14)
  2. 寺の供養書: 村の小寺の奥部屋に、5年前120人供養のため僧が書いた供養書。しかし僧はいない。(2d10+美+風格 ≥ 13)
  3. アオイ士官の証言: 関門へ戻ってアオイに再度質問すると、「5年前、筑紫北部の小規模虐殺」の行政記録に言及。これは1手がかりとして3カテゴリすべてをクロスチェック可能。

手がかり収集規則:

  • 一日に最大3手がかり獲得(PCが分担収集可能)
  • 手がかり獲得時、認知抵抗判定の機会: 2d10+知 ≥ 13成功時、忘却感染度 -1
  • 9手がかりすべて収集時、パーティは真実を完全に把握。結末分岐A/B/C/Dすべて開放。
  • 6手がかり以下: 結末分岐A、Cのみ開放(真実公開分岐Bは証拠不足で不可)。
  • 3手がかり以下: 結末分岐D(撤収)のみ開放。

#3. 時間制限

パーティが村に滞在した4日目の朝別の生きた旅人が村に到着する。この旅人(本来は噂を聞いて訪れた闇商人ジロ)は4日目の夜、ここで自決(元の旅人パターン反復)。パーティが3日以内に結界を解除するか、ジロを遮断できなければ、ジロ死亡 = シナリオ部分失敗


#シナリオ構造 — 4幕

[1幕: 平穏な到着(1日目)]
     ↓
[2幕: 異常の蓄積(2日目)]
     ↓
[3幕: 真実との遭遇(3日目 - オバアとの会話)]
     ↓
[4幕: 結末選択(3日目夜または4日目)]

#1幕 — 平穏な到着(1日目)

#雰囲気

PCは関門のアオイから依頼説明を受け、山道を登る。山道は普通。約半日後、霧深い谷に到着。谷の奥に家々の灯がかすかに見える。

村の入口で村長タケシチと住民5~6人がパーティを迎える。タケシチの第一声:

「おお、旅のお方ですな。よくいらっしゃいました。山道は大変だったでしょう。ちょうど春が来て、桜が咲いております。今夜はぜひ、我が家で泊まってお休みなさい。ご予定がお忙しくなければ……」

歓待の温かさに、息が詰まるほど安らかだ。旅の間ずっとつきまとっていた緊張が、村に入った瞬間、すべての疲れとともに一瞬で溶け落ちるような感覚。

#初日の相互作用

PCは自由に村を歩き回れる。住民たちは全員親切で、パーティの職業・技能・悩みに深く共感する会話をする。あまりに深く。

初日に許可される手がかり(感知・偵察・薬草判定):

  • カテゴリAの手がかり #1(村長の年齢)――自動会話中に露出。
  • カテゴリBの手がかり #4(喜四郎の影)――日暮れ時の判定機会。
  • カテゴリAの手がかり #3(桜)――PCが桜を鑑賞しながら薬草判定時。

違和感ポイント(全PCへ叙述伝達):

  • 子どもたちは声を出すが、笑い声に木霊がない
  • 井戸水を汲むと、冷たすぎて澄みすぎている。普通の山里の井戸ではない。
  • 夜になっても犬の吠え声がない。山里に犬がいないのは異常。

#1日目終了

村長が宿(農家)を提供。パーティの誰かが眠ると感染度 +1

代替選択: 宿泊を拒否して村外れで野宿 → 感染度増加なし。ただし住民たちは翌日悲しむ(「私たちがご不快でしょうか?」――追加調査機会減少)。


#2幕 — 異常の蓄積(2日目)

#雰囲気

一日経った村は昨日と同じ。村長が昨日と同じ台詞を一部反復する。しかし住民たちはまったくおかしいと思わない――彼らには毎日が初めてだから。

#2日目の手がかり

  • カテゴリBの手がかり #5(お柚の妊娠)――お柚との会話または観察。
  • カテゴリAの手がかり #2(暦)――寺の探索。
  • カテゴリBの手がかり #6(半次郎の傷)――酒席または彼との訓練。
  • カテゴリCの手がかり #7(骨片)――村外の森を探索。

感知・偵察・医術・風格判定が核心。各手がかりごとに判定難易度を明示。

#忘却感染増加

2日目夜 = 感染度 +1。PCの誰かがすでに2~3段階に到達。感知判定ペナルティが始まる。

選択肢:

