#勢力首領と主級大敵
目次
Canon. 長期キャンペーンの主敵データを設計する。
#香 — 顔のある陰謀
暗躍勢力を名のない闇のままにしておくと霞んでしまう。だから首領は人間でなければならない。筆を持つ者、封印を逆に読む者、黒い札を回す者がいてこそ、PCは誰の手を断たなければならないかを知ることができる。
#法 — 主級大敵の設計
- 各首領は人間主級データで作成する。妖魔化よりも人間的な目標と組織資源を先に置く。
- 戦闘前に、帳簿、実験体、下僕、隠蔽網といった戦場外の資源を一つ以上配置する。
- 首領が倒れても勢力の痕跡を残す。長期キャンペーンでは後継者や残存帳簿が次の場面を開く。
#場面解説 — 首領は戦場外に手を伸ばす
勢力首領は強い個人敵手だが、一人で強いだけでは不十分だ。黒札房の首領は文書庫と検閲網を、裏般若の首領は実験体と封印装置を、黒札組の頭目は帳簿と食客浪人を合わせて持つべきだ。戦場に入る前からすでに戦いが始まっていなければならない。
主級大敵戦は首領を倒す場面と、彼が残した構造を処理する場面に分けるとよい。戦闘に勝っても帳簿を確保できなければ闇市場は残り、封印装置を止めなければ実験は暴走する。勝利は確実でも完全でないとき、次のキャンペーンの動力が生まれる。
首領設計チェック:
- 首領が直接守っている秘密は何か。
- 首領が倒れても残る組織資源は何か。
- PCが戦闘前に断てる補給線や記録は何か。
#セッション適用 — 首領より先に手足を見せる
- 最初の場面:首領は登場せず、彼の命令を受けた帳簿・実験体・食客浪人が先に動く。
- 捻れ:PCが手足を断つほど、首領は戦場外の資源を燃やして証拠を消す。
- 最後の問い:PCは首領を倒すか、それとも首領が寄りかかっていた構造を崩すか。
#大敵軸
#黒札房の首領:文書庫の黒筆 — 主
#香
墨の匂いと古びた紙の匂いが先に来る。果てしなく連なる文書棚の間、灯明一つを傍らに置いた老人が筆を持って座っている。曲がった背と痩せた指、なかなか顔を上げない態度がただの老いた書記のように見せるが、その手が一画を引くたびに、人の身分と罪と存在が帳簿の上で書き直される。刀を帯びた者もその前では声を低める——ここで自分の名がどう記されるかによって、外の世界で自分が何者であるかが定まるからだ。
彼は人を斬らない。ただ消す。筆一本である者を帳簿から抹消すれば、その日からその人を助ける者も覚えている者もいなくなる。また別の一筆で何の咎もない者に罪名を載せれば、昨日まで同輩だった者たちが今日は彼を罪人と見る。彼の武器は紙と墨と印章であり、その三つが刀より遠く、刀より長く人を斬る。
向かい合うPCが本当に相手にするのは一人の老人ではなく、彼が手に握る記録体系そのものだ。彼を倒しても彼が残した黒い帳簿が残っている限り、PCの名は依然として誰かの棚の上で罪人として残っているかもしれない。彼を終わらせるには筆を止めるだけでは足りず、彼が書き連ねた記録までも手に入れねばならない。
文書庫の黒筆 — 主
戦力 5, 防備 13, 活力 12
勇+0, 技+2, 体+2, 智+4, 美+3, 運+2
制圧力 +4.5
| 技法 | 種別 | 活力 | 判定 | 効果 | 限度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 存在抹消 | [型] | 4 | 2d10+智 vs 対象 2d10+運 | 失敗した対象は1間合の間、味方の支援対象から除外される | 間合1回 |
| 罪名付与 | [型] | 3 | 2d10+美 vs 対象 2d10+勇 | 失敗した人間分隊はPCを犯罪者と認識する | 間合1回 |
| 印章防御 | [技法] | 予約2/即興3 | 2d10+智 >= 敵の攻撃 | 被撃無効。成功時、攻撃者は次の交渉場面で不利な記録を残す | — |
特殊:
- 記録の主:戦闘前に黒札房の文書が現場に配置されていれば、人間の卒・練分隊を一つ追加配置する。
- 陣営基盤:黒筆は[素養] 黒記録を一般特技1スロットとして保有する。
#裏般若の首領:秋山異膳、逆封印の医師 — 主
#香
見た目は端正な医師だ。薬の匂いと針箱、きれいに畳まれた白い袖。患者を診るように相手を覗き込む目は落ち着き、親切でさえあるのに、その目が見るのは人ではなく、その内に宿る可能性——どこまで捻じ曲げられ、何を植えつけられるかだ。彼にとって苦痛は残虐の手段ではなく観察の項目にすぎず、悲鳴の前でも彼の表情は診療するときと変わらない。
