#医療人 (醫療人)
目次
権威。 本文書は変形規則(Variant)である。本巻のすべての変形規則がそうであるようにGM許可を前提とし、fcは
co正典(Canon)を覆せない。開始漂流物カードの数値のみが狭いCanon(本巻限定)であり、§卓フックはScene Toolである。本文書は正体性セット総論が確定した構成5要素(法 1)・運用規則(法 2)・文書様式(法 3)をそのまま従う。
#香 — 奇跡は噂になる
#導入断片 — 矢は抜くものではない
山霧を抜け出たとき、男はまだ自分の靴がこの泥濘に似合わないということしか知らなかった。
街道の下の方から悲鳴が上がった。荷車の傍らに人々が輪になって集まっており、囲んだ肩の隙間から若い足軽が見えた。太腿に矢が刺さったまま車輪に背を預け、仲間の一人が矢柄を握り締めていた。
「抜くな!」
男は考える前に叫び、考える前に駆けた。槍先二つがまっすぐ彼の胸を向いた。見たことのない布で仕立てた衣、見たことのない鞄 —— 誰かが低く呟いた。神隠しだ。
「その矢、今抜けばこの者は死ぬ。」男は槍先の前で両手を挙げてみせた。「刺さったままなら死なぬ。栓の役を果たしているのだから。」
槍は下がらなかった。しかし矢柄を握る手が止まった。
「煮えた湯はあるか。なければ酒。一番きついものを。」
誰も動かぬので、男は髭の白い組長をまっすぐ見た。組長が顎をしゃくると、ようやく誰かが腰の瓢箪を解いた。
男は膝をつき、鞄を開けた。鋏が刺し子の袴を長く裂いた。きつい酒が傷の周りを洗い、足軽が歯を食いしばって泣き叫んだ。
「よく聞け。矢じりが大きな血の管の脇に横たわっている。抜く瞬間に血が噴くから、お前は —— 」男は矢柄を握っていた仲間を指した。「俺が押さえる場所を全力で押せ。三つで抜く。一つ、二つ —— 」
矢じりが抜けた。血が噴いた。手のひらが押さえた。男の指が針に糸を通すあいだ、囲んだ人々はその手が震えないことを見た。
半刻ほど過ぎて足軽の悲鳴は荒い息になり、荒い息は罵りになった。生きている者だけが罵る。
組長がようやく口を開いた。「どの流派の金瘡医(金瘡醫)か。」
「流派はない。遠い所で学んだ。」
「遠い所、か。」組長は男の鞄の中 —— 銀色に光る、この世のものではない道具たちを見下ろした。槍を構えていた眼が、今や別のものを勘定していた。恐れが抜け出た跡に入ってきたのは畏敬、そして所有欲だった。
「名は問わぬ。我らの陣中へ来い。お前のような手は百人分の値をする。」
男は答える代わりに鞄を閉じた。閉じる前、彼の眼が内側の袋をかすめた —— 白い薬瓶三つ。それが何を意味するのかは、この街道で彼一人だけが知っていた。
#香 — 百人分の手
数百年後の医術を知る手。この時代にそれは奇跡であり、奇跡は必ず噂になる。噂は患者を連れてきて、患者の後ろには領主が来て、領主の後ろには鳥籠が来る。正典現代人の役割一行 —— 「医術特化」 —— を一振りのメスのように鍛え上げたのがこのセットだ。
しかし本巻の背骨はここでも撓まない。この書は現代人を強くする書ではない。消耗してゆく未来のドラマを与える書だ。 医療人の鞄には奇跡が入っており、奇跡には残量が記されている。抗生物質は三瓶で、患者は果てがない —— 一瓶が村一つを生かせるが、二つ目の村には無い。本巻でドラマ密度が最も高いセットが医療人である理由は、その勘定が最も残酷だからだ。
そして一つだけ先に記しておく。六セットのうち医療人だけは、消尽の果てが没落ではない。薬は尽きる —— しかし手を洗う術は消尽されない。その話は§成長曲線でする。
#セットデータ — 五要素