  • 住民の一人と深い交流を試みる(お柚・喜四郎など) → 追加手がかり可能、感染度 +1
  • 寺の奥部屋を集中調査 → 手がかり #8機会、感染度変動なし
  • 外郭探索 → 手がかり #7機会、感染度変動なし

#2日目終了時点

パーティが最低6手がかりを収集 → 3幕進入可能。未満なら3日目をさらに調査するか、撤収を決定。


#3幕 — 真実との遭遇(3日目)

#オバアの小屋

6手がかり以上を収集したパーティは、村外れの古い小屋に到達する。住民たちは「そこはオバア婆さんが一人で住んでいます。静かにしてください」とだけ言い、近くまで案内しない。

小屋の中は暗く、香が濃い。隅に座った老婆がゆっくりと顔を上げ、パーティを見る。目は白目ばかり。口を開くたびに、部屋の光が少しずつ薄れていく

#オバアの会話

「……よう来なさった。ええ、来ると思っておりました。旅人がまた自ら命を絶ったと聞きましたか。あの方には申し訳なく思います。ですが私は、何もしておりません。あの人は自らこの村の夢を選び、自らその夢から覚め、自ら死んだのです。

私は、ここの魂たちが死んだことも知らずに幸せに暮らすことを望んでいるのではありません。私はただ――彼らが選んだ結果にすぎないのです。私がいなくなれば、彼らもいなくなります。では彼らは――解放されるのでしょうか。それとも消えてしまうのでしょうか。

どちらが慈悲か――あなた方が決めなさい。私は従いましょう。」

オバアは攻撃しない。 戦いを仕掛けるパーティには、悲しげな目で「そうですか……その道を選びましたか」と言うだけ。彼女は攻撃されると消える(戦力 0扱い、実際には死なず結界に吸収される)。彼女の消滅は結界解除を意味しない――むしろ結界が主なきままさらに不安定になる(感染度自動増加率 +1)。

#真実確認

オバアとの会話は残りの手がかりを自動確認してくれる。カテゴリC手がかり #8、#9が未収集でも、オバアの言葉で一部補完可能。ただし9手がかり未満の状態では分岐B(完全解放)が封鎖される――住民の一部が真実を受け入れられず怨霊化するからだ。


#4幕 — 結末選択(3日目夜または4日目)

パーティは次のうち一つを選ぶ:

#結末A — 真実暴露 + 成仏儀式 (眞, 9手がかり)

PCが村広場に住民全員を集め、真実を宣言。各住民へ退魔・結界・士気補強(浄土僧)・癒しの光(現人神)・慰め(芸人)のいずれかを施しながら、2d10 + 美 + 退魔か呪術のうち高い熟練度 >= 15の儀式判定。

成功(大成功合計20+): 住民全員が涙とともに成仏。オバアは村長の手を握り、ともに消えていく。村は3日の夜をかけて静かに薄れ、真の廃墟が姿を現す。PC報酬最大。

失敗(1~4差): 一部住民は成仏し、一部は怨霊化。半次郎怨霊 + お柚怨霊 + 雑級怨霊4体が登場。パーティは彼らとクライマックス戦闘を行う。(下の§戦闘詳細参照)

大失敗(5差以上またはゾロ目失敗): ほぼ全員怨霊化。半次郎(将級)、お柚(将級)、村長(将級)、雑怨霊10体。極難戦闘。

#結末B — 結界維持 + 撤収 (慈, 真実を未完のまま残す)

PCが村を害さず静かに去る。ただしジロ(次の旅人)遮断のため、関門に警告を設置。アオイ士官へ「この村の近くへ旅人を送らないでください」と報告。

結果:

  • 住民の魂たちは夢を見続ける。オバア存続。カゲツノ里は地図上で公式危険区域指定(比叡連・藩合同統制)。
  • ただし5年、10年、100年後には結界が自然弱化 → いずれ誰かが解除するが、それはこのPCの問題ではない。
  • 三道六心 慈強化。ただし「やるべきことをやりきれなかった」という重みは残る。

#結末C — オバア取引 (魔, 5手がかり以上必要)

PCがオバアに提案する: 「魂たちが外部と接触するたび、記憶が揺らぎます。私たちがその接触を防ぎましょう。対価として――(何らかの要求)。」

オバアは秘密を一つ出せる:

