#刀工流派
目次
Campaign Module — 刀工製作流派。 本書は刀工のための 製作流派 を定義する。剣術流派ではない —
co-04-03-schools.mdの流派ルール構造(技能スロット・免許・秘技)の上に刀工専用として書かれる。
剣術流派とは別スロット。 一人の PC が剣術流派(例: 示現流)と刀工流派(例: 正宗刀派)を同時に保有できる — ただし 別スロット。§ スロット整合を参照。
#導入断片 — 火を渡す法
五つの刀派の名は、五つの村の名のように聞こえた。しかし老いた刀工は、それが道の名だと言った。弟子は地図を広げたが、師は地図を畳んだ。
「備前はここ、山城はここではないのですか?」
「それは土地の位置だ。刀派は火の記憶だ。」師は炉の炭をひっくり返した。「誰から火を学んだか、どんな水で冷やしたか、どんな主の求めを断ったか。そういうものが技術より長く残る。」
弟子は自分の手を見下ろした。「では私が他の刀派の法を学べば、裏切りですか?」
「裏切りかもしれぬし、継承かもしれぬ。お前がなぜ学ぶかにかかっている。」師が言った。「刀派は牢獄ではない。だが根を忘れた枝は、最初の嵐で折れる。」
その日、弟子は流派が単なるボーナスの束ではなく、火を誰から受け取り誰へ渡すかの問題であることを学んだ。
#§ 香 — 五箇伝(五箇傳)とその後
鎌倉時代まで日本の刀工は 五つの刀派 — 大和、山城、備前、相州、美濃 — に分類された。一人の刀工の刀は、彼が属する刀派の鍛造法・材料・構えによって決まった。
この五つの刀派のほかに、後代の室町・戦国に入り別途に分かれて出てくる刀派がある。村正一族、正宗系譜、粟田口刀派。これらは五つの刀派の中の一つの枝から分かれて出てきたが、その枝のアイデンティティが強すぎて別の刀派として認識される。
本書はその計八つの刀派をルール化する。各刀派は一人の刀工 PC のアイデンティティ・製作哲学・技能スロット・秘技を定義する。
#§ 法 — 流派一般規則
#刀工流派の構造
| 項目 | 剣術流派 | 刀工流派 |
|---|---|---|
| 代替する技能 | 剣術・槍術・弓術などの武芸 | 感知・解除・結界・呪術のうち一技能 (刀派ごとに異なる) |
| 段階 | co-04-03 § 流派マヌーバ構造 の 5 段階: 入門 → 習得 → 免許(3 点、免許マヌーバ) → 秘技(4 点、名人段階) → 聖人 | 同じ |
| 秘技 (4 点) の性格 | 戦闘マヌーバ | 製作儀式・真名彫り補助 (非戦闘・シーズン単位) |
| 発動時点 | 戦闘中 | 非戦闘・小康・シーズン単位 |
刀工流派の 秘技 (4 点、名人段階) は戦闘効果ではない。それゆえ剣術流派の秘技と一呼吸の中で衝突しない。
#流派類型 — 刀工流派の分類
本ルールブック(co-04-03 § 流派類型と付加利得)はすべての流派を 有名門派 / 秘人秘伝 / 自己流 の三つのうち一つに分類する。刀工流派も同じ。
| 本書刀派 | 本ルールブック類型 | 付加利得 (本ルールブックのまま) | 制約 (本ルールブックのまま) |
|---|---|---|---|
| 大和・山城・備前・相州・美濃 | 有名門派 | 刀派本家道場と分店で交渉 +2、宿泊/情報/修理支援、名声 +1 | 刀派の名誉毀損時に破門 — 刀工流派マヌーバ喪失 |
| 村正一族 | 秘人秘伝 (一族外部の師事時) または 有名門派 (一族内部) | 村正刀工 NPC 1 名との縁故 (秘人秘伝)、危機時の助言 | 一族の秘密任務遂行または一族内の義理。師事コストが大きい。 |
| 正宗系譜 | 有名門派 | 正宗本家・分店で交渉 +2 | 正派行動義務 (悪の処断・弱者保護) |
| 粟田口刀派 | 有名門派 | 京都本家で交渉 +2 | 短刀以外の武器の依頼を拒絶 (刀派の禁忌) |
| 稲富流 (火器) | 有名門派 | 火薬補給・銃身整備支援 | 火器刀工 — 刀の鍛造禁忌 |
