#救難職セット
目次
権威。 本文書は変形規則(Variant)である。本巻のすべての変形規則がそうであるようにGM許可を前提とし、fcは
co正典(Canon)を覆せない。漂流物データカードの数値は狭い Canon —— 本巻の中でのみ正典である。セットの骨格は正体性セット総論が確定した5要素と共通様式を一寸も逸脱しない。
#香 — 誰だったか
#導入断片 — 頭数から数える
火は風より速かった。
男が目を開いた場所は見知らぬ村の真ん中で、村は燃えていた。茅葺き屋根の二棟が一塊となって火を噴き、人々は井戸端で水桶一つを巡って互いに押し合っていた。ここがどこか、なぜここなのかを問うのは頭の仕事だった —— そして頭より先に、訓練が動いた。
「何人ですか!」男は井戸端の老人を掴んだ。「この村の者、全部で何人です。出られていない者は!」
「な、何と?」
「頭数!家族ごとに集まれと言ってください。今すぐ!」
老人は男の身なりを上から下まで見回した —— 見たことのない黒い上衣、黄ばんだ帯、背に負った鉄の塊。それでもその問いだけは聞き取った顔だった。危機の言葉は時代を越える。
「そこ!水は火の点いた家に浴びせるな!」男はすでに火の方へ歩きながら叫んでいた。「隣の家!まだ点いていない隣の家の屋根を濡らせ!風がそっちへ行く!」
おかしなことが起きた。人々が従った。どの家門の誰とも知れぬ者の号令に、その夜の村は従った。
「東の二棟は捨てます。」男が言った。「その次の家を壊せ。この火は消えません —— 道を断つのです。鳶口!斧!あるだけ!」
家が一棟崩れる音と共に火の粉が夜空に噴き上がり、その火の粉が行き場を失いかけた頃 —— 頭数を数えていた女房が悲鳴のように叫んだ。
「お菊がいない!機を織る家のお菊が!」
男は背に負った鉄の塊から面体を引き下ろして顔に掛けた。シュッ —— この時代のどんな鞴も出したことのない呼吸音が漏れた。老人がその腕を掴んだ。「人が入れる火ではない!」
「承知しています。」男は面体の向こうから、不思議なほど落ち着いた声で答えた。「入るのが仕事でした。」
後にその村はその夜をこう伝えた —— 神霊が隠しておかれた者を火の中から戻してくださったと。黒い衣の神隠しは煙の中へ二度入り、二度とも人を抱えて出てきたと。
そして彼が背に負っていた鉄の塊は、その夜以降、二度とその呼吸音を出さなかったと。
#香 — 守ることが職分である人
この断片の男がどの門を越えてきたかは問わなくてよい。付録の夜間バスの人々と同じ夜である必要はない —— 神隠しの門は一度だけ開いたのではない。重要なのは彼が落ちた瞬間に最初にしたことだ。頭数から数えた。
警察官、消防官、救急隊員。三つは別の職業だが一つの訓練を分かち持つ —— 危機の最初の一分に何をすべきか、頭ではなく体が先に知っていること。この時代にも守る者はいる。領主の武士がいて、村の自警団がいて、寺の僧兵がいる。しかし守ること自体が職分である人 —— 誰の家臣でもなく、禄も主君もなしに、見知らぬ者の火と血の中へ入るのが仕事である人は —— この時代がまだ発明していない種類の人間である。
だからこのセットの武器はほとんどない。拳銃一挺に五発 —— それが全部であり、それすらこのセットのエンジンではない。救難職が持ってくるのは火力ではなく手順だ。頭数を数える手、火勢を断つ家を選ぶ眼、出血から止める順序。そして本巻の背骨はここでも撓まない。この書は現代人を強くする書ではない。消耗してゆく未来のドラマを与える書だ。 救難職が失っていくのはボンベの呼吸であり、鞄の回分であり —— その果てでは、「皆を救える」という信念である。
#セットデータ
救難職は一つのセットでありながら三つの枝だ。キャラクター作成時に警察・消防・救急のうち一つを選ぶ。 枝はセットの一部であるから、セットと同様に途中変更・兼任は不可だ。枝が分けるのは開始機能調整・セット特技・開始漂流物の三つであり、葛藤フックと適応変形は三つの枝が分かち持つ。総論法 1の5要素を表一枚でまず記す。
