#ツチグモと羅生門の鬼
目次
Fiction-Only + Canon (fc04 内部限定)。 本文書は二体の妖魔の新規シートを含む。co に別途シートがない二体のNPCであり、本シートは
co-11-appendix/co-11-18-monster-template.mdの様式に従う。二体の妖魔はシュテンドウジより一段階低いボスとする。
#二つの事件を併せて扱う理由
どちらも頼光側の討伐譚であり、シュテンドウジ討伐譚より短い逸話だ。一つの文書に併せて扱う。
- 事件A — ツチグモ: 頼光が病床に伏したときに現れた巨大な蜘蛛型の妖魔。
- 事件B — 羅生門の鬼: ワタナベノツナが羅生門で出会ったイバラキドウジ。
二つの事件はシュテンドウジ討伐の「外伝」または「前後の逸話」の位置だ。シュテンドウジが討伐団の最大の敵であるなら、ツチグモとイバラキはその討伐団の日常の中で出会う他の妖魔たちだ。
#導入断片 — 病床と門楼
一方では病んだ法師が天井を見、もう一方では羅生門の屋根の下に雨が落ちた。二つの事件は遠く離れていたが、夜の匂いは同じだった。
病床の法師が囁いた。「天井に糸が見える。」
看病していた武士は顔を上げた。何もなかった。だが法師の手首には見えない何かが巻きついたように青い痕が残りつつあった。
同じ夜、羅生門の下では美女が濡れた袖を握って立っていた。「道に迷いました。」彼女が言った。ワタナベノツナは雨に打たれながら彼女の手を見た。手は白く細かったが、影は手首より長かった。
二つの場面はいずれも刀が遅れて到着する。先に来るのは体に付いた感覚、見えない糸、美しさの食い違いだ。
平安の妖魔は山を崩しながら来ない。病んだ部屋の天井と雨降る門楼の下、人が油断せざるをえない距離から始まる。
#事件A — ツチグモ (土蜘蛛)
#香 — 病床の法師
頼光が熱病で寝床に伏している。数日間下がらない熱。四天王が代わる代わる見舞いに来るが誰も彼を助けられない。医術・占卜・祈祷 — どれも効果がない。
ある夜半、灯火が一灯だけ点された寝所に — 一人の法師が入ってくる。老いた姿で、衣が擦り切れ、手に薬瓶を一つ持っている。「熱病に効く薬です」と彼が言う。「お飲みください。」
頼光が彼を見る。四天王は皆眠っている。寝所には誰もその法師が入ってきたことを知らない。
頼光が手をしばし自分の刀「ヒザマル」に当てる。ヒザマルは彼の枕元にある。彼が素早く剣を抜いて — 法師を斬る。刀が実体に当たらない。法師が消える。だが — 剣の先に黒い血が一滴付いている。
頼光が四天王を呼ぶ。五人が血の跡を辿る。血の跡は寝所を出て庭を過ぎ、庭の端の小さな土蔵へと続く。土蔵の中に — 巨大な蜘蛛が一匹、脚を震わせて死にかけている。脚の長さが人の背丈ほどある。
これが ツチグモ(土蜘蛛) — 「土蜘蛛」。
#核心データ — ツチグモ
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名 | ツチグモ(土蜘蛛) — 「土蜘蛛」 |
| 別称 | ヤマグモ(山蜘蛛) — 「山蜘蛛」 |
| 本質 | 巨大な蜘蛛型の妖魔。変身・幻覚能力 |
| 時代 | 平安中期 (頼光活動期、約1000年頃) |
| 事件 | 頼光の病床 — 法師に変身して薬を勧める → 斬られて正体露見 |
| 終末 | 頼光 + 四天王によって討伐される |
#NPCシート — ツチグモ (Canon, fc04 内部限定)
Canon (fc04 内部限定)。
co-11-appendix/co-11-18-monster-template.mdの様式使用。シュテンドウジより一段階低い 将級~主級下端。
ツチグモ (土蜘蛛) — 巨大妖魔、将級~主級下端
戦力: 6 (3 + 体3)
防備: 13 (外皮)
活力: 12 (10 + 技2)
能力値: 勇+1, 技+2, 体+3, 智+1, 美+1, 運+2
制圧力寄与: +2 (蜘蛛糸制御)
弱点: [浄化]・[明るい光] 効果時に1 呼吸の間 防備 -2
#主要特技
- 法師変身 — 人間形態に変身。変身中は能力値 -1、次の一撃が自動会心
- 巨大外皮 — 一般武器命中時に戦力 -1 (外皮が吸収)
