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#学者・教師セット (學者・敎師)

目次

権威。 本文書は変形規則(Variant)である。本巻のすべての変形規則がそうであるようにGM許可を前提とし、fcは co 正典(Canon)を覆せない。開始漂流物カードの数値は狭いCanon —— 本巻の中でのみ正典である。本文書は正体性セット総論が確定した構成5要素と文書様式をそのまま従う。


#香 — 知ることが職であった者

#導入断片 — 年数を数える法

雨は山門の前で止んだ。

男は泥まみれの姿で山寺の軒下に立っていた。背には踏査用の背嚢、肩紐には学会の名が刻まれた名札がまだ吊られていた。半日前まで彼は廃神社の石灯籠の銘文を拓本していた。霧が晴れて見れば —— 道がなかった。

薪を抱えて出てきた老僧が彼を見て立ち止まった。しばらく見つめてから、軒の内側を顎で示した。「火に当たれ。」

男は深く頭を下げて入り、腰を下ろした。火のそばに座ると、ようやく手が震え始めた。

「どこから来た道だ。」

「道を……失いました。」嘘ではなかった。「ご住職、奇妙なことをお尋ねしますが —— 今が、何の年でしょうか。」

老僧は笑いも驚きもしなかった。「年数を失うほど彷徨ったか。」薪を一つ火に載せ、老人は指を折った。「西の島に鉄砲が入って —— 四十年目だと言うがな。」

男の頭の中で数字がひとりでに転がった。曇った眼鏡を外して拭く間にも、指先は膝の上に年号を記していた。震えが止んだ。二十年掘った時代のど真ん中だった。今この山門の中で —— いや、もしかすればこの国全体で —— ここが何の年か知る者は自分だけだという思いに、男はあやうく笑い出すところだった。

「ご住職、では尾張の方で —— 」男は書の中の地名と戦の名を持ち出した。論文に書いた戦。史料で覚えた家門。

老僧は首を傾げた。「尾張の戦なら珍しくもない。だがそのような名の戦は、寡聞にして知らぬ。」

「そんなはずは……」男は別の事件を挙げた。さらに別の事件を。半分は通じた。半分は、老僧が初めて聞く話だった。

「若いのに書をよく読んだものよ。」老僧は咎める色なく言った。「だが年数を鉄砲だけで数えるのは商人の勘定だ。この山では違う数え方をする。わしは —— 鬼の山が立った年に行者となった。」

「鬼の……山?」

「天狗の使者が山を下ったのはそれから十年のちでな。」老僧は熾を掻いた。「比叡の高きお方々がその方々を追われたのだ。その年にはこの寺の鐘も三日泣いたわ。」

男は口を開けなかった。二十年間読んだどの史料にも、どの脚注にもない事件だった。鉄砲は書と同じ年に入ったのに、その隣に鬼の山が立ち天狗が下る歴史が並んで置かれていた。

男は背嚢を開けた。雨に半ば濡れた手帳を取り出し、ボールペンの頭を押した。カチリ —— その小さな音に老僧が目を上げた。

「書き留めてよろしいでしょうか。今おっしゃってくださったことを。」

「それは何の筆だ。」

「墨が中に入った筆です。」男は滲む紙の上に最初の一行を記した。鉄砲伝来から四十年。鬼の山は立ち、天狗は警告した。 —— 知る歴史が終わった場所で、記すべき歴史が始まっていた。

老僧はその素早い手つきをしばらく見つめてから言った。「学んだ者だな。 —— 泊まる所はあるのか。」

#香 — 宝か、異端か、その両方か

右の断片の研究者は本巻のサンプル一行 —— 夜間バスの乗客たち(サンプルキャラクター) —— とは違う日、違う門から渡ってきた神隠し(神隱し)だ。漂流は一度の事件ではなく続く現象であり(漂流の原理)、学者はその現象が連れてくる人々の中で最も静かな部類だ。刀も、銃も、薬品もない。あるのは頭の中の四百年と、背嚢の中の本数冊だけだ。

この時代でその知識は宝だ —— 文字を読み書きする手はどの陣営でも値がつく。同時に異端だ —— 天が回るのか地が回るのかを「知っている」と言う口は、比叡の耳に入った瞬間に危うくなる。そして大抵は、その両方だ。

