#技術者
目次
権威。 本文書のセット規則は変形規則(Variant) —— 本巻のすべての変形がそうであるようにGM許可を前提とし、fcは
co正典(Canon)を覆せない。開始漂流物カードの数値は狭いCanon(本巻の中でのみ正典)、§卓フックはScene Toolである。本文書は正体性セット総論が確定した構成5要素と共通様式、消尽システムが確定したデータカード標準様式をそのまま従う。そしてこのセットは、その消尽システムと最も深く噛み合うセットである —— 01-02が「詳細はそちらの文書で」と先送りにした負債を、本文書が返す。
#香 — お前は何を直していた者だったか
#導入断片 — 灯を直す手
雨の上がった午後、水車小屋の傍らの納屋で、男は死んだ灯を分解していた。
広げた風呂敷の上にねじを大きさ順に寝かせる。左から右へ、抜いた順そのままに。その傍らにはドライバー三本と、歯で噛みちぎったテープの切れ端。
板の隙間に子供たちの目が来ていた。三日前、霧の中から一人で歩き出てきた見知らぬ男 —— 大人たちは神隠しと呼んで距離を測ったが、子供たちの脚は大人たちの言葉より速かった。
「息は静かにしろ。」男は振り向かずに言った。「埃が立つ。」
子供たちが固まった。逃げる足音が二つ、残った息遣いが三つ。
「……それ、死んでるの?」一番怖いもの知らずの声が問うた。
「患っている。」男は灯の中身を灯明の光に透かして見た。「渡ってくるとき雨に打たれた。鉄は雨に打たれると錆びる。錆は —— 鉄の病だ。」
「直せるの?」
「開けてみたから、わかる。」男は布切れで接点を拭いた。ゆっくり、同じ方向にだけ。「開けてもみずに直すという者は —— 医者ではなく、まじない師だ。」
子供たちが一人ずつ板の隙間をあきらめて戸口へ回って入ってきた。男は追わなかった。ねじが風呂敷の上で、今度は右から左へ一つずつ消えていった。
最後のねじが締まった。男は親指でボタンを押した。
光が弾けた。陰った納屋が真昼のように白く立ち上がり、子供たちは悲鳴を上げてひっくり返ってから —— すぐに、憑かれたように這って戻ってきた。灯明を百個集めても及ばぬ光が、音も煙もなくその小さな箱から出ていた。
男は三つ数えて灯を消した。
「なぜ消すの?」子供たちが抗議した。
「この灯は井戸ではなく水瓶だ。」男は灯を風呂敷に包んだ。「汲んだ分だけ減り、満たす雨は —— もう来ない。」
戸口の光が暗くなった。大人が一人立っていた。水車小屋の主だった。その手には刃の欠けた斧でも折れた鎌でもなく、水に膨れて歪んだ歯車が一つ握られていた。
「水車が三月も止まっておる。」主が言った。「……開けてみてくれるか?」
男は歯車を受け取り、しばらく、川の音を聴いた。
「開けてみよう。」彼は言った。それがこの時代で受けた最初の仕事だった。
#香 — 直す手
この男は、本巻のサンプルたちが共に乗って渡ってきた夜行バス(サンプルキャラクター)にはいなかった。一人離れて落ちた、別の神隠しである。漂流は一台のバスで終わる事件ではない —— 物が先に来て、人が後から来て、人は今も来る。
技術者セットは三筋の前職を束ねる。機械整備士 —— エンジンとベアリングと油汚れの人。電気技師 —— 配線と接点と漏電の人。建築技師 —— 荷重と動線と図面の人。筋は違っても手は一つだ。開けてみて、原因を探し、再び締める手。
技術者は機械を召喚する人ではない。手順を知り、失敗の原因を説明できる人である。そしてこの時代において彼は、すべてを教える人でもない —— 材料と道具と精度の不足の前で、現地の職人と交渉する人である。
本巻でこのセットが立つ位置は明白だ。皆の漂流物が一方向にだけ死んでいくとき、その時計を遅らせられる唯一の人。 背骨の文はここでも撓まない —— この書は現代人を強くする書ではない。消耗してゆく未来のドラマを与える書だ。 技術者はその背骨の例外ではなく証明である。彼は未来を満たせない。ただ遅らせる。技術者がいるパーティの未来はより長くはない —— よりゆっくり短くなるだけだ。