| (刀工 PC が自己流) | 自己流 | 最初の依頼者に看破不可 (偽刀工のふり可能) | 同門/道場なし。師事 NPC なし。 |
#入門・免許・秘技の条件
刀工流派の 5 段階は co-04-03-schools.md § 流派マヌーバ構造 の一般規則に従う。本書はその上に刀工流派特有の RP・シナリオ条件を加える。
| 段階 | 本編 (技能点) | 本書刀工流派の追加 RP 条件 |
|---|---|---|
| 入門 (1 点) | 非熟練の解除 | 刀工本家または刀派分店での師事 1 シーズン |
| 習得 (2 点) | +1 | 刀派の鍛造儀式 1 回への同行 |
| 免許 (3 点) | +2 + 流派免許マヌーバ | 刀派の一刀・一道具の鍛造への同行 |
| 秘技 (4 点、名人) | +3 + 流派秘技 | NPC 師範の認定 — 刀派の名工が自分の欠落を PC に譲渡 (RP) |
| 聖人 (5 点) | 自動成功 | 刀派の最後の秘密 — キャンペーン後半限定。神話級刀工の地位。 |
#スロット整合 — 剣術流派との同時保有
一人の PC が剣術流派と刀工流派を両方持つ時:
| 項目 | 整合 |
|---|---|
| 特技スロット | co-04-03 § 流派習得規則 の「特技 1 個のスロット消費」 — 剣術流派 1 スロット + 刀工流派 1 スロット = 特技 2 スロット。 |
| 代替する技能 | 剣術流派は剣術の免許・秘技を代替。刀工流派は感知/解除/結界/呪術のうち一技能の免許・秘技を代替。異なる技能を代替するので衝突しない。 |
| 名人スロット (6 個限度) | 剣術名人 1 + 刀工流派代替技能名人 1 = 名人 2 スロット占有。工人の 6 名人可能技能の中で運用せねばならないので、他の名人スロット 4 個の中で刀工本職の名人を決定。 |
| 秘技 | 剣術秘技は戦闘マヌーバ、刀工秘技は非戦闘儀式。一呼吸に両方を発動しないのでシナジー可能。 |
| 免許の時間 | 一人の PC が二流派の秘技を両方得るにはキャンペーン後半(7〜9 段)。時間コスト。 |
| 叙事条件 | 剣士であり刀工でもある PC の叙事が RP で支えねばならない — 「昼は刀工、夜は剣士」のような二重アイデンティティ。 |
#§ 法 — 五箇伝(五箇傳)
#大和 (大和)
#香 — 寺院の刀派
大和は日本で最も古い刀派。奈良の寺院群と結合。法隆寺・東大寺の僧兵が持っていた刀の大半が大和刀派。刀は堅固だが華やかではない — 儀式と護衛に似合う。
#製作哲学 — 堅固さ
刀が折れないことが最優先。形態の優雅さより刃の厚み・強度。寺院の刀だという自己認識。
#似合う武器
太刀、薙刀。刀剣は斬りより受け・流しに似合う形態。
#免許条件
- 入門 (1 点): 大和刀工本家(奈良)または寺院付属鍛冶場での師事 1 シーズン。
- 免許 (3 点): 刀 1 振りの鍛造時に折れないよう作った結果(シナリオ検証)。
- 秘技 (4 点、名人): 寺院の本尊の前で精錬された鍛造儀式の通過。
#代表技法 (刀工秘技)
[秘技] 大和堅造 (大和堅造) — シーズン儀式。新たな名品の [耐久] ボーナス — その名品はキャンペーンの間折れない(折れるシナリオ事件が発生しても回避)。
#禁忌
大和刀工は 呪われた刀 を作らない。自分の刀派の刀が人を斬って呪いを持てば、その刀を回収して奉納。
#山城 (山城)
#香 — 平安の正統
山城は平安遷都後、京都付近で発展した刀派。三条宗近(三條宗近) のような名工が山城。三日月宗近が山城の頂点。
#製作哲学 — 優雅さ
刃の曲線・柄の均衡。宮中に似合う刀。斬らずとも威厳を作る形態。
#似合う武器
太刀(平安様式)。儀礼・宮中用に精密に鍛造。
#免許条件
- 入門 (1 点): 山城刀工本家(京都)での師事 1 シーズン。