正典現代人の先見の明は頭の中の知識だ —— GMに問い、参照し、食い違いに切られる。学者・教師セットが加えるのは方向一つだ。知識を産出物に変える。 鑑定書、略図、系譜、そして教え。頭の中の知識はその頭が倒れれば共に倒れるが、指先の知識は紙の上に残り弟子の身に残る。学者が死んでも地図は残る —— それがこのセットのすべてだ。

本巻の背骨はここでも撓まない。この書は現代人を強くする書ではない。消耗してゆく未来のドラマを与える書だ。 学者の漂流物には弾倉も注射器もない —— 代わりに割れれば終わりの眼鏡と、乾けば終わりのボールペンと、摩り減らぬが濡れる本がある。そして断片の研究者が最初の夜に確かめたように、学者が最初に消耗するのは物ではない。二十年の勉学が丸ごと「別の世界の記憶」になる喪失 —— その喪失の反対側に「守るべき正史がないという解放」があり、このセットのドラマはその二つの間を歩く。

#小分岐 — 三筋の前職

小分岐何者であったか背嚢の中の本
歴史研究者史料と地図を読んでいた者。この時代が —— 食い違ったまま —— 専攻だ史料集・年表・古地図図版集
理系研究者構造と数式を読んでいた者。星・物質・機械の言葉を知る専攻概論書・数表(數表)・実験ノート
教師すべての科目を半歩ずつ知り、それを伝える法を深く知っていた者教科書数冊・教師用指導書

#セットデータ

総論 法 1の枠そのまま、五要素のみで成る。

#要素学者・教師セット
1開始機能調整小分岐別1個置換 —— 地理 / 解除 / 扇動 (入門の枠)
2セット特技1段 文献鑑識 [素養] / 3段 教える者 [型]
3開始漂流物専攻書籍ひと握り(消尽なし)・筆記具一揃え [消尽 6・回数]・眼鏡(消尽なし)
4葛藤フック真なる答えと聞きたい答え(忠か自由か) / 文字は誰のものか(身分制と平等)
5適応変形速い道:学者 / 塞がれた道:忍び

#要素 1 — 開始機能調整

正典現代人の開始自動機能(策謀習得、医術入門、交渉入門、感知入門)のうち小分岐が指定した1個を置換する。入門の枠は入門に —— 機能点数は一点も増えない。

小分岐置換 (1個)前職の痕跡
歴史研究者感知入門 → 地理入門史料の地名を地図の上に移していた眼
理系研究者交渉入門 → 解除入門人の言葉より構造の言葉が先に通じていた手
教師感知入門 → 扇動入門三十の視線を一方向に集めていた声
  • セット置換で得た機能(地理・解除・扇動)は免許(3)上限 —— 総論 法 1そのままだ。名人可能目録(策謀・医術・交渉・感知・虚言・生存)は不変だ。
  • 背景現代の記憶との併用は自由だ。その背景の機能特典目録(策謀・医術・交渉)はこのセットの置換機能と重ならないので、総論 法 2の強制移動規則が発動することはない。

#要素 2 — セット特技

#1段: 文献鑑識 (文獻鑑識) — 正典先見の明と択一

[素養] 文献鑑識 (文獻鑑識)
効果: 常時。二筋。
  1. 鑑定 —— 書籍・文書・符・器物の出処・真偽・年代を判ずる判定に +3。
     判定式は対象に従う:文書・系譜は2d10+智+策謀、地図・地名は
     2d10+智+地理、筆跡・偽造痕跡は2d10+智+感知。
     目標値はGMが定める —— 通例 11 / 13 / 15。
     成功時、その物の来歴についてGMに質問1個を投げられる。
  2. 記録 —— 幕間ごとに1回、その冒険で直に見聞きして確かめた情報一つを
     記録物(報告書・略図・系譜・教本)にする。記録物は物だ —— 渡され、
     売られ、奪われる。記録物を読んで動く者はその情報が直結する
     非戦闘判定1回に +2 (記録物一つにつきシナリオ1回、攻撃判定不可)。
     紙がなければならない —— そしてこの時代に紙はただではない。
能力値特殊(勇/技/體 -1、智/美/運 +1)と活力譲渡は特技ではなく
職業の骨格として維持される (総論 法 2 — 正典保護原則)。

先見の明との境界は一行だ。先見の明は世界に問い、文献鑑識は手にした物に問う。 先見の明を放棄した学者は「この戦がどう終わったか」を失う代わりに、「この刀の銘文はいつの時代の書体か」を得る —— そしてその答えを紙に記して他人に渡せる。

