#装備・補給品 (裝備·補給品)
目次
権威。 本文書のデータカード数値は狭いCanon —— 本巻の内でのみ正典であり、正典の装備と消耗品のいかなる項目も覆さない。光の諸刃の規則・無線機運用などの変形規則はVariant —— 本巻のすべての変形がそうであるようにGM許可を前提とする。§些細なものの価値表はScene Tool —— 数値ではなく場面だ。そして脊椎はここでもそのまま流れる。この本は現代人を強くする本ではない。消耗してゆく未来のドラマを与える本だ。
#香 — 背嚢の中の文明
#導入断片 — 四夜の灯 (燈)
火を焚けない夜だった。
峠一つ越えた先に野伏の一団が陣を張ったと聞き、一行は谷の奥に背を合わせて座った。濡れた闇の中で荷担ぎの弥助がまず聞いた —— 草を踏む音。一つではなかった。
「……野犬でしょう。」弥助が囁いた。「野犬であってほしい。」
音が周りを回った。近づいた。闇の中から低い唸りが起こり —— その唸りの後ろから、それより大きく遅い息遣いが聞こえた。
神隠し(神隱し)された女が背嚢を開けた。浪人の甚左衛門が刀の柄に手を置いたまま止めた。「火は駄目だと言ったは—」
光が点いた。
火ではなかった。白く真っ直ぐな柱が闇を一筋に裂き、その先で眼が四対、青く光った。野犬たちが —— そして野犬たちの後ろの、丈が軒に届く何かが —— 一斉に止まった。
光は揺れなかった。一呼吸。二呼吸。背の高い影が先に退いた。野犬たちがその後を追った。草むらの閉じる音が遠ざかり、谷には草虫の声だけが残った。
「……退いたな。」甚左衛門が刀の柄から手を離した。
「光は克ちます。」女が言った。「獣は光を知らない。」
「獣は知らぬ。」浪人は稜線の方へ顎をしゃくった。「人は知っている。」
稜線の上、峠の向こうの空が薄く明るんでいた —— 松明だった。一つが二つになり、二つがゆっくりとこちらの斜面へ向きを変えた。
女は光を消した。闇が先ほどより深く閉じた。
「あの灯(燈)は、」甚左衛門が荷を整えながら問うた。「これから幾夜ぶん点くのだ。」
「……四夜。」女はそう答え、心の中で言い直した。夜ではなく —— 点ける回数だ。
#香 — 小さな奇跡の目録
本巻のカードのうち卓に最も頻繁に上るのは銃ではなくこちらだ。銃声は一キャンペーンに数回鳴るが、夜は毎日来て、傷は毎週生まれ、水は食事ごとに飲む。そしてこの品物は一つ一つがこの時代において小さな奇跡だ —— 闇を退かせる光、十町の外を渡る声、膿まない傷、煮立てずとも飲める水。
奇跡であるがゆえに、本巻の勘定法がそのまま適用される。すべて消尽システムの一方向の道の上にあり、どれもこの時代が再び満たしてはくれない。ライターが沈黙した朝に火打ちを打つ法を学び、浄水剤が尽きた夏に水を煮立てる習慣が残る —— この文書のカードはすべて、その乗り換えまでの時限つきの橋だ。
カードは四束に分ける。身を守るもの、夜に克つもの、繋ぐもの、生かすもの。 そして最後に、カードになりきれない些細なものの値を記す。
#法 1 — 共通事項
- すべてのカードは消尽システム法 4の七欄標準様式に従う。残量記録はPLの分 —— 残量記録紙に記し、減るたびに消す。
- 分類は装備・物資だ。一枚の例外は携帯無線機 —— 分類は電子機器であり、同じカードが電子機器に載る(懐中電灯の見本カードが消尽システムに載ったのと同じ先例だ)。懐中電灯・ヘッドランプ・スマートフォンなど電池で生きる光と機械のカード本体は電子機器のものだ。
- 新規尺度はない。 効果はすべて正典の文法 —— 防備・戦力・活力・区域・間合・場面 —— であり、本巻が発明した尺度は[消尽]一つだけだ。本文書のいかなるカードも新たな回復数値を記さない。
- 価格欄がない。 正典装備表の金貨欄は市場のものであり、漂流物には市場がない。値は駆け引きが定める —— §些細なものの価値がその駆け引きの出発点だ。
- セット文書が先に記したカード —— 防弾胴衣(防彈胴衣)・個人救急嚢・戦闘食糧(自衛官セット)、回転式拳銃・防火服・空気呼吸器・救急鞄(救難職セット)、手術道具・処置消耗品・抗生物質(医療人セット)—— はそのセットのものだ。本文書は指し示し、重ねて載せるカードは一字までも同じに再録する。
