日本語版 v1.3.3

#生業 (生業, Livelihood Skills)

目次

民衆の技芸. 軍談の主人公ではない者たちが、戦場ではなく生活の前線で培ってきた専門性. 漁師は漁具を、鍛冶師は槌を、農夫は鋤を――それが彼らの知る唯一の戦争だ.

本編参照

- 必須: 技能体系 · 技能リスト36種

- 参考: 非戦闘判定 · 三道六心

- この補足内: 設計ノート · 住民NPC · 1段PCテンプレート

[新規ルール #11] 生業 分類 — 拡張特殊ルール

本編技能36種は冒険者の技芸を前提とする. 武芸・機動・探索・指揮・神秘はすべて戦場と危機の中で発揮される技能だ.

しかし鏡山領は冒険者の地ではない. 領地の800名のうち武芸を知る者は20名ほど. 残りの780名は生業で生計を立ててきた民衆だ. 本編36種だけではこれらの者の専門性を収めることはできない.

本補足は生業分類を追加し、民衆の生涯にわたる専門性を判定可能な資産へと格上げする. 本編36種と共存しつつ、戦場判定には使えず領地運営・生活・非戦闘専門性判定にのみ有効だ.


#香 — 4段階の道

ユキチ(雪吉)の工房を見よ. 四人が働いている. それぞれ異なる息で.

幼いゲンタ — 入門. 十四歳. ユキチの息子. 槌を両手でやっと握る. 昨日は腕を鉄片で擦り傷を負い、今日は炉の火を燃やしすぎて眉を焦がした. しかし彼は学んでいる. この家の鉄はいつ握るべきか、いつ放すべきか.

「こいつ、まだ腐食した鉄と冷め切っていない鉄を見分けられないな. いいさ. 俺が学んでいたときもそうだった. 腕に傷が三十個くらいできれば分かるようになるだろうさ.」

村の入り口ヒロシ — 熟練. 四十二歳. ユキチの弟子出身. 今は自分の工房を持つ生業人. 領地の鍬・鎌・門扉の金具を作る. 誰が何を注文しても平均以上に仕上がる. しかし刀は作らない. 「私の手は刀の手ではありません.」 ヒロシはそれを知っている. それが熟練だ.

ユキチ — 匠人. 七十歳. 領地最高の鍛冶師. ユキチが作った刀は領地の侍たちの手に握られ、彼の槌が打っていない門扉の金具は領地にない. 領地会議に出席する権利があり、彼の宣言は領地内の鍛冶仕事の法だ. 彼はヒロシを教え、今は息子ゲンタを教えている.

「ゲンタよ. お前が二十歳になる前にこの槌を渡せたらいいと思う. 渡せなければ――それはお前が遅かったのではなく、俺が早かったのだ.」

そして名も知らぬある名匠. 江戸にいた. 今もいるかどうか分からない. ユキチの師の師. 彼が作った剣一振りが今、領主の書斎の箱の中で眠っている. 開けた者は領主とユキチの二人だけ. その剣を見てユキチは「これは一生かけても真似もできない」と言った.

それが名匠だ. 名が遠くまで届いた者一生では辿り着けない境地.


#法 — 4段階ルール

#基本原則

  1. 表記: 生業:鍛冶仕事生業:漁業など接頭辞「生業:」+専門分野一語
  2. 4段階: 入門 → 熟練 → 匠人 → 名匠
  3. コストとボーナス:
段階漢字印象点数コスト判定ボーナス叙述的位置
入門入門弟子 — 学ぶ者1点+0 (非熟練解除)家業を学んでいる途中、見苦しくはない
熟練熟練生業人 — 自分の手で生計を立てる者2点+1自分の工房・自分の船・自分の畑を持つ者
匠人匠人本物の専門家 — 領地の権威3点+2領地最高水準、社会的地位、後継養成
名匠名匠伝説 — 名が遠くまで届く4点+3地域・国を超えて名が届く者. 一生に一人か二人
  1. 制限:
  • 聖人段階なし — 民衆の技芸は神話の境地には届かない. 本編の聖人(自動成功)は達人の道に属するもの.
  • 戦場判定に使用不可 — 戦闘中の状況では本編技能で代替
  • 領地・生活・非戦闘判定にのみ有効
  • 流派習得不可

#判定公式

2d10 + 関連能力値 + 生業:X ボーナス (+0 〜 +3) >= 目標値

関連能力値は生業ごとに異なる (標準は下記§例示リスト参照). 目標値は本編非戦闘判定基準.

