日本語版 v1.3.3 · fc-doc

#電子機器

目次

Electronics in the past, cracked smartphone with blank black screen beside a candle and tatami edge, no UI, no readable text.

権威。 本文書のデータカード数値は狭いCanon —— 本巻の中でのみ正本であり、co 正本のいかなる項目も覆さない。「妖魔とレンズ」節はVariant —— 本巻のすべての変形がそうであるようにGM許可前提だ。そしてこれは本巻で最も情緒的なデータ文書である。火器の残弾が命の数えであるなら、ここに記された残量は心の数えだ —— 電池残量はすなわち故郷とのつながりの残量である。 この本は現代人を強くする本ではない。消耗してゆく未来のドラマを与える本だ —— そのドラマが最も小さな画面の中で最も大きく回る場所が、この文書だ。


#香 — 鎖された画面の中の故郷

#導入断片 — 三秒

七日に一度、男は不寝番を買って出た。

皆が寝静まった真夜中 —— 焚き火が燠に沈むのを待って、彼は懐から油を引いた布の包みを取り出した。一重、二重と解く手が祭礼の手つきだった。

黒い札が出てきた。一掌にも満たぬ、角の丸い黒い札。

そばで寝ていると思っていた荷担ぎの子が顔を上げた。「……それ、また見るのかい?」

「寝ていろ。」

子は寝なかった。男は溜息をつき、札の横腹を長く押した。闇の中で札が —— 点いた。火種も火打ち石もなく、冷たく白い光が。

画面いっぱいに、人が三人笑っていた。女が一人と子が二人。その後ろには、男がついぞ説明する術のない、海の上に長く架かった橋。

一つ。男は息を吸い込んだ。

二つ。末の子の前歯の抜けた跡まで目に刻んだ。

三つ。光が消えた。

「……短すぎる。」子が我が事のように惜しんだ。「その灯し火、油が尽きるのかい?」

「尽きる。」男は布を巻き戻し始めた。「そしてこの油は、この世のどの店でも売っていない。」

「中にいた人たちは —— 閉じ込められたのかい?」

「待っているのだ。」結び目を作りながら男が言った。「油が尽きれば、もう会えなくなるだけだ。」

子はしばらく火種を見つめてから問うた。「では、惜しんで —— あと何度残っている?」

男は答えなかった。ただ包みを、位牌を奉る両手で、懐の内側へ入れた。その場所は心臓の真上で —— だから一晩中、黒い札は人の温もりで生温かった。

#香 — 圏外という墓標

現代文物のうちスマートフォンほど徹底して無力になる物はなく、同時にこれほど切実になる物もない。渡ってきた初日、画面左上に浮かぶ二文字 —— 圏外。本巻全体で最も静かな死亡宣告だ。電話が死に、検索が死に、地図の更新が死ぬ。通信機器は通信が死ねば終わるべきなのに —— 終わらない。写真帖が残る。最後に受け取ったメッセージが残る。連絡先一覧が残る —— もはや名簿ではなく、一行一行が墓標である一覧が。

だからこの文書の設計命題は火器のそれと鏡のように向かい合う。火器は使い道が大きくて危険であり、その値を[消尽]で支払った。電子機器は使い道が減ったのに意味が大きくなった —— そしてその意味が、同じ[消尽]の時計の上で摩り減る。目盛り一つは照明一場面であり、測量一回であり —— そして家族の顔をもう一度見られる回数だ。本巻で最も厳格な時計をこの分類に課した理由がそれである。減るものだけが数える価値がある —— そしてここで減るものは、故郷だ。


#法 1 — 圏外の時代 (公開設計)

#何が死に、何が残るか

死んだもの残ったもの
電話・文字・インターネット —— 基地局がない写真・動画・録音 (記録 —— 法 3のレンズ規則)
地図更新・位置表示 —— 空が空いた保存された地図・文書・写真帖 (書庫)
更新されるすべて計算機・羅針盤・水平器・時計・アラーム (道具)
充電器が挿さる壁画面の光、ライトの光 (照明)
——音楽 (諸刃 —— 法 2にて)

