日本語版 v1.3.3

#第2章 — 黒縄(黑繩)

目次

"抜け出すことを諦めた者たちの安息所で、君たちは何を解き、何を縛るのか?"

本編参照

- 必須: 非戦闘ルール · 戦闘進行 · 三道六心

- 交渉: 妖魔図鑑テンプレート · 交渉ルール

- この補遺内: 第1章 · 黒縄地獄ガイド · 結界システム · 陰陽師NPC

- 接続: 黒縄流地獄流派

黒縄の鎖森迷路


#香 — 黒縄の肌理

等活の鉄臭さが薄れ始めるころ、空気が変わる。最初に変わるのは音だ。風が触れるたび、低くじゃらりと金属音が聞こえる。鎖が風に揺れる音。だがその音は近づいてこない — どの方向からも同じ距離で聞こえる。

次に変わるのは光だ。太陽があるのかどうかは分からないが、すべてが薄い墨色に染まっている。前を見ると、黒い柱の森が見える。数百、数千の柱。しかし近づいてみれば、柱ではない。地から生えた鎖だ。太い鎖が稲のように空へ向かって伸び、その鎖に何かが — あるものは妖魔、あるものは人の形、あるものは獣 — おとなしく巻きついている。

巻かれたものたちは苦しそうに見えない。目を閉じている。抜け出そうとしない。そのうち一人に近づいて声をかけると、彼は君たちを見て静かに笑い、こう言う — "ここまで来るのは大変だっただろう。こちら側も悪くない。"

黒縄は罰ではない。黒縄は選択だ。抜け出すことを諦めた者たちが、自ら巻かれた鎖の中で静けさを見つける場所。そして君たちは、その静けさがどれほど甘いかも知らないまま、その森へ足を踏み入れる。


#法 — 第2章ゲームデータ

#章メタカード

項目
章番号第2章
地獄テーマ黒縄(黑繩) — 結縛の森
推奨PC段数2段 ~ 4段 (章終了時4段目標)
セッション数4セッション (4幕構造)
章開始結界HP65 ± 5 (第1章プレイ結果に依存)
章終了結界HP予想55 ± 10
陰陽師衰弱度1 ~ 2累積状態で進入
主要新規要素交渉可能妖魔の初登場
解禁コンテンツ黒縄流流派伝授可能

#第2章の独立ストーリーライン

第2章は交渉・契約・裏切りの章である。第1章が「霊界へ落ちたという事実と、自分の傷との対面」だったなら、第2章は「抜け出したくないという他者の声との対面」である。

最終質問: "黒縄の森で、君たちは何を解き、何を縛るのか?"

この質問には、章終了時にPC各自が自分の答えで応じなければならない。答えは善悪で採点されない。PC自身の物語として記録されるだけだ。

#核心叙事軸

意味PCに与えられる選択
解く巻かれた者たちを放す自由を与えるが、静けさを壊す
縛る巻かれたままにする、または新たに縛る静けさを認めるが、自由を諦める
交渉対話で分かれる時間と感知が必要
裏切り約束の後に反対の行動を取る衰弱度・三道への影響が累積

#遭遇 — 章の構造 (4幕)

#第1幕 — 黒縄進入: 捕縛の森入口

セッション分量: 1セッション (3~4時間)

  • 舞台: 黒縄地獄の外郭。鎖の森入口。風は低く、静か。
  • 事件: PCたちは等活の鉄色の平原を越え、黒縄の境界に到達する。成長する鎖との初遭遇。そして森の奥から歩いてくる鎖の母(Grip Mother)との初対面。
  • 目標: 黒縄の風景を学ぶこと、最初の交渉可能妖魔との出会い。
  • 進行: 第1幕 — 黒縄進入

#第2幕 — 捕縛迷宮探索: 鎖の格子

セッション分量: 1セッション

  • 舞台: 黒縄内部。鎖が格子状に編まれた迷宮地帯。光が上から降りてくるような構造。
  • 事件: 迷宮探索中に迷い漂流民(以前に黒縄へ落ちた魂たち)を発見する。その一部は解放されたいと望み、一部はすでに静けさに落ち着いている。
  • 目標: 道徳的ジレンマ — 誰を解き、誰をそのままにするのか。
  • 進行: 第2幕 — 捕縛迷宮