- 整備・故障・代替は消尽システム法 2〜3そのまま。カードの劣化特則には固有のトリガーと摩耗効果だけを記す。
| カード | 束 | [消尽] | 備考 |
|---|---|---|---|
| 防弾チョッキ | 身 | なし(劣化累積) | 斬りに強く、尖りに弱い |
| 鉄帽 | 身 | なし | 上から来るもの 1点 |
| 防火服 | 身 | なし | 救難職セットと同じカード |
| ライター | 夜 | 4・時計 | 判定なき火種 |
| 夜光棒 | 夜 | 3・回数 | 消えない一夜の灯火 |
| 携帯無線機 | 繋 | 6・時計(台ごと) | 分類は電子機器 —— 同じカードが電子機器に |
| 救急函 | 生 | 4・回数 | 清潔な処置・止血補助 |
| 鎮痛剤 | 生 | 6・回数 | 痛み・発熱ペナルティ無視 |
| 抗生物質 | 生 | 3・回数 | 医療人セットと同じカード |
| 浄水剤 | 生 | 10・回数 | 水を安全に —— 味はそのまま |
| 非常食糧 | 生 | 6・回数 | 火なき一食 |
#法 2 — データカード
#身を守るもの
この束の文法は正典の甲冑のものだ —— 防備、そして防備を削る値。共通規則は一つだけだ。正典の甲冑・兜と重ねて使えない —— 一つを選べ。 甲冑は加わる物ではない。
そしてこの束の情緒は「防いだぶんだけ摩り減る」だ。発数も回数もない器物だが、受け止めた刀と衝撃がそのまま劣化のトリガーになる。この衣の一生は残量ではなく —— 傷の数だ。
#防弾チョッキ (防彈衣)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 防弾チョッキ (防彈衣) |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 柔らかな重ね布のチョッキ —— 上着の下に着込めるため、見た目に武装ではない。防備 +1、活力・潜入ペナルティなし。攻撃の種類によって値が変わる。斬り(カタナ・ナギナタなど斬る刃): 防備 +2として扱う —— 重ね布は刃を滑らせる。突き・矢(ヤリ・タントの突き・鏃): +1そのまま —— 一点に集まる尖りには弱い。銃弾: 拳銃弾・散弾の[貫通]を無視する。小銃弾・狙撃弾・鉄砲の鉛玉には無力だ —— [貫通]そのままに貫かれる。正典の甲冑と重ねて着られない。 |
| [消尽] | なし —— 器物。減りはしない、受け止めたぶんだけ死んでいくだけだ。 |
| 劣化特則 | 防ぐたびに摩り減る —— トリガー: 斬り・銃弾をこの衣で受け止めた場面(酷使扱い)、浸水。判定は基本式(2d10+技+解除)。摩耗: すべての防備補正 -1(基本 +0、斬り +1)。故障直前: 加えて銃弾の項を失う —— 拳銃弾・散弾にも[貫通]を受ける。沈黙: ただ重く暑いチョッキだ。 |
| 一握りの物語 | 内襟に他人の名が記されている —— 譲り着の物だった。この衣が守った胸は、主のものが初めてではない。 |
| 沈黙後の価値 | 鉄なくして刀を受ける布 —— 解いてみれば髪より細い糸が千重だ。甲冑師はそれを写そうとして生涯を費やし、衣に残った斬りかけの刀痕一つ一つは武勇談として別に売れる。 |
自衛官の防弾胴衣(防彈胴衣)—— 胸に防弾板を挿すもの —— は別のカードだ。
[消尽 3・回数]、会心を受け止める物。自衛官セットで扱う。板の入ったものは受け止める回数を数え、布だけのものは傷を数える。
#鉄帽 (鐵帽)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 鉄帽 (鐵帽) |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 頭に被る —— 正典の兜(カブト・陣笠)と重ねて被れない。上から来るもの —— 落石・崩落、崩れる梁、投石、高所からの落下 —— で受ける戦力被害を場面につき1回、1点軽減する。防備補正はない —— 頭は守っても、戦いを守ってはくれない。 |
| [消尽] | なし —— 器物。 |