衛星について一行ははっきり記しておく。この空には衛星がない。 四百年前だからではなく —— 衛星が上がる未来がまだ来ていない、分岐した空だからだ。位置表示画面は永遠に空を探り、どんな幕間を費やしても終わらない。代わりに羅針盤は生きる —— 地磁気は時代を選ばない。保存された地図も生きる —— ただし座標ではなくとして使う。海岸線と山並みは概ね同じで、道と村と名前は四百年食い違っている。道案内の万能の鍵ではなく方向と記録の補助 —— それがこの時代でその画面のできるすべてだ。

#時計は厳格に —— 点ける瞬間、故郷が減る

消尽システムの時計単位は本来砂時計だ —— 「少し点けてすぐ消す程度はGMが目をつぶってやれる。」 本文書のカードのうちスマートフォンとデジタルカメラはその寛容を受けない(カード特則)。電源が入った場面は、その使用が三秒であっても、場面が終わるとき時計が1回る。過酷であれと課した目盛りではなく —— 重くあれと課した目盛りだ。導入断片の男が三秒で画面を消す理由、その三秒が一場面の重さを持つ理由がすべてこの一行にある。

時間そのものも敵だ —— 本巻標準そのまま、季節が変わるほど寝かせた電池にGMは幕間時計1減少を宣言でき、真冬の野宿の電池はGM宣言トリガーの常連だ。寒さは電池の数えを削る —— 懐に抱いて寝るのは迷信ではなく整備だ。

#充電の二つの道 —— そしてそれ以外はない

時計単位の回復は原則的に不可だ —— 消尽システム法 1が閉じておいたその扉を、本文書の二つのカードだけが開く。補助電池(保存された未来)と太陽光充電器(遅い永続)。それ以外の道はない。水車に磁石を巻く夢、雷を待つ夢 —— 技術者の卓でそんな夢は整備判定ではなくシナリオ級の課題だ。成功してもそれは規則が作った補給ではなく、物語が作った奇跡でなければならない。

#電子機器という分類の特殊 —— 叩いて延ばせない中身

電子機器の故障判定は基本式 2d10+技+解除 そのままだ。しかし代替の道は他の分類より狭い —— 消尽システム法 3の鍛冶場協業は基板には届かない。 銃身はこの時代の鉄で埋められるが、中身が光で織られた物はこの時代のどの火炉も直せない。整備判定がする仕事は接点を拭き、水気を乾かし、ひびの入った所を繕うところまでだ。沈黙した電子機器の復活は同じ時代から渡ってきた部品を探す仕事 —— 技術者の予備部品文法(技術者セット)がその唯一の手順だ。死んだ物が生きた物を食わせる。

残量記録はPLの役目だ —— 残量記録紙に目盛りで記し、場面が終わるたびに消す。開始残量の調整は消尽システム§運用ダイヤルとGMガイドの手にある。


#法 2 — データカード

カードは消尽システム法 4の七欄標準様式に従う。七枚の共通事項を先に記す。

  • 分類はすべて電子機器。故障判定は基本式 2d10+技+解除
  • 共通トリガーは落下・浸水 —— 浸水は常に過酷(目標値 +2)だ。雨の日の懐がこの分類の防水布だ。
  • これらのカードはすべて「その日鞄にあった物」だ —— 背嚢一つ原則(漂流の原理)の中から転がり出た物たち。一般人・学生セットがこの分類の代表使用者であり、技術者セットの作業灯もこの分類だ —— カードはそちらにある。
カード基本 [消尽]時計が回る時備考
スマートフォン4・時計電源が入った場面ごと —— 寛容なし本巻で最も厳格な時計
補助電池3・時計1消耗 = 機器1台に時計1回復保存された未来
太陽光充電器なし (発電機)——遅い永続 —— 永続ではない
懐中電灯4・時計点けたまま過ごした場面ごと01-02見本カードの原本再録
携帯無線機6・時計点けておいた(待機含む)場面ごと二台から無線機だ
デジタルカメラ8・時計電源が入った場面ごと —— 寛容なしレンズ規則の本陣
腕時計なし——均一な時間の最後の鼓動