| # | 要素 | 警察 | 消防 | 救急 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 開始機能調整 | 策謀習得→体術習得、医術入門→威圧入門 | 策謀習得→地理習得、感知入門→解除入門 | 策謀習得→薬草習得 |
| 2 | セット特技 (1段) | 制圧術 | 火災対応 | 応急処置 |
| 3 | 開始漂流物 | 回転式拳銃 [消尽 5・発数]、手錠、警棒、号笛、懐中電灯 [消尽 4・時計] | 防火服、空気呼吸器 [消尽 2・時計]、手斧、ロープ | 救急鞄 [消尽 8・回数]、医療器具一式、保温毛布 |
| 4 | 葛藤フック | 誰の法か | 救えない規模 | 救えない規模 |
| 5 | 適応変形 | 速い道 野人 / 塞がれた道 忍び —— 三つの枝共通 | 〃 | 〃 |
#要素 1 — 開始機能調整
総論の規則そのままだ —— 等級保存、機能点数不変、置換で得た機能は免許(3)上限、正典の名人可能目録不変。置換で入ってくる五機能(体術・威圧・地理・解除・薬草)はすべて正典機能目録のものであり、どれも名人の門を新たに開かない。
| 枝 | 置換 | 残る正典機能 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 警察 | 策謀習得→体術習得、医術入門→威圧入門 | 交渉入門、感知入門 | 逮捕術の手と職務の声。捜査の眼(感知)と説得の舌(交渉)は正典のまま残る |
| 消防 | 策謀習得→地理習得、感知入門→解除入門 | 医術入門、交渉入門 | 地理は火の燃え広がる道を読む眼であり、解除は錠の掛かった戸を開け壁を壊して道を作る手だ |
| 救急 | 策謀習得→薬草習得 | 医術入門、交渉入門、感知入門 | 薬理の知識 —— 鞄が空になっていく日、この時代の草へ乗り換える橋 |
#要素 2 — セット特技
救難職のセット特技は枝ごとに1種、すべて1段だ。いずれも正典1段 先見の明と択一であり、どちらを選んでも活力譲渡と能力値特殊は職業の骨格として維持される(総論法 2 —— 正典保護原則)。
3段のセット特技は置かない。 怠惰ではなく設計だ —— 正典現代人の3段択一がすでに三つの枝の顔をしているからだ。分隊指揮は現場を号令していた消防官の声であり、活力注入は救急隊員の手であり、現場探索は警察官の眼だ。救難職の3段は正典から選べばよい。
#警察 — 制圧術 (制壓術)
[型] 制圧術 (制壓術)
費用: 活力 2 / 限界: 間合 1回
対象: 同じ区域の、実体のある人間大以下の対象 1体。
霊体と人間大を超える妖魔には通じない。
判定: 2d10+技+体術 >= 対象防備
効果: 戦力被害はない —— いかなる場合も。非殺傷がこの特技の正体性だ。
成功時、対象は捕縛 —— 移動・攻撃不可、毎自己行動開始時に
體 >= 13で脱出する。手錠・捕縄など拘束具を掛けたなら 15。
力ではなく関節の技術なので勇ではなく技で振る —— 現代人の細い腕でも届く道だ。これは現代人が持ちうる唯一の近接牽制でありながら、攻撃判定にいかなるボーナスも足さず、戦力被害を永遠に与えられない。 直接戦闘力を与えるセットは自衛官一つだけという総論の線はここでもそのままだ。制圧術は勝つ技術ではなく殺さずに止める技術であり、その差がこの時代にどんな場面を作るかは§時代との摩擦が扱う。
#消防 — 火災対応 (火災對應)
[素養] 火災対応 (火災對應)
効果: 常時。
- 火炎・煙が呼ぶ判定ペナルティ無視(自己区域限定)。
- 火炎地帯への進入・通過・その中での救助行動に追加活力がかからない。
人1名を背負うか引きながら移動しても移動費用は増えない。
- 火の道: 場面につき1回、GMに問う ——「この火は次にどこへ燃え広がるか。」
GMは事実通りに答える。
火そのものの被害は無視できない —— それは技術ではなく装備の仕事であり、装備は摩り減る(防火服カード)。火炎地帯の数値は正典のままだ。この特技が変えるのは火の数値ではなく、火の中で人が何をできるかだ。