#4段階叙述的役割区分

各段階のプレイ上の意味:

#入門 (+0) — 弟子

  • 「教えを受ける者」
  • 判定は可能だがボーナスなし. 非熟練ペナルティ -2を免れるという意味
  • 概ね10代の少年・少女、または成人後に遅れて学び始めた者
  • 師が必要. 該当生業の熟練以上のNPCを師とする
  • 叙述軸: 「いつか熟練になる日が来るだろうか」

#熟練 (+1) — 生業人

  • 「自分の手で生計を立てる者」
  • 村の入り口に小さな工房を構えたり、自分の船を操ったり、自分の畑を耕すことができる
  • 判定 +1. 平凡な目標値(11〜13)はおおむね通過
  • 領地でこの段階が最も多い — 800名のうち熟練者が50〜100名規模
  • 叙述軸: 「自分の分を果たす」

#匠人 (+2) — 本物の専門家

  • 「領地がこの仕事について尋ねる者」
  • 領地会議出席可、該当領域宣言権
  • 領地あたり各生業1名原則 (匠人は希少であるべき)
  • 判定 +2. 難しい目標値(14〜15)も可
  • 後継養成可能 (入門2名まで)
  • 叙述軸: 「この名がこの土地に刻まれる」

#名匠 (+3) — 伝説

  • 「この領地の外にも名が届く者」
  • 領地に存在することも、存在しないこともある — 叙述的存在
  • 作品・結果物が伝説になる (例: 「名匠XXの剣は今あるどこかの大名の箱の中で眠っている」)
  • 判定 +3. 極難目標値(17+)も可
  • 後継者養成に一生を捧げる — 名匠が教えた弟子が匠人になる叙述
  • 叙述軸: 「この作品は私が死んだ後にも残る」

名匠はキャンペーンでNPCとして登場することが稀だ. 概ね過去の存在伝説の名として言及される. 現存の名匠に出会うなら、それ自体がサイドクエスト.

#匠人・名匠特別処理

#匠人(3点)の特権

  • 該当生業に関する叙述的宣言権: GMと協議して該当領域内の事実を確定できる (例: ユキチ匠人が「この剣は修理不可」と宣言すれば修理判定不要)
  • 後継養成: 匠人1名は入門2名まで指導可能
  • 社会的地位: 領地会議参加可能 (領主招聘時)
  • 判定独占: 該当領地内で同じ生業に関する判定は匠人優先権

#名匠(4点)の特権

  • 匠人のすべての特権 +
  • 作品伝説化: 名匠の作品は本編名品武器水準の叙述的重み. 実際の名品統計は別途だが「名匠XXが作った___」叙述特権
  • 一国規模の影響: 名匠一人の移動はその地域の該当産業に影響 (例: 名匠鍛冶師が移住すると、その領地の鉄の値段が変動)
  • 後継養成: 匠人1名 + 入門多数まで同時指導可能
  • 名匠継承条件: 名匠到達は一世代に一人か二人. 匠人到達者の中でも極めて稀

#冒険者が生業を学ぶことができるか

可能だ. 本編技能点数投資. 段階別条件:

目標段階必要点数追加条件
入門1点師NPCがいること (熟練以上)
熟練2点該当生業に日常的従事1ヶ月 (キャンペーン内時間)
匠人3点該当生業1年以上従事 + 師NPC匠人以上の後継指定 + 公式判定3回以上成功
名匠4点該当生業5年以上 + 代表作品1点領地全体が認定 + 師の師の認定(名匠の師) + キャンペーンエンディング直前段階

これは単純な点数投資では達成不可であり、叙述的基盤が必要だ. 特に名匠はキャンペーン終結時点で到達するのが自然だ.


#例示生業リスト (16種)

無限拡張: このリストは例示であり、GMは領地・時代・キャンペーンに合わせて新たな生業を追加できる (「生業:鷹狩り」、「生業:大横笛」など). 原則さえ守ればよい.