#スマートフォン (携帯電話)

項目
名称スマートフォン (携帯電話)
分類電子機器
効果圏外 —— 通信・検索・更新は永久に沈黙 (法 1)。残った機能: ① 記録 —— 写真・動画・録音。法 3のレンズ規則に従う。戦闘中の撮影は活力1。② 照明 —— 自己区域の闇ペナルティ無視 (懐中電灯の一段下 —— 隣接区域は照らせない)。③ 道具 —— 計算機・羅針盤・水平器: 数え・測量・製図・方位が懸かった非戦闘判定 +1。④ 書庫 —— 保存された地図・文書・写真帖: 幕間半日を費やして参照すればその内容が直結する非戦闘判定1回 +2 (学者セットの専攻書籍文法を準用 —— ただし、参照した幕間に時計1)。⑤ 音楽 —— カード下の別項。
[消尽][消尽 4・時計] —— 電源が入った場面が終わるたびに1。目をつぶってやらない —— 三秒点けても場面は場面だ (法 1)。
劣化特則トリガー: 落下・浸水 (浸水は過酷)。摩耗: 電池が膨れた —— 点けた場面ごとに時計が2ずつ回る。故障直前: 画面の半分が闇に沈む —— 書庫・道具機能のボーナス喪失。
一握りの物語ロック画面は家族写真であり、暗証番号は今なお誰かの誕生日だ。指はその六桁を押すときだけ、まだその世界に生きている。
沈黙後の価値消えた画面はこの時代のどの鏡よりも黒く深い —— 陰陽師はそれを「映さぬ鏡」と呼んで覗き込むのを厭う。その黒い硝子の中に帰れなかった顔たちが沈んでいることを、彼らは知らずして知っている。百年を耐えれば —— その鏡の物語は漂流貴物のものだ。

音楽について —— 諸刃。 保存された歌に規則数値はない —— 活力も戦力も戻さない。しかし敗走した夜、誰かを葬った夜、画面を伏せて低く流した一曲が卓に何をするかは数値の領域ではない。ただ覚えておけ —— 時代の外の音は時代の外の耳を呼ぶ。 真夜中の開けた場所で鳴らしたなら、GMは場面が終わるとき火器の遭遇誘引d10を振れる —— このとき妖魔の行(8〜9)は6〜9に広げて読む。銃声は音を聞いて来るが、歌は音に付いた懐かしさを嗅いで来る。

#補助電池 (予備電池)

項目
名称補助電池 (予備電池)
分類電子機器
効果幕間に1消耗: 時計単位の電子機器1台に[消尽]時計1を回復させる (カード開始値上限)。本巻で時計が逆に回る二つの道のうち一つ —— もう一つは太陽光充電器だ。
[消尽][消尽 3・時計] —— 四枡入れに三枡。昨夜最後まで充電しておけば、という後悔が一枡。
劣化特則劣化4段階を適用しない —— 減るだけだ。ただし、浸水一度で判定なく沈黙する。水と電気の数えには賽がない。
一握りの物語三枡の未来を誰に与えるのか —— 一行の無線機か、私の写真帖か。この小さな煉瓦は本巻で最も静かな倫理問題だ。
沈黙後の価値中を開けても職人が読めぬ銀色の内臓 —— 沈黙した後も堺座の鑑定目録に上がる。何に使う物か誰も知らぬまま、値だけ上がる。

#太陽光充電器

項目
名称太陽光充電器
分類電子機器
効果晴れた日一日を丸ごと陽光の下に広げておけば (移動するなら背嚢などに縛り、遅い歩み)、その日の幕間に時計単位の機器1台の[消尽]時計1を回復させる (カード開始値上限)。曇りの日と冬の陽は二日に1 (GM)。一日が一目盛りだ —— 完全な自由ではなく、短い使用権の回復。
[消尽]なし —— これは残量ではなく泉だ。ただし泉は涸れない代わりに、摩り減る。
劣化特則トリガー: 落下・擦り傷・浸水 (浸水は過酷)。摩耗: 充電が二日に1へ。故障直前: 三日に1、それも晴れた日だけ。沈黙: 黒い板の上に葉脈のようなひび —— 光は入れど、何も出てこない。
一握りの物語災害備えの鞄に入っていた、一度も広げたことのない物。最も使う事がないことを願っていた物が —— 最も長く傍らに残る。
沈黙後の価値陽に向けて広げておけば光を食っていた黒い板 —— 村人はそれが向日葵の一種だと信じ、その信は間違っている分だけ正確だった。職人は葉脈模様のひびを一生覗き込む。