| 劣化特則 | トリガー: 軽減を使った場面(衝撃を頭の代わりに食らった)、落下・浸水。判定は基本式。摩耗: 内皮が潰れる —— 軽減が場面につき1回から一日1回に減る。 |
| 一握りの物語 | 額の上に四文字が記されている —— 安全第一。四百年を越えても文字を知る者ならば読め、読んだ者は一度笑い —— やがて頷く。 |
| 沈黙後の価値 | 罅の入った鉄帽は陣笠より軽く硬い謎だ。兜師は叩いてみて、首を傾げ、遂に写しきれない —— その間それは井戸端で最良の釣瓶の役を務めている。 |
#防火服
救難職セット —— 消防士の背負い荷 —— に載ったものと同じカードだ。同じカードはどこでも同じだ。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 防火服 |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 着用中: 火炎地帯の小康戦力被害を無視し、「軽甲以下追加1戦力」も受けない。火攻・火炎属性攻撃の戦力被害 1 軽減。鎧ではない —— 防備補正はなく、刀と矢は防げず、正典の鎧と重ね着できない。 |
| [消尽] | なし —— 布は減らない。死んでいくだけだ(劣化の物)。 |
| 劣化特則 | トリガー: 火炎地帯で過ごした場面は「酷使」と見なす。判定は基本式 (2d10+技+解除)。摩耗: 「被害無視」が「被害 1 軽減」に弱化される。 |
| 一握りの物語 | 背に所属署の名が刻まれている。この時代の誰も読めない文字だが、主はそれが己の家紋だと —— 半ばは本気で —— 言って回る。 |
| 沈黙後の価値 | 火を食らっても残った布 —— 黒く焦げた切れ端一つ一つが職人には謎だ。火攻を業とする軍勢がこれを欲しがれば、それはすでに良いシナリオだ。 |
#夜に克つもの
この時代の夜は我々の時代より暗い。正典の夜間規則のペナルティがその闇の数値であり、灯火と松明がこの時代の答えだ。現代の光はその答えより明るく、真っ直ぐで、風に消えない —— そしてその値を取る。
光は位置を告げる (Variant)
本巻のすべての現代光源 —— 本束のカード、そして電子機器の懐中電灯・ヘッドランプ・スマートフォン —— に適用する。この時代の眼は灯火の橙を知る。白く真っ直ぐな光は、一度見た者が忘れない色だ。
1. 潜入の終わり —— 光を点ける瞬間、点けた者とその傍の潜入は破れる。光が届く区域では夜間・暗闇が与える潜入ボーナスもない。
2. 的 —— 闇の中で光を持つ者を狙う遠距離攻撃は夜間・暗闇の判定ペナルティを無視する。光は的の真ん中だ。
3. 呼び —— 夜に現代の光を点けたまま過ごした場面が終わるとき、GMは野外遭遇チェックをもう一度呼べる。銃声規則の小さな弟だ —— 銃声は一度鳴って止むが、光は点いている間ずっと語る。開けた野ではその光は十町の外からも見える(用語・度量衡辞典)。
闇を消す値がこれだ。消して隠れるか、点けて知られるか —— その選択を毎晩戻らせるのがこの規則のすべてだ。
懐中電灯・ヘッドランプなど電灯類のカード本体は電子機器にある —— 見本は消尽システムの懐中電灯カード([消尽 4・時計])そのままだ。ここには電池なしで光と火を扱う二枚を載せる。
#ライター (點火器)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | ライター (點火器) |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 親指一つで火種が来る。乾いた火口・蝋燭・松明・火縄・焚き火 —— 火を起こす行動が判定なしに成功する。風雨の中ではGMが一度の空振りを宣言できる —— それでも火打ちより速い。この時代の夜が火種を守るために費やす手間すべて —— 消してはならない火炉、夜明けの火打ち —— をまるごと省略する。それがこの奇跡の正体だ。 |
| [消尽] | [消尽 4・時計] —— 火を起こすのに意味ある形で使った場面が終わるたびに1減少(一般人・学生セットの鞄の中の表と同じ値)。煙草の火一つを数えはしない —— 時計はストップウォッチではなく砂時計だ。 |