総論 法 1の枠そのままだ。前職は医師・看護師・薬剤師 —— 三者ともに下記の一組のデータを使う。
| # | 要素 | 医療人 |
|---|---|---|
| 1 | 開始機能調整 | 医師・看護師:策謀習得 ↔ 医術入門(等級交換)/薬剤師:医術習得格上げ + 薬草入門 |
| 2 | セット特技 | 1段「消毒と縫合」/3段「トリアージ」 |
| 3 | 開始漂流物 | 往診鞄 —— 手術道具 + 処置消耗品 [消尽 6・回数] + 抗生物質 [消尽 3・回数] |
| 4 | 葛藤フック | 誰を生かすか/奇跡の代償 |
| 5 | 適応変形 | 速い道:浄土僧/塞がれた道:殺法 |
#要素 1 — 開始機能調整
正典現代人の開始自動機能四つ(策謀習得、医術入門、交渉入門、感知入門)のうち二枠を変える。等級保存 —— 習得の枠は習得に、入門の枠は入門に。機能点数は一点も増えない。
| 前職 | 交換 | 結果(開始自動機能) |
|---|---|---|
| 医師・看護師 | 策謀習得 → 医術習得、医術入門 → 策謀入門 —— 二枠の等級を交換する | 医術習得 · 策謀入門 · 交渉入門 · 感知入門 |
| 薬剤師 | 策謀習得 → 医術習得、医術入門 → 薬草入門 | 医術習得 · 薬草入門 · 交渉入門 · 感知入門 |
- 天井は正典が定める。 医術と策謀は正典の名人可能目録(策謀・医術・交渉・感知・虚言・生存)の機能だ —— 名人の門は正典がすでに開いてあり、セットはその門に触れない。薬草は目録の外だ —— 免許(3)上限(総論の免許上限規則そのまま)。薬草名人の道はセットではなく、この時代の師にある。
- 薬剤師の値。 薬剤師は策謀をまるごと差し出す —— 非熟練ペナルティ-2を抱えて始める。戦術の頭の代わりに薬棚の頭を選んだという意味であり、その値はシートではなく場面で返ってくる。
- 背景併用。 現代の記憶の機能特典(策謀・医術・交渉のうち2個)が医術を指すなら、その特典は残った機能へ強制移動する —— 総論 法 2の一行規則そのまま。同じ出自を二度数えない。
#要素 2 — セット特技
#1段 — 消毒と縫合 [素養]
[素養] 消毒と縫合
択一: 正典1段先見の明と択一。活力譲渡(2活力消耗 → 対象に2活力伝達)と
能力値特殊(勇/技/體 -1、智/美/運 +1)は職業の骨格なので維持される
(総論 法 2 —— 正典保護原則)。
効果: このキャラクターが行った医術・薬草処置は「清潔な処置」だ。常時:
- 感染悪化防止: 処置した傷は感染で悪化しない —— その傷を
疫発動の「汚染環境」として数えない(co-03-09統合規則の引用)。
- 出血縫合: 小康段階や非戦闘の処置で対象の出血状態を判定なしで
解除する。戦闘の呼吸の只中では正典解除判定(體>=13または医術>=11)
そのままだ。
- 後遺症除去: 戦闘不能から事後判定に成功して重傷で生き残った者
(co-03-05)をこの手が処置したなら、GMはその負傷を永久ペナルティ(強張った脚、
握れぬ手)として残さない。傷痕は残る —— 物語としてのみ。
条件: 現代の消耗品があればその場で。なければ煮えた湯と清潔な布、
そして非戦闘時間の一切れ —— 道具は摩り減っても知識は摩り減らない。
禁止: この特技は戦力を回復させず、回復量を増やさず、
いかなる判定にもボーナスを足さない。
消毒と縫合が変えるのは回復の数値ではなく回復の質だ。正典の医術が「何点を戻すか」を担うなら、この特技は「戻したものが再び崩れないか」を担う —— 戦力と敗北の回復文法は一行も変わらない。この時代の負傷者は刀に死ぬより三日後の膿に死ぬ —— その三日を消すのが未来の医術だ。