だからこのセットの葛藤も最も深い。医療人の知識は患者一人の体で止まるが、技術者の知識は物として残る。 そして物は —— 真似される。
#セットデータ — 五要素
総論法 1の枠そのままだ。ここに記した五行のほかに、このセットが与えるものはない。
| # | 要素 | 技術者セット |
|---|---|---|
| 1 | 開始機能調整 | 策謀習得 → 解除習得(共通) / 感知入門 → 地理入門(選択 —— 建築技師の道) |
| 2 | セット特技 | 1段 応急修理 / 3段 現地改造 |
| 3 | 開始漂流物 | 工具一式 · 作業灯 [消尽 6・時計] · 予備部品袋 [消尽 3・回数] |
| 4 | 葛藤フック | 直すか、埋めるか / 職人の自尊心 |
| 5 | 適応変形 | 速い道:工人 / 塞がれた道:神秘の領域 |
#要素 1 — 開始機能調整
- 共通置換 —— 正典現代人の策謀習得を解除習得に変える。解除は縛られたものを解き、施錠されたものを開き、掛かったものを無力化する機能 —— 装置と機関を扱う軸であり、本巻の整備判定(
2d10+智+解除)と故障判定基本式(2d10+技+解除)はすべてこの軸の上にある。戦術を読む頭の代わりに、構造を読む手が来たのだ。 - 選択置換(建築技師の道) —— 感知入門を地理入門に変えられる。荷重と動線を読んでいた眼は、この時代の城や橋でも隘路と射線を読む。機械整備士・電気技師は置換一個で終わってもよい。
- 免許上限 —— セット置換で得た解除・地理は総論法 1そのまま免許(3)までしか上がらない。前職の技術は渡ってきたその日が頂点だ —— 名人の門は正典のみが開く。
#要素 2 — セット特技
#1段 — 応急修理(正典の先見の明と択一)
[素養] 応急修理 (應急修理) — 1段セット特技
整備: 整備判定(2d10+智+解除)に+2。
復帰: 技術者の整備は劣化を二段階まで戻す —— 故障直前→穏全。
消尽システム法 3の「一段階」限界を引き上げるのは本巻で
この特技だけだ。同じ装備幕間につき1回、沈黙復帰不可はそのまま。
手入れ (幕間行動): 幕間ごとに1回、工具を備えたままパーティが持つ[消尽時計]品目
1個を選んで点検する。その品目の次の時計減少1回 —— 使用に
よるものであれ、寝かせ・変質によるGM宣言であれ —— を無効化する。
品目あたりの備蓄は1回分、重複しない。
発数・回数には通じない —— 弾と薬は手入れして増やせない。
この特技の値はシート一枚ではなく卓全体に付けられる。 明記する —— 応急修理の保有者がパーティにいれば、全員の消尽時計が遅くなる。 自衛官の小銃は摩耗に一段遠ざかり、皆の電池は一場面長く生きる。技術者を失ったパーティが失うのは仲間一人ではなく、全員の残された日数だ。
択一の値も記しておく。応急修理を選んだ技術者は先見の明の歴史知識・応急医学・未来の言語を放棄する —— 未来の記憶の代わりに、未来の手癖を持ってきた人だ。ただし活力譲渡と能力値特殊は特技ではなく職業の骨格であるため維持される(総論法 2 —— 正典保護原則)。
#3段 — 現地改造(正典3段択一と択一)
現地改造 — 3段セット特技 · 幕間行動
条件: 幕間一つ + この時代の工房(鍛冶場・木工房・鋳物場) + その工房の
職人。一人では発動しない —— これは協業判定だ。
判定: 2d10+智+解除 >= 13。工房の格に応じてGM補正±2
(国友座級なら+2、流れの鍛冶屋の野焚き火炉なら-2)。
成功: 次のうち一つ。
① 代替部品 —— パーティ器物1個の次の整備判定が自動成功する。
部品があらかじめ削られているのだ。幕間につき1回限界はそのまま。
② 繕いの質 —— 鍛冶場協業の復活(消尽システム法 3)が結実を結ぶ
局面で、復活の値である永久弱化1件を消す。復活自体は
依然としてシナリオの報酬だ —— この特技はその門を開けず、
門が開いたとき通行料を削るだけだ。