#第3幕 — 契約あるいは裏切り: 鎖の母の頼み

セッション分量: 1セッション

  • 舞台: 鎖の母の祠。森の中心にある静かな空き地。
  • 事件: 鎖の母がPCたちに頼む — 「森の深いところにいる、封じられたあの方を目覚めさせてほしい。私は行けない」。PCは契約を結ぶか、偽りの契約の後に裏切るか、拒むかを選ぶ。
  • 目標: 契約ルールの導入。PCの選択が4幕の展開を決める。
  • 進行: 第3幕 — 契約あるいは裏切り

#第4幕(クライマックス) — 森の主との談判: 黒縄大母

セッション分量: 1セッション

  • 舞台: 黒縄の中心。最も太く、最も黒い鎖の柱の下。
  • 事件: 封印解除時、黒縄大母(Kokujo Daimo)が目覚める。彼女は鎖の母の本体であり、森全体の意志である。談判・戦闘・犠牲の三元選択
  • 目標: 章クライマックス。PC各自の答え。
  • 進行: 第4幕(クライマックス) — 森の主との談判

#段階別進行ガイド

セッション主要事件PC成長予想判定ペース
セッション 5第1幕黒縄進入、鎖の母遭遇2段中盤 → 3段序盤普通 (1戦闘 + 1交渉 + 探索)
セッション 6第2幕迷宮、迷った魂3段序盤 → 3段後半遅い (判定中心)
セッション 7第3幕契約・裏切り決定3段後半 → 4段序盤遅い (RP中心)
セッション 8第4幕黒縄大母談判4段序盤維持非常に速い (クライマックス)

#章全体にわたる判定ペース原則

  1. 戦闘比率 30% / 交渉 30% / 探索・RP 40% — この章は戦闘が主軸ではない。
  2. 交渉判定には時間がかかるべきである — 一度で終わらせないこと。各交渉は2~3間合のRPを経た後、2d10 + 智 + 感知判定。
  3. 衰弱度累積の監視 — 第2章の終わりまでに陰陽師衰弱度が3を超えると、第3章の均衡が崩れる。

#成功/失敗分岐

#章全体成功条件

次のうち2個以上を達成すれば「成功」エンディング。

  • [ ] 鎖の母との関係を (敵対/友好のどちらであれ) 明確に決定
  • [ ] 迷った魂のうち最低1人を解放する、または意識的にそのままにする。
  • [ ] 黒縄大母との談判で、PCのうち最低1人が自分の答えを示す。
  • [ ] 章終了時、結界HPが45以上を維持。

#章全体失敗条件

次のうち一つでも満たせば「危機」エンディング (第3章が難しくなる)。

  • [ ] 陰陽師衰弱度4以上。
  • [ ] 結界HP 30以下。
  • [ ] PC 1人以上の永久死亡、または黒縄への「定着」(自ら縛られる)。
  • [ ] 鎖の母・黒縄大母の双方と敵対。

#中間分岐

  • 契約成立: 鎖の母との約束を守る経路 → 4幕で協力者を獲得、戦闘難易度 -1。
  • 契約裏切り: 鎖の母を欺く → 4幕で二面戦闘、難易度 +1、報酬は単独獲得。
  • 契約拒否: 最初から拒む → 4幕で敵対。ただしPCの感知 +1恒久。

#GMコントロール

#トーン管理 — "残酷ではなく、正確である"

黒縄は拷問の地獄ではない。黒縄は休息の地獄である。巻かれた者たちは安息を見つけた。GMの描写は次の三原則を守る。

  1. 苦痛を誇張しないこと — 鎖に巻かれた者たちは苦しんでいない。彼らは平穏である。むしろその平穏がPCを不安にさせる。
  2. 誘惑を隠さないこと — 鎖はPCに向かっても伸びる。「君も休んでいい」という声。GMはこの声を明示的に聞かせる。
  3. 解かれた者の反応を冷静に — PCが誰かを「解放」しても、解かれた者が必ず感謝するわけではない。怒る者もいれば、もう一度巻かれようとする者もいる。

#結界HP管理 (章全体)