#救急 — 応急処置 (應急處置)
[型] 応急処置 (應急處置)
費用: 活力 2 / 限界: 小康 1回
対象: 同じ区域の味方 1名。
判定: 2d10+智+医術 >= 11
効果: 成功時、戦力 1 回復。さらに次のうち一つ ——
対象の出血を解除するか、毒の次の1回進行を防ぐ。
(出血・毒の正典数値は非戦闘規則のものそのまま。)
強化: 救急鞄の[消尽]1回数を消耗すれば判定なしに成功と見なし、
回復は2となる。
状態異常の数値はすべて非戦闘規則の正典をそのまま使う —— 本特技は新たな疾病も新たな毒も作らず、深い傷が膿んで疾病になるのを防ぐ手であるだけだ。
野戦医療との距離。 正典現代人の野戦医療は5段特技だ —— 戦闘の真っ只中で戦力 3を、医術判定が伴えば 5を戻す手。応急処置はその手の1段の幼少時代だ。小康にのみ、一名にのみ、1~2のみ。段が四つ差があり、その差は縮まらない —— 応急処置は野戦医療の前提条件でも、割引でもない。5段に届いた救急隊員が野戦医療を習得すれば二つの特技は別個のスロットで共存し、その日からその手は二倍に忙しくなる。
もう一つ、正直に記しておく。応急処置は先見の明と択一であり、先見の明には医術判定 +3が入っている。 判定の高さを守りたい救急隊員は先見の明を守れ —— それも正当な救急隊員だ。応急処置を選ぶのは判定ではなく手順を選ぶことだ。鞄が空でも、振りが低くても、小康のたびに必ず何かを戻す手。
#要素 3 — 開始漂流物
背嚢一つ原則。すべてのカードは消尽システム法 4の七欄様式に従い、残量記録は残量記録紙にPLが記す。カードなき残品 —— 手錠、警棒、号笛、手斧、ロープ、医療器具 —— は摩り減らない。失くすだけだ。
#警察の腰帯
- 回転式拳銃 —— 下のカード。
- 手錠 (手匣) —— 拘束具。制圧術の脱出目標値を15に上げる。眠った・制圧された相手には判定なしに掛ける。この時代の錠前職人も見たことのない物 —— 鍵なしに開けるなら解除 >= 15。鍵は一つだけだ。
- 警棒 —— 正典臨時武器「木の棒」の文法そのまま(殴打 —— 非殺傷)。ただし折れない良い物だ。
- 号笛 (號角) —— 一町先まで届く鋭い一声(度量衡)。規則はない —— 合図一つを予め定めておくのは規則ではなく知恵だ。
- 懐中電灯 (懷中電燈) ——
[消尽 4・時計]。カードは電子機器のものをそのまま引用する。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 回転式拳銃 (回轉式拳銃) |
| 分類 | 火器 |
| 効果 | 射撃 (活力 2、1発): 2d10+弓術+1 >= 11、[貫通全体]、1戦力。射程: 同じ区域 —— 隣接区域も撃てるが命中補正を失う。深部: 使用可、活力 +1 —— 五発の銃は乱戦で一呼吸さらに慎重だ。薬室 5発 —— 再装填は一発ずつ手で、活力 1で2発、途中で切って射撃可。銃声の値は火器の銃声規則そのまま。 |
| [消尽] | [消尽 5・発数] —— 弾種: 回転式拳銃弾。自動拳銃の拳銃弾とは互換しない。予備弾は下の Variant。 |
| 劣化特則 | 手動機構 —— 弾詰まり宣言なし。黒色火薬再装填弾も火器法 3の手動火器の列に沿って一般トリガーで受ける。摩耗: 射撃 -1。 |
| 一握りの物語 | 主はこの銃を二十年余り佩いて回り二度抜き、一度も撃たなかった。その記録がこの時代でも続くことを —— 銃を拭くたびに、主はそう祈る。 |
| 沈黙後の価値 | 五発が尽きてもこの銃は終わらない —— 空いた銃口の前で、この時代の誰もそれが空であることを知らない。威勢品であり虚勢の道具。そして百年後 —— 一度も人を撃たなかった銃の付喪神は、どんな顔をしているだろうか。 |