③ この時代の道 —— 滑車、水車、濾過槽、蒸留器、担架のような非戦闘
器物をこの時代の材料で築く。GMと合意した狭い用途一つの
非戦闘判定+1。卓に同時に2個まで。
失敗: 材料と幕間だけが消える。同じ工房で同じ幕間に再試行不可。
補助: 黒色火薬再装填判定(火器法 3)に+2。
限界: 攻撃判定と戦力に触れる改造は —— いかなる迂回路でも —— 作れない。
タグについて一行。この特技には正典のメニューバタグを付けない —— 機能目録のタグ表で[整備]は小康段階限定効果の名であり、幕間を丸ごと使うこの特技はその枠に入らない。本巻はこれを幕間行動として明記する —— 1段応急修理の手入れの項も同じ筋だ。
現地改造を選んだ技術者は正典3段択一(分隊指揮・活力注入・現場探索)を放棄する。そしてこの特技の条件文がそのままこのセットの世界観だ —— 一人では発動しない。 四百年後の知識は、この時代の火炉とこの時代の手を借りて初めて物になる。補助の項の再装填シナジーは火器法 3が予告したその場所だ。
#要素 3 — 開始漂流物
背嚢一つ原則そのままだ。三カード全部消尽システム法 4の標準様式に従い、開始残量は§運用ダイヤルで調整されうる。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 工具一式 |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 整備判定(消尽システム法 3)の「適切な工具」要件をどこでも満たす。これなしにこの時代の工具だけで現代器物を整備すれば目標値+2。器物の分解・組立を扱う解除判定に+1(錠前・罠には適用しない)。 |
| [消尽] | なし —— 工具は減らない、失くすだけだ。川で、泥沼で、関門の押収で、一本ずつ。 |
| 劣化特則 | 劣化4段階を適用しない。代わりに渡河・落下・押収・逃走の場面でGMは「一本の紛失」を宣言できる(場面につき1回)。何を失ったかはPLが定める。失った本数が三つになれば上のボーナスを全部失う —— そして失った工具は整備で戻ってこない。探しに行く道はシナリオだ。 |
| 一握りの物語 | 柄ごとに焼き付いた油汚れが主の手の形そのままだ。ドライバー一本だけは父のものだ —— 工具箱は受け継ぐ物だから。 |
| 沈黙後の価値 | ドライバー一本が職人の手に入れば、十字の溝という発想がこの時代に植えられる。威勢品ではなく種だ —— だから最も高く、最も危うい。 |
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 作業灯 (作業燈) |
| 分類 | 電子機器 |
| 効果 | 鉤で梁に掛けるか床に立てる据え置き型 —— 点けたまま両手が自由だ。自己区域の闇判定ペナルティ無視、隣接区域まで輪郭が見える。この光の下では夜も整備作業が成立する —— 整備判定の半日を夜に移せる。 |
| [消尽] | [消尽 6・時計] —— 点けたまま過ごした場面が終わるたびに1減少。 |
| 劣化特則 | トリガー:落下・浸水。判定は基本式(2d10+技+解除)。摩耗:明滅する —— 場面につき1回、GMが1呼吸のあいだ光を消えさせることができる。 |
| 一握りの物語 | 整備庫の棚に磁石で付いていた物。車の下で過ごした百日の夜を知り —— 今、水車小屋の梁の下の夜を学んでいる最中だ。 |
| 沈黙後の価値 | 笠の鏡面と磁石は職人に一箱の見本。百年を耐えれば —— 夜なべする手たちを照らした光を覚えている、付喪神の候補。 |
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 予備部品袋 (豫備部品囊) |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 整備判定1回に添えて1消耗:① 振る前に宣言すればその判定+2。または ② 失敗直後に使えば同じ幕間の再試行1回を買う —— 消尽システム法 3「同じ幕間に再試行不可」に対する、本巻唯一の例外だ。 |