#3段 — トリアージ (選別救命) [整備]
[整備] トリアージ (選別救命)
択一: 正典3段択一(分隊指揮・活力注入・現場探索)と択一。
活力: 2 / 限界: 小康1回
効果: 同じ区域の負傷者全員を一目で分類する。この小康段階に ——
- 処置・安定化・解毒など医術・薬草判定が必要な行動を最大3名に
行える(本来1名 —— 判定は各自別に振る)。
- そのうち1名は戦闘不能状態の味方でもよい: 2d10+智+医術 >= 13
成功時に戦力1で安定(正典非戦闘医術表の「戦闘不能の仲間の応急
処置」 —— 本特技はその判定を小康段階に前倒しするだけだ)。
禁止: いかなる判定にもボーナスを足さず、いかなる回復量も増やさない。
この特技が生かすのは時間だ。
5段からはどのセットであれ正典特技目録に合流する —— 野戦医療も、危機管理も正典のものであり、正典のもので十分だ。前職の色は3段で終わる。
医術合算上限 —— インフレ点検。 明文化する。医療人セットは医術判定にボーナスを1点も足さない。 開始時点の医術格上げはボーナスではなく機能点数の再配置だ —— 医術 +1(入門→習得)は策謀 -1(習得→入門)と交換したものなのでシートの合計は0だ。医術判定に乗る固定補正は全部正典のものだけだ: 先見の明の応急医学 +3、現代の記憶の別の時代の常識 +1。本巻のいかなるセット特技・変形規則も医術判定に常時固定補正を乗せない —— 消耗・道具補正(救難職の救急鞄の+1、自衛官の個人救急嚢の+2など)は正典装備文法の一時補正で別物であり、この上限の勘定に入らない。したがって医療人の医術常時固定補正の上限はセットなしの正典現代人と正確に同じだ。 さらに一歩 —— 1段で消毒と縫合を選んだ医療人は択一で応急医学 +3を失う。 数値では正典より低くなる。セットが売るのは数ではなく質だ。そして直接戦闘力を与えるセットは自衛官一つだけだという総論 法 2の宣言そのまま、医療人はいかなる形でも攻撃判定にボーナスを足さない。
#要素 3 — 開始漂流物 — 往診鞄
背嚢一つ原則の中の鞄一つだ。医師のものなら往診鞄、看護師のものなら救急鞄 —— 名が何であろうとデータは同じだ。カードは消尽システム 法 4の七欄標準様式に従う。
#手術道具
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 手術道具 |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 縫合・切開・摘出など外科処置の道具要件を常に満たす。道具のない外科処置にGMが課す状況ペナルティ(-2推奨)を受けない。判定ボーナスはない —— 2d10+智+医術 >= 目標値はそのままだ。 |
| [消尽] | なし —— 器物。減らない、鈍るか失くすだけだ。 |
| 劣化特則 | トリガー: 落下・浸水、そして血の付いたまま閉じた鞄(消毒なしで終えた場面)。判定は基本式(2d10+技+解除)。摩耗: 外科処置判定 -1 —— 鈍った刃、歪んだ針。 |
| 一握りの物語 | 鞄の深い所に滅菌包装が破られないまま並んで眠っている。包装を裂く音が鳴るたびに、主は手術室の扉が閉まる音を思い出す。 |
| 沈黙後の価値 | 曲がり針一本が金瘡医には生涯の話頭だ。鋏と鉗子は職人に蝶番とばねの教本であり —— 百年を耐えれば、己が縫った命たちを覚えている付喪神の候補だ。 |