  • この山の地脈位置(風水師PCに有用)
  • 5年前の虐殺を行った兵力の指揮官名(キャンペーン後続フック)
  • 魂市場への接近権(死者と取引する尾羽山の禁断商圏

結果:

  • PCは解脱儀式を行わない。住民は夢を見続ける。
  • 三道六心 魔強化。カグラ藩報告時、真実隠蔽が必要(交渉判定 ≥ 14)。
  • 長期的にPCへ暗い霊的負担が蓄積(GM裁量で後続シナリオトリガー)。

#結末D — 逃亡 / 部分失敗

パーティ全員が4手がかり以下の状態で3日経過。感染度7+到達。PC 1人が編入危機。

PCが撤収を選択: 関門帰還。アオイへ「調査未完」と報告。ジロは死亡。カグラ藩名声 -2。シナリオ失敗とみなすが、PCは生存。6か月後に再挑戦可能(キャンペーン後続フック維持)。

PCが編入危機を受容: PC 1人が村の魂になる。他PCが9手がかりを収集して解除すれば解放可能。極難再挑戦ルート。


#段階別進行ガイド

#1幕進行ガイド — 平穏な到着(1日目)

チェックポイントタイミングGMがすることプレイヤーがすること信号(次の段階へ)
関門ブリーフィングセッション開始アオイ士官の依頼伝達。旅人遺書写しを提示。質問・意図確認。山道進入
谷への進入30分霧・灯・空気密度変化の描写。感知・霊的感知判定(望むなら)。村入口到達
村長の歓迎45分タケシチ + 住民5~6人。息が溶ける安穏を演出。初挨拶・観察。村自由探索
1日目手がかり機会1~1.5時間手がかり #1(村長年齢矛盾、自動)・#3(桜、薬草判定)・#4(喜四郎の影、日暮れ感知)。感知・薬草判定。2~3手がかり最大。違和感蓄積
宿泊判断1日目終了宿泊時感染度 +1 / 野宿時手がかり機会減少。選択。2幕進入
  • 成功分岐: 2~3手がかり + 違和感認知 = 2日目準備良好。
  • 失敗分岐: 手がかり0~1 + 住民に完全同化 = 感染度 +2追加(夕食共有時)。2日目に回復必要。
  • GMコントロール: 絶対に初日に真実を暗示しないこと。住民たちは心から親切である。プレイヤーが「心地よすぎる」という不気味さを自分で感じる余地。

#2幕進行ガイド — 異常の蓄積(2日目)

チェックポイントタイミングGMがすることプレイヤーがすること信号(次の段階へ)
朝の反復2日目開始村長が昨日と同じ台詞。住民たちは初めて聞くように。反復の認知。時間亀裂自覚
深層調査開始午前手がかり #5(お柚妊娠、医術)・#6(半次郎傷、感知・酒席)・#7(村外れ骨片、偵察)。感知・偵察・医術判定。一日最大3手がかり。手がかり累積
感染度圧力午後感染度3~4到達時、PC 1人の違和感喪失を宣言。退魔儀式試行(あれば)。感染度管理
寺奥部屋調査午後~夕方手がかり #8(供養書、2d10+美+風格 ≥ 13)機会。僧不在。記録解読。虐殺証拠確保
2日目終了宿泊 or 野宿判断再登場。感染度 +1(宿泊時)。6手がかり閾値確認。3幕進入決定
  • 成功分岐: 6手がかり以上収集 → 3幕進入準備完了。オバア遭遇資格確保。
  • 失敗分岐: 4手がかり以下 + 感染度5+ = 結末D(撤収)警告段階。3日目集中調査必要。
  • GMコントロール: 台詞反復は1日目の台詞を一言一句同じに再現。住民本人は自覚しない。プレイヤーがGMに「昨日の台詞では?」と尋ねる瞬間が核心覚醒地点

#3幕進行ガイド — 真実との遭遇(3日目)