| [消尽] | [消尽 3・回数] |
| 劣化特則 | 消耗品 —— 劣化を適用せず、整備もできない。代わりに沈黙した現代器物1個を幕間に解体すれば1回復する(器物につき1回、GM許可)。死んだ物が生きた物を養う。 |
| 一握りの物語 | ヒューズ五つ、ねじ一握り、配線二掌分、テープ半巻き。四百年分の文明が手のひらほどの袋に入っている —— そして、それが全部だ。 |
| 沈黙後の価値 | 空の袋にはこの時代の釘と楔と縄が満たされる。袋は残り、中身の時代だけが変わる —— 帰化はこのように小さなところから先に来る。 |
#要素 4 — 葛藤フック
セットは新たな葛藤軸を作れない —— 正典現代人の葛藤目録にレンズだけ差し替える。技術者のレンズは二つで、二つとも時代汚染の1人称だ。汚染はGMガイドの管理項目である前に、このシートを握る人の夜の眠りだ。
- 直すか、埋めるか —— 正典葛藤「戦争の意味」の技術者版。私が鞴一つを直せば村が温かくなる。同じ手で同じ仕事をもう一度すれば —— 銃身が真っ直ぐになる。技術者の知識は言葉と違って物として残り、物は主を選ばない。どこまで直し、何を知らないふりして埋めるか。この問いにはGMのダイヤルが届かない —— ダイヤルが届くのは世界の速度であり、この問いが届くのは一人の手だ。
- 職人の自尊心 —— 正典葛藤「帰るか、残るか」の技術者版。国友の老人が鑢がけ一度で己の半日の作業に追いつくのを見た日、技術者は悟る —— 四百年の優位と信じていたものが、実は工場と工具の優位であったことを。美の葛藤がここで立つ。この時代の職人の境地の前に膝を屈する謙虚は、甘く、苦い —— 残るということは、この時代の職人として再び入門するという意味だからだ。
#要素 5 — 適応変形
適応メカニックの正典規則は全部そのままだ。その上に二行の色だけを塗る。
- 速い道 —— 工人。 工人から借用する最初の特技から同職業免除を適用する。看護師が医僧の手さばきを一日で読むように、整備士は鍛冶場の火の色を七日で読む。この時代の道具と材料を吸収する速度は六セット中最も速い —— その果てで彼は「戦国の職人」と呼ばれる。
- 塞がれた道 —— 神秘の領域。 呪術・結界・退魔を骨格とする職業(陰陽師・風水師・密教僧の類)の特技借用には免除規則が適用されない —— 活力ペナルティが最後まで残る。開けてみられないものは、ついに手に馴染まない。お札は分解されず、結界にはねじがない。
#時代との摩擦 — 規格のない世界
摩擦はペナルティではなく場面の材料だ。技術者の摩擦は四カ所から来る。
#公差がない
寸と尺はある(用語・度量衡辞典) —— しかし公差がない。規格ねじがなく、互換部品がなく、図面を描いて手渡す文化がない。同じ職人が作った二挺の鉄砲ですら部品が混ざらない。技術者の知識の半分は標準という床の上に立っているのに、この時代にはその床が敷かれていない。部品一つを合わせるために鑢がけで過ごす半日 —— その半日がそのまま場面になる。
作れるものと作れないものの境界もここで分かれる。滑車と梃子、水車の改良、濾過と蒸留、石鹸と衛生、測量と工程の分業 —— 手順の知識はこの時代の材料でも立つ。精密ベアリングと無煙火薬と電気の復活は —— 立たない。その壁の名は漂流の原理が記した材料・精度の壁だ。
#座と身分
この時代に腕前は即ち所属を問う。どの座の人か。座なき職人は流れの職人であり、流れの職人の秀でた腕前は即ち「誰が引き取るか」の問題になる。水車小屋を直した噂は三日で領主の耳に届き、領主の召しは栄光であり —— 事実上の徴発である。断りの言葉を選ぶことも、引き取られる値を駆け引きすることも全部場面だ。
#感嘆の方向
技術者が真っ先に学ぶのは、自分が教えに来た人ではないという事実だ。折り鉄を重ねて刀を折り上げる鍛造、釘一本なしに百年立つ組み接ぎ木工、山を削って城を上げる土木、南蛮の物を二年で真似て己の物にした鉄砲 —— 現代技術者がむしろ感嘆する境地がこの時代に立ち並ぶ。優位は知識の量ではなく手順の整理にあり、その優位は交渉の元手であって玉座ではない。