| 劣化特則 | トリガー: 浸水。故障判定の代わりにGMは時計1喪失を選べる —— 火打ち石は乾くが、その夜は長い。摩耗: 最初の火花が遅れる —— 切迫した戦闘の呼吸の中で使うには活力 1。 |
| 一握りの物語 | 煙草も吸わぬのに鞄ごとに一つずつ転がっていた物だ。ある時代では只で配られていたものが —— ある時代では村一つの夕餉を点ける。 |
| 沈黙後の価値 | 燃料が尽きても火打ち石は残る —— 親指で回せば火花だけは散る。火種が半日の手間賃だった時代に、その火花だけでも火打ちより勝る。 |
#夜光棒
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 夜光棒 |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 折れば光る —— その一夜の間正典の灯火として扱う(夜間の隣接区域視界確保)。火ではない: 風と雨に消えず、水中でも光り、藁束の傍でも安全だ。手を離れても光る —— 投げて闇の向こうを照らし、分かれ道に標として残し、水に浮かべて流れを読む。光規則(上)はそのまま適用される —— 投げられた夜光棒は、投げた者の方向も共に告げる。 |
| [消尽] | [消尽 3・回数] —— 一度折れば戻せない。惜しんで使う法のない物だ —— 使うか使わぬかがあるだけだ。 |
| 劣化特則 | なし —— 折れる前には死なず、折れた後は一夜だけだ。 |
| 一握りの物語 | 夜行バスの非常箱の下の段に入っていた物だ。懐中電灯は運転手の分になり —— これは最後尾の座席の乗客のポケットへ行った。 |
| 沈黙後の価値 | 光の死んだ棒は中の透ける小さな管だ。硝子師は覗き込んで溜息をつき、子供らはそれを「星が住んでいった家」と呼ぶ。 |
#繋ぐもの
この時代の言葉は人より速く行けない。伝書鳩は一方向であり、狼煙は一文字であり、早馬は馬の脚ぶんだけ速い。無線機はそのすべてと違う —— 往復であり、即時であり、声そのものだ。 この束の価値は火力ではなく時間だ。奇襲を半拍早く知ること、退却を一拍早く定めること —— その拍は数値ではなく、数値でないがゆえに強い。
#携帯無線機 (携帶無電機)
分類は電子機器だ —— 同じカードが電子機器に載る。カードの席はそちらだが、分隊と出会う運用の席はここだ。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 携帯無線機 (携帶無電機) |
| 分類 | 電子機器 |
| 効果 | 同じチャンネルの点いた無線機どうしが即時に対話する —— 互いに異なる区域、互いに異なる場面の間にも情報がその場で渡る。 可聴距離は地形が定める: 開けた野と水の上で一里ばかり、山・森・谷・村の中では十町まで(用語・度量衡辞典)—— この国の地形はアンテナの敵であり、高所に立つ側はGMが手厚く見てやる。戦闘では分隊命令の可聴距離を無線機の向こうまで伸ばす —— 命令の費用・回数・文法は正典そのままだ。 外から下す指揮は正典の区域ギミックがすでに開いた道であり、無線機はその道に声を貸すだけだ。 |
| [消尽] | [消尽 6・時計] —— 台ごとに別に数える。点けた(受信待機を含む)場面が終わるたびに1 —— 聞いているだけでも摩り減る、待ちも電気を食う。約束した刻にだけ点ける運用は時計を遅らせる —— 代わりに消えた無線機は何も繋げない。 |
| 劣化特則 | トリガー: 落下・浸水(浸水は過酷)。台ごとに別に死ぬ。摩耗: 砂が煮えるような雑音 —— 長い言葉が途切れる。一場面に渡せる伝達は一握り(GM裁量)に減り、分隊命令の拡張を失う。そして対(つい)の規則 —— 聞いてくれる無線機が一台も残らなければ、残った一台はその日から沈黙と同じだ。 時計が残っていても、それはカードではなく形見だ。 |
| 一握りの物語 | 脇腹に災害現場の呼出符号がテープで貼られている。応答していたすべての符号が四百年の外にある —— それでも癖のように、送信ボタンを押す前に一拍待ってしまう。 |
| 沈黙後の価値 | 「風に乗る声の箱」 —— 大名の宝物庫で式神を操る道具として鑑定される。誤った鑑定だが、まるきり誤りではない。百年を耐えれば —— 雑音の向こうの声を覚えている付喪神の候補。 |