#懐中電灯 (懷中電燈)

消尽システム法 4の見本カードがこのカードだ —— そちらが原本であり、ここに再び載せるのは03シリーズの中の己の居場所のためだ。闇が判定に懸ける数えの文法は状態一覧を見る。

項目
名称懐中電灯 (懷中電燈)
分類電子機器
効果夜間・暗所で自己区域と隣接区域の視界確保 (灯火の上位互換)。闇による判定ペナルティ無視 (自己区域限定)。
[消尽][消尽 4・時計] —— 点けたまま過ごした場面が終わるたびに1減少。
劣化特則トリガー: 落下・浸水。判定は基本式(2d10+技+解除)。摩耗: 場面につき1回、GMが1呼吸のあいだ光を消えさせることができる。
一握りの物語夜間バス運転席脇の非常箱に入っていた物だ。スイッチを押すたびに、遂に辿り着けなかったそのバスの終点が浮かぶ。
沈黙後の価値レンズと鏡面は職人に貴重な材料 —— 威勢品一握りの値を成す。百年を耐えれば、光を覚えている付喪神の候補。

#携帯無線機 (携帶無電機)

項目
名称携帯無線機 (携帶無電機)
分類電子機器
効果同じチャンネルの点けた無線機同士で即座に会話する —— 互いに異なる区域、互いに異なる場面の間にも情報がその場で渡る。 可聴距離は地形が定める: 開けた野と水の上で一里ばかり、山・森・谷・村の中では十町まで (用語・度量衡辞典) —— この国の地形はアンテナの敵であり、高い所に立つ側はGMが手厚く見てやる。戦闘では分隊命令の可聴距離を無線機の向こうまで延ばす —— 命令の費用・回数・文法は正本そのままだ。 外部から下す指揮は正本区域ギミックがすでに開いておいた道であり、無線機はその道に声を貸すだけだ。
[消尽][消尽 6・時計] —— 台ごとに別に数える。点けておいた(受信待機含む)場面が終わるたびに1 —— 聞いているだけでも摩り減る、待ちも電気を食う。約束した刻にだけ点ける運用は時計を遅らせる —— 代わりに消えた無線機は何も繋げない。
劣化特則トリガー: 落下・浸水 (浸水は過酷)。台ごとに別に死ぬ。摩耗: 砂の沸くような雑音 —— 長い言葉が途切れる。一場面に渡せる伝達は一握り(GM裁量)に減り、分隊命令拡張を失う。そして対(つい)の規則 —— 聞いてくれる無線機が一つも残らなければ、残った一台はその日から沈黙と同じだ。 時計が残っていても、それはカードではなく遺品だ。
一握りの物語横腹に災害現場の呼出符号がテープで貼ってある。応答していたすべての符号が四百年外にいる —— それでも癖のように、送信ボタンを押す前に一拍待つようになる。
沈黙後の価値「風に乗る声の箱」 —— 大名の宝物庫で式神を操る道具と鑑定される。間違った鑑定だが、まるきり間違ってはいない。百年を耐えれば —— 雑音の向こうの声を覚えている付喪神の候補。

一台だけなら。 無線機は二台から無線機だ —— 災害派遣型自衛官の背嚢に入った一台が点いて聞くのは、この時代の空っぽの空が出す雑音だけだ。しかしある夜その雑音の間から人の声が —— こちらの言葉で —— 拾われたなら、それは規則ではなくシナリオだ。同じ時代から隠された者は、一人だけではないのだから。