Variant — 予備弾ダイヤル (GM 選択)。 開始予備弾は0~10発の間でGMが定める。基本推奨は0だ。これは吝嗇ではなく設計だ —— 自衛官の寿命は残弾と共に終わるように作られたが、救難職の寿命は弾薬に縛られない。 拳銃はこのセットのエンジンではなく、最後に取っておいた五句の台詞だ。拳銃が沈黙した翌日も警察官は昨日と同じ仕事をする —— それがこのセットが自衛官と異なる点の全部だ。
#消防官の背負い
- 防火服・空気呼吸器 —— 下のカード二枚。
- 手斧 —— 正典臨時武器「つるはし」の文法を借りる(叩き斬り ——
[貫通 1]+[破壊])。本来の用途は人ではなく壁と戸だ —— 構造物を壊して道を作る解除・破壊行動にGMはこの斧を根拠に +2を与えられる。 - ロープ —— 十間ばかり(度量衡)。崖・垂直移動で縄補正 +2(非戦闘規則の環境表そのまま)。人を縛って下ろし、引き上げ、互いを繋ぐ。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 防火服 |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 着用中: 火炎地帯の小康戦力被害を無視し、「軽甲以下追加1戦力」も受けない。火攻・火炎属性攻撃の戦力被害 1 軽減。鎧ではない —— 防備補正はなく、刀と矢は防げず、正典の鎧と重ね着できない。 |
| [消尽] | なし —— 布は減らない。死んでいくだけだ(劣化の物)。 |
| 劣化特則 | トリガー: 火炎地帯で過ごした場面は「酷使」と見なす。判定は基本式 (2d10+技+解除)。摩耗: 「被害無視」が「被害 1 軽減」に弱化される。 |
| 一握りの物語 | 背に所属署の名が刻まれている。この時代の誰も読めない文字だが、主はそれが己の家紋だと —— 半ばは本気で —— 言って回る。 |
| 沈黙後の価値 | 火を食らっても残った布 —— 黒く焦げた切れ端一つ一つが職人には謎だ。火攻を業とする軍勢がこれを欲しがれば、それはすでに良いシナリオだ。 |
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 空気呼吸器 (空氣呼吸器) |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 面体を着けて閉じている間: 煙と毒霧の體判定・戦力被害免疫、水中でも呼吸できる。面体の視野は狭い —— 着用中、感知判定 -1。 |
| [消尽] | [消尽 2・時計] —— 面体を着けて過ごした場面が終わるたびに1減少。再充填の道はこの時代にない —— 回復不可。二場面。それがこの背負いに残った呼吸の全部だ。 |
| 劣化特則 | トリガー: 落下・浸水(面体の硝子が先に鳴く)。判定は基本式。摩耗: 面体が漏れる —— 免疫が「體判定 +2」に弱化され、漏れる呼吸音のせいで着用中の潜入不可。 |
| 一握りの物語 | ボンベに検査合格の印が押されている。次の検査期限が共に記されている —— 四百年後には延ばせない日付だった。 |
| 沈黙後の価値 | 空のボンベは叩くと鐘より澄んで鳴る。ある山寺がそれを梵鐘の代わりに吊るしたという噂が流れれば —— 主は笑うべきか泣くべきか分からない。 |
#救急隊員の鞄
- 救急鞄 —— 下のカード。
- 医療器具一式 —— 鋏、ピンセット、副木、聴診器。摩り減らない道具たち —— 失くすか、貸して返らないだけだ。
- 保温毛布 —— 銀色に光る一枚の布。一人を酷寒の一夜から守る —— 真冬の野宿の體判定 +1(一人分)。この時代の誰にとっても、これは布ではなく宝のように見える。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 名称 | 救急鞄 |
| 分類 | 装備・物資 |