#無線機と分隊 — 声の距離
本節がこの文書の白眉だ —— そして白眉であるほど線を先に引く。
- 正典の縄は一字も変わらない。 分隊は分隊命令でのみ動き、命令は主/将の活力で生きる —— 基本 2活力、智+2以上なら 1活力、命令の種類と判定すべてそのまま。無線機はその費用体系の外に立つ。
- 遠くから下す命令は正典がすでに知っている。 区域ギミック図鑑の「敵の本陣」を見よ —— 外に隠れて分隊命令だけを下す指揮官は正典の絵だ。無線機はその絵に新たな能力を加えない。加えるのは指揮ではなく距離だ —— 声の届く範囲が、向こう側の無線機がある所まで伸びるだけだ。
- 先に来るシナジーは命令ではなく情報だ。 堤の向こうの区域の斥候が見たものが一呼吸で本陣に届く。分かれた一行が互いの場面を生きる —— 「橋は落ちた、渡しへ来い」の一言が半日の無駄足を消す。卓でこのカードが働く時間の九割はこちらだ。
- 勘定の例。 智 +2の指揮官が前列区域に、分隊と無線機を持つ荷担ぎが堤の向こうの区域にいる。指揮官が無線機に向かって「盾壁」を命じる —— 活力 1(智の割引、正典そのまま)、荷担ぎが復唱し、分隊が陣を組む。そしてその場面が終われば両方の無線機の時計が一目盛りずつ回る。
均衡錘は三つで、三つともカードに記されている —— 対がなければならず、時計が回り、地形が削る。 より重い錘は要らない。
付け加えれば —— 号笛(號角)はカードがない。 救難職セットの文章そのまま: 一町の外まで届く鋭い一声、そして「合図一つを予め定めておくのは規則ではなく知恵だ。」ただし吹く瞬間に己の位置も共に告げるということだけは忘れるな。無線機が沈黙した後にも号笛は鳴る —— 本巻で最も信ずるに足る通信機は最後まで、息だ。
#生かすもの
まずこの束の回復文法を釘づける。
- 戦力を回復させるカードはこの束にない。 回復の数値は正典の休息規則のものであり、本巻はそこに一点も載せない。
- 活力は回復ではない。 活力は行動経済だ —— 薬が活力を返すと記したカードは本巻にない。
- このカードたちがする仕事は回復判定の補助だ。悪化を防ぎ(感染・汚染)、患者の耐性判定を助け(體)、ペナルティを消す(痛み)。そして医術判定に常時固定ボーナスを載せるカードは一枚もない —— 消耗・道具補正(救急鞄 +1、個人救急嚢 +2など)は正典の装備文法の一時補正で別物だ。医療人セットの上限宣言そのままだ。
本巻の救急鞄はすでに三組ある —— どの鞄がどのカードかから整理する。
| 鞄 | [消尽] | カードのある所 |
|---|---|---|
| 個人救急嚢 | 3・回数 | 自衛官セット —— 医術なき手のための軍用品 |
| 救急鞄 | 8・回数 | 救難職セット —— 救急隊員の本体 |
| 処置消耗品・抗生物質 | 6・回数 / 3・回数 | 医療人セット —— 往診鞄の中身(抗生物質は下に再録) |
| 救急函 | 4・回数 | 本文書(下)—— 民間の救急キット |
#救急函
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 救急函 |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 家庭と車両の救急キット —— 1回分で次のうち一つ。清潔な処置: 傷一つを消毒・被覆する。その傷は感染で悪化しない(正典の疫規則の「汚染環境」として数えない)。止血補助: 出血(血)解除のための患者の體判定(>=13)に +2 —— 圧迫帯と清潔なガーゼの分だ。医術(>=11)側の判定には加えない —— そちらは手の仕事だ。どちらも戦力・活力を一点も動かさない。 |
| [消尽] | [消尽 4・回数] —— 現代の消耗品は1人前ずつ包装されている。 |
| 劣化特則 | 消耗品 —— 劣化しない。浸水トリガー時にGMは故障判定の代わりに残量1喪失を宣言できる(医療人セットの処置消耗品と同じ文法)。 |
| 一握りの物語 | 台所の戸棚の上で消費期限だけが過ぎていた物だ。主は中の鋏がこれほどよく切れることを、四百年を越えてきて初めて知った。 |