陰陽寮との接点もここで生じる。年表が記しておいたように陰陽寮の識別儀式は「霊界のものか」を判ずる。文献鑑識は「誰の手から、どの時代に出たか」を判ずる。二つの鑑定が重なるとき真偽は初めて完全になり —— 二つの鑑定が食い違うとき、シナリオが始まる。

#3段: 教える者 (敎える者) — 正典3段択一と択一

[型] 教える者 (敎える者)
活力 2 / 限界: 幕間1回 / 非戦闘専用 —— 授業には半日がかかる。
効果: 同じ幕間を過ごす仲間1名に、自分が入門以上で保有する
  機能1個を教える。次の冒険が終わるまでその仲間はその機能を
  入門(判定 +0)扱いとする —— 非熟練ペナルティ(-2)が消える。
制限:
  - 武芸(武藝)カテゴリと能力値専用機能は教えられない。
    書で学んだ刀は刀ではなく、気質は授業のものではない。
  - すでにその機能が入門以上の仲間には効果がない。
  - 学者1人が同じ時期に維持できる教えは1件。
叙事: 同じ仲間が同じ機能を三度の冒険にわたって学んだなら、以後彼が
  成長規則でその機能に点数を使うとき、GMはこの授業を師事と
  認めてやれる。免じられるのは点数ではなく —— 師の不在だ。

数値はわざと小さく取った。この特技が引き換えるのは正典3段択一 —— 分隊指揮、活力注入、現場探索 —— の一呼吸だ。戦場の一呼吸を放棄して幕間の半日を得る交換であり、交換の報酬は数値ではなく場面だ。文字を初めて読めるようになった足軽の顔、薬草の名を書き取る巫女の手 —— 教師小分岐の花はここで咲く。

#要素 3 — 開始漂流物

背嚢一つ原則(総論 法 1)そのまま。消尽システムが「[消尽]なき漂流物のドラマは02シリーズの各セットが扱う」と予告した場所が —— まさにこのセットだ。学者の荷はほとんど減らない。代わりに、この時代に紙はそれ自体が財だ。摩り減る物は失う心配だけすればいいが、摩り減らぬ宝は奪おうとする手と差し出せという口を呼ぶ。

項目
名称専攻書籍ひと握り (專攻書籍) —— 分野は小分岐に従う
分類装備・物資
効果幕間に半日を費やして参照すれば、次の冒険の間その内容が直結する非戦闘判定1回に +2。文献鑑識の記録物を作るとき典拠(典據)とできる。現代の文字を読む者にのみ本だ —— 他のすべての手には絵と数字が載った珍奇な紙束だ。
[消尽]なし —— 本は摩り減らない、濡れるだけだ。
劣化特則トリガー: 浸水・火災のみ (過酷なトリガー —— 目標値 +2)。判定: 2d10+智+策謀 —— 端紙を選り分け乾かす仕事は本を知る手の仕事だ。摩耗: 端紙の逸失 —— 効果のボーナス -1。沈黙: 読めぬ紙束。
ひと握りの物語踏査鞄に常に入れて持ち歩いていた二、三冊だ。下線と余白の書き込みで埋まった —— 別の世界の歴史書。
沈黙後の価値濡れて固まった束になっても図版一枚、表一つは職人と学者にとって宝であり、紙そのものがこの時代では値をなす。百年を耐えれば —— 誰も読めぬ文字で書かれた本はそれ自体が付喪神の候補だ。
項目
名称筆記具一揃え (筆記具一襲)
分類装備・物資
効果記録物産出と筆写・製図判定に +1。この時代の筆より速く、墨を磨る必要がなく、立ったままでも書く。
[消尽][消尽 6・回数] —— 文献鑑識で記録物を産出するたびに1減少。日常の短いメモはGMが目をつぶってやる。
劣化特則なし —— 消耗品だ。整備できず、インクが乾く日が寿命だ。沈黙後には筆と墨が待つ —— 記録は続けられるが、産出にかかる時間が半日から一日に延びる。
ひと握りの物語学会記念品のボールペンと方眼手帳。手帳の最初の一頁には渡ってくる前の最後の学期の講義計画が記されている。
沈黙後の価値インクの乾いたボールペンは細い管と小さな鉄球 —— 職人が半日見入る物だ。そして使い切った手帳は、この時代の誰も読めぬ文字で記された一冊の史書だ。
項目
名称眼鏡
分類装備・物資
効果なし。眼鏡は掛けた者を強くしない —— 失えば弱くなるだけだ。沈黙すれば細字・遠距離・薄明を判ずる判定に -2。その眼に眼鏡が必要だったかはキャラクター設定が定める —— セットの既定値は「必要だ」である。
[消尽]なし。
劣化特則トリガー: 落下・打撃。判定: 2d10+技+速度 —— 落ちる物を受け止める手。摩耗: レンズに罅 —— 幕間ずっと細字を見た日の記録・整備判定 -1。故障直前: 折れた蔓を紐で結わえた。沈黙: 割れた。終わりだ —— この時代にその眼に合うレンズはない。
ひと握りの物語初任給で誂えた角縁だ。拭く癖は考える癖と一緒に身についた —— 拭く物がなくなれば、思考は何でするのか。
沈黙後の価値割れたレンズの欠片も南蛮鏡の値をなす。しかしその値で買える新しい眼鏡はこの世にない —— 南蛮商人が似た物を知るが、その度は海の向こうでも合わせて来られない。