- 多重脚 — 8 本脚。一呼吸で8 方向の同時攻撃が可能
- 陰湿親和 — 土蔵・洞窟の中で当該呼吸の活力 +1
#シグネチャ — 蜘蛛糸と毒
| 技法 | 類型 | 活力 | 効果分類 | 効果 |
|---|---|---|---|---|
| 蜘蛛糸縛り | 整備 | 活力3 | 活力効果 (行動制約) | 標的1名のPCの活力を「縛る」 — 次の呼吸開始時に活力 -1 (PCが解こうと行動すれば活力 -1 追加)。回避: 2d10+体+強健 ≥ 13 (難しい)。戦力変化なし。 |
| 毒射 | 型 (技) | 活力4 | 戦力被害 | 2d10+勇+体術 ≥ 防備。命中時 3戦力。次の呼吸に追加 1戦力 (毒残存)。 |
| 法師変身 | 整備 | 活力2 | 精神効果 | 人間形態に変身。正体発覚前までPCの感知判定 -3。一撃を受ければ正体暴露。 |
- 蜘蛛糸 = 活力効果 (PCが行動できない)
- 毒・一撃 = 戦力効果 (PCの戦力が減少する)
「蜘蛛糸でPC戦力 -1」のような表記 = 誤り。「毒でPC活力 -1」のような表記 = 誤り。
#事件B — 羅生門の鬼
#香 — 雨降る夜の美女
長保のある春の夜。雨が降る。ワタナベノツナが都南側の正門 羅生門(羅城門) の前を過ぎる。彼は摂津の武士で、頼光の命令を受け都の外郭を夜警中だ。
羅生門は平安の都の正門だが、平安後期には荒廃している。雨を避けようとする者がその中へ入ったりした。ツナがそこを通り過ぎると — 背後から一人の女の声が聞こえる。
「失礼します — 夜が危険な道なので、送っていただけませんか。」
ツナが振り返る。一人の美女が羅生門の陰から出てくる。衣が雨に少し濡れ、髪が長く黒い。表情は丁重だ。
ツナが躊躇する。夜半に羅生門から出てきた美女 — 普通のことではない。だが彼女の衣は端正で、話し方は貴族出身のように聞こえる。
「はい、参りましょう」と彼が言う。
彼女が馬の上に共に乗る。彼女の手がツナの肩を掴む瞬間 — 手が人の手ではない。長く、爪が鉤のようで、肌が黒い。ツナが即座に刀「ヒゲキリ」を抜いて — その手首を斬る。
斬った腕が落ちる。美女の姿が一瞬で崩れて — 巨大な鬼に変わる。背丈が二倍。顔が長く、口が裂けている。彼女が — その者が — 悲鳴を上げて羅生門の上へ逃走する。
ツナが斬った腕を回収する。黒色の腕。その者の正体は — イバラキドウジ(茨木童子)、シュテンドウジの副頭領だった者。
#核心データ — イバラキドウジ
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名 | イバラキドウジ(茨木童子) |
| 位階 | シュテンドウジの副頭領。シュテンドウジ級ボスの一段階下。 |
| 本形態 | 巨大な鬼 (背丈約3メートル、黒い肌、裂けた口) |
| 変身 | 美女形態 — 平安貴族の女の姿 |
| 時代 | 平安中期 (頼光同時代) |
| 場所 | 羅生門(羅城門) — 京都南側の正門 |
| 事件 | 美女に変身してツナに接近 → 手首を斬られる → 逃走 → 後日老婆に変身して腕を取り戻しに来る |
#後日譚 — 斬られた腕の回収
ツナが斬った腕を回収して持ち帰った。数日後 — 一人の老婆がツナの居処を訪ねる。老婆はツナの養母だと自称し、「しばらくその斬られた腕を見せておくれ」と頼む。
ツナが疑わずに腕を見せる。老婆が斬られた腕を手に取った瞬間 — 彼女の正体が現れる。イバラキドウジだった。彼女(彼)が斬られた腕を回収して羅生門の向こうへ逃走する。
ツナは再び彼女を捕まえられない。イバラキはその後、平安後期に再び登場しない — どこへ行ったのか分からない。
#NPCシート — イバラキドウジ (Canon, fc04 内部限定)
Canon (fc04 内部限定)。 シュテンドウジ(co-08-02 シート) の一段階弱化変形。
イバラキドウジ (茨木童子) — 副頭領級の鬼、主級下端
戦力: 7 (3 + 体3 + 強靭1)
防備: 14 (鬼の外皮)
活力: 13 (10 + 技3)
能力値: 勇+3, 技+3, 体+3, 智+1, 美+2, 運+1