| 沈黙後の価値 | 空になっても函は残る —— 蓋の赤い十字を見たことのある村では、その文様はすでに霊験ある標だ。 |
#鎮痛剤 (鎭痛劑)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 鎮痛剤 (鎭痛劑) |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 1回分服用: 一場面の間、痛み・発熱による状況ペナルティを無視する(医療人セット処置消耗品の「鎮痛・解熱」と同じ文法)。夜に使えば痛みで途切れていた眠りを繋ぐ —— 負傷者の一夜の宿営が破れない。回復量は増えない(正典の休息表そのまま —— 戦力 2は戦力 2だ)。そして痛みが消えたのは治ったのではない —— 痛みを消したまま無理をした値は、次の場面にGMが請求できる。 |
| [消尽] | [消尽 6・回数] —— 一般人・学生セットの鞄の中の表と同じ値。 |
| 劣化特則 | 消耗品 —— 劣化なし。季節を越えて寝かせた薬には幕間減少宣言が来る(消尽システム —— 時間そのものが敵だ)。 |
| 一握りの物語 | ラベルの細かな注意書きを読める者はこの時代に主一人だけだ —— 一日三回、食後三十分。「食後」という言葉が贅沢になった時代に。 |
| 沈黙後の価値 | 栓のついた小さな筒は文字が陽刻された合(盒)だ —— 薬は去っても筒は残り、薬売りの威勢品になる。 |
#抗生物質 (抗生劑)
医療人セットの往診鞄に載ったものと同じカードだ —— 同じカードはどこでも同じだ。民間の漂流物の鞄からも稀に出る —— 処方されて飲みきらなかった半瓶の形で。その場合の開始残量はGMが1〜2に削るほうが似合う。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 抗生物質 (抗生劑) |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 1回分投与: 進行中の疫または膿んでいく傷一つの悪化が止まる。 投与日から正典疫規則の毎日判定(體>=13)を振らず、三日目に 2d10+智+医術 >= 13 成功時に完治 —— 十分な休息(村・城)のない道端でも。外傷の戦力は一点も回復させない。妖魔の呪と毒には無効 —— 呪は退魔の領域であり、毒は解毒薬の領域だ。 |
| [消尽] | [消尽 3・回数] —— 一人の一病に1回分。分け使えば二人とも生かせない —— 半回分は0回分だ。 |
| 劣化特則 | 単位は回数だが時間にも負ける —— 季節が変わるほど寝かせた薬品に対する幕間減少宣言(消尽システム —— 時間そのものが敵だ)はこのカードにも適用される。 |
| 一握りの物語 | 病院の薬品棚では有り触れていて勘定もしなかった物だ。今は一錠の重さを手のひらが覚えている —— 三度の奇跡、そしてその次はない。 |
| 沈黙後の価値 | 空の薬瓶は何の病も治せない。しかしその薬で生き返った者の家では神壇に上がっている —— 薬師如来(藥師如來)の舎利瓶という名で。 |
#浄水剤 (淨水劑)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 浄水剤 (淨水劑) |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 1錠を水に溶かして半刻を待てば、二、三升入りの水筒一つが飲める水になる(用語・度量衡辞典)。その水は疫発動の「汚染環境」として数えない。濁った色合いと匂いまでは消せない —— 安全な水と美味い水は別の水だ。すでに罹った病は治せない —— それは抗生物質と医術の仕事だ。 |
| [消尽] | [消尽 10・回数] —— 一錠が一回。 |
| 劣化特則 | 消耗品 —— 劣化なし。浸水トリガー時に残量喪失宣言可能(湿気た錠剤は薬ではない)。寝かせた薬品の幕間減少もそのまま受ける。 |
| 一握りの物語 | 登山背嚢の脇ポケットで十年を眠った物だ。買っておいて使う事がないことを願い —— その願いは四百年を遡ってきて破れた。 |