#要素 4 — 葛藤フック

正典現代人の三道六心の葛藤目録を学者のレンズで具体化した二つ。

  • 真なる答えと聞きたい答え —— 「忠か自由か」のレンズ。主君が問う。天が回るのか、地が回るのか。此度の出陣は吉か。忠は聞きたい答えを上げよと言い、学びは真なる答えを上げよと言う。真なる答えは異端の匂いを放ち(戦国の信仰)、曲げた答えは —— 一度曲げた筆は —— 二度と伸びない。
  • 文字は誰のものか —— 「身分制と平等」のレンズ。なぜ農民の子は文字を学べぬのか。教えれば秩序を揺るがす者と見なされ、背を向ければ教える者であることをやめることだ。行動すれば魔と見なされ、沈黙すれば仁を失う —— 正典が記しておいたその分かれ道の、教壇(敎壇)の上の版本だ。

#要素 5 — 適応変形

適応の正典規則は全部そのままだ。セットは二行の色だけを塗る。

  • 速い道 —— 学者 扇の職業。兵法書の論理を生涯書で読んできた手は陣法の論理も速く読む —— 学者職業から借用する最初の特技から同職業免除を適用する。同じ伝で、この時代の文字・学問体系の吸収も全セット中最も速い。漢文史料、草書、文書様式 —— 幕間数回でこの時代の文字を読む者になる。こちらは判定ではなく演出の領域だ。
  • 塞がれた道 —— 忍び。 その職業の特技借用には免除規則が最後まで適用されない —— 活力ペナルティが最後まで残る。知ることを記す手は、知ることを消す法に最後まで不慣れだ。記録する者は痕跡を残す者であり、学者は生涯痕跡を残す法だけを学んできた者だ。

#時代との摩擦

摩擦はペナルティではなく場面の材料だ。学者がぶつかる地点は四つだ。

#文字を知る者が、文字を読めない

最初の摩擦は最初の文書から来る。草書で崩した書状、漢文で組んだ禁制、碑石の摩滅した銘文 —— 四百年後の活字に馴染んだ眼にこの時代の文字は半ば暗号だ。博士であった者が文盲扱いを受ける最初の数日はこのセットの通過儀礼だ。幸いその数日は短い —— 要素 5の速い道がその道だ。文字を取り戻す過程そのものを場面に書け。寺の童子僧に草書を学ぶ老教授ほどよい絵は珍しくない。

#学問は寺と家門のものだ

この時代に学びは公共財ではない。文字は寺で僧侶が、家門で家臣が、帳面の前で商人が己の必要なだけ習う。子供たちを集めて文字を教える店はまだどの路傍にもない。そして知識は出版されない —— 秘伝(秘傳)で封じられ、家宝(家寶)で相続され、口伝(口傳)で取り締まられる。「知ることを公開する」という現代学問の本能はこの時代では奇行であり、ときに挑発だ。流派の秘伝を問う学者の純真な質問一つが刃傷の理由になりうる。

#紙の重さ

この時代の紙は一枚一枚が物だ。思いつくたびに手帳を取り出して記す癖は傍から見れば金貨を撒き散らす奇行であり、その奇行が噂になれば —— 「紙を湯水のように使う神隠し」の背嚢を狙う眼が生じる。学者の荷には[消尽]タグがほとんどない。代わりにこの危険がある。本と記録物は減らぬ宝であり、減らぬ宝は盗人と領主と寺が等しく欲しがる。奪われぬためには差し出さねばならず、差し出さぬためには隠さねばならず —— 隠す仕事は、要素 5が記したように学者が最も不得手な仕事だ。