#処置消耗品 (處置消耗品)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 処置消耗品 (處置消耗品) —— 消毒液・包帯・鎮痛剤 |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 1回分で次のうち一つ。清潔な処置 —— 傷一つを消毒・被覆する。その傷は感染で悪化しない(正典疫規則の「汚染環境」として数えない)。鎮痛・解熱 —— 一場面のあいだ痛み・発熱による状況ペナルティを無視する。どちらも戦力・活力を一点も動かさない。 |
| [消尽] | [消尽 6・回数] —— 現代の消耗品は1人分ずつ包装されている。 |
| 劣化特則 | 消耗品は劣化しない —— 濡れ、傷み、消えるだけだ。浸水トリガー時にGMは故障判定の代わりに残量1喪失を宣言できる。 |
| 一握りの物語 | 鞄の一番上の段なので最も先に減る物。包帯一巻きが解けて出ていった長さの分だけ、この時代が主の人生の中へ入ってきている。 |
| 沈黙後の価値 | 残るのは空箱と包装紙だけ —— しかし箱に描かれた赤い十字は、それを見たことのある村ですでに霊験あらたかな文様になっている。 |
#抗生物質 (抗生劑)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 抗生物質 (抗生劑) |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 1回分投与: 進行中の疫または膿んでいく傷一つの悪化が止まる。 投与日から正典疫規則の毎日判定(體>=13)を振らず、三日目に 2d10+智+医術 >= 13 成功時に完治 —— 十分な休息(村・城)のない道端でも。外傷の戦力は一点も回復させない。妖魔の呪と毒には無効 —— 呪は退魔の領域であり、毒は解毒薬の領域だ。 |
| [消尽] | [消尽 3・回数] —— 一人の一病に1回分。分け使えば二人とも生かせない —— 半回分は0回分だ。 |
| 劣化特則 | 単位は回数だが時間にも負ける —— 季節が変わるほど寝かせた薬品に対する幕間減少宣言(消尽システム —— 時間そのものが敵だ)はこのカードにも適用される。 |
| 一握りの物語 | 病院の薬品棚では有り触れていて勘定もしなかった物だ。今は一錠の重さを手のひらが覚えている —— 三度の奇跡、そしてその次はない。 |
| 沈黙後の価値 | 空の薬瓶は何の病も治せない。しかしその薬で生き返った者の家では神壇に上がっている —— 薬師如来(藥師如來)の舎利瓶という名で。 |
最後の1回分 (Scene Tool)。 残量が1になった日から、抗生物質は装備欄を離れて問いになる。誰に使うのか。今使うのか、より悪い患者を待つのか。生かせるのに惜しんで取っておいた夜に、お前は眠れるのか。 GMへの勧めは一つだ —— 最後の1回分が必要な患者を二人登場させよ。その場面は準備なしでも転がる。本巻が医療人セットに掛けたドラマの半分が、その薬瓶一つに入っている。
#要素 4 — 葛藤フック
正典の三道六心の葛藤目録の具体化だ。新たな葛藤軸はない —— レンズだけを変える。
- 誰を生かすか。 正典「身分制と平等」の医療人レンズ。トリアージは特技の名である前に問いだ —— 先に運ばれてきた農民と後に運ばれてきた家老、医術の倫理は重症度順であり、この時代の倫理は身分順だ。そして担架の上の敵軍の負傷兵: 仁に従って生かせば味方の義が問い、義に従って背を向ければ手が生涯覚えている。