タイミング自動減少イベント減少の可能性
セッション 5開始 (新しい週の開始)-3-5 ~ -10 (黒縄侵入試行)
セッション 7開始0-3 ~ -7 (鎖の母契約の波及)
セッション 8 (クライマックス)0-10 ~ -20 (黒縄大母の余波)

陰陽師が領地で結界修復を試みるたび、衰弱度 +0.5 ~ +1累積。

#交渉可能妖魔の運用

この章は本編妖魔図鑑の交渉ルールが初めて中心になる章である。 交渉可能妖魔は次の三つの特性を持つ。

  1. 意図がある — 妖魔は単なる敵ではなく、欲望・悲しみ・諦めを持つ存在である。
  2. 対話が可能である — PCの感知・交渉判定で情報を引き出せる。
  3. 裏切り可能である — 双方とも嘘をつける。約束の拘束力はそれぞれ異なる。

詳細ルールは第3幕 — 契約あるいは裏切り参照。

#三道六心各軸接続

三道軸黒縄の反映PCに与えられるもの
仁義縛られた者を解くのか、その意志を尊重するのか道徳的ジレンマ
侠愛約束を守るのか、生存を選ぶのか契約の重み
善道黒縄の静けさを悪と見るのか、状態と見るのか判断保留

各PCの三道傾向は、章終了時に1点ずつ移動可能。具体的には:

  • 解放した経路: 仁義 +1、侠愛 -1 (約束の代わりに行動)
  • 縛った経路: 侠愛 +1、仁義 -1 (状態の承認、干渉の放棄)
  • 談判成立: 善道 +1 (判断を下した者の道)
  • 裏切り: 特定軸 -2 (どの軸であれ一度に大きく落ちる)

#第1章との接続点

#第1章終了状態依存度

第1章結果第2章への影響
結界HP 70以上安定進入。標準ペース。
結界HP 50 ~ 69陰陽師衰弱度1加算状態で開始。
結界HP 30 ~ 49第2章セッション 5を「領地防衛戦」に変更可能。第2幕から黒縄進入。
PC死亡1人以上失った者の影が黒縄迷宮に現れる (シナリオフック)。

#前章のギミック引き継ぎ

  • 等活の復活の刻の痕跡: PCが第1章で復活の刻を経験していれば、その記憶が黒縄の鎖誘惑への抵抗 +2を与える。
  • 傷の記憶: 第1章で各PCが直面した「傷」が、黒縄の鎖の母によって言及される。

#第2章のテーマ的核心 — 三道六心の鏡

黒縄は「自ら縛られること」の地獄である。この章を遊ぶ間、GMはPCへ継続的に次の問いを投げかけなければならない。

"君は何に縛られている? その縛りは誰がしたものだ? 君自身か?"

この問いへの答えはPCごとに異なる。あるPCは義務に、あるPCは傷に、あるPCは愛に縛られている。黒縄はその縛りを映す鏡である。

章終了時、各PCは黒縄での経験を通じ、自分の縛りを自覚する。自覚は解放ではない — 縛りを認識したまま生きていくか、解き放つか、あるいは「この縛りが自分だ」と認めるか、その選択が続く。


#章終了後の領地状態

第2章 報酬・領地変化・次章接続参照。主要項目のみ列挙:

  • 領地士気: 第4幕の選択により±2。
  • 結界HP: おおよそ50 ± 10 (第3章進入数値)。
  • 陰陽師衰弱度: 2 ~ 3累積。
  • 獲得可能な核: 黒縄流核3~5個。
  • 解禁NPC: 鎖の母(生存時、領地訪問可能)または裏切られた鎖の母の呪い。
  • 解禁流派: 黒縄流 (談判成功時、鎖の母が伝授可能)。

#4セッション準備チェックリスト (GM)

#セッション 5準備

#セッション 6準備

  • [ ] 第2幕 — 捕縛迷宮通読。
  • [ ] 迷い漂流民NPC 3~4人のシート準備。
  • [ ] 捕縛迷宮地図スケッチ。

#セッション 7準備

#セッション 8準備


#独立エンディング可能性

もしグループが第3章へ進まないことを選ぶ、またはキャンペーンをここで終了することを選ぶなら、第2章は単独エンディングが可能である。この場合、黒縄大母との談判結果は「領地が霊界に永住する道」と解釈され、領地は黒縄の境界と同調し、永遠の結縛の静寂の中で存続する。これは悲劇であり、平和でもある。詳細は第2章 報酬・領地変化・次章接続の「独立エンディング」節参照。