#農・漁・林系列

生業関連能力値専門領域
生業:農業體·知播種・田植え・収穫・凶作予測・土壌
生業:漁業技·體漁具・網・海洋観察・潮汐・航路
生業:牧畜體·美家畜管理・繁殖・疾病
生業:伐木體·知木の識別・伐木・水路運搬
生業:鷹狩り技·美鷹の訓練・狩猟随伴

#工芸・製作系列

生業関連能力値専門領域
生業:鍛冶仕事體·知鉄製武器・農具・生活道具製作・修理
生業:木工技·知建築・家具・荷車・造船(小型)
生業:陶芸技·美陶磁器・器・祭器
生業:機織り技·美布・衣服・旗・縄
生業:醸造知·體酒・味噌・醤油・酢
生業:石工體·技石材加工・建築・墓石

#商・書・管理系列

生業関連能力値専門領域
生業:商業知·美売買・会計・交易路・価格
生業:書記知·技文書・会計記録・古文書解読
生業:言語知·美外国語 (ポルトガル・ラテン・明・朝鮮語など)

#民間神秘系列

生業関連能力値専門領域
生業:民間医術知·美民間治療・薬草調合 (本編医術は正式修練、これは祖母の知恵)
生業:巫女美·知鈴・祈り・民間口寄せ (本編呪術は公式陰陽道、これは民間)

#特殊・異邦

生業関連能力値専門領域
生業:鉄砲鍛冶技·知鉄砲製作・修理 (ポルトガル伝来の技術)
生業:南蛮薬剤知·技西洋式外科・薬学

#本編技能との関係

#類似領域の分離

本編技能 (冒険者)生業 (民衆)境界
医術 (神秘)生業:民間医術医術は戦場応急・毒治療・儀式. 民間医術は日常疾病・出産・祖父母の知恵
呪術 (神秘)生業:巫女呪術は公式陰陽道体系. 巫女は地域民間口寄せ・鈴・祈り
弓術 (武芸)生業:漁業(銛)·生業:鷹狩り弓術は戦闘用. 生業は生計の狩猟
航海 (機動)生業:漁業航海は大洋・軍船運航. 漁業は沿岸・小船
買収 (指揮)生業:商業買収は政治・賄賂・工作. 商業は売買・価格・帳簿
虚言 (指揮)生業:言語虚言は詐欺・外交. 言語は単純な通訳・翻訳

#二つの体系の同時保有

同じ人物が本編技能と生業を同時保有可能:

  • 外人 ミナコ(美奈子): 本編医術習得(2点) + 生業:南蛮薬剤 (匠人) — 両方に精通
  • 忍び コマチ(小町): 本編潜入免許(3点) + 生業:機織り (熟練) — 母親の遺産
  • PC 工人: 本編解除習得 + 生業:鍛冶仕事 (入門) — 家業を学んでいる段階

#GM運営指針

#生業を使わせる瞬間

  1. 領地運営判定: 今週の米の収穫量 → 生業:農業判定
  2. 特産品製作: PCが鍛冶場に依頼 → ユキチの生業:鍛冶仕事判定 (匠人)
  3. 文化理解: 異邦人NPCとの対話 → 生業:言語判定
  4. 領地経済: 交易路・価格・士気 → 生業:商業判定 (キュウベエ(久兵衛))
  5. 民間治療: 負傷した住民の治療 → 生業:民間医術判定 (医師ミナコがいないとき)

#生業を使わせない瞬間

  • 戦場判定: 妖魔攻撃回避・反撃など戦闘中のすべての判定は本編技能使用
  • 緊急医療: 致命傷の応急は本編医術 (生業:民間医術では不可、ただし目標値 +5ペナルティで代替許可可能)
  • 冒険的能力: 潜入・隠密・追跡・突破など英雄叙述判定は本編技能専属

#プレイヤー権限

PCが1段生成時に生業1種を入門(1点)コストで取得できる — これは「領地居住者背景」の特殊恩恵 (本編技能5点基本 + 生業1点 = 領地の異邦人/漂流者背景とのバランス).

PC生業昇段速度: 一般的な経路は1段生成入門 → キャンペーン中盤(第2〜3章)熟練到達 → キャンペーン後半(第4〜5章)匠人到達. 名匠はエンディング条件の叙述的贈り物としてのみ許可.

#匠人・名匠NPC配置

領地内の匠人は各生業につき1名のみ. この制約が匠人の希少性を生む:

  • ユキチ — 生業:鍛冶仕事 (匠人, +2)
  • 野上ガイチ — 生業:漁業 (匠人, +2)
  • オトナシ(音無) — 生業:農業 (匠人, +2)
  • キュウベエ(久兵衛) — 生業:商業 (匠人, +2)
  • サヨ(早夜) — 生業:巫女 (匠人・異端, +2)
  • ゴダイ(五大) — 生業:鉄砲鍛冶 (匠人, +2)
  • ミナコ(美奈子) — 生業:南蛮薬剤 (匠人, +2)

名匠はこの領地にいない. しかし言及はある:

  • 「江戸にユキチの師の師がいた. 名匠. その剣一振りが領主の箱の中で眠っている.」
  • 「朝鮮に陶芸の名匠がいると聞く. キュウベエが一度見てきたそうだ.」
  • GM裁量 — 領地外のサイドクエストで名匠の遺品・弟子の登場可

#例外 — キャンペーン終結時のPCの名匠到達

PC中の一人が生業を深く追求した場合、エンディング分岐C(定住)またはエピローグで名匠到達を許可. これは「キャンペーンの贈り物」として叙述的意味を持つ.