| 効果 | 残量が1以上の間、鞄を開けてする医術・薬草判定 +1(道具補正)。1回数消耗で次のうち一つ —— ① 応急処置特技の強化発動(特技欄参照)。② 非戦闘の治療・解毒医術判定一つに +3。③ 患者1名の傷が膿むのを防ぐ —— その傷を原因とする疾病発動を封鎖する(疾病自体の数値は正典のまま —— 本巻は新たな病名を作らない)。 |
| [消尽] | [消尽 8・回数] —— 一度開ければ1減少。現代の医薬品は1人前ずつ包装されている。季節が変わるほど寝かせた鞄には、GMが幕間に1減少を宣言できる —— 薬にも期限がある(消尽システム法 1の「時間そのものが敵だ」を回数で読んだもの)。 |
| 劣化特則 | 中身は消耗品 —— 整備不可、代替の道のみがある。鞄自体のトリガー: 浸水 —— 故障判定(基本式)に失敗すれば劣化進行の代わりに残量の半分(切り捨て)を失う。 |
| 一握りの物語 | 内ポケットに患者引き継ぎ記録紙がそのまま入っている。最後の行 ——「意識清明、活力兆候安定、病院到着予定 ——」その後が空いている。 |
| 沈黙後の価値 | 空の鞄は良い鞄だ。そしてこの時代の薬師は、その中に残った空の薬包紙一つ一つから「百年後の処方」を読み取ろうとする。 |
#鞄が空になった後 — 薬草の橋
救急鞄の八回分は戻らない。だから救急枝の機能調整が薬草習得なのだ —— 滅菌ガーゼが切れれば蓬を見分け、鎮痛剤が切れれば煎じる物を知る手で、ゆっくり乗り換える。完全な補給はない —— 次第に、この時代の医術になっていく。 医術の深さそのものは医療人セットの領域だ。救急隊員は医師ではない —— 現場に先に届く人であり、その正体性は鞄が空になった後も摩り減らない。
#要素 4 — 葛藤フック
正典三道六心の葛藤目録の具体化 —— 新たな軸はない、レンズだけを変える。
- 誰の法か (警察)。 —— 「忠か自由か」と「身分制と平等」のレンズ。彼が守っていた法は万人に同じ法だった。この時代の法は領地ごと、身分ごと、寺の塀の内外ごとに異なる。武士が無礼な平民を斬っても罪にならない土地で、逮捕という行為は正義か越権か —— そして盗賊を縛って村に引き渡したとき、村の法がその場で首を刎ねると言えば、手錠の鍵を握る手は何をするか。
- 救えない規模 (消防・救急)。 —— 「戦争の意味」のレンズ。彼の時代に火災は事故であり負傷は救護の対象だった。この時代に火攻は戦術であり、野の負傷者は捨てられるのが勘定だ。一つの村の火は断てる。戦乱は断てない —— 職業が丸ごと担えない規模の前で、転換トリガー2回の心は速く摩り減る。それでも目の前の一つは救える。その一つで充分か —— このセットのキャンペーンはその問いを最後まで追っていく。
#要素 5 — 適応変形
適応メカニックの正典規則はすべてそのまま —— セットは二行の色だけを塗る。三つの枝共通だ。
- 速い道 — 野人。 最初の特技から同職業免除。人を背負い、掴み、耐え、崩れる物の下から引き出す体の技芸 —— 救助現場の手はカムイの手を最も速く読む。どちらも、道具ではなく体が最後の装備である人々だ。
- 塞がれた道 — 忍び。 免除なし —— 活力ペナルティが最後まで残る。忍びの技芸は結局一人で消える法だ。影に染み入り、痕跡を消し、救えない場を未練なく去る法。人を置いて行く法を、この手は遂に学べない。
#時代との摩擦
摩擦はペナルティではなく場面の材料だ —— 三つの枝ごとにぶつかる壁が異なる。
#警察 — 管轄なき者の逮捕
この時代の治安は一塊ではない。領主の武士が領地の秩序を、村の自治が村の諍いを、寺が寺の領域を分かち持つ。その間を漂う神隠しには管轄がない —— 彼の逮捕は誰の名でも行われず、見る者によって義の差し出口であるか、越権であるか、ただの拉致だ。良いGMはこれを行き止まりではなく分かれ道に使う。村長が「お前が縛った者を我らの法で裁く」と言うとき、領主の奉行が「その腕、私の下で使わぬか」と問うとき —— 制圧術一度がシナリオ一つになる。
#消防 — 恩人の経路