#デジタルカメラ (寫眞機)

項目
名称デジタルカメラ (寫眞機)
分類電子機器
効果写真・動画 —— 法 3レンズ規則の本陣。光学ズーム —— 2区域外まで引き寄せて見る: 遠い区域を窺う感知・偵察判定 +1、そして見た物が記録として残る。戦闘中の撮影は活力1、震える手は 2d10+技+感知 >= 11 —— 失敗すれば手ぶれの写真だ。闇の中の閃光(フラッシュ)は光の銃声だ —— その場面の潜入・待ち伏せは破れる (火器銃声規則1項を準用 —— 遭遇誘引は振らない)。
[消尽][消尽 8・時計] —— 電源が入った場面ごとに1、寛容なし (法 1)。一つの事しかしない電池は長く保つ。
劣化特則トリガー: 落下・浸水 (浸水は過酷)。摩耗: レンズに細いひび —— すべての写真が霞む。法 3の「鮮明な写真」をもう作れない —— 機械は生きているのに、証拠は死ぬ。
一握りの物語鳥を撮っていた人の物だ。メモリには翡翠四百枚 —— そして渡ってきた後に撮られた最初の一枚には、鳥でないものが飛んでいる。
沈黙後の価値レンズだけで南蛮鏡十枚の値を成す。中に沈んだ写真たちは永遠に取り出せなく閉じる —— 見た物を返さない黒い眼。陰陽師がその前で合掌したという話がある。

#腕時計

項目
名称腕時計
分類電子機器
効果均一な時間を数える、この国でただ一つの物。この時代は季節に従って伸び縮みする不定時法で時間を数える (用語・度量衡辞典) —— 手首の上のこれだけが独り異なる数えを守る。時間を合わせた合同行動(同時奇襲、分かれ道の合流、交代見張り)が要となる場面で、GMは関連判定に +1を与えられる —— 神隠し同士が時計を合わせる儀式は本巻の小さな名物場面だ。
[消尽]なし —— ボタン電池は本巻の時計で数えない。年数で生きる。いつか止まる日は来るが、その日はシナリオではなくとある静かな朝だ。
劣化特則トリガー: 落下・浸水 (浸水は過酷)。摩耗: 一日に数分ずつ食い違う —— 合同ボーナス喪失。食い違っていると知らずに着けて回る時計が、合っている時計より危険だ。
一握りの物語合格祝いに受け取った物だ。約束の時間に遅れるなと巻いてくれた手首なのに —— 今この時計が知る約束は、世のどこにもない。
沈黙後の価値止まった時計も一日二度は合う。裏蓋を開けた職人は歯車の宇宙を前に飯を忘れ、からくりの夢が一掌伸びる。百年を耐えれば —— 時間を数えていたものは、時間を渡るものになる。

#法 3 — 妖魔とレンズ (Variant)

この節はVariant —— GM許可前提の変形規則だ。本巻の名物規則であり、百鬼伝承記の名前理論と一つの軸で回る。

#妖魔は撮れるか —— 格が定める

撮れる。ただし何が撮れるかはシャッターではなく被写体の格が定める。正本等級文法とfc08の分類軸をそのまま借りる。

被写体写真に残るもの
肉と皮の妖魔 —— 体を持つもの (雑・卒・練等級の大半 —— 鬼、河童、狸…)撮れる。 見えるそのまま —— 闇の中なら暗く、月明かりの下なら月明かりほど。牙の本数まで残る、動かせない記録。
[霊体]軸のもの —— 怨霊・死霊・生霊、体ならざる体霞む。 形の代わりに兆候のみ —— 光の滲み、人の形に空いた闇、画面半分を呑んだ雑音。何かがいたという証拠にはなるが、何であったかの証拠にはなれない。
将・主級 —— 名前を持つ上級 (体があろうとなかろうと)霞む —— 体があっても。 格がレンズを押す。焦点が滑り、雑音が沸き、最悪の場合電源が落ちる —— GMは撮影の試み自体をその場で故障トリガーと宣言できる。