| 沈黙後の価値 | 錠剤が尽きても教えは残る —— 「煮立てて飲め。」浄水剤の沈黙の後に残るものは薬ではなく習慣であり、その習慣一つが村の夏を変える。 |
#非常食糧
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 非常食糧 |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 1回消費: 一人の一食。調理も火も水も要らず、歩きながらでも食う。食った者はその日飢えない —— 飢えのペナルティを受けない。ただし「まともな食事」の分までは果たせない —— それは温かい飯の仕事だ。戦力は一点も戻らない —— 腹が満ちることと治ることは違う。 |
| [消尽] | [消尽 6・回数] |
| 劣化特則 | 消耗品 —— 劣化なし。保存期限は本巻のキャンペーンより長い。包装が破れれば(落下・浸水トリガー)GMは残量1喪失を宣言できる。 |
| 一握りの物語 | 袋に山とヘリコプターの絵が描かれている。災害に備えて作った飯 —— 作った者たちはその災害の深さが四百年とは知らなかった。 |
| 沈黙後の価値 | 水の漏れない銀色の袋はこの時代にない物だ —— 火口袋として、種袋として、二度目の生が長い。 |
自衛官の戦闘食糧(戰鬪食糧)—— 火なしで温めて食う軍用版 —— は別のカードだ。自衛官セットで扱う。
#法 補充 — 些細なものの価値 (Scene Tool)
カード四束が終わった。だが背嚢の底にはカードになりきれないものが残る —— 針、石鹸、ファスナー、硝子瓶。本巻はこれらをデータにしない。してはならない —— 一握りの日用品に数値をつけた瞬間、それは駆け引きの材料であることをやめて換金表になる。
そこでまず宣言する。下の表は創作だ。 史実(史實)の交換比を再構成したものではなく、駆け引きの場面を設えるための価値感覚だ。語彙は用語・度量衡辞典のもの —— 文、匁、両—— をそのまま使い、数値は使わない。一般人・学生セットの「相場感覚」がGMに問うてくるとき、その答えの出発点がこの表だ。
価値は三層だけで数える。
| 層 | 感覚 | 駆け引きの形 |
|---|---|---|
| 銭一握り | 数十文 —— 汁飯数杯 | その場で即席交換。一夜の宿食と換えるに好い |
| 銀を呼ぶもの | 匁単位 —— 職人の一季の手間賃 | 駆け引きの場面一つを設える値。座の鑑定人が割り込む |
| 刀を呼ぶもの | 値を勘定できる者がいない | 駆け引きではなく事件 —— 噂、盗人、領主の使者 |
| 物 | この時代の眼 | 価値層 |
|---|---|---|
| 裁縫針一束 | 太さが揃い錆がない —— 縫い物をする手なら一目で分かる | 銭一握り。山村では一夜の宿食 |
| 石鹸一個 | 脂垢が泡で解ける —— 洗う事を業とする家(遊女屋・茶屋)が先に分かる | 銀を呼ぶもの |
| 精製塩一袋 | 白く細かく苦みがない | 銭一握り —— 塩の道から遠い山村では銀 |
| 飴一握り | 蜜より細やかな甘み | 銭一握り —— しかし子供の心と茶人の話題を買う |
| 金属ファスナー | 開け閉ての仕草一つで座中が集まる —— 発条でも蝶番でもないもの | 銀を呼ぶもの —— 職人が絡めば刀を呼ぶ |
| 透明な硝子瓶 | 南蛮硝子より澄み、気泡一つない | 銀を呼ぶもの —— 大名の茶室に届けば両を呼ぶ |
| 手鏡 | 青銅鏡の時代に、顔がそのまま映る | 刀を呼ぶもの —— 売られた先で神物になる |
| ボールペン一本 | 墨も硯もなく細い線が果てなく出る | 銀を呼ぶもの —— 乾ききった後のことは、売る者の良心に |
使い方は二行で足りる。銭一握りの物は場面の潤滑油だ —— 宿食を買い、道を問い、子供を笑わせよ。刀を呼ぶ物は値ではなくシナリオだ —— 売るか否かからが場面であり、売った後が本編だ。鏡一つが村の騒動になり、石鹸一個が茶屋の女主人との十年の縁になる —— この表の目的は換金ではなく、その縁だ。
背嚢は一区画ずつ軽くなる。そしてその軽くなった重さのぶんだけ —— 神隠しはこの時代の人になっていく。