#国友座 — 本巻最大の火薬庫
湖の北東、村全体が一つの工房である土地がある —— 近江の国友座。鉄砲とからくりを作り、見たものを真似て、真似たものを直して己の物にする人々だ(その門前の風景は見聞 —— 近江が記しておいた)。現代技術者と戦国最高の工房 —— この二つが出会う瞬間が本巻で時代汚染が最も速く回る場所だ。
だからこの出会いは基本値ではなくGMの選択肢だ。
- 遠くに置く(基本値) —— 国友座は噂とスカウトでだけ存在する。技術者は名もなき鍛冶場たちと協業し、火薬庫には火が届かない。
- 抱え込む —— 工房キャンペーン。客人となった技術者、真似る職人たち、速まる時代。何がどれだけ速く広まるかのダイヤルと統制装置はGMガイドが握る —— ここでは火薬庫の位置だけを示しておく。
#成長曲線 — 整備工、改造工、そして
成長の段は正典が握る。セットが塗るのはその段ごとの風景だ。
- 整備工 (1~3段) —— パーティの時計番。幕間ごとに皆の荷を広げて拭き、締め、油を差す人。華やかではない —— ただこの人がいるパーティといないパーティは、同じ残量表を持っても違う速度で貧しくなる。
- 改造工 (3~5段) —— 現地改造が開き、工房との関係がキャラクターの半分になる。速い道に沿って工人の技芸が手に付き始める。銃身はこの時代の鉄で埋められ、手はこの時代の槌に馴らされる —— 消尽システムが記したそのまま、物の帰化と手の帰化が並んで行く。
- 二つの時代の技術を継ぐ職人 (7段~) —— 適応が加速した果てで、彼はもはや「機械を直していた神隠し」ではなく、二つの時代の技術を一手に握る何かになっている。それが事実上の新職業のように見えるのは叙事であってデータではない —— 前職も二重ビルドも開かない。正典の択一原則は最後まで立つ。
その道の最も深いところに門が一つある。正典は記した —— 「からくり(機械人形)を作るのは工人だけの領域だ。」(工人)そしてその領域の果てで生まれたものについても —— 「ぜんまいが心臓で、歯車が筋肉だ。」(自律機人)二つの時代の技術を継ぐ職人なら、いつかその門の前までは行くだろう。門の内側の事 —— 人形が目を開く事 —— は正典のものだ。本巻は門の前に技術者を立たせるところで止まる。
#卓フック (Scene Tool)
この節だけScene Toolだ —— GMがその場で取って使うシナリオの種。
- 領主の泣く箱 —— 領主の宝物庫に「壊れた貴物」がある。十年前の亀裂から流れ込んだ、この時代の言葉では形容できない黒い箱 —— 物が先に来た。修理せよとの命が下る。開けてみればそれが何であるかは技術者だけが知る(発電機か、電動工具か、拡声器かはGMが定める)。直せば領主がその力を知ることになり、直せねば腕前を疑われ、わざと直せぬふりをすれば —— 欺くべき眼が領主のものだけではない。傍らに陰陽師が立っている。
- 国友座の客人の座 —— 座の人が三日目も一行を追ってくる。尾行ではなく求愛だ。提案は工房の客人の座 —— 寝食と工具を貸し、「見せてくださる分だけ」謝礼すると。受ければ整備の楽園であり汚染の加速ペダルであり、断れば —— その腕前が他の領地の工房へ流れていくのを、座が見過ごすか。上の二つの選択肢がそのまま一編のシナリオになる。
- 神となった鉄車 —— 峠の向こうの村が止まったトラックを神体(神體)として祀っている(車両はGM専用の小道具だ —— 車両)。旱が来ると村は「鉄の神霊がお怒りだ」と鉄をなだめるという神隠しを呼ぶ。覚ませば信仰が崩れ、覚まさねば偽の神の前に村を残して去ることになる。そして覚ました鉄車がどこまで行けるかは —— 燃料の時計が定める。
直す手は時間に勝てない —— ただ時間から一日ずつを盗むだけだ。そしてその盗んだ一日ごとに、誰かの物語が一日長くなる。