木造に茅葺き屋根、軒が軒に接する密集 —— この時代の村と城下町は火にとって整えられた膳であり、火災は日常の災難だ。この時代の消火は水より解体だ: 燃え広がる道筋の家を壊して防火線を断ち、人力を集めて耐える。消防官の優位は水を撒く法ではなくどの家を壊すかを知る判断にある —— その判断はこの時代最高の老練な村の長老と同じ結論に、より速く、より正確に届く。だから消防は本巻で最も速い非戦闘名声の道だ。村一つを火から救えば名声 +1~2 —— 正典数値そのまま、しかしこのセットはその機会に人より頻繁に出会う。恩人の名は領主の耳に届き、領主は問う ——「その才、城下の村全部に使えばどうか。」
#救急 — 先に届く手
この時代にも医者はいる。医僧がいて、薬師がいて、鍼と灸と湯薬の深い伝統がある。ないのは現場に先に届く手という職分だ —— 傷ついた者が医者の家まで生きて届くようにする仕事が職業だという発想自体がこの時代にはない。だから救急隊員の摩擦は医術論争ではなく順序争いだ。祈祷が先だという家族、身分の高い患者が先だという家臣、不浄(穢れ)を帯びた血に触れるなという村 —— 止血帯を巻く十秒を得るために、救急隊員は毎回交渉から始める。そしてその十秒が人を生かすのを見た医僧であれば —— 良い師であり、良い友になる。
#成長曲線
転職も二重ビルドも開かない —— 正典択一原則そのまま。救難職の成長は装備の死と噛み合って三拍子で流れる。
- 装備が生きている間 (1~3段)。 職業の記憶で動く時間。拳銃が腰にあり、ボンベが呼吸し、鞄が満ちている。1段のセット特技と漂流物が場面を作り、3段では正典択一 —— 分隊指揮、活力注入、現場探索 —— が己の枝の顔を見出していく。
- 沈黙の間 (適応の時間)。 五発が尽き、ボンベが止まり、鞄が空になる。置換機能 —— 体術、地理、薬草 —— が道具の座を引き継ぎ、野人の技芸が速い道で入ってくる。5段からセットの色は終わり正典現代人の特技目録に合流する —— 7段危機管理がこのセットの情緒的終着であるのは偶然ではない。倒れる味方に最も先に反応する手 —— それは初めからこの人の仕事だった。
- 防災役。 村の自警団に号笛を吹く法と頭数を数える法を教えていた神隠しが、ある年から領地の防災を任されている —— 井戸の配置を変え、道筋の家を一棟予め空けておき、合戦の後の野に担架を担いだ人々を送る。人々はそれを新たな職分のように呼ぶが、シートの上に新たな職業はない。適応が加速した果てが「事実上の新職業」のように見えるのは叙事であって、データではない。 データが言うのは一つだけだ —— 正典現代人の非戦闘支援曲線、その上をこの人は己の職業の歩みで歩いていっただけだ。
#卓フック
GMがその場で取って使える大きさで、三つ。
- 大火前夜。 旱で風の乾いた城下町。消防官PCの眼にだけ見える —— 市場通りの藁束と油樽の配置が偶然ではない。誰かが火の道を設計している。放火犯を追う捜査(警察の眼)、予め断っておく防火線の設計(消防の手)、その夜のための担架と水と回分の勘定(救急の鞄) —— 三つの枝のうち誰がいても転がり、三つ揃えば一セッションが丸ごと満ちる。火が出る前に防げば名声であり、出てから断てば伝説だ。
- 連鎖神隠し。 村で十五日ごとに人が一人ずつ消える。村は神霊の仕業と呼んで祭りを上げる —— 警察PCの眼には足跡が見え、パターンが見え、消えた者たちの共通点が見える。捜査という概念がない時代の捜査。果てにいるのが妖魔であろうと、人取りの人身売買であろうと —— 真実を握った日、問いは最初のフックへ戻ってくる。誰の法で裁くか。
- 二十八と一。 合戦が終わった野、捨てられた負傷者二十八。鞄の残量は三。トリアージを始めた救急隊員の前に領主の使者が馬を止める ——「若が傷を負われた。持っている薬を全部出せ。」最も危篤な者から先にという職業の法と、身分がすなわち順序である時代の法。正解は用意するな —— このフックの報酬は金貨ではなく、その夜PCの三道六心がどこへ動いたかだ。
火は四百年前も火であり、血は四百年前も血だ —— だから守っていた手は、どの時代に落ちても同じものから数える。頭数。