#シート表記例示

#NPC スタットブロック例示 — 匠人

ユキチ (非戦闘, 領地最高の鍛冶師)
  勇 -1 / 技 +2 / 體 +2 / 知 +2 / 美 +0 / 運 +0
  活力 12 (10 + 技2)
  戦力 4 (3 + 體2 - 老齢)
  防備 10 (衣服)
  三道六心: 眞 (真理 — 鍛冶仕事への誠実)

特技: [一般, 素養] 匠人の目 — 武器・防具の識別判定 +2
生業: 生業:鍛冶仕事 (匠人, +2) · 生業:木工 (熟練, +1)
本編技能: 感知入門(1点), 闘志入門(1点)

#PCテンプレート例示 — 入門

工人 背景 1段PC
本編技能5点自動:
  - 解除習得(2点)
  - 剣術入門(1点)
  - 感知入門(1点)
  - 軍学入門(1点)
生業1点特殊 (領地居住者ボーナス):
  - 生業:鍛冶仕事 (入門, +0) — 父ユキチに学んでいる途中

#NPC スタットブロック例示 — 名匠 (過去形・伝説的)

「剣匠ナガトキ」 — 伝説 (過去の存在、現在の所在不明)
  — 領地書斎の剣一振りが彼の作品
  — ユキチ曰く: 「一生かけても真似できない」

生業: 生業:鍛冶仕事 (名匠, +3)
  — 江戸・京都に彼の他の作品が数点あるという噂
  — 弟子3名を輩出、その中の一人の弟子の弟子がユキチ

#Q&A (よくある質問)

Q1. 本編正規職業にも生業を与えることができるか? → 可能. 例: 侍が家伝の「生業:醸造」を保有できる. ただし該当生業が家・個人の叙述的背景と結びついていること.

Q2. 生業間で重複投資は可能か? → 可能. 鍛冶仕事・木工どちらも熟練可能. ただし同じ生業に複数段階同時は不可 (匠人の者は匠人であり、「熟練+匠人」のような二重投資は意味なし).

Q3. 名匠はキャンペーン中に到達可能か? → 非常に稀だ. キャンペーン後半 + 叙述的基盤 + GM承認が同時に揃う必要がある. 一般的には匠人到達がキャンペーンの叙述的目標であり、名匠はエンディングの贈り物.

Q4. 匠人と名匠の実質的な違いは? → 判定ボーナス +2 vs +3 (数値差). 叙述的には地域性 — 匠人は「この領地の最高」、名匠は「国単位の伝説」. プレイ体感は「サイドクエストで呼びに来る他の領地の人」がいるかどうか.

Q5. 生業を特技スロットに入れることができるか? → いいや. 生業は技能点数でのみ購入. 特技スロットは本編ルール通りクラス/背景/一般特技に使う.

Q6. この領地を離れると生業はどうなるか?維持される. 判定ボーナスはそのまま. ただし一部の生業(生業:漁業など)は地理的制約あり(海がない場所では判定不可). 匠人の社会的権威は領地所属が変わると再確立が必要(新しい領地では外来の匠人扱い).

Q7. キャンペーン終了後にPCが変容・定住すると生業は? → 維持. 定住エンディングでは生業が新たな霊界領地の基盤となる叙述が推奨される. 名匠到達も定住エンディングで最も自然だ.

Q8. 入門段階のボーナスが +0 なのになぜ取得するか?非熟練ペナルティ -2を免れる. 本編非熟練によれば入門すらない技能は判定 -2. 入門はそのペナルティを除去. また師の下で学ぶ叙述的位置の確保.


#連結された新規ルール

このルールはルール・デルタ 11番項目として登録される.


「土を耕して死んだ者が、刀を持って死んだ者より多い. 民衆の技芸を記録しないことは、彼らが死んだ方法を記録しないことだ.」 — ホシノ・ゲンショウ、領地記録の一節.