#学者が宿る所

それでもこの時代には学んだ者を見分ける場所がある。正典が現代人に推した基盤そのまま —— 明智領は学者を尊重し、は算と文書の都市ゆえ余所者の文字にも値を払う。そして年表の一行 —— 学者足利家門が建てた妖魔研究学堂エンリョ館がある。比叡連に異端扱いされるその学堂は、偏見なき眼で妖魔を見る神隠しと最も結が合う屋根だ。ただし覚えておけ —— 異端の屋根の下に入ることは、異端の名簿に名を載せることでもある。


#成長曲線 — 記してゆく帰化

前職も、二重ビルドも開かない —— 正典択一原則そのままだ。下記はデータではなく叙事の曲線だ。

  • 最初の季節 —— 読めぬ学者。 文字を取り戻すまで、彼の学問は記録だけだ。聞いたことを記し、見たことを描き、手帳の残り頁を数える。断片の研究者がそうだったように、最初の記録物は大抵自分自身のためのものだ —— ここはどこか、何が書と同じで何が違うか。
  • 文字を取り戻したのち —— 売れる学者。 草書を読み漢文を書けるようになれば仕事が生じる。書状の代筆、系譜の整理、寺の蔵書の鑑定、貴物の真偽。記録物が初めて他人の金と換わる日、学者はこの時代の職分を得る —— 神隠しではなく「文字を見る先生」と呼ばれる日だ。
  • 適応の果て —— 二筋の影。 一方の端には寺の一間を借りて子供たちを教える者がいる。寺子屋という言葉はまだどの世界にもないが —— この分岐した世界では、その種を彼が先に蒔くかもしれない。もう一方の端にはエンリョ館の客員がいる。妖魔を恐れなく記述する唯一の人間として、学者家門の書庫に「未来の博物誌」を一冊添える者。

どちらの端であれ、それは事実上の新職業のように見える叙事であってデータではない。明文化しておく —— 現代人 + 学者セットは学者職業ではない。 正典の学者は軍師だ —— 扇と陣法と予言の人であり、軍学と予言の名人の座はその職業のものだ。セットの学者は文献と教育の人であり、最後まで現代人だ。適応で扇の技芸を一手ずつ借りられても、扇の職業にはなれない。借りた手がいくら積もっても —— 彼の本業は記すことであり、教えることだ。


#卓フック

この節はScene Tool —— GMがその場で取って使うシナリオの種だ。

#禁書一冊

領主が西の港(西海道)で南蛮の本一冊を手に入れた。文字は誰も読めぬが、図版は —— 天文図だ。そしてPC学者だけがその絵が何を主張するのか見分ける。比叡連はその本を異端の経典と呼んで焼きに来て、エンリョ館は写しに来て、本の元の持ち主の宣教師は取り戻しに来る。領主の問いは一つだ —— 「この本は武器になるか?」キリシタン信仰の規則と情勢は正典に、南蛮港の風景はfc09に委ねる —— このフックが本巻とそちらを繋ぐ唯一の橋だ。

#二つの鑑定

堺の取引場に「未来の名剣」が出た。陰陽寮の儀式は真品だと言う —— 霊気が確かにある。しかしPC学者の眼には刀の柄の銘文の書体が食い違っている。未来のものにしては、間違った未来だ。霊気は本物なのに物が偽なら —— 誰かが百年経った別の物の霊気を移し付けているという意味であり、未来の物をもっともらしく偽造できる者は未来を見た者だけだという意味だ。鑑定結果を公表する瞬間、PCは陰陽寮の体面と堺座の商いと見えぬ同郷(同鄕)の者 —— 三つを同時に敵に回しうる。

#若君の師

領主が後継者の教育担当として神隠し学者を呼んだ。破格であり、それゆえ危険だ —— 家臣団の半分は「出処知れぬ者に若君を任せるとは」と研いだ歯を剥く。子は聡明であり、聡明な子が常々そうであるように問うてはならぬことを問う。「師よ、なぜ農民の子は文字を学べぬのですか。」 —— 要素 4の葛藤フックが授業のど真ん中に歩いて入ってくる瞬間だ。教える者特技が最も輝く場所であり、一度の答えが家門一つの次の百年を傾けうる場所だ。


眼鏡はいつか割れ、ボールペンはいつか乾く。だから学者は教える —— 頭から頭へ移し記すことだけが、この時代に許された唯一の補給だ。