- 奇跡の代償。 正典「忠か自由か」と「妖魔との共存」の交差点。神医(神醫)の噂は[消尽]より速く育つ —— 薬は減るのに期待は増える。大名はその手を所有しようとする(専属医という名の鳥籠 —— 忠誠か、監禁か)。民衆はその手を神格化するか、恐れる —— 人の腹を切り開いてなお生かす者、それは本当に人の業か。正典現代人の短所「時代不適応」が医療人には最も鋭く増幅される: 奇跡を行うほど、人から遠ざかる。
#要素 5 — 適応変形
適応メカニックの正典規則は全部そのままだ。セットは二行の色だけを塗る。
- 速い道 —— 浄土僧。 この時代で医療人の仕事に最も近い職業 —— 看病と臨終、慰めと士気。浄土僧から借用する最初の特技から同職業免除を適用する。総論の文章そのまま —— 看護師は医僧の手さばきを一日で読む。
- 塞がれた道 —— 殺法。 攻撃判定を含む特技全部。借用自体は正典規則どおり可能だが、この領域には免除が最後まで適用されない —— 活力ペナルティが永遠に残る。人を生かしていた手は、人を斬る術に最後まで不慣れだ。
そして二行の外の一つ —— 衛生だけは適応の反対方向へ動く。医療人はこの時代のほとんどすべてに適応していくが、汚れた包帯を巻き直すことには最後の日まで適応できない。それはペナルティではなく、このキャラクターが誰なのかを示す鏡だ。
#時代との摩擦 — 医術が呪術と並んで歩く時代
#分業 — 医者の列と陰陽師の列
この時代の病床には二種類の敵が訪れる。正典統合規則の表がすでにその分業を記してある —— 毒・疫・出血は医術と解毒薬の列であり、呪は退魔>=15または結界>=15の列だ。 医療人は左の三列でこの時代の誰よりも強く、四列目の前では聴診器を下ろさねばならない。
だから陰陽師・密教僧との関係は競争ではなく —— 最も良い卓では —— 協診になる。熱は下がったのに幻が去らない患者がいるなら、それは二人の仕事だ。医者が体の病を取り除いてから初めて陰陽師はその下に敷かれた呪を見る。逆に摩擦の種も同じ場所にある: 加持祈禱で食べていく寺の立場からすれば、祈り無しで人を起こす手は飯椀を割る手だ。
#金瘡医と本草家 — この時代の医学は空っぽではない
戦国の戦場にはすでに医者がいる。刀と矢の傷を専門に診る金瘡医(金瘡醫)、山と野の草を読む本草家と薬師、寺で病者を看取る医僧。医療人は彼らを踏み潰せない —— この山の薬草を知らず、この時代の病名を知らず、馬の脚を診られない。金瘡医は医療人の縫合を盗み見て、医療人は金瘡医の薬嚢を盗み見る。その二つの視線が出会う場所が§成長曲線の三番目の季節だ。もちろんすべての金瘡医が寛大ではない —— 患者を奪われた医者の怨みは、刀を使わずに人を殺す術を知っている。
#煮えた湯と清潔な布 — 知識の重さ
医療人が持ってきたもののうち最も重いものは鞄ではない。死亡率を変えるのは奇跡の薬ではなく手洗いという知識だ。煮えた湯、清潔な布、傷を絞らないこと、産室の湯、井戸と便所の距離 —— 道具が一つも要らない処置の目録は長い。しかしその言葉は只で通じない。薪は高く、布はもっと高く、「代々こうしてきた」という言葉はそれより更に高い。村一つの産婦死亡を半分に減らすのに必要なのは医術判定ではなく —— 一季節の信頼だ。摩擦はペナルティではなく場面の材料だ。
#身分と体 — 触れられない患者
この時代に貴人の体はみだりに触れるものではない。脈は御簾越しに取り、診察は侍女の口を経て、「衣を脱いでみせよ」という言葉は診療ではなく無礼だ。触診と聴診で学んだ医術がその礼法の壁の前に立つ —— そしてその壁を越える方法は医術判定ではなく交渉と風格、あるいは患者がより切迫することだけだ。
#成長曲線 — 薬が尽きた後に完成する医術