チェックポイントタイミングGMがすることプレイヤーがすること信号(次の段階へ)
オバア小屋発見3日目開始住民たちの沈黙した案内。小屋の濃い香。6手がかり確認後、訪問決定。小屋進入
オバア初対面10~15分白目・光が抜ける部屋。攻撃なし。観察・会話開始。会話進入
オバア会話20~30分結界の本質説明。「選択を任せる」宣言。質問・哲学的対面。手がかり未収集分を一部補完可能。真実完全把握
ジロ到着警告3日目午後4日目朝到着予定――遮断または結末強行の圧力。時間配分決定。結末選択
4幕進入決定3日目夜結末A/B/C/DのうちPC選択を要求。手がかり量で開放制限。核心哲学的決定4幕開始
  • 成功分岐: 9手がかり完備 + オバア会話完了 → 4結末すべて開放。
  • 失敗分岐: 手がかり6未満 → 結末B封鎖。3未満 → 結末Dのみ開放。
  • GMコントロール: オバアは被害者の化身である。邪悪な妖魔トーン禁止。彼女の言葉はむしろ慈悲深い諦念。PCの選択へ倫理的重みを乗せること。

#4幕進行ガイド — 結末選択(3日目夜~4日目)

チェックポイントタイミングGMがすることプレイヤーがすること信号(次の段階へ)
結末A進入広場召集住民全員集合。月光。真実宣言準備。儀式担当PC選定・資源投入。儀式判定
結末A儀式判定A中盤2d10 + 美 + 退魔か呪術のうち高い熟練度 >= 15。結果別分岐。判定 + 三道六心反応。成仏 or 怨霊化
結末A大失敗A大失敗時クライマックス戦闘開始。怨霊等級別編成。戦闘。「成仏導き」選択肢活用。戦闘終了
結末B静かな撤収3日目夜関門警告設置 → アオイ報告。ジロ遮断。三道六心 慈 RP。帰還
結末Cオバア取引3日目夜3秘密のうち1提示。魔傾向上昇警告。交渉・対価協議。取引成立
結末D撤収4日目未明アオイに調査未完報告。ジロ死亡報告。再挑戦権利受領。シナリオ中断
感染度残存処理全結末共通数値別退魔処方(1~3 / 4~6 / 7+ / 10)。寺訪問・長期回復計画。エピローグ
最終報告4幕終了結末別報酬・名声適用。叙事整理。シナリオ終了
  • 成功分岐(A大成功): 住民全員成仏 + オバア同伴消滅 + 遺品1個 + カグラ藩名声 +3。
  • 成功分岐(B): 慈の選択。名声 +2。結界は残るが遮断装置設置。
  • 成功分岐(C): 魔の選択。情報1件獲得。長期霊的負担蓄積。
  • 失敗分岐(A大失敗): クライマックス戦闘必須。オバアの自己消滅介入でPC救済可能。
  • 失敗分岐(D): シナリオ中断。再挑戦権利維持。ジロ死亡の重み。
  • GMコントロール: 結末A・B・Cはすべて異なる倫理的正解である。B・Cを「敗北」としてフレームしないこと。ホラーの核心は選択の重みであり、成果最大化ではない。

#クライマックス戦闘 — 怨霊化(結末A失敗時のみ)

場所: 村広場。月光。

敵編成(結末A失敗強度別):

#部分怨霊化(儀式4差以内)

等級戦力防備活力備考
半次郎怨霊41410剣術名人。自決記憶に怒る。「私を罰せよ。」
お柚怨霊31210非実体。魅惑(美+4): 対象が勇判定失敗時、1間合攻撃不可。
雑級怨霊雑分隊0104体。恐怖オーラ(-1結束)。

DPT: ~3.5戦力/間合。普通の将級戦闘 + 非実体対応。退魔入門(1点)+ 所持者必須([霊体]攻撃が頻繁なら免許(3点)+ 推奨)。

#全体怨霊化(大失敗)

等級戦力防備活力備考
村長怨霊(主謀者)51412指揮オーラ: 同じ区域の魂攻撃 +1。
半次郎怨霊41410剣術名人。
お柚怨霊31210非実体 + 魅惑。
雑級怨霊分隊卒分隊1112分隊 × 5体。

DPT: ~5戦力/間合。極難。パーティ全滅危険。退魔 + 結界 + 火攻め必須。

#戦闘特殊

  • 怨霊たちは「被害者」。PCが処置するたびに三道六心が振幅。眞傾向PCは処置ごとに知判定 ≥ 13失敗時、1間合行動萎縮
  • 成仏誘導攻撃: 退魔名人PCは「攻撃の代わりに成仏導き」を選択可能。2d10+知+退魔 ≥ 15成功時、対象怨霊は戦闘離脱 + 成仏。パーティの道徳的重み減少。
  • オバアは戦闘に参加しない。小屋で静かに見守る。結界解除儀式が成功すればともに消滅。