録音も同じ文法だ —— [霊体]の声は再生すれば雑音と息遣いだけが残る。霞んだ写真を辛く扱うな。証拠としては足りないが、演出としては有り余る —— 人の形に空いた闇一枚が、鮮明な牙十枚よりも卓を静かにする。

#撮ることは捕らえること

鮮明な写真一枚はこの時代の調査場面を変える。目撃談は揺れ、膨らみ、互いに争うが、写真は争わない。

  • 証拠 —— その妖魔に直結した情報収集・証言照合・依頼主説得の非戦闘判定に +2。写真一枚につきシナリオ1回 —— 学者セットの記録物と同じ文法であり、同じ限界だ。写真は物だ —— 渡され、売られ、奪われる。
  • 最初の記録 —— 現代妖魔の弱点文法は「最初の投稿者、最初の映像、最初の被害者、元の場所を見つければ支配力 -1 または防備 -1」と記す。本巻で鮮明な写真はその最初の記録の座に立てる —— 怪談の真の姿を一枚に固定した者は、その妖魔を解く最初のボタンを握ったのだ。適用はGMが開く。

#広めることは餌を与えること

しかしfc08の名前理論は両面だ —— 名前を失えば弱まり、名前が広まれば強まる。 写真が一行と依頼関係者の手を離れて広まる瞬間 —— 市で見せながら尋ね歩き、絵師がそれを写し描き、その絵が榜として貼り出される瞬間 —— 広まるものは警告ではなく名前と姿だ。

  • GMはその妖魔に強化背景名前ある妖魔(名前が広まった地域で支配力 +1)や怪談増殖(噂が広まるほど再登場)を付けられる。
  • そして伝播の法則が付いてくる —— 現代妖魔の共通規則そのまま、見た人が次の目撃者になりうる。 媒体が画面から口と絵に変わっただけで、法則は同じだ。写真を回した村で目撃談が増え始めれば —— それは偶然ではない。

指名手配か、秘密捜査か。この分かれ道をPLの手に握らせるのがこの規則の目的だ。早く見つけるには広めねばならず、広めれば敵が育つ —— シャッターはただだが、焼き付けは付けだ。

#妖魔は知る

撮られた妖魔は —— 名前と禁忌の軸を持つものほど —— 己の姿が黒い札の中に固定されたことを知る。名前を食って生きるものにとって写真は奪われた名前だ。あるものはそれを取り返しに来る。あるものは己の姿がもっと広まることを願ってわざとレンズの前を歩く —— どちらなのかはその妖魔が何を食うか(妖魔とは何か)が定める。そして覚えておけ —— 追跡は撮った手ではなく持つ懐を追う。写真の入った機器を売り渡すことは、追跡を売り渡すことだ。

百鬼伝承記は保存され複写され検索されて生まれる妖魔を記した —— 記録が妖魔を生む時代の本だ。本節はその鏡像だ —— 記録が妖魔を捕らえる時代。 ただし同じレンズから捕らえる記録と餌を与える記録が共に出てくること、それだけは二つの時代が同じだ。

#運用 —— レンズを卓に上げるとき (Scene Tool)

この項のみScene Tool —— 規則ではなくGMの取っ手だ。

  • 写真は門であって、足ではない。 証拠 +2は調査場面を飛ばす切符ではなく閉じた口を開ける札だ。目撃者は依然として訪ねねばならず、山道は依然として歩かねばならない。
  • 決定的な一枚は残量と引き換えにさせろ。 闇の中の一枚が時計一目盛りの値であるときシャッターは重さを持つ。「撮ろうか」が悩みになる瞬間、この規則は仕事を全うしたのだ。
  • この時代の眼を忘れるな。 写真を初めて見る人の半分は妖魔より写真を恐れる —— 「魂を写し取る鏡」という噂は一行より速く歩き、陰陽寮の鑑定人はその札を買いに、あるいは押収しに来る。レンズは妖魔だけを呼ぶのではない。

目盛り四つ。故郷は今やそこに住む —— 一度点けるたびに一度ずつ、近づく顔と減る未来が同じ画面に浮かぶ。