- 免許 (3 点): 平安様式の太刀 1 振りの鍛造。美的評価(美 +1 NPC 評価団)。
- 秘技 (4 点、名人): 天皇家または公家の儀礼に自分の刀が使われる経験。
#代表技法
[秘技] 山城優造 (山城優造) — シーズン儀式。新たな名品に 風格強化 の祝福を付与 — その名品を持つ PC の風格 +1。
#禁忌
戦場の泥がついた刀を新たな作品として鍛え直さない。それはその刀の一生を断ち切る行為。
#備前 (備前)
#香 — 日本刀剣の柱
鎌倉〜室町の日本刀剣の量的中心。安定した品質の多数。備前の刀は戦場に最も多く出た。
#製作哲学 — 信頼
名声より信頼。毎週一定の品質の業物を作り出す。一振りの頂点より千振りの信頼。
#似合う武器
業物の刀・太刀。刀剣の標準様式。
#免許条件
- 入門 (1 点): 備前刀工本家(備中)での師事 1 シーズン。
- 免許 (3 点): 一シーズンの間に刀 5 振りを連続鍛造(品質一致)。
- 秘技 (4 点、名人): 自分の刀が戦場で 100 名を斬ったという認証(シナリオ進行)。
#代表技法
[秘技] 備前量造 (備前量造) — シーズン儀式。PC が鍛造した業物の刀 1 振りを名品候補に格上げ。ただし名品技法スロットの効果は §06-01 7 段階手順で確定。
#禁忌
自分の銘を刀に刻まないことがない。備前刀工は自分の名を刀に責任を持つ。
#相州 (相州)
#香 — 正宗の刀派
鎌倉後期に相州(相模)で起こった刀派。五郎正宗 が頂点。鍛造法は日本刀剣の基準となる。日本刀剣史上最も影響力のある刀派。
#製作哲学 — 均衡
鍛造の均衡。刃・柄・構えすべての精密な均衡。華やかではないが一点も足りない所がない。
#似合う武器
打刀、脇差。後代の侍の標準。
#免許条件
- 入門 (1 点): 相州刀工本家(鎌倉)での師事 1 シーズン。
- 免許 (3 点): 正宗正統の鍛造法(原本の模倣)の通過。
- 秘技 (4 点、名人): 正宗の作品(本庄正宗など)1 振りを直接見た経験。
#代表技法
[秘技] 相州均造 (相州均造) — シーズン儀式。新たな名品の活力・戦力・目標値 すべて本編標準 ±0 — すなわち何の奇妙な効果もない正統名品。奇妙さがないことが秘技 である。
#禁忌
呪われた刀を作らない(大和と同じ)。ただし作られた後に呪いが宿った場合は致し方ない。
#美濃 (美濃)
#香 — 戦国の量産刀派
室町後期・戦国時代の量産刀派。関(關) が中心。戦国大名たちに大量納品。備前とともに戦国の量的中心。
#製作哲学 — 実用
戦場で死なない刀。華やかさより実用。備前より速く荒いが、それゆえ価格が低い — 足軽の刀。
#似合う武器
業物の刀、槍。量産。
#免許条件
- 入門 (1 点): 美濃刀工本家(関)での師事 1 シーズン。
- 免許 (3 点): 一シーズンの間に刀 10 振りを鍛造(速い量産)。
- 秘技 (4 点、名人): 戦国大名の一家門に刀を納品した実績。
#代表技法
[秘技] 美濃速造 (美濃速造) — シーズン儀式。刀工 PC の名品製作儀式(§05-02 § 名品製作儀式)の時間を 3 シーズンから 2 シーズンに短縮。ただし鍛造された名品の活力コスト +1。
#禁忌
名品・神器を作らない — 美濃刀派は量産に自分の自尊心を置く。名品を依頼されれば他の刀派に送る。
#§ 法 — 後代の刀派
#村正一族
#香 — 血の一家
伊勢の刀派。村正 (村正)、村兼、正貞 の一族。室町後期〜戦国初期。刀が強力だが — 呪いの風聞が付き従う。徳川家に凶。
#製作哲学 — 切断
斬り抜くことが最優先。刃の切断力の極大化。自分の刀が人をどう斬っていくかに無感覚。
#似合う武器
大太刀、打刀。重い切断力の刀。
#免許条件
- 入門 (1 点): 村正一族(伊勢)での師事 1 シーズン。一族外部で師事を受けるには大きなコスト。