三つの季節で記す。正典適応・昇段規則の上の叙事曲線であり、新たなデータはない。
奇跡の季節。 薬がある間、語るのは医療人ではなく鞄だ。抗生物質が三日で起き上がれなかった者を起こし、噂が街道を駆ける。この季節のドラマは残量の勘定だ —— 三瓶、二瓶、一瓶。投薬一つ一つがすなわち選択であり、選択一つ一つが葛藤フックだ。
沈黙の季節。 最後の1回分が出ていった朝にも患者は来る。鞄は軽くなったが空ではない —— 残ったのは知識だ。煮えた湯、清潔な布、縫合、副木、隔離、手洗い。消毒と縫合が消耗品なしでも転がるよう設計された理由がこの季節にある: 道具がなくても知識は残る。 他の神隠しが銃の沈黙の前で竹槍を削るとき、医療人は同じ沈黙の前で湯を沸かす。
結合の季節。 そして医療人はこの時代の医学を学び始める。金瘡医の薬嚢から、本草家の山行から、医僧の看病から。シートの上でそれは全部正典の道だ —— 薬草機能を休息期修練と自由点数で上げ(セット交換分は免許上限)、浄土僧の特技を適応で借用する。薬草免許の「救急煎じ」と医術が一手に集まる日 —— 人々はその手を二つの時代の医術を繋ぐ医者と呼ぶ。それは称号でありクラスではない。前職も、二重ビルドも開かない —— 適応が加速した果てが新職業のように見えるのは叙事であってデータではない(総論 法 3そのまま)。
設計意図 —— 唯一の逆方向。 本巻すべてのセットの成長曲線は帰化(歸化)だ(消尽システム 法 3) —— 消尽の果てでカミカクシは正典現代人に帰ってくる。自衛官の本体は銃であり、銃は沈黙する。医療人の本体は知識であり、知識は沈黙しない。 抗生物質は
[消尽 3・回数]だが手を洗う術には残量がない。だから六セットのうち医療人だけは消尽以後がむしろ完成形だ —— 失うものが最も鮮明であり、失った後の道が最も長いがゆえに、本巻はこのセットをドラマ密度の頂点に置く。
#卓フック (Scene Tool)
GMがその場で取って使える大きさで三つ。
疫病の村。 峠の向こうの村が封鎖された —— 領主の兵が道を塞ぎ、内では毎日哭声が上がる。疫病に本巻の新規データはない —— 正典疫規則をそのまま使え(毎日體>=13、解除は3日休息 + 医術>=13)。本巻が足すのは「感染悪化防止」一行(消毒と縫合・処置消耗品)と抗生物質カードだけだ。村全体の救済は正典非戦闘医術表の大きな盤 —— 2d10+智+医術 >= 15、1週、成功時に名声 +2 —— そして本当の戦いは判定ではなく勘定だ: 抗生物質は一瓶で、伏す者は四十だ。隔離と煮えた湯で三十九を引き止められるか。一方で道を塞いだ兵の勘定はもっと速い —— 焼く方が安く付く。
大名の秘密の病床。 真夜中に目隠しをされたまま駕籠に載せられて運ばれる。屏風の裏の患者はこの領地の主 —— そしてその病は領地の誰も知ってはならない。治せば鳥籠が待つ(専属医 —— 葛藤フック「奇跡の代償」の実戦)。治せねば口封じが待つ。そして三日目の夜、患者の枕元で陰陽師と出くわす —— 彼も同じ秘密を守りに呼ばれてきた。病か、呪か、どちらもか。分業の場が始まる。
敵陣への往診。 休戦の旗を持った使者が陣中へ来る —— 敵将の一人息子が死にかけているので、神医(神醫)を貸してくれという請いだ。安全保障は敵将の一言だけで、味方本陣の視線は背に刺さる。生かせば敵将に借りを負わせるのか、敵の刀を一つ余計に育ててやるのか —— 戻った日、軍営の誰もその答えを代わりに定めてくれない(葛藤フック「誰を生かすか」の実戦)。
薬瓶は三つ、患者は果てがない —— その間のどこかに、このセットのすべての場面がある。