制圧力寄与: +3
弱点: 正統な陰陽師の結界・神器に非常に脆弱 (防備 -3 vs 神器・浄化)
#主要特技
- 美女変身 — 人間形態。感知判定 -3。一呼吸の間 PCの疑い判定 -2 ペナルティ
- 怪力 — 武器なしで命中時に2戦力
- 再生 — 毎呼吸開始時に戦力 +1 (斬られた身体部位を再吸収)
- 逃走の名手 — 羅生門のような馴染んだ場所で活力 +1 / 逃走距離 +2
#シグネチャ — 変身と回収
| 技法 | 類型 | 活力 | 効果分類 | 効果 |
|---|---|---|---|---|
| 美女変身 (精密) | 整備 | 活力3 | 精神効果 (戦力) | 一人のPCの魅了判定を強制 (目標値: 2d10+美+交渉 ≥ 13、難しい)。失敗時PCが1 呼吸の間 [魅了] または [無防備] 状態 (co-11-02-conditions.md の既存の状態異常で処理) — PCの自己回避 -3。新規の状態異常を新設しない。 |
| 暗襲一撃 | 型 (技) | 活力3 | 戦力効果 | 美女変身直後の一撃。命中時 3戦力 (変身の最大の効果)。 |
| 再生 | 整備 (自動) | 自動 | 戦力回復 | 毎呼吸開始時に自己戦力 +1 (切断部位を再吸収)。他のPCの回復とは別。 |
| 部分切断の回収 | 整備 | 活力4 | 精神効果 | 斬られた身体部位がPCの手にあるとき、別の形態(老婆・旅人など)に変身してPCに接近。PCの疑い判定 -3。回収成功時に逃走。 |
- 「美女変身 (精密)」 = 活力3 (詠唱者) → PCの自己回避 -3 (次の一撃に対する防御ペナルティ)
- 「暗襲一撃」 = 活力3 → 敵 戦力 -3
- 「再生」 = 自己 戦力 +1 (戦力回復)
- 「部分切断の回収」 = 活力4 → 情報・精神効果 (戦力変化なし)
#本巻処理 — 二つの事件の意味
二つの事件はシュテンドウジ討伐譚の外伝だが、平安妖魔文化の多様性を示す。
- 妖魔はどこにでもいる — 羅生門のような都の正門で、頼光の寝床で。
- 妖魔は変身する — 法師に、美女に、老婆に。正体を見抜くことが人間の最初の試験。
- 名刀が妖魔を斬る — 「ヒザマル」と「ヒゲキリ」の二振りの名刀が二つの事件の決定的な道具。
#シナリオシード
PCが平安京都を歩くとき、羅生門付近または土蔵付近で — どんなことが起こるか分からない。詳しいシナリオは fc04-06-02-mountain.md のシード3「山村のツチグモ」、シード4「羅生門の新たな客」。
#トーン — 雨降る夜の二振りの刀
羅生門の雨。土蔵の蜘蛛糸。二つの事件はいずれも Jホラーの原型だ。後世の日本ホラー・ミステリー・怪談のほぼすべての場面 — 雨降る夜の美女、巨大蜘蛛、土蔵の黒い血、老婆の正体 — が平安のこの二つの逸話にすでにすべてある。
名刀一振りの重み。ツナが羅生門で刀を抜く瞬間、頼光が寝床で刀を抜く瞬間 — その二つの瞬間が平安討伐譚の精髄だ。
#一言で
「妖魔は変身する。名刀は変身を斬る。」
#参照
#co — シート様式・シナリオ
co-11-appendix/co-11-18-monster-template.md— モンスターシート様式 (ツチグモ・イバラキシートの様式)co-11-appendix/co-11-14-enemy-catalog.md— 敵カタログ分類co-08-gm-tools/co-08-02-monster-templates.md— シュテンドウジシート (イバラキの一段階上の参考)
#co — 名品
co-07-weapons/co-07-02-masterworks.md— 名品 (ツナの「ヒゲキリ」・頼光の「ヒザマル」)
#fc04 内
fc04-03-02-yorimitsu.md— 頼光・4天王 (ツナのヒゲキリシグネチャ)fc04-04-01-shutendoji.md— シュテンドウジ (イバラキ = シュテンドウジの部下)fc04-06-02-mountain.md— 山岳シナリオ (シード3・4)
#外部文献
- 今昔物語
- 宇治拾遺物語
病床の蜘蛛糸と羅生門の手首は同じ夜の異なる結び目だ。