- 免許 (3 点): 一振りの刀が一名を斬り抜く試験の通過(シナリオ決闘)。
- 秘技 (4 点、名人): 生涯、自分の刀が凶をもたらした事例の一度以上の認定。
#代表技法
[秘技] 村正絶造 (村正絕造) — シーズン儀式。新たな名品に 切断力強化 + 呪い(自発退却不可) を同時に付与。強さの代価が呪い。
#禁忌
徳川家に自分の作品を献上しない。風聞が真実にならないように。
#正宗系譜
#香 — 相州の正統後裔
相州刀派から分かれて出た正宗直系。五郎正宗 → 貞宗 → 信国 の系譜。鎌倉後期以降の日本刀剣の正統。
#製作哲学 — 正派
相州の均衡の上に 正義行動の認定。正宗の作品は正義の者に応える。不正な者が持てば平凡。
#似合う武器
打刀。相州と同じ。
#免許条件
- 入門 (1 点): 正宗本家または貞宗分店での師事 1 シーズン。
- 免許 (3 点): 正派行動シナリオ 1 回の通過(悪の処断・弱者保護)。
- 秘技 (4 点、名人): 正宗本家の入門儀式 — 正宗本人の作品を直接見た経験。
#代表技法
[秘技] 正宗正造 (政宗正造) — シーズン儀式。新たな名品に 正義行動時の活力補助 の祝福を付与。ex2-40-03-02 § 正宗絶刀 の祝福と同じ構造。
#禁忌
不正な依頼者を受けない。依頼を受ける前に依頼者の RP・三道六心を確認。
#粟田口刀派
#香 — 短刀の頂点
京都粟田口の刀派。粟田口吉光 が頂点。短刀製作において日本刀剣史上最も完璧。
#製作哲学 — 精密
小さな刃の完璧な均衡。短刀(吉光)、脇差(鯰尾藤四郎)、懐剣。大きな刀は他の刀派に任せ、小さな刀に集中。
#似合う武器
短刀、脇差、懐剣、忍者刀。
#免許条件
- 入門 (1 点): 粟田口本家(京都)での師事 1 シーズン。
- 免許 (3 点): 短刀 1 振りの精密鍛造。測定の通過(柄・刃の比率の黄金律)。
- 秘技 (4 点、名人): 忍びまたは学者 PC の RP — 小さな道具の重さを理解する者。
#代表技法
[秘技] 粟田口精造 (粟田口精造) — シーズン儀式。新たな名品の短刀/脇差の [貫通] 効果 +1。
#禁忌
大きな刀を作らない。短刀以外の武器の依頼は拒絶。
#§ 法 — 火器刀派 (補足)
#稲富流 (稻富流) 刀派
刀工の刀派だが — 火器。刀ではなく火縄銃・種子島の刀派。co-07-02 § 稲富秘火 ・ ex2-40-03-14 の作品。
#製作哲学 — 精密射撃
火薬の配合・銃身の精密度。一般の火縄銃より射程・正確度ともに +。
#似合う武器
火縄銃。短銃。大筒。
#代表技法
[秘技] 稲富精火 (稻富精火) — シーズン儀式。新たな名品の火器の射程 +1 または会心範囲 +1 (択 1)。
#禁忌
火器刀工は刀を鍛造しない。室町後期以降、火器・刀剣の刀派は分離。
#§ 法 — 刀派選択ガイド
刀工 PC が最初の刀派を選択する時。
| 刀派 | 推奨 PC コンセプト |
|---|---|
| 大和 | 寺院出身・僧兵・堅固な武器を作る刀工 |
| 山城 | 平安風・宮中・美的感覚 |
| 備前 | 量的中心・信頼の刀工・日常の職業人 |
| 相州 | 正宗正統・均衡の美学 |
| 美濃 | 戦国量産・実用主義・足軽親和 |
| 村正一族 | 暗く強力な刀・政治的立場 |
| 正宗系譜 | 正義の刀工・正派 RP |
| 粟田口 | 短刀専門・忍び・学者親和 |
| 稲富流 | 火器刀工・外人・戦国〜幕末 |
#§ 法 — 刀派変更
一人の刀工 PC がキャンペーン中に刀派を変えられるか — 可能。ただし:
- 新しい刀派の入門から再び。既存の刀派免許は保全(二重刀派)。
- 一つのキャンペーンの中で三つ以上の刀派を持たない。
- 刀派間の禁忌が衝突しうる(例: 大和は呪い刀の禁忌、村正一族は呪い刀の正統 — 同時保有時に RP 葛藤)。
#参考リンク
刀派は技術の名ではなく、火を伝えた人々の系図である。