#第2章の固有ルール付録

#ルール 1. 黒縄誘惑判定

PCが黒縄の森で3間合以上静止して留まる時、GMは次の判定を求めてもよい。

状況判定目標値失敗時
鎖付近で休息3間合精神耐性目標値101間合の間移動不可、「少しだけ休みたい」
捕縛された魂との長い会話精神耐性目標値11三道侠愛 +1 一時的に傾く
鎖の母の祠に留まる精神耐性目標値13次の間合に鎖が足へ絡む (脱出目標値11)
黒縄大母へ接近精神 目標値 15衰弱度 +1

本編精神耐性ルールをそのまま使用。判定は2d10 + 勇

#ルール 2. 解放と結縛

PCが捕縛された魂を解放しようとする時:

  1. 鎖を物理的に断ち切る (體判定目標値13) — 解かれた者は選択の余地なく解放される。
  2. 鎖を交渉で解く (交渉判定目標値15) — 解かれた者は自分の意志で解放される。
  3. 別の鎖へ付け替えて縛る (礼法に関する美または智判定目標値11) — 状態転換。縛りの種類だけが変わる。

各方式は三道へ異なる影響を与える。詳しい内容は第2幕 — 捕縛迷宮「解放の倫理」節参照。

#ルール 3. 黒縄流伝授条件

鎖の母または黒縄大母との最終関係が友好的である場合に限り、陰陽師または三道侠愛3以上のPCは黒縄流の伝授を請える。

伝授条件:

  • 章終了時の関係が「友好」または「崇敬」。
  • PCの三道のうち侠愛 ≥ 3。
  • 領地へ核3個以上を持って帰還。

伝授成立時、PCは黒縄流1段技法を1つ習得する。詳細技法は22-02参照。


#設計ノート — GMのための背景

この節はプレイヤーへ公開しない設計者注釈である。

#なぜ「黒縄」が2章なのか?

第1章の等活は、PCの「傷」を映す鏡だった。傷は外部から受けたものであり、PCは受動的である。第2章の黒縄は、その傷の後にPCが自ら選んだ縛りを映す。ここからPCは能動的である。

この構造を保つことが、第2~5章接続の核心である。第3章の叫喚は「縛りを認めた後の感情」であり、第4章の焦熱は「感情を燃やす衝動」、第5章の無間は「すべてが消えた後の虚無」である。段階的で、不可逆である。

#なぜ「交渉可能妖魔」がここにいるのか?

黒縄の主題が選択だからである。妖魔が単なる敵なら、PCの選択肢は「殺す/逃げる」だけになる。妖魔に意図があるなら、選択肢は「殺す/逃げる/対話する/契約する/裏切る」へ広がる。この拡張は、黒縄の主題である「縛りと解放」と正確に重なる。

交渉可能妖魔の初登場をこの章に置く理由は明確だ — 黒縄そのものが「交渉の地獄」だからである。

#長さについて

第2章は4セッションを目標とするが、プレイグループが交渉とRPに集中するなら5セッションまで伸び得る。GMはこれを許可する。ただし5セッションを超えるとペースが崩れるため、第3幕または第4幕のどちらかを短縮する。


#ボーナス — 5人卓感想ログ

ソラ: 一番RPGらしくない章でした。だからよかったです。

ハナ: 本当に解放されたくない魂もいるんだよね。

クロ: 自由の後にある世界まで考えてみろってこと。

全会話: 80-09 マイルストーン感想ログ中、第2章終了後 — 何を解き、何を縛るのか


#次の段階

黒縄の門はいま開いている。入るかどうかは、君たちが決める。

最後のノート (GM用): この章の間、プレイヤーが最もよく聞くことになる文は三つある。

1. "ここで休んでいい。"

2. "君もそうだっただろう。"

3. "約束は守るよね?"

この三つの文が、黒縄がPCへかける呪文である。セッションごとに最低一度は聞かせなければならない。