#報酬

#共通

  • 基本謝礼: 金貨 15(中難度シナリオティア、co-08-05 §6.4 範囲内)。
  • 叙事マイルストーン: 真実把握 = 1回計数。該当シナリオ完遂(A・B・C中選択) = 追加1回計数。

#結末別

結末金貨特殊報酬
A完全解放(大成功)+20(合計35)成仏した住民が生前残した遺品のうち1個――GM裁量(手紙・掛け軸・護符など叙事的記念品または後続手がかり)。カグラ藩名声 +3。比叡連名声 +2。
A部分成功+10(合計25)戦闘勝利戦利品 + 住民一部成仏。カグラ藩名声 +1。
A大失敗+5(合計20)生存報酬。名声変動なし。アオイ士官の謝罪。
B撤収 + 警告+10(合計25)カグラ藩が「賢明な判断」と評価。陰陽寮名声 +2。ただしPCの三道六心 慈判定上昇。
C取引+5(合計20)オバアから得た情報(地脈・兵力指揮官名・魂市場接近権のうち一つ)。名声変動なしだがPC魔傾向上昇。
D逃亡+0(合計15)カグラ藩名声 -2。ジロ死亡。再挑戦権利。

#感染度残存処理

シナリオ終了時、感染度が残っているPCは:

  • 感染度1~3: 浄土僧・密教僧の退魔儀式1回で解消(寺訪問)。
  • 感染度4~6: 長期退魔(1週間回復 + 金貨 5供養)。
  • 感染度7+: 永続的霊的痕跡。GM裁量で後続シナリオフック(周期的悪夢、特定状況判定ペナルティ)。
  • 感染度10(編入): 他PCが別シナリオで回収必要。

#GM指針 — スローバーンホラー・ペーシング

#1. 戦闘を惜しめ

このシナリオの戦闘は結末A失敗時のみ。基本は非戦闘調査と会話。プレイヤーが戦闘を誘導すれば、住民の魂たちは簡単に倒れる――そしてパーティの感染度が2ずつ上がる。戦闘は不利な選択だと体感させること。

#2. 情報をゆっくり解け

9個の手がかりを一セッションで全部渡さないこと。各手がかりを小さな異常の蓄積として配置。プレイヤーが「おかしい」と疑う時、GMは肯定も否定もしないこと。彼らが自ら推論する余地を残すこと。

#3. 住民NPCを愛らしく演じる

お柚・喜四郎・村長を魅力的で情のある人物として演じる。プレイヤーが「この人たちを傷つけたくない」と感じなければシナリオは機能しない。住民が単純な悪役ならホラーは成立しない。

#4. 時間の流れを操作する

PCが村に滞在している間、現実時間もおかしく感じさせる。「その会話が終わった時、日はほとんど沈んでいた。」 「気がつくと3時間が過ぎていた。」 時間の歪みが感染の表現。

#5. 感染度を積極的に活用

感染度数値をプレイヤーに隠さないこと。公開しつつ、それがいつ上がり下がりするかを明確に。プレイヤーが「この選択は感染度を上げるだろうか?」と悩むことが、このシナリオの緊張感。

#6. 結末B・Cの重み

「村を解体せず去る」という結末を敗北としてフレームしないこと。慈傾向の選択であり、カグラ藩もそれを認める。すべての結末は異なる倫理的答えである。

#7. 大失敗状況処理

結末A大失敗(全怨霊登場)時、パーティが全滅する可能性がある。この時GMは:

  • 「成仏導き」選択肢を半次郎・お柚・村長それぞれに提供。判定成功で戦闘短縮可能。
  • オバアの介入可能――彼女が静かに現れ、「これが私を終わらせる最後の道ならば」と言いながら怨霊たちを自らの中へ引き入れ、ともに消えていく。PC救済。
  • プレイヤー生存優先。ホラーは恐怖体感であり、全滅学習ではない。

#関連項目


「最も甘い夢は最も長く忘れられない。最も慈悲深い嘘は最も深く傷を残す。この村を去る時、あなたは――自分が見たものを信じるのか、記憶しないことにするのか。」

――雨月物語の最後の台詞を変奏しながら