封印は本来、妖魔を閉じ込める術法だ。彼はそれを逆に読み、閉じ込める代わりに人の内へ送り込む道を見つけ出した。彼の手が触れた跡には針と符、そして妖魔の核を移し植えた実験体たちが残る。何でもなかった卒が彼の施術一つで鬼の力に膨れ上がる光景は、彼が刀を一度も振るわずして戦場を変えてしまう仕方だ。
彼は妖魔ではなく人間だ。だから退魔の符も、結界の光も彼を直接どうにもできない。彼を倒しても彼が残した研究記録と施術を受けた実験体たちが残り、止められなかった封印が暴走し、作りかけの鬼が街へ放たれてしまう。PCが断たねばならないのは彼の息ではなく、彼が世に流しておいた知識の枝葉だ。
秋山異膳 — 主
戦力 6, 防備 14, 活力 13
勇+1, 技+3, 体+3, 智+4, 美+1, 運+1
制圧力 +2.5
| 技法 | 種別 | 活力 | 判定 | 効果 | 限度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 妖魔核移植 | [型] | 4 | — | 同一戦場の人間の卒・練分隊1個を鬼化実験体に変える。攻撃 +1、防備 +1 | 戦闘1回 |
| 逆封印針 | [攻撃] | 3 | 2d10+智 >= 防備 | [霊体]。1戦力。結界や神域の効果を受けている対象なら追加で次の判定 -1 | — |
| 実験体回収 | [技法] | 予約2/即興3 | 2d10+技 >= 敵の攻撃 | 被撃無効。成功時、隣接する実験体1体を代わりに戦闘不能にできる | — |
特殊:
- 人間研究者:裏般若の首領は妖魔ではない。退魔だけでは終わらず、研究記録と実験体の処理が必要だ。
- エンリョ館の汚染:戦場にエンリョ館の残存資料があれば、最初の
逆封印針判定 +1。資料を先に確保すればこのボーナスは消える。 - 陣営基盤:異膳は[素養] 逆封印知識を一般特技1スロットとして保有する。
#黒札組の頭目:稲川黒兵衛、黒い札のオヤブン — 主
#香
広い肩に上等な絹をまとった大男。賭場の上座に座り、黒い裏面の札を指先でつるりと転がす姿が彼の第一印象だ。声は大きくないが座中がその一言で止まり、酒と煙草と香油の匂いの染みた部屋の中で、誰が金を勝ち、誰が失うかを彼が定める。笑った面だが、その笑みの裏の算盤は一度も休んだことがない。
彼が扱う札には博打の点数だけがあるのではない。遊興街の裏口から流れ込む妖魔物品——呪われた道具、核を含んだ符、出所を問わぬ薬——が彼の帳簿を経て値をつけられ、持ち主を見つける。人を直に斬る仕事は手下に任せ、彼は誰を誰にあてがうか、どの借りをいつ取り立てるかを定めることで、街の夜を握って揺さぶる。
彼を一人の刀使いと見れば痛い目に遭う。彼が倒れても帳簿と取引先が残っている限り、闇市場は主だけ替えてそのまま回る。おまけに彼は危険を察すれば手下を盾に投げ出し、自分の命の値を交渉することに躊躇がない。PCが断つべきは彼の首ではなく、彼が片手に握っている帳簿と、その帳簿が縛りつけた人々の網だ。
稲川黒兵衛 — 主
戦力 6, 防備 14, 活力 12
勇+2, 技+2, 体+3, 智+2, 美+3, 運+2
制圧力 +4.5
| 技法 | 種別 | 活力 | 判定 | 効果 | 限度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 賭け金釣り上げ | [型] | 3 | — | 同一戦場の極道行動隊または食客浪人1体の次の攻撃 +1 | 呼吸1回 |
| 隠し短刀 | [攻撃] | 2 | 2d10+技 >= 防備 | 1戦力。対象が交渉中だったなら攻撃 +1 | — |
| 金で防ぐ | [技法] | 予約2/即興3 | 2d10+運 >= 敵の攻撃 | 被撃無効。成功時、卒・練の部下1体が代わりに戦闘不能 | — |
特殊:
- 闇市帳簿:戦闘前に帳簿を確保できなければ、クロベエが倒れても妖魔物品の流通網は残る。
- 黒札の値段:戦場に妖魔物品があれば、クロベエの交渉・威圧判定 +1。
- 陣営基盤:クロベエは[素養] 黒札の値段を一般特技1スロットとして保有する。
#ぬらりひょんは別途参照
ぬらりひょんの主級データはex3-06-01-edo-yoma.mdに置く。彼は人間暗躍勢力の首領ではなく、妖魔第3勢力の首領だ。
"陰謀は顔を得た瞬間、初めて倒せる敵となる。"


